#1283 ホドの神
俺たちは目的地に向かっていると海底に発掘ポイントをいくつか見つけたので、俺が一生懸命採掘する。手に入れたのはこちら。
深海石:レア度10 素材 品質S+
深海の世界で手に入れる事が出来る鉱石。海の力を最も宿している鉱石で深海の水圧を宿している。深海の水圧で鉱石としての形を残すほどの頑丈さがあり、鍛冶では上級以上のハンマーが無ければ鍛冶することでできない鉱石。
これとメタンハイドレート、原初の砂が手に入った。メタンハイドレートの海底の上で戦闘していたのかよとツッコミを入れたくなった。そして採掘あるあるが俺を襲っている。
「つっかれた~。戦闘前にこれはきついって…」
筋力がかなり上がってもまだ採掘に手間取る俺である。少しは早くなっている気がしているけどね。俺は夕凪の背に上で休憩しながら前に進んでいくと海底にある神殿を発見した。そして俺たちが神殿の前に行くと深海に輝く水泡が落ちていくと弾けて、ホドのセフィラの神が姿を見せた。
天界治癒神エロヒム・ツァバオト?
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エロヒム・ツァバオトの姿は基本的にはアドナイ・メレクの水色バージョンという印象だ。ただ髪の毛はゆるふわの巻き髪というヘアースタイルでおしとやかな大人のお嬢様的な印象を受けた。武器は周囲に四つの水晶の球があり、手には水色の魔導書と水瓶が装着されている杖を持っていた。
「むむ! 私と似ている神様ですね!」
「え?」
「今のえ? はどういう意味で言いましたか? タクト?」
「いや、見た目は確かに似てますね」
「違います! 雰囲気の話ですよ!」
それはない。確かにおしとやかさはシルフィにもある。俺が最初に出会った時がそんなイメージを持ったからな。今は元気になったからだいぶ違っているけどね。ただ俺がないという理由は大人独特の余裕というか包容力の差をどうしても感じてしまう。俺としては大人になったシルフィがもしかしたら、彼女のようになるのかも知れないと思ってます。それを伝えるとシルフィは引き下がった。
ここで俺たちの余裕を見ていたエロヒム・ツァバオトは微笑み話しかけて来た。
「ふふ。いい夫婦関係ですね。あなたたちのような人間がわたしくの世界に来てくれて良かった…申し遅れました。わたしくの名前はエロヒム・ツァバオト。この世界の神をしております」
俺たちはアドナイ・メレク時と同様に挨拶をすると話は本題に入る。
「もう分かっていると思いますがわたしくはこの世界の神としてあなたたちを先に進ませることは出来ません」
「分かってます。俺たちはなんと言われても先に進ませて貰います」
「では、あなたたちに神として試練を与えましょう」
俺たちは全員が戦闘態勢になる。最初に仕掛けたのはタンニーンとバハムートのコンビだ。
「蒼天雷!」
水晶の球から蒼天雷が放たれるがタンニーンとバハムートは食らいながらエロヒム・ツァバオトに竜爪で襲い掛かった。しかしその爪がエロヒム・ツァバオトの肌に触れた瞬間に止まってしまう。
そしてエロヒム・ツァバオトが必殺技が炸裂する。
「神技。センセーションインパクト」
「「ギャオオオオオ!?」」
エロヒム・ツァバオトから波紋が発生するとそれを受けた二体がぶっ飛ばされる。
「タンニーン!? バハムート!? この二体が同時に!?」
「攻撃を止めたのは衝撃無効だな」
「間違いないです。先輩。そしてあの技はお二人のダメージから見て、防御スキルを無視する衝撃波攻撃のような物だと思います」
しかも自分が中心と広がる。近接戦殺しの必殺技だな。こうなると遠距離戦を試すしかない訳だが、当然というべきだが、遠距離戦が強い神であることが判明する。水鏡と全反射で魔法や遠距離攻撃を弾き返して来た。
しかし敵が一人なら数で押せば何とかなる。実際に防ぎきれず次々魔法や遠距離攻撃がエロヒム・ツァバオトに当たる。
「先輩…簡単すぎませんか?」
「あぁ…絶対に何かあるが今はこのまま押して行こう」
「分かりました」
ある程度ダメージを受けたエロヒム・ツァバオトは衝撃的な行動に出た。
「痛いので、そろそろ薬の時間ですね。調薬創造。全回復ポーション」
杖を振ると全回復ポーションが杖の水瓶から作り出されて、エロヒム・ツァバオトの口に流れるとエロヒム・ツァバオトの生命力が全回復してしまう。
「それはやり過ぎだろ!」
思わず全力のツッコミをしてしまった。治癒の神様を名乗っているんだから回復特化なのは予想したが薬を作り出させる神なんてやば過ぎる。
「神の試練は優しくはないのですよ。調薬創造。全魔力回復ポーション」
そりゃあ、生命力を全回復させることが出来るポーションを作り出せるなら魔力の全回復ポーションも作れますよね。これで状態異常回復のポーションや最悪全回復で蘇生するポーションまで使われる危険性が出て来た。
「これ…どうします? タクト?」
「…取り敢えず考えられる攻略法を試そうか。ルーンウェポン!」
これで杖の使用を封印出来ればワンチャンある。しかし封印は当たり前のように弾かれる。簡単に封印なんてさせてくれませんよね。こうなると後は夕凪の神岩結界に賭けるか。あの武器を弾くか破壊するか。ポーションを飲ませないようにするかの攻略法になるな。この情報をみんなに伝えて、俺たちは戦闘を続行する。
