#1267 リリーたちVSギルガメシュ
俺は久々の修練の塔に向かう。ギルガメシュに挑むメンバーはリリー、イオン、イクス、ブラン、ユウェルだ。先程の話を聞いて、みんなやる気十分で俺も気持ちが軽くなっている。いい勝負が出来そうだ。
修練の塔の内部にギルガメシュが現れる。
「ん? 貴様は確かこの塔で最初に戦った召喚師か?」
「はい。今日はあの時のリベンジに来ました。彼女たちは俺の妻でギルガメシュ王とそれぞれ一騎打ちで戦わせていただけませんか?」
「ほぅ…あの時から随分成長した者よ。それに全員いい顔をしている…この世界の行く末を全て知っても、前へと進もうとするか。いいだろう。我と一騎打ちで戦う事を許可する。誰から来る?」
ギルガメシュには全部お見通しらしい。ギルガメシュの未来視
「リリー」
「私からお相手します。リリーは下がっててください」
イオンはリリーを強引に下がらせて、前に出ると神剣草薙剣とメテオハルペーを構えるとステップを踏む。やる気十分だね。リリーは不服そうだが、イオンはリリーにギルガメシュの戦闘を見せたいんだろう。
対するギルガメシュは格納スキルで以前にも使った巨大な斧を取り出す。
「来い」
「行きます」
イオンの姿が消えて、ギルガメシュに襲い掛かるがイオンの斬撃は最小限の動きで躱される。やはり、強い。
「多乱刃!」
「黄金障壁」
ギルガメシュは一歩も動かず、多乱刃をガードする。もう強さの風格とか半端じゃないな。
「終わりか?」
「まさか…まだまだこれからですよ! 水分身! 雷光!」
イオンは水分身を使って、分身と共に雷速でギルガメシュに襲い掛かる。
「ふん。衝撃放射!」
ギルガメシュから衝撃波が発生し、襲い掛かった分身とイオンは吹っ飛ばされる。しかしイオンはすぐさま態勢を整える。しかし目の前に斧を振りかぶったギルガメシュが現れる。
「デストロイヤースマッシュ!」
「ドラゴンウイング!」
イオンのドラゴンウイングがカウンターのような形で決まるが神鎧スキルでガードされている。ここでイオンはすぐさまUターンし、ドラゴンウイングでギルガメシュに襲い掛かる。しかしギルガメシュはイオンの翼を片手で掴むとそのまま振り回して地面に叩きつける。
やはり未来予知が効いているな。完全にイオンの動きが分かっているかのような動きをしている。ここでギルガメシュは空に浮く。
「いったぁ…っ!?」
「英雄技! カ・ディミラ!」
以前にも見せてくれた空間から無数の黄金の短剣が飛来する技をイオンに使う。それを見たイオンはすぐさま起き上がると自慢のスピードで回避する。それを見たギルガメシュは地面に降り立つ。
「全て躱したか…いい足と目を持っているな」
「お褒めに預かり光栄ですね! 竜技! ドラゴンウェーブ!」
ギルガメシュに大波が襲い掛かるとギルガメシュは格納から謎の石板を取り出した。
「マルドゥーク神の洪水と比べたら、まだまだだな。英雄技! ジッグラト!」
ギルガメシュの足元の地面から煉瓦造りの巨大な神殿が姿を見せた。その結果、イオンはドラゴンウェーブはギルガメシュがいる神殿の屋上まで波が届かず、不発する。
「く…それなら瀑布!」
ギルガメシュが頭上から滝の水が落下してくるがギルガメシュは動じない。
「下らんな…」
ジッグラトから結界が発生し、瀑布の水が弾かれる。結界が貼れる建造物を一瞬で作り上げるって、相当やばい技なんですけど…これがギルガメシュなんだろうな。
イオンは津波、氷山、星震、大海波動、極寒波動、寒冷渦、雷轟、神剣草薙剣の日輪、神波動で攻撃するがびくともしない。これは明らかに変だ。神剣草薙剣には勝利の加護がある。本来ならぶち抜いているはずだ。それが出来ないということはあの結界に加護を無効化する能力か勝利の加護が付与されているしか考えられない。
