#1296 アラジンの宣言
土曜日の朝、昨日のゲームでの酔いの効果が結構現実にも響いて、寝不足です。普通に寝付けなかったからね。運営さんに一応報告しておくがあの強化のことを考えると多少のデメリット効果がないといけないのも理解出来る。
ここでデメリット効果の無効化が過るが状態異常になっているから結構微妙なラインだろうな。すぐに試す気にはなれない。それほどやばい酔い方だった。急性アルコール中毒で死ぬ一歩手前ってあんな感じなのかな?と考えてしまうレベルでしたよ。
たぶんログインするとまだ効果が続いているだろうな。憂鬱なながらも朝ごはんを食べて、ちゃんと体調を整えてからゲームにログインするとやはり効果が続いていた。
「うげー…」
「あ、起きましたか? タクト?」
ぐにゃぐにゃ顔のシルフィの顔が映る。折角朝から可愛い顔が見れるはずだったのに台無しだよ。
「あ、起き上がらないで下さい。今、お医者さんを呼んできますから」
シルフィがいなくなるとリリーたちが部屋に入って来る。部屋のセキュリティがばがばだと思ったが昨日は鍵とかかけれる状態じゃなかったことを思い出した。
「大丈夫? タクト?」
「あぁ…大丈夫だよ。リリー」
「ノワたちから話を聞きました。スラー酒が美味しかったとかノワが私たちのレベルを抜いたとか」
ろくなこと話してないな!全部自慢話じゃん!まぁ、ノワらしいと言えばノワらしいか。話を聞いてベッドで倒れながらドヤ顔しているノワの顔が一瞬で浮かんだしな。それからリリーたちの愚痴やお願いを聞いているとシルフィがヒポクラテスさんを連れて来てくれて、薬を飲むと見事に回復した。
「治ったー!」
「いやはや。フリーティアの英雄殿がお酒の飲み過ぎでダウンしてしまってはいけませんぞ。あなたはシルフィ姫様の病気を治した人なのですからな」
「ははは~…面目ない」
お酒を飲みすぎたわけじゃないんだけどな。強いお酒を飲んだことは事実なので何もいい訳しません。次にノワ、セフォネ、ファリーダにも薬を飲ませる。しかしこれが苦労するのだ。
「…や」
「や、じゃありません。飲みなさい」
「…ぷい。ふぎゅ!? あ~!? あぁ~!? むぐ!? んぅ~! ごぐ…にが~い」
顔を背けるノワのほっぺを強引に掴んで口の中に薬を入れて、吐き出さないように口を手で防いで飲み込ませた。これを他の二人にもすることになった。ただセフォネには指を噛まれて、血を吸われるし、ファリーダはめっちゃ挑発された。
「淑女に乱暴なことをするのかしら?」
「大人しく薬を飲むなら乱暴はしないさ。それに淑女なら薬ぐらい飲めるよな?」
「…淑女にも薬を飲めない人はいるわよ」
「確かに飲めない人もいるかもしれないがファリーダは飲めるのに飲まない人だから問答無用」
「やめ!? んんぅ~!? ふぅ~! んぐぐ!? まっずい…覚えてなさいよ。タクト」
昨日は全然会話出来なかったけど、こうして話して見て何も変わっていないと実感できた。ここでファリーダから客が来ている話を聞いた。リリーたちを叱ろうか迷ったが俺のことを心配した結果だと思ったから叱るのはやめておいて、下に降りるとアラジンとジンとシェヘラザードがいた。
「久しぶりだね。タクト。ジンから話を聞かせて貰って、初めての外の世界の旅行先はやっぱりここがいいと思って来たよ」
「よく場所が分かったな」
「イフリータがいる場所なら嫌でも分かるし、お前は自分が有名人だと自覚した方がいいぞ」
「出会う人、みんな知ってましたね」
我が家の情報駄々洩れなのかよ。我が家に来る人は限られているから結構大丈夫だと思っていたけど、ダメだったらしい。ここでジンが本題を聞いて来る。
「ラーを倒したのか?」
