#132 獣魔ギルドの称号
俺たちが合成召喚の間から出るとネフィさんがいた。
「上手く行ったようですね」
「はい」
「では、タクトさんにお渡しするものがあります。着いてきてください」
「? わかりました」
俺はネフィさんの後を追うと獣魔ギルドの一番上の階の一室に案内された。
そしてリリーたちはまたお留守番だ。
『えー!』
流石に連続のお留守番は不安げだな。ネフィさんも苦笑いだ。
「リリーたちとはこのあと、また一緒に話す時間を作るからさ。我慢してくれないか?」
『本当!?』
「あぁ。約束するよ」
俺がそういうとリリーは引き下がる。
「助かりました。では中へどうぞ」
「はい。失礼します」
俺が入った部屋や誰からの仕事部屋みたいだ。誰からは一目瞭然だな。
「ここは私の仕事部屋です」
やっぱりネフィさんの部屋か。きっちりしている部屋だな。
「まずタクトさんにお渡しするものがあります」
ネフィさんはそういうとデスクから綺麗な箱を取り出す。
「これを受け取ってください」
俺が受け取るとインフォが流れる。
『獣魔ギルド上位NPCに認められ、称号『親愛の召喚師』を獲得しました』
称号『親愛の召喚師』
効果:特殊職業の解放、特殊クエストの解放
召喚獣のことを大切にしている召喚師に与えられる称号。
「これって称号だったんですか!? どうして俺に?」
「獣魔ギルド本店副ギルマスとして、タクトさんにはこの称号を受け取る資格があると判断いたしました。同時に謝罪しないと行けません。私はタクトさんにわざと合成召喚の自我の話をしませんでした」
あぁ…なるほど。そういうことか…このゲーム。えげつないな。
「俺を試したんですね?」
「…はい。召喚師には二通りの召喚師がいます。召喚獣のことを考えず、合成召喚をする召喚師と召喚獣の意思を尊重して合成召喚をするかしないか決める召喚師です。獣魔ギルドは新しく合成召喚を覚えた召喚師がどちらのタイプか把握するのが1つの仕事となっています」
「前者の場合はどうなるんですか?」
「獣魔ギルド内でそういう召喚師と判断されることになります。獣魔ギルドには大きく五段階の評価があります。召喚師の場合は上から召喚獣を大切にし、気持ちを尊重する召喚師。召喚獣を大切にしているが気持ちを疎かにする召喚師。召喚獣を戦闘の道具として扱う召喚師。召喚獣を大切にしない召喚師。召喚獣を虐める召喚師の五段階です」
俺は今まで召喚獣を大切にしているが気持ちを疎かにする召喚師だったわけだな。改めて言葉にするとグサリと来るな。
「タクトさんとリリーさんたちの会話は申し訳ございませんが、聞かせて貰いました」
「え!?」
何だってー!?ちょっと待て。結構恥ずかしいことを言ってた気がするぞ!?というかどうやって!?
俺がそう思った瞬間、ネビロスやスカルオルトロスで感じたものより遥かにやばい気配を急に感じた。そして第三者の声がする。
「お嬢を責めないでくれや。お嬢も好きでやってることじゃないんでな」
俺の横から急に現れたのはボロ布を着た大鎌を持った青年だった。その姿は正しく死神だった。
「勝手に出てきてはダメですっていつも言っているでしょう!」
「まぁまぁお嬢。そう怒りなさるな。将来シワが増えますぜ?」
「余計なお世話です!」
なんというかいいコンビだな。
「お! 俺とお嬢をいいコンビと思ってくれるかい。やっぱ見る目あるね」
い!?俺の考えを読まれた!?
「当然さ。俺は死神の端くれだ。人の考えぐらい、普通に読み取れる」
怖っ!?そして死神とあっさり認めた!
「バレバレだからな。それにお前さんたちを盗聴したのは俺だ。なら姿ぐらい見せるのが筋ってもんだと判断した。違うかい? お嬢」
「違いませんが、問題行動です。はぁ~…タクトさん、この死神のことと先ほどの話は内密にお願いします」
ん?死神のことはなんとなくわかる。諜報員を知られるのはまずいし、ずっと監視しているわけじゃないとは思うが、そういう疑惑は出てくるからな。
でも評価とかの話も内緒にしてないといけないのはなんでだ?