ここでイオンは惑星魔法を使用しようとしたが魔法はギルガメシュの魔法破壊で不発させられた。そしてここでギルガメシュが地魔法のミーティアを使って来た。あの石板はどうやら魔導書っぽいな。
メソポタミア神話で石板と来るとマルドゥーク神が持つ天命の粘土板が思い浮かぶな。ギルガメシュが天命の粘土板を持つような話は無かったと思うがアヌとエンリルに関わりがあるから持っていても不思議じゃないのかな?よくわからん。
降り注ぐ隕石を全て躱したイオンが覚悟を決める。
「ふぅ…これで結界を突破出来なければ私の負けですね…行きます」
「来い」
「草薙剣! 神威解放!」
草薙剣から太陽の光が発生し、刀身が光剣と化す。
神剣草薙剣(神威解放):レア度10 片手剣 品質S+
重さ:120 耐久値:5000 攻撃力:5500
効果:神剣技【雨過天晴】、竜殺し、破魔、神気、英気、瞬間再生、魔力回復、時空切断、魔力切断、万物切断、溶断、溶接、多乱刃、旋風刃、神鎌鼬、神障壁、紅炎、浄炎、天候支配、神雨、日光、後光、烈日、日輪、帰還、自動追尾、自動防御、慈雨、陽光、光吸収、毒吸収、光合成、全反射、乱反射、真昼、熱風、神波動、神撃、起死回生、不屈、勝利の加護、天照大神の加護
桜花の三種の神器の一つ。元々は桜花の主神天照大神の剣とされており、桜花最強の大英雄ヤマトタケルノミコトに渡った際に名前が変化した。鍛え直されたことで天照大神の力の大半が元に戻り、かつての姿にかなり近い神剣となった。
イオンが草薙剣を構えると背後にアマテラスが現れる。
『さぁ、桜花の主神の力をあの男に見せてあげて下さい』
「はい! いきます! 神剣技! 雨過天晴!」
草薙剣から太陽の光の刃が伸びるとイオンが光速でジグラットに斬撃を放つ。すると結界は斬られ、ジグラットは横一閃に切断されて、崩壊する。
「反転効果がある神剣技か…勝利の加護で守られた我がジグラットを落とすとはなかなかやるではないか」
雨過天晴の意味は物事の悪い状況や状態がよい方向へ向かうこと。即ちイオンが放った必殺技は勝利の加護の能力をイオンにとっていい状態。即ち必ず勝つ勝利の加護が必ず負ける効果に反転させることでジグラットを攻略したのだ。
反転スキルは良くも悪くも全てを反転させてしまう弱点があるのだが、この必殺技はどうやら自分に都合がいい物だけ反転させる必殺技らしい。流石主神クラスになると何でもありだな。この必殺技を超えるであろう刀を作ろうとしている鉄心さんが怖いです。
「行ける! はぁあああああ!」
イオンが崩れているジグラットから落下しているギルガメシュに襲い掛かる。それはイオン、かなり軽率な攻めだぞ。
「我が永遠の戦友から授かったとっておきの技を見せてやろう。英雄技! エンキドゥ・ニヌルタ!」
イオンがエメラルドグリーンの空間に取らわれるとイオンが電撃を受けて、神剣草薙剣の神威解放が強制解除される。あれがみんなが言っていたギルガメシュの技の中で最も厄介な必殺技か。
「く…ドラゴンブレス!」
しかしイオンのドラゴンブレスは発動出来ない。ギルガメシュが言う。
「もう何をしても無駄だ。その技は我が戦友エンキドゥが神から現れた力そのもの。即ち俺の力に対抗するために神がエンキドゥに与えた全ての力を封じる必殺技だ」
エンキドゥはギルガメシュと雄一無二の親友にしてライバルとして登場する大英雄だ。パンドラと同じく神の手で作られた人間でギルガメシュを諌める目的で作られた。
神話ではギルガメシュと同等の力を有する存在として作られているのだが、どうやらこのゲームではギルガメシュを諌める要素が強く出ているみたいだ。つまり力が強いギルガメシュを諫めるためにはその力を封じるのが一番効果があると運営は判断したんだと思う。しかしこれには大きな問題がある。それがギルガメシュの口から聞かされる。