「そうよ。ただ契約の試練じゃないから本気かどうか怪しい所だけどね。それであんたもこれでほぼ自由の身でしょ? どうするのよ」
「俺もイフリートもラーを倒したわけじゃないからな。イフリートはサンドウォール砂漠に残り、俺はこいつらをサンドウォール砂漠の王にするつもりだ」
そういう流れで来ますか。確かアラジンの話ではジンの力で大金持ちになり、国王の娘と結婚する話になっている。これを王様にすると取るのかどうかの問題だが、このゲームではどうやら王様にするという流れになるようだ。
そりゃあ、今のサンドウォール砂漠の戦力を考えるとジンの力は明らかに抜き出ている。王になる力は十分にあるだろう。ただ俺は聞かないといけない。
「アラジンは王になる意志があるのか?」
「ある。色々道を間違えたけどさ。君たちと別れてからシェヘラザードと一緒にサンドウォール砂漠の民と触れ合って、僕が王になってサンドウォール砂漠を変えないといけないと強く思ったんだ」
だいぶ大人になった感じがするな。道を踏み外して、道に戻って来た人間は強いね。アラジンを見ていると本当にそう感じた。
「そっか…俺としてもアラジンたちがサンドウォール砂漠の王になってくれた方が嬉しいよ」
「そう思うって事はタクトもサンドウォール砂漠の政治には不満を持っているんだね」
「不満というか権力者の背比べをして、その結果国民が苦しんでいる状況だろ?」
一応サンドウォール砂漠の情報はルインさんたちから聞いている。二つの町は金に目がくらんだバカたちに権力が握られ、砂漠で生きていくための飲み水に高額な金が発生して苦しんでいるそうだ。
それを逃れて平和だった砂漠のオアシスの村に人が集まったが町で豪遊しているバカたちを見た奴らは当然自分も真似した。こうして現在サンドウォール砂漠は生命線の水を買うのに高額な金が必要な場所となってしまった。
一応ルインさんたち生産職がいくつもあるキャラバンに無料で水を送り、苦しんでいる人たちに無料で供給する援助をしているが当然この状況を権力者たちが快く思うはずがない。ルインさんたちに直接抗議をしたり、現在はキャラバンが襲撃を受けている話も聞いている。
これに対してルインさんたちはクエストを発行して徹底抗戦の構えだ。それならさっさと権力者を倒したらいいと思うかもしれないが今までの流れから見て、同じ権力者が無限沸きする状況だとルインさんたちは考えていて、この状況を打破する可能性がある人物としてアラジンの名前は確かに出ていた。
「その通りです。ただ方法を悩んでまして…」
「ジンの力で王になって、本当に大丈夫なのか不安なわけだな?」
「うん…シェヘラザードと話してやっぱり国民の支持を得て、王になるのが普通だとは思っている。でも、それには物凄い時間がかかるから砂漠のみんながそれまで耐えられるか分からない。それなら力で…と思っちゃうわけで」
難しい判断だよな。伝説の通りに大金持ちになって、権力者の仲間入りすれば権力者たちから権力を奪えるだろうか?奪えない気がするな。一度味を占めた人はなかなかその座から降りないことを現実のニュースで知っているからね。
そうなると結局軍事衝突になる気がする。この軍事衝突でアラジンがオアシスの水を昔の権力が及ばない状態に戻せば国民の支持を得られるとは思うが今のサンドウォール砂漠の状況がそんなことを言わせて貰える状況じゃないんだよね。
「俺から言えるのは国民の支持を得て王に選ばれてもそれがいい王になるとは限らない。もちろん力で王になってもその王がいい王になるともわからないという事だね。大切なのは成果なんだよ。アラジンがどんな形で王になったとしてもサンドウォール砂漠の国民を救えばそれはいい王様なんだと俺は思う」
