#131 海蛇と初の合成召喚
狩りの場所に選んだのは街道。メンバーは恋火、コノハ、リキュール、セグロ、モンシロだ。
せっかくだからお肉狙いでチャビーラビット。イベントには持ち込めないがお肉はいくらあってもいいからな。
街道に向かうわけだが、俺は白馬に恋火と2人乗りしている。ここまではいい。だが、首に蛇を巻き、頭には芋虫という謎スタイルだ。コノハは恋火の頭の上に乗っている。
肩にモンシロがいるとセグロの邪魔になるし、恋火にモンシロを預けることは俺には出来なかった。結果このスタイルが完成したわけだ。
当然周りから笑われながら、街道に着く。
さて、さっきまでのストレス発散といくか。
俺がそう思っていると相手はチャビーラビットとグレーウルフの編成だった。
俺はリキュールで距離を稼ぎながら、恋火が炎魔法と狐火で攻撃する。コノハも上空から氷魔法で援護してくれている。
チャビーラビットだけならなんとかなるはずだが相手には大量のグレーウルフがいる。グレーウルフの賢さはグレイが証明している。
リキュールの進行方向を予想して、横から襲い掛かって来る。前に立たないのは流石だな。前にいるとリキュールの角撃の餌食だからな。狙うならやはり横になるだろう。
こうなると俺は迎撃に回ったほうがいい。恋火のガラスの剣だと迎撃には不向きだ。リーチがある杖のほうがいいだろう。
するとモンシロが糸を吐き出す。だが、グレーウルフたちに降り注がれるだけで特に効果が…いや、グレーウルフが鬱陶しそうに首を振るが降り注いだ糸は体にくっつき離れない。
それが続くとグレーウルフたちは繭になり、動きを制限される。糸にはこんな使い方もあるのか…勉強になるな。動けなくなったら、ウルフは終わりだ。恋火とコノハの魔法攻撃で全滅する。
だがチャビーラビットも黙ってない。高度を低くしていたコノハを狙い、転がってくる。
コノハがそれを見て逃げ出すと、チャビーラビットは地面にまかれた糸を巻き上げ、瞬く間に繭玉になり、動きが止まる。
コノハの奴、完全に誘ったな。ちょっとドジで微笑ましい。
チャビーラビットも無事に撃破。解体してお肉をゲット。そして、数が多かったので、一回で進化に到達した。
良かった…もう一回戦闘していたら、時間オーバーだった。
最初はモンシロからだ。進化先はバタフライのみ。一度出会っているが説明を見てみよう。
バタフライ
鱗粉を撒き散らしながら空を飛ぶ蝶。鱗粉には魅了の効果がある。
うん。それ知ってる。では進化だ。
名前 モンシロ グリーンキャタピラーLv8→バタフライLv1
生命力 8→15
魔力 17→25
筋力 6→12
防御力 15→18
俊敏性 5→20
器用値 12→20
スキル
飛行Lv1 魅了鱗粉Lv1 風魔法Lv1
進化したモンシロは以前見たバタフライと同じ姿だな。
次はセグロ、進化先はシースネーク。果たして狙い通り、真っ黒か。進化だ!
名前 セグロ スネークLv8→シースネークLv1
生命力 30→35
魔力 5→12
筋力 18→23
防御力 10→12
俊敏性 13→18
器用値 13→18
スキル
噛みつきLv1 巻き付きLv1 毒Lv1 熱探知Lv1 水中行動Lv1
進化したセグロの姿は青と黒のカラフルの海蛇だった。惜しい!これならセーフかな?
進化が終わったので、リターンで戻り、急いで獣魔ギルドに向かう。
用件を伝える。その時にふと気付いた。月夢とモンシロを合成したら、自我とかどうなるんだろう?
俺は合成召喚のことばかり考えてきた。それは本当にいい行為なんだろうか?
