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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
アスタロト戦
1359/1718

#1275 地獄魔神アスタロト討伐戦、前編

プレイヤーたちが一斉になだれ込むとそこは予想通り玉座の間だった。ただし部屋中に髑髏(どくろ)が転がっているなんとも魔神らしい不気味な玉座だが髑髏のランプがあることから女の魔神らしいセンスを感じた。


「よくここまで辿り着けたわね。偉いわ」


ここでプレイヤーは初めてアスタロトを視認する。


地獄魔神アスタロト?

? ? ?


アスタロトの姿は一言で言うならリビナと燎刃を足した感じだ。真っ赤なドラゴンの尻尾に右手には白蛇がいる。髪の毛は真っ赤で頭からはデーモンの角に背中からは悪魔の羽がある。服装はロングのスカーレットドレスでネックレスやブレスレット、指輪などとにかく装飾品が多い魔神だった。


先手必勝で遠距離攻撃組がアスタロトに攻撃すると右手の白蛇が巨大化し、狙撃からアスタロトを守った。


「せっかちね」


これを見たみんなが警戒する。ガーンディーヴァの狙撃までガードされたら、警戒するのは当然だった。しかしここで白蛇の目が真っ赤に染まる。


「即死の魔眼だ! 視線を合わせるな!」


みんなが一斉に視界を閉ざす。


「魔神技。アシュトレトゲート」


地面に何かがたくさん落ちる音がした。下を見るとそこには色とりどりの宝石がばら撒かれていた。


「「「「逃げろー!」」」」


「宝石解放」


アスタロトの玉座の間から七色の光が発生すると大爆発を起こした。


「くそ…みんな、無事か?」


「やってくれる…あ」


帝さんの胸に赤いドラゴンの尻尾が突き刺さる。


「隙を見せちゃダメよ。ドラゴンクロー!」


帝さんの頭に直撃し、帝さんが死んでしまう。それを目撃した満月さんは大盾を構えて、下がる。帝さんも上位ギルドマスターだ。当然装備はオリハルコンの鎧などの最高品質の装備を揃えている。それなのに宝石解放と尾撃、ドラゴンクローで倒された。これは異常事態だった。


「そのネックレスの効果か…」


「よく見えたわね。偉いわ。デモンクラッシャー!」


「ぐは!?」


満月さんの盾と鎧をすり抜けて、ぶっ飛ばされる。防御無効と透過の能力だ。ここでメルたちが斬りかかるが電弧放電を浴びてしまう。そこに鉄心さんとカグヅチと月読の契約者の侍たちが斬りかかるが鉄心さんとカグヅチの契約者の侍ちゃんの斬撃は手で止められ、月読の契約者の侍さんの攻撃は尻尾で止められた。


「そんな攻撃が私に通用すると思っているのかしら?」


「せぇあああああ!」


レイジさんが突っ込むと鉄心さんは蹴り飛ばされて、月読の契約者の侍さんは尻尾で吹っ飛ばされるとカグヅチの契約者の侍ちゃんは蛇に噛まれると振り回されて、レイジさんにぶつけれる。


その攻撃を見て、リサが接近戦を挑むが拳が止められ、ドラゴンテイルで吹っ飛ばされる。それを見たトリスタンさんや与一さん、シリウスさんたちが狙撃するが銃弾がアスタロトに届く前に溶けてしまう。融解スキルだな。


「もう終わりかしら? だったら、外で待っている召喚師君を作れて来てちょうだい」


「タクト君のこと?」


「そうよ。あの子のことはフリーティアにゾンビたちをけしかける前から私が目を付けていた大切な果実なの。ネビロスから報告を受けてからずっとね。だから戦える日を楽しみにしていたのよ。それなのに私のところに来ないなんて許せないでしょ?」


この時、初めてアスタロトが相当俺におアツだったことが判明した。ネビロスからの報告でゾンビイベントの前ってことはネビロスと初めて出会った教会での戦闘から俺に目を付けていたんだな。流石にそんな前からずっと見られていた事と思うとゾッとします。