「最もこの技は神どもの力も封じる力でな。お前の神威解放が解除されたのはそのためだ。最もこの力のせいで我が戦友は死んでしまったのだがな…本当に神どもは忌々しい存在よ」
半人半神のギルガメシュの力を封じると言う事は神の力を封じる力であることを意味している。神話ではギルガメシュとエンキドゥが二人で力を合わせると神でも殺せることが分かって、どちらか殺す事にして、エンキドゥを殺す神話だ。
ギルガメシュが神に対して怒るのも当然だろう。自分の親友が自分たちの命が危ないという身勝手な理由で殺された訳だからな。ここでイオンは斧で吹っ飛ばされて、一度倒れるが蘇生する。
「まだやるか?」
「はぁ…はぁ…いえ。ここでギブアップします。決闘を受けて下さり、ありがとうございます」
「うむ。いい心掛けだ。我がジグラットを破ったお前は間違いなく強い。もっと強くなり、我と同じ強さの頂きに登って来るがいい」
「はい! 頑張ります」
エンキドゥ・ニヌルタの厄介なところは封印された全てのスキル解除が出来ないことと指定した空間に発生する技であることだ。ギルガメシュがエンキドゥ・ニヌルタを発動されてから逃げても、普通の人は間に合わない。例え逃げる足があったとしてもギルガメシュの未来予知で逃げた先を読まれてしまう。このチート技のせいでギルガメシュは今なお無敗でいるのだ。
「すみません…何も出来ませんでした」
「そんなことないよ。よく頑張ってくれたな」
「ん…」
俺に頭を撫でられて、嬉しいそうなイオンを過ぎて、リリーが前に出る。
「次はリリーの番だね! イオンちゃんの仇はリリーが取るよ!」
「次はその娘か。いいだろう。来るがいい」
「いっくよー!」
リリーがいつもの突撃から入る。それを見たイオンが頭を押さえる。
「私が何のために最初に行ったと思っているんですか」
「まぁ、リリーの戦闘を見守ろうぜ。どうやら戦闘のスイッチは入ったみたいだからさ」
リリーとギルガメシュの力がぶつかり合うとリリーが押される。それが分かったリリーは星天の神剣アルカディオンとレガメファミリアで連続攻撃を仕掛けるとギルガメシュを押していく。
「やぁああああ!」
「一発一発が気持ちが籠ったいい攻撃だ。だが…格納!」
ギルガメシュが斧をもう一本取り出し、二刀流になる。すると今度はリリーがまた押される。ここでリリーはギルガメシュの攻撃を避けだした。それを見たギルガメシュもリリーの攻撃を避けて、戦闘が拮抗する。それでもやはりギルガメシュがリリーを押していく。
「頑張ってますね…リリー」
「あぁ…ギルガメシュの蹴りにも対応出来ている…問題はここからだな」
大剣たちを振るしかしてこなかったリリーがギルガメシュの蹴りを躱したタイミングで初めて突きの攻撃をした。上手いがギルガメシュはしゃがんで攻撃を躱すと斧の刃がない棒部分でリリーの顎に攻撃を当てる。
そして空に上がって、顎に強烈な一撃を受けたリリーはギルガメシュの覇撃でぶっ飛ばされる。武器の使い方も体捌きもやはりレベルが高い。
「う…竜技! ドラゴンフォース!」
「む…ドラゴニュートの奥義か。ここで使ってよいのか?」
「使わないで負けるよりまし!」
「ふ。言い心掛けだ!」
二人が激突する。すると互角の撃ち合いになった。
「ドラゴンフォースを使った状態のリリーと何も使わずに互角…いやリリーが押されているな」
「そんな…どうして…」
イオンは俺からギルガメシュのタイプを聞いて同じタイプのリリーがドラゴンフォースを使えば勝機があると思ったみたいだ。実際にステータスはそこまでの差が無いように思える。
「リリーが押されているのは純粋に技量の差だな」
「マスターの言うことは正しいようです。斧と言う武器全体をあの人は上手に使っていますね」
リリーの前にくるくる回したり、斧の構えを変えたりリリーを揺さぶっている。揺さぶりに動じず突っ込むと自分が予測していない攻撃が飛んで来て、攻めきれない状態だな。
