#1291 砂漠の自然と夜の太陽神
アテンが変身が終わると光の中から現れたのはアンモナイトの兜に横から黄金の羊の角を生やしている人型の太陽神だった。
アメン?
? ? ?
武器は太陽の装飾があるウワス笏だ。防具は今までに登場したファラオたちとあまり変わりはない。武器を構える姿からかなり好戦的な雰囲気を感じ取った。
「行くぞ。白熱刃!」
「受けて立ってあげるわよ!」
杖が白熱刃で槍のようになり、ファリーダと激突する。これが互角の戦闘になった。アメンはファリーダの筋力に全く負けていない。お互いに武器を弾き合っているから互角と見ていいだろう。そうなると二刀流のファリーダが優勢のように思えるがアメンにはリーチの差がある上に杖を回しながら牽制し、杖全体を使った実に見事に棒術を披露している。
そこにみんなも戦闘に参加するが五人を体術も組み合わせて、捌いている。というかこっちのほうが攻撃を圧倒的に受けているな。連携不足もあるだろうがアメンはこちらの編成や動きに合わせて、どの攻撃をすれば一番いいのか選んでいる気がする。しかもこれは未来予知ではなく、アメンという神の実力で発揮していると思う。
「く…! 核撃!」
ファリーダの至近距離からの核撃がアメンに炸裂する。
「我が太陽神であることを忘れてはいないか? 黒星!」
「な!? きゃあああああ!?」
ファリーダが至近距離の黒星でぶっ飛ばされるとノワとセフォネが同時攻撃をするがウワス笏で二人は打たれて、壁に激突。更にスキアーが噛みつこうとするとアメンは跳び上がり、蹴り飛ばすと上から迫っていた叢雲の爪をウワス笏で受け止めると弾いて、至近距離から核撃で叢雲もぶっ飛ばされてしまった。
そしてアメンが俺のほうを見ると姿が消えると俺とアメンが激突する。この勝負は明らかに俺が不利なのだが、俺が防御を固めたためにアメンは白熱刃で中距離から連続で突く選択をした。下手に俺の間合いに飛び込むと旭光近衛のカウンターがアメンに炸裂する。それが怖いからアメンは下手に動けない。逆に言うと突きたい放題ではあるので、アメンは攻撃を続けているとファリーダが襲い掛かって来たことで距離を取る。
「太陽神がなんで黒星なんて使えるのよ!」
「それはこの姿が夜の我の姿だからだ」
このゲームでのアメンはラーの夜の姿という理解でいいわけだな。ラーは神話では夜になると雄羊の姿で夜の船に乗り死の世界を旅すると言われている。この雄羊の姿がアメンの羊の角に表現されている訳だね。
「それにしても流石に分が悪いな…悪いが援軍を呼ばせて貰おうか。号令! 死の世界より来たれ! ファラオ! ツタンカーメン!」
ここでツタンカーメンが来るのかよ。中央から砂が沸き上げるとそこから黄金のマスクを装備したファラオが現れた。
ツタンカーメン?
? ? ?