ネフィさんが来る。
「お待たせしました。合成召喚ですね」
「すみません。その前に聞きたい事があるんですが、いいですか?」
「いいですよ。部屋を移すとしましょう」
「はい」
俺は悪魔の話をした部屋に通される。リリーたちは別の部屋で待機することになった。俺が聞きたいことをネフィさんが察してくれたみたいだ。
「では、話してください」
「はい。率直に聞きます。合成召喚をした場合、召喚獣の自我はどうなるんですか?」
「ベースとなる召喚獣の自我が残り、素材になった召喚獣の自我をベースになった召喚獣が受け継ぐことになります」
受け継ぐのか…とはいえ合成召喚はつまり合成した召喚獣を殺す行為だ。それを召喚獣の意思を無視して良いのか?良いはずがない。
思い返してみれば俺はずっと冒険のことばかり考えて、リリーたちとゆっくり話し合ったこともなかった…合成召喚をする前にリリーたちに謝って、色々話さないといけないな。
「すみません、ちょっと召喚獣たちと話し合ってきます」
「わかりました」
俺はリリーたちを連れて、再びシーク街道に向かう。決闘システムでモンスターを来ないようして、レギオン召喚を実行する。いつもと違う俺の様子にリリーたちは困惑しているみたいだ。
「どうかしたの? タクト?」
「あぁ。まず俺は色々皆に謝らないといけない。ごめん」
俺は皆に頭を下げる。するとリリーたちが驚く。
「えぇ!?」
「タクトさん!?」
「あ、頭を上げてください!」
「ど…どうしたん…ですか?」
俺は言葉を続ける。
「まず今まで俺は冒険を優先して、みんなとゆっくり話し合ったことがなかった。俺のミスだ。だから」
「私たちとゆっくり話し合う場を用意したというわけですね」
セチアが俺の言葉を奪う。それを聞いたイオンとリリーが続ける
「それなら謝らないでください」
「そうだよ! タクト! リリーたちは嬉しいよ? ね? みんな!」
リリーが皆に聞くと皆頷く。そう言って貰えるか、でも次の一件は許されることじゃない。
俺は合成召喚のことをみんなに隠すことなく、伝えた。そして俺が合成召喚の為に召喚した召喚獣たちに謝る。
「俺は強い召喚獣を欲しいが為にみんなを召喚した…皆が合成召喚でどうなるか考えもせずに…謝っても謝れることじゃない…俺に出来るのはみんなの意見を尊重することだ。合成召喚されたくないなら遠慮なく言ってくれ」
俺がそう言うと全員がキョロキョロする。そして何か話しあったり、している。後はみんなが決めることーー
「どーん!」
するとリリーが俺に飛び込んでくる。完全に不意討ちで俺はリリーと地面に倒れる。俺がリリーを抱えて起き上がる。
「急にしたら、危な」
「リリーたちはタクトのこと、大好きだよ!」
…いきなり告白された。
「タクトがリリーたちのためにどれだけ苦労しているか、みんな知ってるよ?」
え?
「私たちはタクトさんの負担になってませんか?」
「ちょ、ちょっと待て。どういうことだ?」
話が全然見えない。俺の負担になっている?そんなはずないが…
「みんなで話していました。毎日料理を作ってくれたり、装備を揃えてくれたり、訓練をしてくれたり…私たちはタクト様の負担になっているじゃないかって」
「もし、そうなっているなら…言って欲しいです」
俺はリリーたちの言葉に絶句する…そんなことを考えていたのか…
俺はみんなを見渡して、嘘偽りない気持ちを言う。
「俺はみんなを負担に思ったことはないよ。寧ろ凄い助かっている。料理も装備も訓練も俺が好きだからやってることだよ。みんなと冒険するのが凄い楽しいからさ」
俺の言葉にみんなが叫ぶ。リリーたちが抱き付いてくる。
「えへへ~。リリーたちも一緒だよ! タクト!」
「はい! タクトさんと冒険するの凄く楽しいです!」
「だからこそ、私たちは強くなりたいと思います!」
「タクトお兄ちゃんの役に立ちたい…強くなりたい…もっと一緒に冒険したい…そう思います!」
これがみんなの意思なのかな?
俺は月夢、モンシロに改めて聞く。
「月夢、モンシロ…たぶん二人で合成召喚をすることになると思う。二人との付き合いは本当に短い…嫌なら言ってくれ」
俺がそう言うと二人に動きがない。気持ちは決まったみたいだな。改めて獣魔ギルドに向い、ネフィさんを呼ぶ。
「お待ちしてました。それでは行きましょうか」
「はい」
月夢とモンシロの魔石をセットし、合成召喚を実行する。どうだ?