ここでリリーのドラゴンブレスなどの遠距離スキルを入れながら戦闘するがギルガメシュもカ・ディミラで対抗した上でリリーのスキルは全く通じず、ドラゴンフォースの効果が切れる。
「あ…逆鱗!」
「遅い! 王撃!」
「きゃあああああ!?」
ギルガメシュとの撃ち合いの時からダメージを受けていたリリーはここで蘇生が発動するがイオンと同様にギブアップする。
「接近戦で我を打ち合える者はなかなかおらん。お前はもっと技量を磨いてから挑んで来るがいい」
「はい…タクトー! 負けたー!」
「はいはい…たくさん勉強になって良かったな」
「次はわたしの番だな!」
ユウェルがマルミアドワーズを構える。
「ほぅ…次は土のドラゴニュートか。随分変わった武器を溜めこんでいるな」
「ぎく」
ぎくなんて言っちゃうか…まぁ、ギルガメシュにはもうバレているみたいだからそこまで関係ないか。最初は二人が力比べで激突する。これはユウェルが押されて、大きく後ろに下がってしまう。マルミアドワーズでもダメか。
「くぅうう…格納!」
「む!」
「でぇやあああ!」
ユウェルは武器をモーニングスターデスサイズにチェンジして、星球を迫るギルガメシュに投げつけるとギルガメシュはそれを回避してユウェルに接近すると斧と鎌が激突して、ユウェルはぶっ飛ばされるがその際にユウェルは星球を引き寄せ、ギルガメシュの背後から星球が迫る。
「巨大化!」
「ぬ!? ふん!」
巨大化した星球をギルガメシュは片手で止めてしまうと星球を持ち上げて、ユウェルに投げつけて来た。
「も、元に戻れ! 危なかっ…が!?」
ユウェルは難を逃れたが安心したところにギルガメシュの蹴りが炸裂して、ぶっ飛ぶ。
「随分面白い武器の使い方をする…召喚師の影響が垣間見れるぞ」
俺は口笛で誤魔化す。リリーたちも真似しようとするが口笛は難易度が高いようだ。
ここでぶっ飛ばされながらユウェルはバズーカを構えて、ギルガメシュに放つが黄金障壁で防がれる。
「ダメか…む!」
「英雄技! カ・ディミラ!」
「武器の投擲なら負けないぞ! 武装創造! 武装射出!」
お互いの武器が激突するとユウェルの武器は壊れるが弾くことには成功する。
「む!」
「ほぅ…」
ユウェルは不服そうだが、ギルガメシュを感心させているだけかなり立派だと思う。ここで再びギルガメシュがユウェルに襲い掛かるとユウェルは丸くなる。
「竜技! ドラゴンホイール!」
転がるユウェルとギルガメシュの斧が激突すると火花が散り、押し込まれたギルガメシュは回避を選択する。
「逃がさないぞ!」
ユウェルはUターンし、襲い掛かる。この光景、さっきのイオンとタブっているぞ。ユウェル。
「いけぇえええ!」
「ふん」
「うわぁあああ!?」
ユウェルは蹴られて、空を飛ぶと壁に激突するとデストロイヤースマッシュが炸裂すると更に王撃が放たれ、ユウェルは奇跡で蘇生する。
「ぶるぶる! まだまだだ!」
「来るか…いいだろう」
今度のユウェルはルナティックトンファーで戦うがギルガメシュの斧に対応出来ず、ここで神籠手ユウェルバスターとヤールングレイプルを両手に装備したスタイルでギルガメシュと激突する。すると斧とぶつかった神籠手ユウェルバスターが爆発して、ギルガメシュは下がる。
「雷光!」
「ぬ!? っ!?」
「核爆!」
ヤールングレイプルの雷光から放った拳がギルガメシュは腹に決まり、ゼロ距離から神籠手ユウェルバスターの核爆が炸裂した。流石にこれは決まったな。
「どうだ!」
吹っ飛んだギルガメシュは立ったまま下を向いていた。
「く…はは…ははははは! いいぞ! やるではないか! そっちが神の武器を使うなら俺も同じ土俵で戦ってやろう! 来い! 神剣イガリマ! 神剣シュルシャガナ!」
