#1300 ラークシャサの英雄インドラジット
お昼を食べ終えた俺は気合いを入れて、ログインすると隣で満足そうに寝ているファリーダを起こして、下に降りるとリリーたちがすぐに集まって来た。
「何をしたの! ファリーダちゃん!」
「あなたたちにはまだ早い事よ。そうよね? タクト」
「ソウダネー」
「どうして片言に言うんですか!」
みんながわーわーいう中、リビナがファリーダに言う。
「やってくれたね…ファリーダ」
「悪戯とかイチャイチャしているから先を越されるのよ。恋も愛も早い者勝ち。夢魔として学べて良かったわね? リビナ」
「く…悔しいぃ~!」
リビナが発狂しているがファリーダがいたのはお腹や頬や肩ををゆっくり触る程度で悪戯とあまり変わりはない。ただ妖艶な雰囲気を出すファリーダは相当やばかった。大人の女性、怖い。
シルフィを呼んで全員に食事を出す中、シルフィがリリーたちのむすっとした顔にすぐに気が付く。
「何かあったんですか?」
「ふふ…興味あるなら後でシルフィ姫にも教えてあげるわよ」
「やめてくれ…」
俺たちのこの会話だけでシルフィはファリーダが何かしたんだと察する。そして俺はファリーダと寝る時は絶対に荒れると確信した。滅茶苦茶興味持っている顔してますもん。しかしファリーダの真似をするシルフィはちょっと想像つかないな。
ここでユウェルが自分の新しい鎖の武器を完成したらしいので、見せて貰う。
ライトニングダガーチェーン:レア度10 鎖 品質S+
重さ:100 耐久値:4000 攻撃力:3000
効果:不死殺し、破魔、神気、堅固、万物貫通、魔力切断、伸縮、荷重操作、電磁操作、拘束、雷光刃、電弧放電、雷光、原初の加護
伸縮鉄と緋緋色金の合金の鎖の先にアダマントと雷精石、原初の砂の合金で作られたダガーを組み合わせた攻撃特化の鎖。縛ることもできるがどちらかというと敵を貫き、地面に刺さることで敵の身動きを封じるのも目的で作られている。
俺が提案通りに作ってくれた。そしてユウェルが自慢げにライトニングダガーチェーンを披露する。ダガ―に稲妻が走るとダガーに雷光刃が発生し、雷光の効果で雷速で襲い掛かる。伸縮の効果で鎖は雷速のまま伸び続ける仕組みとなっている。
そしてダガーが突き刺さった状態で伸縮で鎖を縮ませることで移動も可能。これが俺がユウェルに教えたものだ。
「伸縮! 戻れ! どうだ! タク!」
「完璧だな! ユウェル! 偉いぞ!」
「そうだろう! そうだろう!」
自分でもかなりの自信作と思われる。俺はここでユウェルに分銅鎖を作ることを提案すると喜んで作ってくれるようだ。打撃武器としての鎖も強いからね。ユウェルなら憧れているほどだから使いこなせるだろう。
「はい。修復出来たどす」
「武器も修復出来ましたよ」
「ありがとな。和狐、ヘーパイストス。もう作戦は始まっている。急ごう」
「頑張っちゃうよ! みんな!」
「「「「おぉー!」」」」
リリーの掛け声で俺たちは暗黒大陸の トリプラースラ砦に転移すると激しい戦闘の音が聞こえて来た。原初の泥の耐久値減少が本当に邪魔だった。まぁ、戦況はいいみたいだし、今から合流しても大丈夫だろう。
今回は戦闘はパーティー制限はない。よってシルフィと共に全員を召喚する。完全に怪物軍団化しているから敵軍がこれを見たら、普通にドン引きだろうな。
夕凪の甲羅の上から戦場となった荒野の戦況も見るとお互いに大群で激しく戦闘している。ここで敵軍の主力の識別に成功する。
ラークシャサLv70
