#1269 アリナのレイピア
今日は目覚めは案外悪くなかった。みんなに秘密の暴露をして、すっきりしたわけではないと思う。寧ろ俺に求められるのはこれからのリリーたちのケアだと思うからな。今日の夜はアスタロトとの決戦だ。午後のログインは準備に使う予定だったけど、準備しながらみんなの気持ちとか個別に聞こうと思う。
そんな状態でも目覚めが良かったのはノワのお陰だろう。本当に感謝しかない。
「んん~…さて、学校行くか」
そして朝、気持ちよく登校出来たのは俺の背中を押してくれたリースのお陰だ。もう秘密も俺の覚悟も全部リリーたちに話した。後はひたすら前に進むだけ。というわけで期末テストが終わり、もう冬休みを待つみんなの中で真面目に授業を受けました。
学校が終わり、スーパーで買い物してから帰宅する。そしてゲームにログインすると身体に密着している感触を覚えた。しかしベッドから顔はでていない。十中八九ノワだ。
「おーい。ノワ」
「…寒い。ちょっとでも隙間が開くとノワは死ぬ」
どれだけ寒さに弱いんだよ。まぁ、外を見ると雪が降っているんだけどさ。するとシルフィが入って来た。
「やっぱり起きていたんですね。タクト。ほら、ノワちゃん。タクトが起きたら、起きてくれる約束でしたよね?」
「…そんな約束していない。ノワはこのままにぃと永眠する」
おっかない事言うな…しかしシルフィはこの展開を予想していた。
「それでは仕方ありませんね…そーれ!」
シルフィは俺たちの布団を取り上げてしまった。
「「さむ!?」」
「はいはい。でしたら、速く着替えて温かい部屋に行きましょうね。ふふ」
上機嫌だな。シルフィ。理由を聞くと子供の頃に女王様からよく布団を取り上げられており、自分もしてみたかったらしい。
「…そんな理由で死にそうになったこっちの立場も理解して欲しい」
「だ、大丈夫ですよ。それぐらいでは死にません」
「…布団取り上げられた時にもそう思ってた?」
「それは…思ってました」
ノワの厳しい追及にシルフィが敗北した。本当に睡眠とかが絡んで来るとノワは無類の強さを発揮するな。軽くご飯を頂き、俺はホームでみんなの分の食事を作る。俺が作る初めての料理にみんな興味深々だ。
「ほい。完成」
「「「「美味しそう~!」」」」
俺が作ったのは本日の夕飯にも作る予定のグラタンです。リリーたちの為にソーセージなどを入れてみた。
「「「「んん~! おいひい~! おかわり!」」」」
「すぐ夕飯だからおかわりはなし」
「「「「がーん」」」」
いつもの平和な光景だ。そしてなんともうアリナの細剣とゴルゴーンの指輪が完成したらしいので、確認する。
フェンリルレイピア:レア度10 細剣 品質S+
重さ:40 耐久値:5000 攻撃力:5000
効果:神殺し、不死殺し、星間行動、神足通、荷重操作、重力支配、重力場、英気、万物切断、魔力切断、時空切断、金剛装甲、神速、超加速、魔素支配、多乱刃、魔素刃、光吸収、月光、魔霧、常闇、即死、冥波動、防御無効、耐性無効、加護無効、狂戦士化、逆鱗
アダマントとグラビティサイトの合金とフェンリルの牙から作られた細剣。神を殺す事に特化しており、その鋭い突きは上級の神でも殺す力を有する。アダマントとグラビティサイトが加わったことで更に突きの威力が増すように作られている。鍔にはドラゴンの装飾がされており、芸術品のような美しさが特徴的な細剣。
ゴルゴーンの指輪:レア度10 アクセサリー 品質S+
効果:土属性アップ(究)、神殺し、魔除け、重圧、石化の魔眼、石化光線、隕石、魔素解放、耐性無効、加護無効
刻印:無限のルーン
ゴルゴーンの魔眼とオリハルコンで作られた指輪。指輪を見せるだけで敵を石化される効果があり、また恐怖の波動でモンスターが寄り付かなくなる効果がある。
フェンリルレイピアは本当に美しいレイピアだった。これが二本完成していた。
「アリナにピッタリの武器なの! パンドラ、ありがとなの!」
「喜んでもらえてよかった。剣より簡単に作れたから、デザインに凝ってみた」
まぁ、剣と比べたら、刀身が細いから素材は少なめでいいんだろうけど、技術的にはどうなんだろうね?鍛冶のことはよく知らないから分かりません。