あっれー?こんな情報聞いてませんよ。皆さん。神剣イガリマと神剣シュルシャガナは暗黒大陸のフンババ戦の後にハロウィンの時に登った塔から宝箱で既に発見されている武器だ。
メソポタミア神話の戦いの神であり、サババ神が使っていた武器だ。ギルガメシュとはサババ神の妻や妹とされる女神イナンナと関わりがある。というよりイナンナがギルガメシュに惚れた女神イシュタルと習合しているので、一応関わりがある程度だ。
両方の剣はシャムシールという刀剣の武器とされており、このゲームでも再現されている。武器のジャンルは大剣で刀身の大きく曲がっているのが特徴だ。大太刀でいいと思うんだが、あくまで運営は刀シリーズを桜花の武器にしたんだろう。
他に特徴的なデザインは神剣イガリマには獅子の鍔があり、属性は土。神剣シュルシャガナには鍔に鷲がデザインされていて、属性は火となっている。
「いくぞ!」
ギルガメシュがユウェルに襲い掛かる。ユウェルは神籠手ユウェルバスターで神剣シュルシャガナの斬撃を受けたが吹っ飛ばされる。そしてギルガメシュの追撃をなんとかしようしているユウェルだが、ギルガメシュの二刀流の攻撃にボコボコにされていく。
「ユウェル!? タクトさん、どうして急にこんなことに」
「ギルガメシュ王が急激に強くなったからだ…間違いない。これが本来のギルガメシュ王の姿なんだろうな」
ヤールングレイプルの雷光に対応する速さ加えて、二つの大剣の神剣を物凄い速さでフルスイングしている。そこに格闘戦も入ることで隙が見当たらない。これはもう大剣の二刀流使いの完成形に思える戦闘だ。
「くぅうう! ドラゴンアーマー! でぁあああああ!」
ユウェルはありったけの防御スキルを使って、ギルガメシュ王の攻撃を食らってから攻撃を当てる相打ち作戦に出るが籠手と大剣ではリーチ差があり過ぎて、攻撃が当たることはなかった。結局最後は銃やスキル戦を挑むが神剣イガリマの鉄壁の守りの前に敗れ去った。
「ダメだった…」
「ギルガメシュ王に大ダメージを与えて、本気にさせたんだ。もっと誇っていいぞ。それにユウェルの負けは俺にも責任があるからな。ちょっと色々考えさせて貰うよ」
もっとユウェルに自分の武器を作らせていれば結果は結構違っていたかも知れない。後は武器の扱いの練度の問題もあったな。俺としても反省点がたくさん見つかった試合だった。次はブランが名乗り出た。
「これはまた随分と神の装備で固めた天使が来たな」
「この装備は我が主から与えられた物…簡単には負けるわけにはいきません」
「そうだろうな…俺もこのまま戦ってやろう」
いきなり全力状態のギルガメシュと戦闘か…ブランも先程の戦闘は見ている。どんな戦闘になるのか楽しみだ。
「はぁあああああ!」
「くぅ! はぁ!」
「ぬ! は!」
「く!」
二人の戦闘はギルガメシュが攻撃してブランが神盾アイギスで攻撃を止めるとブリューナクで突き、それをギルガメシュは避けてから斬撃を放つがこれも神盾アイギスでブランは止める展開になる。
苦しそうなのはブランだ。神盾アイギスがあるにしてもギルガメシュのパワーはブランに相当な心理的プレッシャーを与える。何せユウェルを倒した攻撃だからな。直撃だけは絶対に避けたいだろう。
更にアイギスの効果を避ける為にギルガメシュは目を閉じて戦闘している。あの状態で通常時と全く変わらない戦闘を見せた。それだけ未来予知の効果が半端じゃないことを意味している。
というかヴィーザルサンダルの蹴りと黄金の靴のぶつかり合いで普通にギルガメシュが勝つってどうなっているんだろう?ここでギルガメシュ王がブランに聞く。
「どうした? そのままでは俺には勝てんぞ? 天使の奥義か装備している武器を解放しないのか?」
「生憎まだ天使の奥義は使えません。武器の解放はあなたがしない限り使うつもりはありません」
「そうか…舐められた物だな!」
