#1268 ギルガメシュ再戦
俺は旭光近衛を装備してギルガメシュと相対する。
「ほぅ…これはまた随分な武器を作製したな」
「はい。自慢の武器です」
「ふ…その武器を使いこなせるほどに成長したということか。どれほどの者になったか試させて貰うぞ」
お互いに武器を構えた瞬間、俺は奇襲を仕掛けた。しかしそれは完全に読まれており、攻撃されるが俺はそれを読んで攻撃せずに後ろに下がるとギルガメシュとの近接戦に挑む。
「剣のルーン! はぁあああああ!」
「はぁあああああ!」
激しい斬撃の応酬になる。俺はギルガメシュのパワーに負けてはいるが速さで上回り、的確にギルガメシュに攻撃を当てる。未来予知も万能ではない。相手の全ての攻撃を見通す事が出来たとしてもその攻撃に対応出来る能力が無ければ宝の持ち腐れとなる。
ギルガメシュはそういう意味では本当に未来予知とステータスと能力がマッチしていると言えるがパワータイプで使う武器が土属性と炎属性ならやはりスピード面がどうしても落ちる。とにかくギルガメシュがどうしても避けられない攻撃を繰り出して、攻め立てるのが俺の作戦だ。
俺の作戦はもうギルガメシュは気付いているがギルガメシュは俺との接近戦を継続している。というかここで下がっても俺に隙を見せるだけだし、大技で俺を下がらせる方法を取ると俺のカウンターが炸裂する。
それを理解しているからこそこの接近戦で一先ず制することを優先しているようだ。俺の斬撃にわざわざ合わせてきているのがその証拠と言える。流石に直接ぶつかり合うと俺は後ろに吹っ飛ばされてしまう訳だが、すぐに距離を詰める。
「成長したな…戦友よ」
「お褒めに預かり、光栄です。ギルガメシュ王」
鍔迫り合いの状態でお互いに太陽の光を放つ。
「「烈日!」」
お互いの至近距離での烈日からお互いに目を閉じた状態で激しい斬撃の応酬となる。ギルガメシュ王は未来予知。俺は気配のみで戦闘した結果、俺は吹っ飛ばされる。それを見たギルガメシュは前に出るが俺の構えを見て、追撃を止めて、武器を構え直す。
パワータイプの弱点はスピードとカウンターだ。それをギルガメシュはよく理解して、戦闘している。本当にこれだけの強さを持っているのに冷静な判断出来るのが凄い。未来予知の影響が大きいんだろうけど、強ければ強いほど人は調子に乗ってしまうものだ。それを制御しているのが本当に凄い。
「認めねばなるまい…お前の武器と速さ、技量は我に通用する。故に! 全力で戦うに値する! 神威解放!」
あの手も足も出なかったギルガメシュにここまで言わせるほどに成長したことを実感する。誇らしさがこみ上げて来るが今は戦闘中であり、ギルガメシュが本気を見せるなら俺もそれに答えないといけない。
「旭光近衛! 神威解放!」
旭光近衛から蒼雷が発生し、俺の周囲と旭光近衛に青白い光と雲が発生する。
旭光近衛(神威解放):レア度10 刀 品質S+
重さ:150 耐久値:12000 攻撃力:10000
効果:神刀技【雲蒸竜変】、神殺し、竜殺し、不死殺し、破魔、万物切断、時空切断、魔力切断、溶断、万物吸収、英気、神気、超集束、電磁場、超電磁、電子分解、溶接、電弧放電、雷光刃、黒雷、雷雨、天雨、大嵐、雲海、雷光、光速激突、雷轟、荷電光線、日光、浄炎、空振、多乱刃、旋風刃、天候支配、海流支配、電磁支配、重圧、烈日、後光、陽光、神速、全滑走、超加速、大瀑布、大海波動、神波動、蘇生、復活、光化、雷化、耐性無効、加護無効、物理無効、神刀解放、次元震、帰還、覇撃、神撃、奇跡、太陽の加護、破壊神の加護、スサノオの加護
刻印効果:無限のルーン、瞬間回復、魔力超回復
青生生魂と緋緋色金の合金にスサノオの力が宿った本来なら存在することすらない創造神すら想定していない刀。その輝きは闇を払い、その刃は斬ったあらゆる物を吸収し、持ち主に力を与える。