そしてこれを聞いて、黙っていられない人たちがいる。


「そっか…フラれちゃったんだね。ドンマイ」


メルさん、俺は告白されたわけじゃないですよ。後、真顔で言わないで下さい。周りの男性プレイヤーたちが引いてます。そして瓦礫からリサが飛び出す。


「兄ちゃんが目当てなら絶対に負けられない!」


「シフォン、あなたも何か言ったら」


「何? ミランダちゃん」


「あ…なんでもないわ」


怒りに震えるシフォンに気が付いて、ミランダは何も言えなかった。そしてメルたちとは別の理由で許せない人たちもいる。


「俺たちのことは眼中に無しかよ。上等だぜ」


「わざわざフリーティアにゾンビを差し向けた黒幕だと白状してくれるとはな。あの時に死んでしまった罪なき市民たちの命の分は返させて貰うぞ。魔神アスタロト!」


プレイヤーたちはアスタロトに弱者認定されたことで当然怒る。そしてフリーティアにゾンビを送ったのがアスタロトの指示であることも判明したので、当然王女としてサラ姫様はアスタロトを許す訳にはいかない。


「最初に謝罪があれば考えるとクロウ・クルワッハ様は言っていましたがこれを聞いたなら敵対は正しかったと思われるでしょう…やりますよ。ヴァイン」


「こちらも指輪泥棒の件に謝罪なしとはな…これで思う存分、戦えるという物だ」


「ずっとお前たちの支配に苦しんで来た…それについても謝罪しないなんて絶対に許せない! 今日ここでお前を倒して、俺たちは平和を手に入れてやる!」


ドラゴニュートとダークエルフ、エステルの戦士たちもアスタロトの態度に怒りが沸いたようだ。それを見たアスタロトはほくそ笑む。


「謝罪? そんなこと魔王がするわけないでしょ? この世は力こそが全て。力あるの者が全てを支配し、力なきものは支配される。人間の世界でもそうじゃないかしら?」


これについては誰も言い返せない。このゲームの国は何処でも君主制が採用されている。王が国を管理しているのだ。それを見方を変えれば支配ということになるのかもしれない。


そして現実世界を知っているプレイヤーたちも何も言い返せない。結局国民は政治家が決めたルールに従うしかないのが実情だ。デモをすれば話が通るケースもあるが逮捕や武力行使をされる世界のニュースも見ているからこそ俺たちも何も言えない。だがここで鉄心さんが言う。


「確かにそうかも知れないが我々の世界はお前たちの世界よりずっとマシだと思っているよ」


「凄いわね。あなた。人間同士で殺し合い、星を破壊する世界が私の世界よりマシと言えるなんて素晴らしいわ。いつから人間はそこまで偉くなったのかしらね?」


「それは悪い所ばかり見ているからそう見えるだけさ。難民を助け、木を植えて、ゴミ拾いをする人たちもいるんだよ」


「それは自分たちを美化しすぎよ。まぁ、この話は平行線ね。そんなことより私の要求に従うのかしら?」


「「「「断る!」」」」


これだけは全員の意見が一致する。武器を構えるプレイヤーたちを見て、アスタロトは笑みをうかべる。


「そう…それなら全滅させて、引っ張りだすとしましょうか」


アスタロトと魔王同盟が激突する。みんなはアスタロトの竜鱗装甲と接近戦に大苦戦を強いられる。戦闘センスが今までの悪魔たちより別格だった。連続で襲い掛かっても各個に対処されたことで集団で挑むと白蛇からの麻痺毒の毒霧が放たれ、突っ込んだ全員が麻痺になる。