武器はオシリスと同じで現実でも持っているヘカとネケク笏だ。
「ツタンカーメンよ。ドラゴニュートとヴァンパイアの相手を任せるぞ」
ツタンカーメンが頷くとノワに襲い掛かる。しかしノワは影に潜り込んで躱す。相手にしないのがノワらしいところなんだよな。しかしツタンカーメンも甘い相手では無かった。全身が光り輝くと影が消えて、ノワは外に出るしかなく、外に出た瞬間、ネケク笏でぶっ飛ばされるとツタンカーメンの黄金のマスクにある蛇の装飾の目から死滅光線が放たれて、ノワに直撃しそうになったがセフォネが斬り裂いて、助ける。
「大丈夫か? ノワ」
「…うん。でも物凄く痛かった」
「そうじゃろうな…来るぞ!」
セフォネの神鎌ハルペーとネケク笏が激突する。セフォネは押し込まれて、ヘカでぶっ飛ばされそうになったがツタンカーメンの影から影竜が現れて噛み付こうとしたため、ツタンカーメンは距離を取った。これで仕切り直しだ。
「砂嵐!」
ツタンカーメンがヘラを振ると砂嵐が発生する。
「…黒雨」
ノワは放射能の雨を降らせて、砂嵐を妨害しつつ、ツタンカーメンに雨が降り注ぐ。
「黄金障壁!」
ツタンカーメンは黄金障壁で黒雨が弾かれる。
「刑罰なのじゃ!」
そこにセフォネは刑罰を発生させて、黄金障壁を砕いてダメージを与えた。それでもツタンカーメンはファラオとして立ち続けていた。そしてファラオ、ツタンカーメンの本気の力を発揮しようとしていた。
一方俺たちもアメンと戦闘を再開している。俺とファリーダが連携して、左右からアメンに襲い掛かり、俺たちが負けていたり、攻撃が狙えるタイミングで叢雲とスキアーが援護してくれることでアメンを押せていた。
アメンも叢雲とスキアーの援護をなんとかしようと俺たちを吹っ飛ばした瞬間に二人を狙おうとするが俺がそれを阻止して、逆に叢雲とスキアーの攻撃が来て、それを浴びた所にファリーダが攻撃する形となっていた。
ここまでのアメンとの戦闘で確認出来たスキルは神雷と雷轟、大気波動、大気壁、樹海支配だ。雷属性まで使って来たのは予想外だが、雷を俺が吸収したことでもう使うことは出来ないだろう。
「流石にきついか…ならば我の船を呼ぶとしよう。いでよ! 神技! アメン・ファルーカ!」
アメンがそういうと太陽の光を放つ巨大な木造の帆掛け船が床から現れて、空へ浮かぶとアメンはその船に乗る。あれがこのゲームにおけるラーが乗る船か…ファルーカが船の名前で実際にナイル川で乗ることができる伝統的な木造の帆掛け船だ。
エンジンを使わず、ゆったり進む船で昔のエジプトの人たちにとってはとても重要な交通手段だったらしい。
「放て!」
アメンがそういうと船から大砲が現れて、一斉に砲撃して来た。運搬の帆掛け船を武装させるな!ノアの箱舟を宇宙戦艦にしている俺が言ってもお前に言われる筋合いはないと言われるだろうけどさ!
しかもこの大砲が叢雲の虚無壁を抜けて来た。防御無効持ちか何か別のスキルの攻撃だな。これに対して、叢雲は翼を広げて、俺たちを抱え込んでガードしてくれた。しかしどんどん撃ち込まれると流石の叢雲も力尽きる。
「まず一匹」
「シャー!」
「ぬ!?」
アメンの船がスキアーの砂嵐に包まれる。これで船はバランスを崩し、アメンは視界を失う。
「舐めて貰っては困るな。我は凪!」
砂嵐の風が消えて、砂のみが地面に落ちる。そして真正面から蘇生した叢雲が現れて、アメンの船に跳びかかり、地面に押し付ける。
「く…邪竜の蘇生能力か。しかし正面から挑むのは無謀な試みだったな! 神技! アメンカノン!」
アメンの船の船尾から主砲が現れると太陽の光が集束して、叢雲に炸裂する。これには火属性も含まれていたらしく叢雲は爆発に包まれた。俺とファリーダはその間に太陽の船に攻撃を加えた。黄金障壁で守られていたが俺とファリーダの攻撃がぶち抜いた。
「ぬぅ! しかしこれで終わりではないぞ! 神技! アメンラム!」
アメンの船の船首に太陽の光の衝角が出現し、突撃しようとするがここで船がバランスを崩す。
「なんだ? しまった!? 流砂か!」
叢雲が強引に船を墜落させたのはスキアーの流砂に船を落として沈没させるためだ。そして俺が斬りかかるとウワス笏で受け止められる。