ブランがギルガメシュの嵐のような斬撃を必死で受け止めていたが遂にアイギスが上に待ち上がり、その隙を狙いギルガメシュの斬撃が来る。それをブランはブリューナクで受け止めるが吹っ飛ばされる。
「覇撃!」
「キャッスルランパード!」
神剣二つの同時覇撃でキャッスルランパードが一撃で破壊されて、その余波をブランは受けてしまう。
「エンキドゥ・ニヌルタ!」
「しまっ!? は!」
スキルを失う前にブランはブリューナクをギルガメシュ王に投げつけたがあっさり神剣イガリマで弾かれしまう。
「終わりだ。次は本気を出す戦闘をするんだな。英雄技! カ・ディミラ!」
降り注ぐ黄金の短剣にぶち抜かれて、終了する。
「あんなことを言ったのに申し訳ございません。主」
「自分を責めないでくれ。本気を出すのを禁止したのは俺の方なんだからな」
今回のギルガメシュ王とのリリーたちの戦闘は訓練とみんなの実力を知る目的で戦闘されている。それぞれに武器の解放を許可したリ、禁止しているのはその為だ。だからみんなが本気を出さない全ての原因は俺にある。
そんな訓練の最後に登場するのがイクスだ。イクスを見たギルガメシュは言う。
「お主が最後か? 異星の機械人形」
「はい」
「ふ…お前と我の最愛の友は本当によく似ている。それでいて終わり方は全く違う物となった。一目見た瞬間から戦いたかったぞ」
一応イクスも作られた人形だからな。エンキドゥと似ているのも分かる気がする。エンキドゥも作られたばかりの頃は人としての知能はほとんどなかったとされている。イクスには知能があったけど、俺の命令ばかり待っていたからな。かなり強引な気はするけど、俺もイクスとエンキドゥは結構似ていると思った。
「それは光栄です。マスターの命令で出来るだけの全力で戦わせて貰います」
「まぁ、今の現世の状況では中々本気は出せんか…ならばその出来るだけの全力がどれほどのものか楽しむとしよう。どうやらお前との戦闘はこの空間では狭すぎる。場所は我が提供してやろう。天命の粘土板よ! 我らが戦う舞台を用意せよ! 神域!」
塔の中から俺たちは古代メソポタミアの上空に世界が変化する。これが天命の粘土板の能力の一つか。というかあの石板は天命の粘土板で確定したな。
「この世界は全て空想だ。町や地面をいくら消し飛ばそうが被害は出る事はない。本来なら我に強化が発生するがその効果はきってやろう。準備はいいか?」
「いつでも」
「では、いくぞ!」
ギルガメシュは飛び込むとイクスは下がりながらエネルギーマシンガンで攻撃する。これに対してギルガメシュは神鎧と神障壁を展開して、イクスの攻撃を受けながら距離を詰めた。
ギルガメシュが接近戦でイクスに斬りかかった瞬間、イクスはテイルメーサーガンを放ち、これをギルガメシュは振りかぶっていた神剣イガリマで受け止める。そして神剣シュルシャガナで再度イクスに斬りかかるがイクスは空に上がり、回避するとデウスエネルギーキャノンを構える。それを見たギルガメシュは笑みを浮かべて、構えを取る。
「デウスエネルギーキャノン、狙い撃ちます」
「英雄波動!」
両者の攻撃が空中でぶつかり合うと互角に終わる。ギルガメシュの英雄波動はデウスエネルギーキャノン並みなのか。凄いな。ここでギルガメシュがイクスの前に現れ、それを読んで来たイクスは高周波エネルギーブレードの二刀流で迎え撃つ。
ここから両者は激しい接近戦となる。これだけでも見れて良かった。イクスの演算能力はギルガメシュの未来予知に対抗できている。
「いい能力だ。やはり戦いは命の危機を感じなければ盛り上がらんな!」
以前の俺とギルガメシュに戦いを挑んだプレイヤーたちとリリーたちは泣いていいかな?これまでの戦いはギルガメシュ的に盛り上がっていなかったと宣言されたみたいなもんだ。