俺が応えたことにギルガメシュは笑みを浮かべて俺たちは全力のスキルで激突する。お互いにぶつかり合うとその度に稲妻と炎がぶつかり合う。
「おぉおおおおお!」
「ははははは!」
俺たちの激しい斬撃とスキルの応酬になるが勝負が付かない。ここでギルガメシュが先に仕掛けて来た。
「英雄技! カ・ディミラ!」
空間から黄金の短剣が放たれる。
「霹靂閃電!」
飛んで来る黄金の短剣を弾いて、俺はギルガメシュに接近して斬撃を放つが止められる。ここで背後から冷たい気配を感じて、雷化で回避すると背後から黄金の短剣が飛来して来ていた。カ・ディミラで現れた短剣は念動力で操作可能なのか。危なかった。わざと今までの戦いで見せなかったな。どこまで未来を見ているのか読めないのが怖い。
しかし雷化を使った以上、俺は攻めるしかない。当然といえば当然だが、ギルガメシュは雷化状態の俺の攻撃にも対応し、俺の雷化が切れたところを狙ってくる。
「英雄技! エンキドゥ・ニヌルタ!」
「光化!」
俺はエンキドゥ・ニヌルタの封印空間から光化で離脱すると共にギルガメシュの背後から斬りかかるが止められる。
「いい判断だ。しかし次は避けられるか?」
「速さが取り柄なので何度でも避けて見せます」
「いい覚悟だ。神鎖!」
鎖スキルも持っていたのか。俺はギルガメシュから放たれて、神鎖に対応しようとするが俺の背後に神鎖が放たれたことで下がりきることが出来ず、対応しようとすると旭光近衛の刀身に鎖が巻き付かれてしまった。そして身体も拘束される。
「終わりだ。神剣技! ニンギルス・ラハット!」
「く…」
俺はニンギルス・ラハットを受けて、鎖はひき千切られて地面で大爆発に包まれる。
「ほぅ…筋力や速さ、技量だけでなく、生命力と防御力も増していたか…それと熱無効で威力を大幅に軽減したな」
俺はぎりぎり生きていた。ギルガメシュの言う通りで炎の攻撃だったから助かったみたいだけど、斬撃は斬撃。そのダメージは受けてしまった。
「はぁ…はぁ…ふぅ~。いくぜ。旭光近衛」
大爆発で炎に包まれた周囲が俺から発生する風を受けて、炎が空に巻き上がるとその火炎の中から蒼雷を発生させている八つ首の白い雲の竜が旭光近衛から現れる。
それを見たギルガメシュは受けるのはでなく、受けて立つ方を選択し、神剣シュルシャガナを構える。
「神刀技! 雲蒸竜変!」
「神剣技! ニンギルス・ラハット!」
戦神の火炎旋風と英雄神の八岐大蛇が激突する。
「「おぉおおおおお!」」
両者の必殺技は拮抗し、空で大爆発する。その中を俺は迷わず突っ込み、ギルガメシュとの接近戦を挑む。それを読んでいたギルガメシュは神剣イガリマで迎撃している。
「奥義…勇往邁進!」
速さのルーンで俺の斬撃のコースが変化し、最初の攻撃に合わせようとした神剣イガリマの斬撃は空振りに終わり、俺はギルガメシュの胴を斬り裂いた。
「ぬぅ! 巨大化!」
巨大化した神剣シュルシャガナが俺に迫るが心眼で回避する。追撃程度ではギルガメシュクラスは止めれないか。一気に畳みかける絶好のチャンスを潰された。雷化とか使わされたのがきつかったな。しかし確かな収穫はあった。それをギルガメシュが認める。
「我がスキルでも見通せぬ攻撃を繰り出すとはやるではないか」
こんなリアルな戦闘をしていると現実に戦っている気分になるがこれはゲームだ。全てのスキルは運営が設定しているので、その枠組みからスキルが外れる事はない。つまり俺が発見した勇往邁進の速さのルーンコンボは運営が想定していない動きであり、それを運営が設定したギルガメシュの未来予知スキルが把握できないのは当然の事だった。
これは一種の賭けだったんだけどね。あの爺さんにも通用した技だからもしかしたらとんでもない発見をしたんじゃないかとは思っていたがどうやらその予感は当たっていたらしい。ごめんね。運営さん。みんなに話しちゃったよ。
「ここまで見事な一撃を貰うとはな…褒美を与えねばなるまい」