「それを知っちまうと人は行動を変えるだろう? ずっと変え続けるなら問題はねーんだが、称号を貰った途端に態度を変える奴もいる。だから称号のことを知ってる召喚師には称号を与えられないギルドの規定があるんだよ」
うわー…確かにそういう人はいるだろうな。どうやって知るかは…その為にこの死神がいるわけか。
「そういうことだな」
「わかりました。今日のことは誰にも言わないようにします。話して恨みを買うのはごめんですから」
「ありがとうございます。それとギルドカードもお渡ししておきます。ちゃんと受付で申請しないとだめですよ?」
俺はネフィさんから青のギルドカードを貰う。そういえば受付で召喚ばかりで全然更新していなかったな。
「話は以上です。これからもリリーちゃんたちを大切にしてください」
「もちろんです」
その後俺は約束通り、リリーたちと色々話した。まず問題になったのは、魅了の件。
「魅了になってくれますよね? タクト様」
セチアの笑顔が怖いので、素直にルーナの魅了鱗粉を浴びる。だが変化がない。
「さぁ、タクト様。私を押し倒してください!」
セチアがそういうが俺、なんともないんだが?
「どうしました? さぁ、早く!」
「あ〜。セチア? 怒るなよ? 俺、なんともないぞ」
「え?」
周囲から音が消えた。静かな夜だ。
「そ、そんなはずありません! だって、恋火は!」
「恋火にそんなことされたんですね。セチア」
イオンがそういうとセチアがしまったっという顔をする。
「そんなことありませんでしたよ? ねぇ? 恋火」
「は、はい! そんなことありませんでした!」
こらこら無理矢理言わせるなよ。そして魅了の効果を確かめて見た。まず決闘で確かめてみる。
結果、押し倒すことはしないが体が勝手に動いて、攻撃の邪魔をしてしまうみたいだな。地味に嫌な状態異常だな。
そしてルーナの舞踊、狐子の妖術と憑依も確認してみる。
まずルーナの舞踊はルーナが可愛く踊っていると俺たち全員の筋力が少し上がった。どうやら効果は弱いが全体にバフをかけるスキルみたい。普通に強いと思う。
狐子の妖術でリリーに変化する。恋火と同じ様に見えるがリリーの声でコーンとしか言えなくなっている。リリーが恥ずかしがっているので、解除する。
最後に憑依。狐子が俺の中に入る。すると俺の中から狐子の声が聞こえた。こんな感じなんだな。俺が抵抗せずにいると勝手に体が動く。狐子が動かしているということみたいだな。抵抗するとすぐにコントロールを奪えるのはスキルレベルのせいかな?
スキルの実験が終わり、俺が何かお願いがないかリリーたちに聞くとリリーたちの目が光る。まるでそれを待っていたと言わんばかりだ。
「一日一回は頭を撫でて! タクト!」
「私は一日一回の膝枕で…お昼寝を」
「では、私はキスで」
「「それはダメ!」」
「残念です…恋火は何かタクトさんにして貰いたいことはありますか?」
「え…えと…毎日、尻尾や髪の毛のブラッシングとか…して欲しいです」
え?尻尾をブラッシングしていいのか?喜んで俺はするぞ?
「「「それは反則!」」」
反則ってなんだよ。まぁ、そんな会話を楽しんでいた。強制ログアウトのインフォが来る。そして俺はみんなに言う。
「明日からしばらく遠出することになる。どんな敵がいるかわからないがみんなで力を合わせて、冒険を楽しもう!」
『おぉ〜!』
こうして初イベント前の夜を終えた。気力も気合も十分。今からイベントが楽しみだ。
名前 狐子 野狐Lv5
生命力 21
魔力 34
筋力 32
防御力 12
俊敏性 30
器用値 22
スキル
噛みつきLv5 気配察知Lv5 火魔法Lv4 夜目Lv5 狐火Lv5
妖術Lv1→Lv2 幻術Lv3 憑依Lv1→Lv2
名前 ルーナ フェアリーLv1
生命力 20
魔力 35
筋力 15
防御力 20
俊敏性 30
器用値 22
スキル
飛行Lv1 竪琴Lv1 舞踊Lv1→Lv2 魅了鱗粉Lv1→Lv2 風魔法Lv1 木魔法Lv1 幻術Lv1