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ラークシャサは腕が四つある人と変わらない大きな鬼で戦士の格好をしていた。確かに戦況は優勢に見えるがそれほどでもないな。みんなが苦戦しているのはラーヴァナ軍の弓使いの多さだな。無限に戦場に矢が飛んでいる。
本来ならこういう平地は銃が遠距離最強なんだが、ラーヴァナ軍はしっかり盾持ちを前衛に揃えていた。鉄心さんたちも果敢に距離を詰めているが敵を吹っ飛ばしているが盾二つと剣二本の四つの腕があるラークシャサとの戦闘はかなりやり辛そうだ。
魔法やスキルも対処しているらしく、軍隊として非常に練度が高いな。完全に崩したと思っていてもラークシャサには格闘戦もある。そしてこちらも使っているがラーヴァナ軍の中にはチャリオットを使って来る者もいた。これを満月さんたちが食い止めて、動きが止まったところに猿軍が襲い掛かる形で防いでいる。
「どうするの? タクト?」
「これは下手に飛び込めないな…やれるならチロルたちがもうして陣形を崩しているだろうからね」
黒鉄やフェンリルなら矢の雨ぐらいへっちゃらだとは思うが、ラーマと通信を繋ぐ。
『ラーマ。タクトだ』
『おぉ! 来てくれたか! 遅れると聞いていたから心配していたぞ』
『戦況はもう見てる。何が必要だ?』
『やはりラーヴァナ軍の矢がきつい。矢がずっと飛んできているせいで折角の猿軍の運動能力が殺されている。本来なら跳躍だけで敵陣中央まで奇襲を仕掛けられるんだがな』
猿軍の防具はいい物じゃないからな。寧ろ弓矢を恐れて完全に引いている。満月さんたちは前線を上げたそうだが、チャリオットが邪魔っぽいな。折角押し上げてもチャリオットの突撃で下げられている。
俺はサバ缶に状況を聞く。
『ゴーレム部隊の突撃や地面からの奇襲、全員の大技攻撃を試みましたが駄目でした。あの弓矢の攻撃が防御無効に衝撃貫通、物理無効があるせいでゴーレムたちが耐えられない状態です』
ラークシャサの能力かは分からないが見た目以上に厄介な弓矢だったんだな。みんなが果敢に前に出れない理由が分かったよ。
『地面からの奇襲は大地支配で阻止され、全員の大技は盾役たちに防がれた後に弓兵が急に前に出てきて、こちらの部隊に一斉のサウザンドアローレインの反撃を喰らってしまいました。正直、部隊としての練度がかなり高いです』
大技攻撃に対して大技攻撃のカウンターで返したのか。やるね。サバ缶さんからは盾役の突破か弓兵の攻撃を止めることが出来れば敵軍を崩せると考えていて、それを今、している最中らしい。
ここで敵軍の中央付近で爆発が発生する。忍者たちの影潜伏と影移動の奇襲攻撃だな。これにみんなが合わせて動く。ラークシャサたちも迎え撃つ構えで乱戦に突入する。
「「「「オォオオー!」」」」
「「「「ウキ―!」」」」
「タクト! チャンスだよ! 行って来ていいよ? ね? ね?」
「はいはい。行って来ていいぞ。俺たちは側面から襲い掛かろうか。グレイ、白夜。頼む」
グレイと白夜は自分たちの仲間を呼ぶとリリーたちはそれに乗り、敵側面に奇襲を仕掛けに言った。大きい体を持つみんなは俺と一緒にお留守番だ。ダーレーが俺に聞いて来る。
「俺たちは行かないのか?」
「ちょっと戦況を見たい…イクス、黒鉄。大技の準備を頼む」
「イエス、マスター」
イクスと黒鉄が狙撃体制になる。その頃乱戦で突撃したみんなはラークシャサとの戦闘で苦戦を強いられる。前衛は盾を捨て、格闘戦にシフトした。メルたちの斬撃は剣で止められ、カウンターで拳や蹴りが決まってしまう。剣は破壊されてしまうラークシャサだが、格納で新たな剣を取り出す。