ここで援護の狙撃が来るがこれに対しては左手に茨の鞭を装備して銃弾や弓矢を撃ち落として来た。


「爆心の鞭ね…」


「ふふ。それだけじゃないわよ。植物召喚! ゲヘナバルブ!」


アスタロトが鞭で地面を叩くと球根に口がある植物がたくさん召喚される。そいつらはスーパーボールのように地面を跳ねながらプレイヤーたちに寄って来る。


「何かあるぞ…気を付けろ」


「俺、攻撃行きます!」


「…いいんだな?」


「はい! 行かせてください!」


一人の英雄のプレイヤーがゲヘナバルブに斬りかかると一刀両断するとすぐさま警戒して盾を構える。しかしこれでゲヘナバルブは消えてしまう。拍子抜けしようとした時だった。地面から茨の蔓が出現して、プレイヤーの両足を拘束するとプレイヤーは地面に吸い込まれて、死んでしまう。


「道連れスキル持ちの植物か!」


「正解よ。ふふ…まだ行くわよ。植物召喚! ヴァンピールローズ!」


新たに巨大なバラの花が部屋の中央に咲く。これは名前からプレイヤーたちも能力を察した。ヴァンピールは吸血鬼であることからヴァンピールローズは吸血植物であると予想する。ただその吸血能力が厄介だった。


「ぐ!? 下から!?」


棘の代わりに注射器の針を持つ蔓が地面から現れて、吸血して来た。プレイヤーの中には縛られて、身体中に注射器の針が刺さると言う考えたくない目に合うプレイヤーもいた。


「あんな植物、燃やせばいいんだろ!」


「待て! アーレイ! ここで攻撃するとゲヘナバルブに当たるぞ!」


ヴァンピールローズの前にはこちらに向かってくるゲヘナバルブがいた。これじゃあ、下手に攻撃できない。


「それならスナイプショット!」


「早まるな!」


「え?」


与一さんが止めるが遅かった。ヴァンピールローズを狙った狙撃にゲヘナバルブが反応し、自ら狙撃の銃弾を受けて、倒されると道連れスキルが発動する。


「自動防御…」


「それなら距離を詰めて直接叩く!」


暁が飛び出し、ヴァンピールローズたちの隙間を通り抜けようとすると反応したヴァンピールローズが暁に体当たりして、吹っ飛ばすと噛みついて来た。それを銀が助けるが銀に道連れスキルが発動する。


「そんな…」


「変わり身の術!」


「え…」


「脱出成功! どやぁ」


あっさり道連れスキルを回避した銀を涙目で無言で殴る暁の姿があった。自分のミスで銀が死んでしまったと思ってからのあっさりの生還からのドヤ顔のせいで暁の心情をかなり複雑だと思われる。


「なるほど。身代わりや変わり身の術で道連れスキルは回避可能なのか」


「それなら拙者の出番でござる! 忍法! 火遁の術!」


無人島の時とは違う前面を燃やすほどの炎が火影さんの口から放たれて、植物たちは一斉に燃えて火影さんは変わり身の術で道連れスキルを回避する。しかしそこにアスタロトの手から放たれた死滅光線が火影さんを撃ち抜いた。


「教えてくれたなら当然そこを狙うわ。その技、連発は出来ないでしょ?」


「よくも!」


「落ち着け。水影。他のみんなも死んだとしてもアイテムで蘇生は可能だ。感情的にならずに…っ!」


アスタロトのドラゴンクローが土影さんに放たれるが手甲で止めた。


「五月蠅いわよ。あなた。ドラゴンテイル!」


「くぅううう! ふ…甘いな。俺は土影。忍者の中でもステータスを防御に振った忍だ。簡単にはやられんぞ」


吹っ飛ばされるが土影さんは耐えて見せた。普通の忍者ならまず即死だ。それを可能にしたのは

土影さんの忍者なのに防御と筋力にステータスを振った異色さと忍び装束の内に装備されたオリハルコンの鎖帷子くさりかたびらがなせる技だった。


火影さんたちは自分たちが目指す忍者ののイメージが最初から出来ていた人たちだ。それ故に他のプレイヤーたちの様にステータス操作がぶれることが無かった。俺のように最終的にはほぼ万能型になるんだけど、やっぱり自分のプレイスタイルを貫き通した方がこのゲームでは強いと俺は思う。