「楽しいそうで何よりです。デウスレーザーフライヤー、展開」
「ぬ…もうそんな武器まであるのか…異星の技術力は凄まじいものよ」
そういうとギルガメシュはデウスレーザーフライヤーを無視してイクスに襲い掛かる。イクスは接近戦をしながらデウスレーザーフライヤーでギルガメシュを狙い撃つがギルガメシュは最小限の体捌きで躱している。完全にデウスレーザーフライヤーの動きと射線を未来予知で見切っているな。
「お主の武器のような攻撃は出来んが我もこういうことは出来るぞ。カ・ディミラ!」
「電磁場」
イクスに放たれた黄金の短剣たちは電磁場に囚われ、勢いを無くすと墜落する。そしてイクスの胸の部分がスライドし、砲身が姿を見せる。それを見たギルガメシュも構える。
「「神波動!」」
両者の波動が空中でぶつかり合うとこれも互角に終わった。仁王立ちしているギルガメシュがイクスに聞く。
「それが出来るだけの全力か?」
「まさか…本番はここからですよ。神杖コズミックトラベラー!」
遂にイクスが初めて専用装備である神杖コズミックトラベラーを構えた。今回のギルガメシュとの戦闘は神杖コズミックトラベラーの能力確認の場でもある。さて、どんな性能を見せるのか楽しみだ。それはギルガメシュも同様らしい。
「お前たちの神の装備か! そうこなくては!」
「行きます。時空波動!」
神杖コズミックトラベラーから次元転移の際に通る次元空間と同じ景色の波動が放たれるとギルガメシュは神剣イガリマで受け止めると弾いた。しかし次の瞬間、ホーミングレーザーとミサイルがギルガメシュに襲い掛かり、爆発する。そしてそれが連射される。容赦ねぇ。
そしてホーミングレーザーを放つのが圧倒的に速い。これが神杖コズミックトラベラーの特殊効果である魔力チャージ時間短縮(究)の効果か。かなりえげつない武器であることがイクスの攻撃を見ればわかる。本当に絶え間なくホーミングレーザーを撃ちまくっているのだ。
後の問題は魔力消費が凄まじい事とチャージ時間が長い装備がどれだけ速くなっているかだな。それ次第でギルガメシュとの戦闘がどうなるか決まるだろう。
「うははは! 温いわ!」
ホーミングレーザーを受けながら突っ込んで来た。いや、実際問題今のイクスに勝つのはこれが正解なんだろう。遠距離戦で勝ち目が無さすぎる。
「時間停止。星核」
「次元震!」
「っ!?」
接近するギルガメシュの動きを止めて至近距離での星核を放とうとしたイクスだったがギルガメシュの次元震でぶっ飛ばされる。そりゃあ、メソポタミア神話の神様も命の危険を感じるわ。
「く…」
「王撃!」
「DEMバースト、発動します!」
吹っ飛ばされたイクスにギルガメシュの王撃が迫るとイクスはDEMバーストを発動されて、回避した。
「よく躱した…はぁああ!」
「星震!」
「く…効かんな!」
ギルガメシュの突撃にイクスは対応出来なくなっている。やはりギルガメシュにダメージを与えるにはユウェルが見せてくれたように大技を当てるのが正解だろう。というか攻撃を受けなくなったことで肉体活性でギルガメシュの筋力がとんでもないことになっている。
必要最小限の攻撃でどれだけ大技を当てて、ダメージを与えることが出来るのか…そこがギルガメシュに勝つために求められている所だな。
イクスがもうギルガメシュの筋力に対応することが不可能な状態でDEMバーストを使ってもそこまでギルガメシュとのスピード差は付いていない。これでは長時間のエネルギーチャージが求められる攻撃力が高い武器は使えない。
「…しょうがないですね。神杖コズミックトラベラー! 神威解放!」
イクスが最初に仕掛けた。神杖コズミックトラベラーから星と神の光が放たれ、神杖コズミックトラベラーの姿が変化する。
神杖コズミックトラベラー:レア度10 専用装備 品質S+
重さ:なし 耐久値:なし 攻撃力:1500