「この!」
「面倒臭いな!」
「ムキになるな! アーレイ! パワーに頼ってばかりいてはこいつらの思うつぼだぞ!」
サラ姫様は冷静だな。ラークシャサとの剣術勝負に勝つとラークシャサは拳でサラ姫様に襲い掛かるがそれを下がって、躱すとラークシャサを一刀両断した。剣と拳ではリーチ差がある。サラ姫様の戦い方が一番綺麗だろうな。
しかしこれで倒せたわけじゃなかった。不屈で再度ラークシャサはサラ姫様に襲い掛かるがサラ姫様はこの攻撃を後ろに下がって躱すとラークシャサを斬り刻んで倒した。お見事。
一方リリーたちも最初の突撃で大きく崩すが吹っ飛んだラークシャサたちの代わりに奥にいたラークシャサが前に出てきて、リリーたちと激突し、吹っ飛んだ奴らは後ろで態勢を立て直す。軍隊としての連携が滅茶苦茶いい上に状況によって格納で武器を変えているところが強い。
ただリリーたちも負けてない。最初の突撃で大技を使ったことで前に出て来たラークシャサの攻撃を受けてリリーや恋火、燎刃、虎徹、優牙、リースが飛び込んだ。ここで虎徹が魅せる。
「ガウ!」
虎徹が尻尾の刀をなんと全て投げる。それをラークシャサたちは弾いて更に前に出て来るが弾かれた刀たちが向きを変えて、ラークシャサたちの斜め上から襲い掛かると突き刺さった。
そして突撃に参加してなかったイオン、セフォネ、ファリーダ、ユウェルが飛び込むタイミングに合わせて全ての刀を帰還で手元に戻した。ああいう使い方も出来るんだな。そして武器に刀が突き刺さっていた敵をイオンたちが倒すと次の敵が来る。
「はぁあああ!」
「おぉ!」
イオンが神剣草薙剣の斬撃を放つとこれをラークシャサは二刀流でガードする。本来ならここでカウンターを狙っていたわけだが、ラークシャサの剣が砕けて、神剣草薙剣がラークシャサの身体を一刀両断し、乱刃の追加ダメージを受けるとイオンはフロストグレイザーでラークシャサを凍らせると斬り刻んで倒す。
ここでまた倒された背後のラークシャサが拳を放ってくるがこれをイオンは下がることで躱すとリリーが変わりに襲い掛かり、ラークシャサを吹っ飛ばす。この二人の連携もどんどん良くなっている。
一方ユウェルもここでライトニングダガ―チェーンを試す。
「いけ! ライトニングダガ―チェーン!」
「おお! お!?」
ラークシャサが剣で弾こうとするとダガ―が不自然に剣を避け、ラークシャサの顔を貫くと剣に鎖が巻き付き、ユウェルが鎖を引くとラークシャサを引っ張られて、恋火が空でバラバラにする。
そしてファリーダも進化して、初めての戦場に立つ。完全にファリーダは余裕を見せて、素手でラークシャサに挑む。
「おぉ!」
ラークシャサが盾で殴りかかって来るとファリーダはそれを手で止めると爆心の効果で爆発する。怯んだラークシャサだが、踏ん張り二刀流でファリーダに剣を振り落とすとファリーダは剣をまた掴むと剣が砕けれてしまう。
「お!?」
「別に驚くほどじゃないでしょ? ほら、かかって来なさいよ。男の子でしょ?」
「お…おぉおおおおお!」
ラークシャサが拳を連続で放つがファリーダの拳とぶつかり合うと腕が吹っ飛ぶ。
「弱いわね…僕」
ラークシャサは頭を掴まれると地面に叩きつけられて、踏みつぶされると燃えて終わる。あれは屈辱だな。そんな余裕を見せるファリーダにラークシャサたちが襲い掛かるが逆に真正面からやって来た優牙に纏めて食べられ、虎徹の剣術の前に一瞬でバラバラにされる。
他のみんなもラークシャサとの戦い方を見出そうとしていたがここで敵軍に動きがあった。