「今のあなたに流砂に捕まった船を助けることが出来ますか?」
「…無念だが、出来そうにない。我がアポピスを天敵にしている理由の一つがこれだからな。そこを見破り、用意周到に狙って来たのは流石だと称賛しよう」
アメンは大気の神であり、豊穣神だ。だから風属性と木属性を使えた。雷属性を使えたのは大気の神であることとアメンは守護神にして神々の王にもなったことからゼウスと習合しているのがたぶん関係している。
つまりアメンには土属性は含まれていないのだ。豊穣神の中に土壌も入るとか土属性使えますとか言われなくてよかった。俺が安心しているとアメンは笑みを見せて言う。
「しかし我以外の存在を忘れるのは良くないな」
「タクト! ノワとセフォネから逃げなさい!」
「っ! 雷化!」
俺の背後からノワとセフォネが斬りかかって来て、俺は雷化で難を逃れた。
「あっぶねー…なんだ?」
ノワとセフォネが俺のほうを見ると二人の顔がツタンカーメンの黄金のマスクになっていた。あれで操られているみたいだな。そう思っていると二人が襲い掛かって来る。流石に二人に攻撃出来ないと思っているとファリーダが割って入って来ると両手で二人の黄金のマスクを握ると力付くで破壊した。
「何やっているのよ…あなたたち」
「…助かった」
「いきなり変なマスクをたくさん飛ばして来たと思ったら、顔にくっついて操られたのじゃ…タクト!」
俺の背後からツタンカーメンが襲い掛かって来たが雷化状態の俺に奇襲は通用しない。俺が攻撃を躱してツタンカーメンの背後に回る。
「人の妻を操っておいて無事に済むと思ってないよな?」
俺はツタンカーメンの首を斬り裂こうとしたが俺は衝撃的な光景を見てしまう。ツタンカーメンの首は確かに胴体から離れているが俺は斬っていない。俺の斬撃に当たる前に自分から首を外して旭光近衛の斬撃を回避しやがった。どうやらツタンカーメンはオシリスの身体バラバラ伝説とツタンカーメンで有名な呪いのマスク伝説の力があるみたいだな。
そしてツタンカーメンの顔が俺に向かって噛みついて来た。残念ながら雷化状態の俺にそんな攻撃は通用しない。俺は罰当たりを承知で蹴り飛ばすと胴体に顔が直撃すると胴体にノワがルーンノワールで突き刺した。
「…これでもう何も出来ない」
「終わりじゃ。妾たちの不始末は妾たちで始末させて貰うぞ!」
セフォネが神鎌ハルペーで斬り裂こうとするとアメンがセフォネを狙うがファリーダが阻止して、セフォネがツタンカーメンを斬り裂いた。そして俺はアメンの背後に回り、襲い掛かるが光化で躱されて、仕切り直す。
下ではスキアーがアメンの船に巻き付き、破壊に成功した。そして俺たちの戦闘が再開される。ここでアメンが狙ったのはノワとセフォネだった。どうやら二人の近接戦の苦手さを狙ったようだ。
それを俺とファリーダが阻止して、ノワとセフォネはフォローに回る。
「…冥府鎖」
「ブラッティレイドボム!」
「ギー!」
「シャー!」
最後は俺とファリーダが挟んで攻撃している所をノワが冥府鎖で狙い拘束に成功するとセフォネの爆発する蝙蝠たちが殺到し、叢雲とスキアーのドラゴンブレスが決まり、なんとか倒した。
ここで結構なダメージを受けたので、俺はみんなに回復ポーションを使い、回復させる。
「相変わらず不味いのじゃ…それにしてもファリーダはよくこんな神に一人で勝てたのぅ」
「以前戦った時より強いわよ。前のアメンは普通に接近戦をして終わったもの」
ファリーダはイラつきを隠しきれていないな。するとアメンが言う。
「我には我の考えがあるのだ。そして今、我はあの時の判断が間違いないでは無かったと思っているぞ。それはお主もそう感じているのではないか?」
「…そうね。だからこそむかつきもするわ。全部あなたの考えた通りになったってことでしょ?」
「いや、まさかイフリートの娘が人間と結婚までするとは思っておらんかったよ。あの戦闘狂の猪娘が人間に恋をし、愛し合うなど創造神でも思いつく事ではない」
「五月蠅いわね!」
なんか俺までディスられている気がするのは気のせいかな?俺がそう思っているとラーが言う。
「ふふ。さて、この姿での敗北を認めよう。では、次の試練だ」
そういうとラーが光輝き、また変貌するのだった。