「成果…あはは。答えを教えてくれないんだね」
「正解なんてないからな。どっちの道を選んでもたぶん後悔することになる。それなら王を目指す者としてアラジン自身が決めないといけない」
「そうだね…決めたよ。タクト。近いうちに国際会議の場で会おう」
そういうとアラジンはシェヘラザードと共に外に出て行くとシェヘラザードにお辞儀されてしまった。するとジンに言われる。
「イフリータを射止めただけはあるな…魔神の素質がありすぎだろ。お前」
「なんでそうなんだよ」
「今の発言でアラジンは力で王になる道を選ぶことになったからさ。戦争の火付け役になったんだ。魔神の素質十分だろ?」
「否定はしないがお前が言うような状況になるとは俺は思えないけどさ。精々アラジンにこき使われるんだな」
俺がジンにそういうとジンは鼻を鳴らして、アラジンの元に戻った。アラジンのあの感じからして国民を戦果に巻き込むような戦いをしないと思う。あくまで権力者たちを潰して、自分が王になると同時に水をまず元の状態に戻すところから王としてスタートする感じになるだろう。
一応ルインさんたちにこの情報を伝えておく。この感じからして何かしらのクエストは発生しそうな気配だ。今回の一件はルインさんたちと結構関わりが深いクエストになりそうなので、任した方がいいと判断した。
俺がメールを送ってからリリーたちと食事をしていると返事が来た。
『情報ありがとう。任せてちょうだい』
これでサンドウォール砂漠の王にアラジンがなることはほぼ確定しただろう。ついでにクロウさんたちがグレイプニルのクエスト達成報告を受けて、聖杯で出すことが可能という報告を受けた。これはラグナロク前には手に入れて置きたい装備だが、スラー酒を使っちゃったから今日の聖杯はスラー酒に使って、グレイプニルは決戦前の明日の聖杯で出すとしよう。
ご飯を食べ終わったところで完成したパンドラの装備を見せて貰う。
紅焔鉄扇:レア度10 扇 品質S+
重さ:50 耐久性:8000 攻撃力:2000
効果:不死殺し、大物殺し、万物切断、魔力切断、時空切断、溶断、英気、堅固、雷霆、閃電、雷化、放射光線、熱風、火山雷、雷轟、溶接、紅炎、白熱刃、電磁場、巨人の加護
アダマントとダマスカス鋼の合金に溶精石を組み込んだサイクロプス三兄弟の力を宿した炎属性の鉄扇。最大の特徴は鉄扇の部品が分離して、それぞれの部品を操ることで攻撃することが出来る所にある。ただしこれを操るには電磁支配か念動力が必要となる。
氷河鉄扇:レア度10 扇 品質S+
重さ:50 耐久性:8000 攻撃力:1600
効果:不死殺し、大物殺し、万物切断、魔力切断、時空切断、英気、堅固、雷霆、閃電、雷化、氷結光線、霧氷、氷雷、雷轟、分子分解、氷雪刃、吹雪、耐性無効、巨人の加護
アダマントとダマスカス鋼の合金に凍性石を組み込んだサイクロプス三兄弟の力を宿した氷属性の鉄扇。最大の特徴は鉄扇の部品が分離して、それぞれの部品を操ることで攻撃することが出来る所にある。ただしこれを操るには電磁支配か念動力が必要となる。
これを予定通り伊雪と千影に装備する。更に和狐たちが量産中の靴もそれぞれ三足ずつ貰い、生産作業をしてからシルフィに声をかける。
「頑張りましょう! タクト!」
シルフィが気合いが入っているのは、俺たちがこれから挑むのがレーヴァテインクエストだからだ。既に鉄心さんたち、満月さんたち、ブルーフリーダム、シフォンたち、メルたちの連合がクリアしたらしいがシルフィのスルトの専用装備だし、俺自身も気になる装備ではあるので、挑むことにした。
それじゃあ、アースガルズに転移して、クエストスタートするとしよう。