『サバ缶さん! 側面の敵が動いてます! 全軍に撤退命令を! このままだと包囲されます!』
『了解です!』
「イクス、黒鉄。左側面の敵を薙ぎ払ってくれ」
「イエス、マスター。エネルギーバスターキャノン! 狙い撃ちます!」
イクスのエネルギーバスターキャノンと黒鉄の荷電砲が放たれるとラークシャサ数十人がイクスと黒鉄の攻撃に自ら当たりに来た。普通なら消し飛ぶ攻撃だが不屈で生き残り、自分の部隊に戻る。
凄い方法でこちらの攻撃を止めて来たな。これはこちらの防御無効とか完全に読んだうえで対策された感じを受ける。これは強いと認めないといけないな。すると俺たちの狙撃にレイジさんたちが合わせてくれて、左側面の敵部隊の足止めをしてくれた。
これで最初に突撃したみんなは引く事が出来たがまた弓を撃ち込まれる。逆に与一さんたちやトリスタンさんたちが反撃の遠距離攻撃をするがまた敵の前衛が盾を装備して防がれる。これは非常に面倒臭い。
『タクト! そっちに敵が行ったよ!』
リリーたちがぶつかっていた右側面の敵の一部が俺たちに奇襲を仕掛けて来た。
「それはダメだろ」
「グォオオオ!」
「「「「シャー!」」」」
月輝夜の上段の構えからの振り下ろしをラークシャサたちはジャンプして回避するがディアンやストラ、スキアーに食べられそうになるが牙を抑えて、食べられるのを阻止していた。それでも毒には侵される。
「「「「オォ―!」」」」
逆鱗を発動させて、ラークシャサたちはジャンプで再び難を逃れる。だが、空にはヒクスたちがいる。ヒクスたちの連続攻撃を不屈で耐えるラークシャサだが、突然力尽きる。
「今のは…あ。毒ダメージか」
不屈は攻撃を耐えるスキルであって、状態異常のダメージは耐えることが出来ないという事だろう。これは非常にいい発見をしたぞ。みんな、ラークシャサの四つの腕に苦戦をしているが不屈からのカウンターも脅威みたいだからね。まず一つラークシャサの戦闘スタイルを封じよう。
俺はサバ缶さんに説明して、みんなに情報を共有して貰うと仕掛ける。
「「「「毒域!」」」」」
召喚獣たちの一斉の毒域が発動すると同時にみんなが一斉に仕掛ける。
「はぁ! よっしゃ! すぐ倒せるで!」
レイジさんの槍がラークシャサを貫くと反撃しようとしたラークシャサが毒ダメージで力尽きる。ただ弓の援護はまだあるので、深追いは出来ない。イクスの衛星砲で敵後方を狙ったがやはりラークシャサは身体で止めて来た。
「…」
「怒らない。怒らない」
「怒っていません。ムッとしているだけです」
それは怒っているんだよ。俺が呆れながらリリーたちの戦況を見る。リリーたちも弓を警戒して、中々思い通りの戦いが出来ていないみたいだ。なんとか突破口を探そうとしているんだけどね。現状少しずつ削っていくしかなさそう。
「これは長期戦になりそうだな」
俺とサバ缶さんたちは長期戦のシフトを引いていく。長期戦では敵に休憩させないことが結構重要なので、休憩したい部隊と入れ替わる部隊の二つを主に編成していく。俺も部隊を分けて、攻め込む。
「もぐもぐ…セチアちゃん。あの弓矢、なんとか出来ないの?」
「私は頑張っていますよ。相手の弓矢を破壊して相手の攻撃を降らせていますからね。結局盾でガードされていますけど」
「腕が四つあるだけであそこまで強くなるんどすな」
「個々では勝っているのに崩しきれないのがもどかしいです」
俺たちの得意戦術となっている突撃して内から崩す戦法も弓持ちのラークシャサが武器を弓から剣とかに変えられる可能性を考えると下手に飛び込めない。ここでサバ缶さんから通信が来た。