そう言うとギルガメシュは胸部分が赤の黄金の鎧を装備する。その鎧から赤のマントがあり、頭には黄金の王冠が装備された。その姿はまさに王であった。ここで防具を装備するとはどうなっているんだよ。
「王としての我の本来の姿をおがましてやる。そして我が持つ最強の武器で止めを刺してやろう」
え…神剣イガリマと神剣シュルシャガナを超える武器をお持ちなの?俺がドン引き状態になっているとギルガメシュは二つの剣を仕舞い、片手を天空に突き出す。すると天から真っ赤なオーラを放つ歪な形の剣が落ちてきて、ギルガメシュの手に収まる。
その剣を見た俺は嫌な記憶が脳裏に過る。かなり小型化しているが俺はあの剣を知っていた。
「『エデンの到達者』の称号を持っているならこの剣を知っているな?」
「やっぱりあの時に見た巨大な炎の剣ですか…」
「くく…その様子では痛い思いをしたようだな。この剣の名は神剣リットゥ。お主が契約した神と同じ英雄神マルドゥークが持つ剣だ」
ここにきて、主神クラスの武器を出さないでくれます?というかマルドゥークって剣を持っていたんだな。しかも話の感じだとケルビムがエデンに設置した剣と関係があるみたいだ。全然知らなかった。ただ俺にはどうしても疑問がある。
「そうなんですね…ところでどうしてギルガメシュ王がマルドゥーク神の剣を持っているんですか?」
「無論我が最古の英雄王だからだ。英雄神が最古の英雄王に何も与えないのは面目がないであろう?」
確かにそうかも知れないけど、滅茶苦茶な理屈だ。俺が知る限りギルガメシュとマルドゥーク神に関わりはないからな。マルドゥーク神がエアの息子でエンリルに代わって神々の指導者となり、世界と人間の創造主になったから無関係とはいえないのかも知れないけど、俺は納得していない。
「では、行くぞ!」
ギルガメシュが俺の目の前に現れる。さっきよりも滅茶苦茶速い。
「超回転!」
俺はなんとか神剣リットゥの斬撃を止めるが高速回転する神剣リットゥとぶつかり合ったことで火花が散り、弾き飛ばされる。
俺が旭光近衛を見ると耐久値が激減していた。武器破壊の神剣かよ。最悪だ。
「王撃!」
俺は直撃を受けて、奇跡の効果で蘇生すると蘇生地点をギルガメシュに読まれていた。
「神技! アトラ・ハシース!」
アトラ・ハシースは叙事詩の名前であり、その叙事詩に登場する主人公の名前らしいがこのゲームでは叙事詩要素が強いらしい。アトラ・ハシースには大洪水伝説が書かれており、それが必殺技として放たれる。
俺は猛烈な海流と暴風に呑み込まれる。俺にはスサノオの加護がある。耐えられるはずだ。
「はぁ…はぁ…」
俺はなんとか耐えたが満身創痍だ。そんな俺の上からギルガメシュの笑い声が聞こえて来る。
「いいぞ! 我が戦友よ! エンリルの洪水とエンキの風を耐えるとはな! その雄姿に我も答えよう! 天命の粘土板よ! 力を示すがいい。天変地異!」
空から巨大隕石と巨大竜巻、無数の雷が落ちて来る。旭光近衛の神威解放は俺が死んだことで解除されている。
「最後まであがいてやるよ! 神刀解放! 絶対防御! 嵐影湖光! おらぁあああああ!」
巨大隕石を一個ガードし、それから嵐影湖光を使ったが全ての攻撃をなんとか出来るはずもなく、俺は負けた。俺が今、確実に言えることが一つだけある。ギルガメシュは上級神を間違いなく超えている。ここで修練の塔は終わったことでインフォが来る。
最後にギルガメシュが俺に言った言葉はこちら。
「また来い! 戦友よ!」
滅茶苦茶気に入られました。どうやら俺が強くなっていたことと初めて戦ったリリーたちとの戦闘が満足いくものだったのだろう。ボロボロ状態で帰宅しているとイオンが言って来る。
「惜しかったですね…タクトさん」
「あぁ…でもまだ本気を出していないんだよな…」
「そういえばあの最後の神剣や防具の性能が全然わからなかったぞ」