次にゴルゴーンの指輪だが、指輪でここまでたくさんの能力と解放スキルがあるのは俺が知る限りでは初登場だ。またとんでもないものを作ってしまったな。問題はこれを誰にさせるかだが、俺はリアンを指定した。
「私ですか!?」
「あぁ。ゴルゴーンの父親は海神ポルキュースらしい。ポセイドンとはいい関係では無さそうだが、無関係ってわけでもないだろ? 一応リアンは流星群を使えるし、土属性が使えるようになるのはいい事だと思う。ただ魔素解放だけは不安要素なんだが」
「そこは使わなければいいだけの話なので、全然大丈夫です!」
そんなわけでリアンに装備させることが決定するとリアンがお願いしてきた。
「あの…先輩。先輩から私の指につけて…痛い!? 痛いですよ! 皆さん!」
本当に仲がいいね。リリーたちも攻撃はしているけど、反対はしていないから俺はリアンの指にゴルゴーンの指輪を装備させた。
ここからは注文タイムだ。ここでヘーパイストスから嬉しい報告があった。
「杖の鍛冶の仕事は終わりましたので、新しい注文を受けれます」
それじゃあ、遠慮なく注文しよう。まずはユウェルとアラネア、リースでゴルゴネイオンメダルを使ったネックレスを注文した。
「チェーンを作って頂ければすぐに作れますよ」
「チェーンぐらいならすぐに作れるぞ! モーニングスターデスサイズの鎖と比べたら、全然余裕だからな」
どうやら三つのネックレスをすぐに作れるらしい。みんな技術が上がって来たなと最近自覚することが多いな。
次はパンドラに一つチャレンジして欲しい武器を注文した。
「鉄扇が分離して空を飛び回る武器?」
「あぁ…鉄扇が簡単にばらせるのは知っているか?」
「もちろん知っているよ! 耐久値の回復とか要を外してから一枚一枚修復するんだよね?」
「そうだ」
要は扇を固定している部位の名前だ。丁度扇を持つところにある。鉄扇のメンテ方法はパンドラの言う通りの方法で行われる。ヘーパイストスの修復をよく見て、勉強している証拠だ。えらいね。
俺が狙っているのは鉄扇のパーツ一つ一つがイクスのフライヤーのように動いて攻撃する武器だ。
「お~! なんかかっこよさそうだぞ!」
「でも、作れるかな?」
「作れるよ。パンドラ。素材はタクトさんが話している感じだとアダマントとダマスカス鋼の合金が良さそうですね。これで鉄扇としての近接戦と防御能力は確保できると思います。後は浮遊能力で浮遊石を使うので、ちょっとずるですがサイクロプス三兄弟の力を借りた方がいいと思います」
「あれ? 宝玉は使えないか?」
俺の疑問にヘーパイストスは即答する。
「鉄扇の構造上、無理ですね。鉄扇に完全に埋め込む方法もありますが広げて、攻撃をガードする武器ですから宝玉に攻撃が直撃する形になるので、防御面が弱くなります。宝玉を完全に隠すとなると鉄扇自体がかなり大きくなるので、今度は攻撃面にも影響が出ると思います」
「なるほど。確かに無理だな」
自分の脳内イメージでは行けるつもりでいたけど、問題点を言われると納得してしまう。浪漫武器を作るのは大変だ。というわけでヘーパイストスの案でパンドラに頼むことにした。
そしてヘーパイストスにはアテナの神石と聖骸布を使ったブランの槍を注文する。この槍の作成には伊雪が協力することになった。
ここからはそれぞれが夜の決戦に向けて準備する。俺は作業中の和狐に作業を中断して貰って、新たな式神の契約の話をした。
「うーん…誰がいいんでしょうか?」
「天魔雄神も天逆毎もガンガン前で戦闘する攻撃タイプの式神だからな。和狐の戦闘スタイルを考えると護衛用の式神を召喚しておくのはいいと思う」
「とするとぬりかべはんでしょうか?」
「それもありだが、もう一人護衛役が務まりそうな奴がいるだろ? 何せ伏見稲荷大社を守っていたんだからさ」
俺の一言で和狐が俺の狙いに気が付く。
「タクトはん…もしかして白蔵主はんとの契約を狙ってはります?」
「はります。二人の訓練やアドバイスも貰えそうだし、結構いい選択肢だと思うぞ? もちろん和狐が他に契約したいのがいるなら俺は尊重するよ。移動役で神鹿とか全然ありだと思う」
「うちの真似しなくていいどす…とにかく呼び出してから判断させてください」
そんなわけで和狐は契約の為に白蔵主を呼び出した。
「あの時の狐の巫女か…まさか式神契約で呼ばれるとは思わなかったぞ」
「うちも考えてまへんでした」