『タクトさん、敵の数減ってますか?』
『減っては来てます…あまり変化は見えないですけど』
『そうですよね…ちょっとみんなの苛立ちや疲労が出てきました』
『不味いですね』
これは良くない兆候だ。そして案の定、強引に攻め込む人たちが出て来るとラークシャサに返り討ちに合うプレイヤーが出て来る。それを見たメルたちが今度は苛立ちが出て来てしまう。集団戦は連携してこそ集団戦だ。自分勝手な行動をして、輪を乱すと自然と連携も悪くなる。そして一つの輪の乱れが全部隊に影響していくのだ。
「「グォ」」
それを感じ取った夕凪と月輝夜が俺に声をかけて来た。俺たちなら大丈夫だ。命令してくれと言って来る気がする。本当にみんな、いい子たちだよ。
「情けなくてごめんな」
俺の言葉に二人は笑顔を浮かべてくれる。俺の覚悟は決まった。俺は召喚師たちに連絡して、突撃の覚悟を聞いた。そしてみんな死ぬ可能性があることを踏まえて、了承を得た。そしてそのことをサバ缶さんに伝えて、みんなが動きを合わせる。
「夕凪! 回転激突!」
「いっけー! ガネーシャ! 光速激突!」
亀系の召喚獣と突進が得意な召喚獣が先陣を切った。案の定弓矢を受けての突撃だ。夕凪たちの生命力がみるみる減っていく。それでも突撃には成功すると思ったときだった。雷鳴が聞こえた。
「雷光! 魔拳!」
夕凪たちがその後ろに続いていた月輝夜たちまでなんと一斉に吹っ飛ばされてしまう。やはり隠し玉があるよな。
夕凪たちの突撃に合わしていたプレイヤーたちも壁役がいなくなったことで弓矢に狙われる。それは和狐やリースたちが突風で弓矢を吹き飛ばして、必死に阻止する。俺は夕凪たちを吹っ飛ばした宙に吹いている赤の身体に金髪の男を見る。
インドラジット?
? ? ?
レベルまで識別出来ないか…まぁ、夕凪たちをぶっ飛ばすだけで強いことは分かる。あれがインドラジット。インドラを倒したラークシャサの大英雄か。
「ふん…くだらない突撃だったな。雷轟!」
「雷轟!」
インドラジットが錫杖を掲げるに対して俺も旭光近衛を掲げて、雷轟を相殺する。
「俺様の雷を相殺するか…生意気な奴がいるな。あいつか。雷光刃! 電子分解! 雷光!」
「雷光刃! 電子分解! 雷光!」
「はっはー!」
「はぁあああ!」
俺とインドラジットの攻撃がぶつかり合うとお互いに距離を取るとインドラジットは舌を出す。
「なかなかやるな…お前」
「ラークシャサの大英雄にそう言って貰えるのは光栄だね」
俺たちの間に暴風が吹き荒れると激突する。インドラジットも四つの腕があり、武器は錫杖、槍、剣二本、背中に弓があった。完全に攻撃特化のラークシャサだ。
「いいぞ! いいぞ! 強いじゃねーか! 人間! 俺が求めていたのはこれなんだよ! 弓矢で打ち合ってばかりじゃつまんねーよな!」
こっちは四つの武器の攻撃を捌くので、結構手一杯だ。ここでリリーとイオン、アリナ、燎刃が参戦する。すると四人の攻撃をインドラジットは止めると四人の攻撃を弾き飛ばして、衝撃放射で吹っ飛ばした。
「フラガラッハなの!」
「あの状態で反撃してくれるか! おっと! はっはー! 動き回るのか! こいつらも結構強いな! おら! 雷ブレス!」
俺には接近戦を挑んで来たと思ったら、至近距離から雷ブレスを使って来た。しかしこれはスサノオの加護で通用しないと思っていたら、目の前に現れて、蹴りでぶっ飛ばされる。雷ブレスを目くらましに使ったのか。
「ぐ…」
「伸びよ。錫杖!」
俺に錫杖が伸びて来るとファリーダが伸びている錫杖の途中を掴むと錫杖を持ち上げ、俺への攻撃の射線を外してくれた。