「ユウェルの言う通りだ。それに加えて、本人の解放スキルを使っていない。使えない可能性もあるけど、たぶん使えるだろうな」
他にも英雄技の切り札とかまだまだギルガメシュは隠している。本当に強さの底が分からないよ。ただその分、ギルガメシュに勝つと凄い装備が手に入る可能性が出て来た。一応プレイヤーのみんなには情報提供のお礼に今回の情報を話す約束をしているから話すけど、ギルガメシュは上位神の三柱と契約してから戦いに望む流れになるだろうな。
帰って来て、時間ギリギリの聖杯を使う。神剣イガリマと神剣シュルシャガナが気になってしまった俺だが、今日はパーシュパタを選んだ。
パーシュパタ:レア度10 矢 品質S+
重さ:200 耐久値:10000 攻撃力:5000
特殊効果:使用する度に弓の耐久値が1000減少。
効果:神殺し、魔神殺し、不死殺し、神気、覇気、破魔、万物貫通、万物破壊、武器破壊、魔力切断、気力融合、気力爆発、超集束、爆心、覇撃、核爆、神威解放、シヴァの加護
破壊神シヴァの力が宿った弓矢。矢の中でも最強クラスの威力を誇っている。その破壊力故に普通に使っただけでも弓へのダメージが発生し、必殺技を使うと必ず弓を破壊してしまう厄介な能力がある。
耐久値1000減少ってウルイチイボウを普通に使っただけで壊れるのか…ウル神、涙目だな。俺はこれをセチアに渡して注意する。
「これはセチアの切り札となる弓矢だが、説明した通り弓へのダメージが大きすぎる。よく考えて使ってくれ」
「はい。これは大至急オリハルコンの魔法弓を作らないといけませんね! 作ったら、連射出来ます」
まぁ、俺に出来ることはそれぐらいなんだよね。ただ聖杯で作れる弓矢だから結構な人が手に入れるはずだ。そこまで急ぐことじゃない。俺のその気配を感じ取って、セチアは頬を膨らませている。可愛い可愛い。
俺はリースに今日寝ることをどうするか聞くとお城の順番を優先して欲しいとのことなのでノワを連れて、フリーティア城に行く。
「…寒い。炬燵で寝たい」
「炬燵で寝てばかりいると身体を壊すぞ」
「…にぃ、ノワにそんな嘘通用しない。あんな快適空間で体調が悪くなるはずがない」
ノワらしい理論だが、残念ながら炬燵で寝ると体調を崩す理論は証明されている。炬燵で寝ると寝相が取りにくくなることで睡眠不足や足腰を悪くし、身体が常時温かいと言う事は汗をかくということなので、脱水症状になることがあるらしい。他にも低温火傷など結構リスクがあるので、健康でいたい人はベッドか布団で寝ましょう。冬は寒いけど、暖房を切って寝るのが理想らしい。
最もゲーム内ではせいぜい火傷くらいなので、そこまで問題はないだろうがノワには我慢して貰おう。シルフィを呼んで就寝するとシルフィが言う。
「ノワちゃんがお城のベッドで寝ていると最初の頃を思い出しますね」
「あぁ…シルフィの代わりにベッドで寝たことがあるんだったな」
「…ん。あの時は危なかった。あまりの寝心地の良さでうとうとしてた」
「え…嘘ですよね? ノワちゃん。かなり重要な役割だったはずですよ?」
ノワはシルフィに背中を向けた。甘いな…シルフィ。ノワなら重要な役割とか貰っても、ベッドを楽しむ心が無くなるはずがないだろう。因みにノワにあの役をさせる時にシルフィのベッドで寝れると知ったノワは即決して、あの役をやりました。
「ノワちゃん! こっちを見て下さい!」
「…やー」
「まぁ、うとうとしていてもちゃんと仕事はやってくれたんだからいいじゃないか」
「…にぃの言う通り。結果オーライ。にぃ、大好き」
ノワが抱き着いて来た。
「流れるように…でも、私も負けませんよ。あの頃のように病気じゃないですかね!」
結局揉みくちゃになって、寝る事になりました。さっき話した世界の話とかにならなかったのは、ノワの独特の空気がなせる技だろうな。俺はノワに感謝して、ログアウトした。