「なるほど…では、そこにいる召喚師の入れ知恵か」
「はい。式神召喚の契約で呼び出せたってことは契約可能ってことですよね?」
もう式神召喚の一覧で分かっている事を敢えて言う。すると白蔵主が俺の質問に答えてくれる。
「もちろん可能じゃ。ただそこの狐の巫女は迷っているようじゃな? あの時の事はあの時のことじゃ。稲荷様とわしの関係や試練のことなどで色々悩んでいるようじゃが、全て式神契約とは関係のない話よ。わしが求めるのはお主らがわしを必要としておるのかおらんかだけじゃ」
おぉ…流石の白蔵主だな。これを聞いた和狐は決意する。
「必要としております」
「では、契約成立じゃな」
ここでインフォが来る。
『和狐が白蔵主と式神の契約の結びました。式神【白蔵主】を取得しました』
また心強い仲間が増えたよ。
「はい! これからよろしくお願いします!」
「任せておけ。後、わしに簡単に心を読まれるようではまだまだじゃ。通常時にも気を使うように修行するようにな」
「はう!?」
和狐がショックな顔をしていると白蔵主は式神の紙に消えた。
「注意されちゃいました…」
「まぁ、白蔵主も自分が求められていることを理解した上で言ったんだと思うぞ」
「そうでしょうか? 素のような気がします」
和狐の指摘に俺は何も返せませんでした。ここからは護符と霊符を作製するのだが、ここで俺は昨日の事を聞いてみた。他のみんなにも個別で聞いてみたけど、回答は同じだった。
俺と一緒にいられなくなるのは寂しいし、消えたくない。俺がリリーたちのために頑張ってくれるならリリーたちは全力で俺を助けると言ってくれた。みんなの目からしっかりとした決意を感じられた。これならもう大丈夫だ。
生産作業も終わらせたところでユウェルたちが
ゴルゴネイオンネックレス:レア度10 アクセサリー 品質S+
効果:土属性アップ(究)、神殺し、魔除け、重圧、石化の魔眼、石化光線、隕石、魔素解放、耐性無効、加護無効
刻印:無限のルーン
ゴルゴネイオンメダルとオリハルコンのチェーンで作られたネックレス。ゴルゴネイオンメダルを見せるだけで敵を石化される効果があり、また恐怖の波動でモンスターが寄り付かなくなる効果がある。
これが三つもある。セフォネ、アリナ、ルーナに上げる事にした。ちゃんと俺が首にかけてあげました。最後に今日の聖杯を使う。俺が選んだのは神剣イガリマだ。
神剣イガリマ:レア度10 大剣 品質S+
重さ:400 耐久値:8000 攻撃力:7500
効果:神気、神障壁、多重障壁、万物破壊、魔力切断、自動修復、戦闘高揚、肉体活性、大地壁、大地支配、荷重支配、重力支配、遮断結界、地割れ、神撃、神威解放、全属性耐性、状態異常無効、勝利の加護、神の加護
戦神ザババが持つ大剣のうちの一本。ザババの都市神としての力が宿った大剣で守りに特化している。王の遠征を守護する力も有しており、あらゆる状態異常を無効化することが出来る神の大剣。
こんな剣をギルガメシュが使うってどう思います?反則ですよね。この剣は守りが弱い月輝夜に上げる事にした。それを見ていたユウェルがこの世の終わりのような顔をする。
「ユウェルには明日、シュルシャガナを出してあげるから」
「やったぞ!」
「あれ? リリーじゃないの?」
「違うみたいですよ。残念でしたね。リリー」
「タクト! イオンちゃんが虐めて来る!」
当たり前に自分が貰えると思っているリリーにも悪い所があるので、イオンは怒れません。まぁ、リリーに守り特化のイガリマを与える選択肢は確かにあったんだけどね。リリーは回復もこなせるから状態異常無効で回復が安定するなら十分にありだと思う。シュルシャガナはリリーの突撃癖と大振り攻撃癖が悪化しそうだから、考えから外していました。
ここで俺は夜の決戦に向けて早めにログアウトすることにした。今日寝るのはエンゲージリングを贈ったリースだ。一緒にベッドに入ると俺はまずお礼を言う事にした。
「改めて俺の背中を押してくれて、ありがとな。リース」
「いえ、みんなが言っていたことなので、私は別に…あう」
「それでも自分で考えて、俺の背中を押すべきだと判断したんだろ? だからありがとうと言わせてくれ」
「…はい」
ここで俺はリースの頭にキスをして、ログアウトした。