土影さんの挑発にアスタロトは鞭を振るうと土影さんの武器である分銅付きの鎖鎌で相殺する。その戦いに次々みんなが参戦して、激闘が繰り返される。


アスタロトの口からは冥ブレスや溶ブレスが放たれ、アスタロトの魔導書から死滅光線が放たれるなど、かなり強い。それでもみんなはぶっ飛ばされながらもアスタロトとの戦闘になれていく。


ここまでの戦闘でアスタロトは火、闇、雷、爆、木属性を使う魔神であることが判明した。火属性と爆属性は地獄の魔王から来ている能力だろう。俺の中では木属性は意外だが、調べてみるとアスタロトには豊穣神としての一面もあるらしい。雷属性はちょっと謎、ただし火山雷を使ったからその延長で使えるのかもしれない。闇は魔王だからだろうね。


ここまでの戦闘でみんなを苦しめたのは意外にも木属性だった。樹海支配で木が地面から生えて吹っ飛ばされる上に蔓に縛られて拘束から味方に叩きつけるなど集団戦において実に厄介な属性だと認識せざるを得ない状況だ。


それでもみんなは徐々にアスタロトにダメージを与えていく。みんなのレベルアップもそうだが、武器と防具のレベルアップの恩恵が凄い。特にアスタロトの攻撃を受けて、みんなが耐えられているのはオリハルコンの防具のお陰だ。そして遂にアスタロトが認める。


「あなたたちも随分強くなっていたのね…ふふ。いいわ。本気で遊んであげる」


アスタロトがそういうとアスタロトの周囲に水晶の髑髏が現れると死滅光線や口から炎ブレスを放って、襲い掛かって来た。リアンたちが持つ水晶装備と同じ能力を持つアイテムだな。


それを与一さんたちは撃ち抜くがすぐに復活する。


「魔神技。アシュトレトゲート」


アスタロトが最初に使った技の効果で天井の空間が歪み、そこから宝石が落ちて来る。それを見たみんなが破壊に動くがそこをアスタロトに読まれる。


「宝石解放」


「「「「な!?」」」」


また大爆発する。そしてアスタロトが言う。


「わざわざ地面に落ちるのを待つ必要なんてないわよ? 行きなさい。自爆」


倒れるみんなに水晶の髑髏が飛来すると閃光を放ち、自爆するとアスタロトの近くで水晶の髑髏が復活する。アスタロトは間違いなく強い。神との契約者や神石装備などを揃えたみんなを相手にして、ここまで戦えることがまず凄いんだよな。


しかしこれで諦めるみんなじゃなかった。みんなが一斉にアスタロトに襲い掛かり、アスタロトを押していく。水晶の髑髏を狙撃班が復活した瞬間、撃ち抜くことで攻撃も自爆も阻止していた。


何よりアスタロトと戦っている間に各上位プレイヤーたちの連携がどんどん上手くなっていった。これだけの人数差で人間サイズの魔神にここまで押されることはなかったからね。連携が上手くなるのは当然だ。


「おりゃりゃりゃ! そこ! コークスクリューブロー!」


リサとアスタロトの殴り合いを遂にリサは制して、アスタロトの心臓にコークスクリューブローを炸裂させる。この瞬間、アスタロトが動きを止める。


「聖剣解放! はぁあああああ!」


「く!?」


「これで終わり! 荷電球!」


メルとリサのコンビネーション攻撃がアスタロトに炸裂するとアスタロトは倒れる。しかしその瞬間、赤褐色のオーラを滾らせる。


「いいわ。ここからは本気で戦ってあげる。魔神化」


アスタロトが巨大化し、城が崩壊する。いよいよここからがアスタロトとの本当の勝負の始まりだった。

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動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
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