「戻れ。錫杖!」
「転瞬。魔拳!」
「ぬ! ぐ…!?」
錫杖を戻したインドラジットの目の前にファリーダが現れるとインドラジットは二刀流の剣でガードしたが爆心の効果で爆発を受ける。
「格納。方天画戟。 覇撃!」
「ぬぅううう!?」
ファリーダはインドラジットのガードの上から方天画戟の覇撃をお見舞いするとインドラジットの二刀流の剣が砕けて、地面に叩きつけた。すると土煙の中、覇撃の弓矢がファリーダに向けて放たれるがこれはセチアが撃ち落とした。
「あいつらは別格だな。猿共より遥かに強いぞ」
「はぁ!」
「せぁ!」
メルと鉄心さんが同時攻撃するが錫杖と槍に止められて、弾かれると槍と錫杖を回して二人はぶっ飛ばされる。するとみんながインドラジットに集まってしまう。
「電弧放電!」
インドラジットの錫杖から電弧放電が放たれるとみんなが感電する。ここでインドラジットはラーヴァナ軍の方にジャンプして引くとみんなに弓矢が飛んで来て、満月さんたちがなんとかガードした。
そして俺たちにも弓矢が飛んできたので、一度引くと回復しながらリリーたちには聞かせられない非難合戦が部隊に発生する。アリナには特に聞かないように指示した。こういうのを聞いても心が荒むだけだからね。
「さて、どうしたもんかな」
「ギルマス。インドラジットはどうやった?」
「こっちに来たんだ。レイジさん」
「集団戦があるゲームである以上、いざこざやトロールはあるもんやけど、ああいうのは苦手なもんでな。避難させて貰いますわ」
メルたちやサバ缶さんたちには同情と感謝を送っておこう。そして俺はレイジさんにインドラジットの感想を言う。
「実力はまだ完全に出してないね。性格はヤンキーだけど、冷静さと判断能力もある。武器を扱うのも上手いし、体感では修練の塔の大英雄たちとあまり差はない感じがするね。ギルガメシュには届いていないと思う」
「なるほど。大体の強さは分かったわ。ほな」
「危ない! レイジさん!」
レイジさんと一緒にいたヴィビーシャナが叫んだと同時に俺は反応し、レイジさんに放たれた透明の攻撃を止める。すると透明になったインドラジットが現れた。全員が反応できなかったところ見るとハデスの隠れ兜レベルの隠密能力がある魔法を使えるみたいだな。そのレベルになると魔神魔法だろう。
「ち…ヴィビーシャナ。余計なことをしてくれる…」
「その人はやらせません! アークフレア!」
「ふん! 俺が敵陣深くまで来たのがただの暗殺だけだと思っているのか?」
「っ!? いけない」
「ナーガパーシャ!」
全軍にナーガパーシャが巻き付いてしまう。これは完全に神話と同じ流れになったな。
「終わりだ! 魔神技」
インドラジットが弓矢を構えて、矢に黒い稲妻が発生した時だった。太陽の背に巨大な炎の鳥がやって来るとインドラジットに突撃する。ガルダだ。この突撃をインドラジットは躱すと弓矢をガルダに放つと人型になったガルダは弓矢を全て弾いた。
「来てくれたか! ガルダ神!」
「なんでてめぇがこいつらを助けるんだよ! 鳥!」
「僕はラーマを助けただけだよ。勘違いしないでくれる? 蛇悪魔」
「蛇…悪魔だと? 誰にもの言ってやがる! 雷光!」
ガルダに襲い掛かるインドラジットだがインドラジットの雷速の拳をあっさり上に回って、回避してしまう。
「雷速では光速に勝てないよ。神拳!」
インドラジットが地面に墜落して、土煙が発生する。やっぱりガルダ、つえー。俺がそう思っているとガルダは俺を見て来る。