『スピリットとバタフライで合成召喚が可能です。実行しますか?』
やはりか…実行する前に二人を召喚する。
「今から二人を合成召喚する。その前に二人に伝えたい。短い間だったけど、俺たちの仲間になってくれてありがとう。俺は二人のことを絶対に忘れない。約束するよ」
俺がそう言うと二人は上下に動き、二人は見つめ合う。それはまるで自分の意思を相手に託しているようだった。
終わったみたいなので魔石に戻して、合成召喚を実行する。
「ふぅ~。合成召喚!」
月夢とモンシロの魔石がそれぞれ魔方陣に吸い込まれ、2つの魔方陣が重なり、新たな魔方陣を出来上がり、魔方陣が輝く。
そして、召喚されたのは蝶の羽を持つ手のひらサイズの緑髪の女の子だった。そしてインフォが流れる。
『合成召喚により、フェアリーの召喚に成功しました』
『全プレイヤーの中で初めて合成召喚に成功しました。称号『合成召喚の開拓者』を獲得しました』
称号まで手に入ったか。確認してみる。
称号『合成召喚の開拓者』
効果:スキルポイント+5
全プレイヤーの中で初めて合成召喚に成功した者に与えられる称号。
ということは俺は現在のポイントを確認すると16ptになっていた。
インフォでもあったが彼女は伝説で有名なフェアリーそのものだった。フェアリーは俺の周りを飛び回り、俺が手のひらを差し出すと手のひらに着地する。すると俺の手のひらでくるりと回り、お辞儀する。
あえて言おう。めっちゃ可愛い。
それからこちらをじっと見つめる。どうやらリリーたちみたいに喋れないみたいだが、名前をご所望なのはわかった。
名前は考えてあるんだが、大丈夫かな? 同じ名前を選んでもいいみたいだが、月夢とモンシロのことがある。考えていた通りに決めた!
名前 ルーナ フェアリーLv1
生命力 20
魔力 35
筋力 15
防御力 20
俊敏性 30
器用値 22
スキル
飛行Lv1 竪琴Lv1 舞踊Lv1 魅了鱗粉Lv1 風魔法Lv1 木魔法Lv1 幻術Lv1
これで俺が召喚出来る召喚獣の数は7体となった。
ローマ神話の月の女神と同じだがもし名前を使うならルナと予想してルーナにした。月は明るい時には白い月として見える。だからこそ月に関する名前をつけてみた。
それにしても初めて見るスキルがある。まず竪琴。ハープと言ったほうがいいかも知れない。恐らく武器だと思うがフェアリー用に作らないとダメだろうな。
そして舞踊。ダンスのことだと思うが、どんな効果になるかわからない。
俺が名付けると飛び回り、俺の肩の上に座るルーナ。どうやらポジションを見つけたみたいだ。
「これからまたよろしくな。ルーナ」
俺がそういうとルーナは笑顔で頷く。こうして俺は初めての合成召喚を終わらせた。
名前 コノハ シロフクロウLv13→Lv14
生命力 36
魔力 40→42
筋力 23→24
防御力 22
俊敏性 28→29
器用値 40→42
スキル
奇襲Lv12 飛行Lv15→Lv16 鉤爪Lv8 夜目Lv10→Lv11 隠密Lv10 風魔法Lv10→Lv11
水魔法Lv9→Lv10 氷魔法Lv12→Lv14
名前 リキュール 一角馬Lv3→Lv4
生命力 24→26
魔力 2
筋力 24→26
防御力 17
俊敏性 39→41
器用値 34
スキル
角撃Lv4→Lv5 蹴り技Lv3 突進Lv4→Lv5 乗馬Lv6→Lv7 疾走Lv5→Lv6
タクトとリリーたちがお互いの気持ちをぶつけ合う回でした。
そして初の合成召喚はフェアリーでした。亜人種がゲット出来ない召喚師の救世主的存在です。
これで第2章の召喚獣は全て登場したことになります。
次回の更新で第2章が終わりとなります。