俺とダーレー、リアンとサフィのコンビで接近戦を挑んでセンセーションインパクトの弱点が判明した。どうやらこの技は近くにいる敵ほどダメージがでかく、遠くにいる敵にはそこまでの威力は発揮しないらしい。
これなら接近戦を挑んだ後に技を誘発して、放たれることでダメージを軽減してから接近戦を挑める。必殺技は乱発出来ない使用になっているからね。実際にやってみると確かに戦闘することが出来た。ただここで立ちはだかるのが衝撃無効だ。斬撃や刺突の勢いが全部無くなってしまう。それでも多乱刃の追加斬撃は食らわせることが出来た。
「海震」
俺たちはエロヒム・ツァバオトの海震で吹っ飛ばされるとエロヒム・ツァバオトは杖を構える。別の必殺技が来る。
「神技。バブルパルスマイン」
エロヒム・ツァバオトがそう言うが何も発生しない。
「何も来ないと言うなら」
「待て。リアン。下手に飛び込むな。爆発を受けるぞ」
「え…」
俺はエロヒム・ツァバオトに言う。
「神様が機雷の技なんて使っていいんですか?」
水中と地雷と呼ばれる機雷は爆発や爆風よりもバブルパルスという現象が最大限の威力を発揮されるように設計されている。見えないのは納得が技の使用なのだろうが精霊眼にはしっかりその姿を捉えることが出来た。
それよりも人間が作り出した兵器をエデンの神様が使った事は大問題だと思うんだよね。するとエロヒム・ツァバオトは俺の質問に答える。
「当然よくはありません。しかしあなたたちにその知恵を与えるきっかけを与えてしまった責任がわたくしたちにはあるのです。ならばわたしくたちはあなたたちの知恵が一体どれほどの悪か教えることで贖罪とさせて頂いております」
なるほど。エデンの神様はそういう認識でいる訳か。つまり人間の悪行の全ての発端は善悪の知識の木の果実を食べたことが発端としているという解釈だ。どうやらこのゲームのエデンの神様はそれを止めることが出来なかったことを自らの罪と位置づけし、贖罪として人間の悪を人間の試練で見せることでそれは悪い知恵だと教えているという事らしい。
「ご理解して頂けたようなのでそろそろ行きますよ」
エロヒム・ツァバオトがそういうと杖をこちらに向けるとバブルパルスマインの泡がこちらに向かって来た。操れるんかい。逃げても見えないみんなではどうしょうもない。というか技名からしてシルフィの命がかなりやばい事態だぞ。神鎧ロイヤルフリーティアでもどこまで耐えられるか分からない。それなら当たる前に壊してやる。
「海震!」
俺がバブルパルスマインを破裂させると大量の泡が発生する。
「海流支配」
その大量の泡が海流に乗って、俺たちに向かって来た。技名からしてこの泡がやばい。
「全員! 海流支配で押し返してくれ!」
「「「海流支配!」」」
「この世界の神であるわたくしに勝てますか?」
そういうとエロヒム・ツァバオトの海流が複雑に動き回り、俺たちはそれぞれ分散して対処していると押し込まれてしまう。それでも海流同士の激突に泡が耐えられる事はなく、次々破裂して、俺たちは海流の激流を受ける事になった。
その結果、みんなが分散されてしまう。そして狙われたのはシルフィだった。
「あ」
「魔法破壊。加護破壊」
シルフィに発生していた召喚獣たちの加護とサブマリージが無くなってしまう。その結果、シルフィは最初と同じで苦しむ結果となる。シルフィをやらせるか。
「恩恵! 遊泳行動!」
「ぷは!? く…!」
シルフィは元に戻るとすぐさまエロヒム・ツァバオトと距離を取る。そんな中、エロヒム・ツァバオトは俺を見て、話しかけて来た。
「自らの力を与えましたか…それであなたはわたしくに勝てますか?」
「勝てるかどうかの話じゃ無いだろ? 俺は好きな人を助ける為なら力なんていらない人間なんだよ」
俺が一番恐れているのは大切な人の死であることを自覚している。それを防ぐために力を求めて、手放すことでその人を救えるなら俺は喜んで捨てる。そこで捨てないと何のために力を求めたのか分からなくなるからね。俺の近くにリアンたちが集まる。
「わたしたちはあなたに勝ちます。わたしたちもまた先輩の力ですから」
俺とリアンはマリッジリングを掲げる。
「あなたが人間の悪を俺たちに教えると言うなら俺たちはあなたたちが最初に教えてくれた愛の力で超えさせて貰います」
聖書の神は最初にアダムを作り、その後にイブを作った。それは人間に愛を教える行為に他ならない。だから俺たちはこれで人間の悪の試練を超えてみせる。そして俺の言葉にシルフィも答えてくれる。
「夫がそう言うのなら妻である私も同じように証明するとします。行きますよ。ティターニア」
「ええ」
シルフィとティターニアがマリッジリングを掲げる。
「「「「マリッジバースト!」」」」
俺とリアンのマリッジバーストとティターニアとのマリッジバーストの効果で妖精の羽を持つ騎士になったシルフィの二人がエロヒム・ツァバオトと相対する。
「いいでしょう。あなたたちの愛の力をわたしくに証明してみて下さい」
そして本気になった俺たちの全力バトルが始まるのだった。