「いつまでそんな情けない姿をさらすつもりなのかな? まさか僕の助けが必要とか言わないよね?」
「誰がお前に助けを求めるかよ。ファリーダ、ユウェル、黒鉄。灰燼だ」
「「灰燼!」」
灰燼でナーガパーシャが塵になる。そして三人は俺たちをを助けてくれているとガルダは言う。
「ふん。遅いね。灰燼!」
ガルダの灰燼でラーマたちのナーガパーシャが消される。プレイヤーは助けていない。本当に性格悪いな。改めていつかぶっ倒す事を心に誓う。
「逃げたか…なら僕はここでお暇させて貰おうかな」
「感謝します。ガルダ神」
「ふ…頑張ってくれ。ラーマ」
土煙が晴れるとインドラジットの姿が消えていた。そしてガルダもいなくなる。神話の通りならこれでインドラジットのこの戦闘での参加はもうないだろう。これで突撃の大きな不安要素が一つなくなった。これなら仕掛けてもいいだろう。
俺たちはもう一度態勢を整えようとするとラーヴァナたちが先に仕掛けて来た。まだプレイヤーたちの多くは拘束を受けている状態だからこれは当然の判断だ。
「時間を稼ぐぞ。シルフィ」
「はい。スルト! ウェルシュドラゴン! タラスク! お願いします!」
俺たちがラーヴァナ軍と激突するとファリーダとスルト、ウェルシュドラゴンの猛爆でラーヴァナ軍の前衛が爆発に包まれる。しかしすぐさま態勢を立て直して、果敢に襲い掛かって来た。ここで押し切る気満々だな。ならこちらはその勢いを止めさせて貰うか。
「リアン、行けるよな?」
「はい。解放してもらいましたからいつでも行きます!」
「なら頼む。あいつらにポセイドンの力を見せてやれ」
「任せて下さい! 行きますよ! トリアイナ!」
ここで神槍トリアイナが初陣を飾る。
「大海刃! 神水! 光速激突! ハイドロダイブ! はぁあああ!」
リアンが光速の水流で盾持ちのラークシャサに突撃するとそれをぶち抜き、そのまま次々ラークシャサを貫きながら神水でラークシャサたちに大ダメージを与えると当然敵陣の深くで孤立してしまう。そのリアンに一斉にラークシャサたちが襲い掛かる。
「神水! 瀑布! 大洪水! 間欠泉! 渦潮! はぁああああ! 天変地異!」
空から神水の滝の水がラークシャサたちに襲い掛かり、地面に叩きつけるられるとリアンから発生した洪水の水流に流されて、間欠泉に上に上げられると水流が渦となり、ラークシャサたちが目を回して、地面に落下するといくつもの巨大竜巻に巻き込まれて、空を飛ぶと落下して倒れ込む。
海と嵐の怒りを表したかのような天災攻撃ラッシュ。これがポセイドンの神槍トリアイナの力だった。
「ははは! 凄まじい攻撃だな! 今だ! 一気に敵の中央を潰せ!」
ラーマの声で猿のセリアンビーストたちがジャンプし、リアンが作り上げた地点に着地するとその穴を広げるように全方位に襲い掛かった。この間にみんなが次々解放されて、戦いに参加する。
しかし敵も戦線を下げて、陣形を整えて来た。本当に戦い方が上手いし、それを支えているラークシャサ個人の能力も技量も凄い。しかし敵軍の数はかなり減ってきている。敵軍の後方に配置されていると思われる支援役と弓兵をもっと減らしたいところだな。
「セフォネ。一つお願いがあるんだが、いいか?」
「む。何か悪巧みでも思いついた顔じゃな? タクト」
「言い方…リリーたちも期待した目を向けないでくれよ」
「その話、僕らも興味ありますね」
リリーたちだけじゃなく、近くで聞き耳を立てていたブルーフリーダムのメンバーやリサなどが俺の奇襲作戦に参加する。俺はセフォネに頼んでインドラジットの奇襲のお返しをすることにした。
俺の作戦に合わせて、満月さんたちが強引に突撃して、敵との乱戦に持ち込んでくれた。そして俺の作戦は見事に決まる。
『意外にバレないものじゃな』
『全員見た目一緒だからな。怪我した者は次々後ろに引いているし、区別がつきにくいんだよ』
『なるほどのぅ…付いたぞ。みんな。支援しているのは女の部隊みたいじゃな』
シンクロビジョンで識別する。
ラークシャーシーLv70
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ラークシャーシーはラークシャサの女性バージョンだ。武器は杖と魔導書で格好はインドの伝統衣装であるサリーを着ていた。
『じゃ、行きますか』
俺たちはシャドールームでセフォネの影から一斉に飛び出す。俺たちが現れたのは敵軍の後方、即ち弓の援護射撃をしている部隊と回復などをしている支援部隊を狙った。
セフォネはシャイプシフトでの姿に変身すると堂々とラーヴァナ軍の中を歩いて、敵軍の背後まで普通に辿り着いてしまった。これが撤退とかしない部隊だったら、違和感があるけど、最初の戦闘から負傷するとラークシャサたちは結構引いているので、偽物のラークシャサが後ろに下がっていても気付ける者はいなかったようだ。
俺たちの襲撃で弓の援護に混乱が発生する。この隙をラーマやサバ缶さんたちは見逃さない。
「今だ! 一気に乱戦に持ち込め!」
「戦士たちよ! 儂に続け―!」
「「「「ウキ―!」」」」
『敵は混乱してます! 畳みかけて下さい!』
俺たちの奇襲でさっきまでの言い合いの鬱憤をラークシャサたちにぶつけるようにブルーフリーダムのメンバーやリサたちが暴れている。本来なら奇襲部隊の数の少なさから撤退も考えないといけない所なのだが、みんなが強い。
特にゲイルが完璧な飛び出しを決めたのが大きい。ゲイルはラークシャサの弓部隊の所に着地すると地脈操作でラークシャサたちは隆起した岩に身体を貫かれると電弧放電で部隊一帯を感電させるとそこから雷雨や星雨、流星群を降らせてラークシャサ軍に大混乱を巻き起こした。
ラークシャサたちは当然ゲイルの排除に弓矢を放つが雷磁装甲で弓矢や剣は弾かれ、電磁支配で逆に弓矢は自分たちに刺さる結果となり、剣を持っている物は剣を離さない結果、吹っ飛ばされる。
ここでラークシャサたちも拳に攻撃手段を変えるが遅かった。彼らの背後からグレイたちが噛みつく。盾持ちがいなかったラークシャサが相手では優牙の格好の的だ。優牙が爪で次々薙ぎ習い、道を作ったことでグレイたちはゲイルの援護に入ることが可能となった。
そしてこれにはちゃんとした意味がある。リリーたちの身体が一斉に光る。
「「「「ドラゴンノヴァ!」」」」
敵軍深くでドラゴンノヴァが炸裂する。逃れたラークシャサたちはリリーたちを狙おうとするがディアンたちがブレスを吐きながら、牽制して来たことで下手に飛び込めない。そして敵軍の中央にこちらが陣取ると流星群などの広範囲攻撃が撃ちたい放題状態だ。
今回はリアンだけではない。みんな一緒だ。もう体制を整えさせはない。降り注ぐ攻撃に対処しようとすると今度は地上部隊の対処が出来なくなる。地上部隊の対処に追われると制空権をこちらが掌握して召喚獣たちによる空からの攻撃で更に状況が悪化する。かなり時間はかかったけど、勝負あったな。
「撤退だ! 撤退しろー!」
「逃がすな! 追撃せよ!」
「おのれ。猿共め。目に物を見せてくれるわ。おい! 伝言を飛ばせ! あいつを見ざめさせろとな!」
戦場に法螺貝の音が聞こえて来る。それはこの戦闘の第二ラウンドが始まる合図だった。