効果:神杖技【サウザンド・タイムムーブ】、武装創造、金属創造、超変形、超集束、神気、星気、星光刃、念動力、無限魔力、自動修復、灰燼、空間歪曲、次元圧縮、次元歪曲、次元転移、次元封鎖、時間加速、時間停止、時空支配、時空断層、天変地異、放射熱線、荷電光線、ガンマ線、時空波動、神波動、次元震、流星群、彗星、惑星、星核、神撃、魔導砲、重力球、超冷凍弾、衛星砲、荷電砲、大雷霆、支援要請、号令、物理無効、時空神の加護、異星の加護
特殊効果:エクスマキナの装備の魔力チャージ時間短縮(究)
初代デウスエクスマキナが使っていた宇宙と時空、創造の力がある神の杖。初代デウスエクスマキナはこの杖を使って、エクスマキナの星に文明を作ったと言われている。
必殺技の名前、やばくない?というかあるアニメを意識しているよね?運営さん。俺が運営にツッコミを入れているとギルガメシュもイクスに答える。
「そう来なくてはな! ならば我も使うとしよう! 神威解放!」
神剣イガリマと神剣シュルシャガナの神威解放が発動する。しかしその間にイクスはもう動いていた。
「超変形。荷電粒子砲、発射」
「っ!? 神剣技! オーロックス・バベル!」
神杖コズミックトラベラーが杖の形状から銃の形状に瞬時に変形するとギルガメシュに向かって、荷電粒子砲をぶっ放した。なんかこの変形もアニメで見たことがある気がする。なんかゲーム終わるから何でもしていい状態になってませんか?運営さん。
しかし荷電粒子砲は何かにぶち当たると霧散する。ギルガメシュの前には謎の扉が閉じた門が出現していた。あれが神剣イガリマの神剣技か。
「不敬な態度には罰を下す!」
ギルガメシュが神剣イガリマをイクスに向けると門から荷電粒子砲がイクスに放たれる。イクスはそれを難無く躱す。イージスと同じ系統の必殺技だな。流石に倍返しではないようだが、それでも防いだ攻撃を返せるのは強いな。しかも剣で使えるのが大きい。あの剣、欲しいな。
「この程度であなたは罰を下すんですね」
「ふ…ははははは! 言うではないか! この我に意見を言うとはな! ますますエンキドゥと似ておるわ!」
本気の両者が激突する。イクスはもう神杖コズミックトラベラーの超変形で大技打ち放題状態だが、神剣シュルシャガナが立ち塞がった。
「グラビティキャノン!」
「巨大化! 魔力切断! 溶断! ぬえい!」
巨大な炎の剣が重力球を真っ二つに斬ってしまった。当然他の攻撃も斬られる。ここでイクスは必殺技を使用する。
「神杖技! サウザンド・タイムムーブ!」
ギルガメシュの時間が千年進む。本来なら骨が残っているか存在が消えてなくっていそうな年月だが、そこには悲しそうなギルガメシュの姿があった。
「生前の俺なら殺すことが出来た技だったが、ここにいる俺は既に死んでいる亡霊だ。亡霊にいくら年月を進ませようが意味がない」
「そうですか…では、わたしの負けですね」
そういいながらイクスは神杖コズミックトラベラーをしまうとジェノサイドユニットに換装し、高周波エネルギーブレードを構える。
「ほぅ…まだやるか?」
「はい。マスターから教わった剣術で最後まで戦わせて貰います」
「はははは! 実にいい娘よ! 幾度もエンキドゥが女性だったら、妻にしていたと考えていたが…なるほど。あ奴が女性だったら、こんなにもいい女になっていたかも知れぬのか」
人の妻で変な想像しないでくれます?俺がぶちギレしていると容赦を知らないイクスがはっきり言う。
「気持ち悪いですね」
言われてやんの。しかしその態度もギルガメシュは笑って、気に入ってしまう。ダメだ…この王様、何とかしないと。そう俺が思っているとギルガメシュの雰囲気が変わり、ギルガメシュは神剣シュルシャガナを天に掲げる。
「こんな愉快な思いをさせてくれた礼だ…お前の願いを叶えてやろう」
神剣シュルシャガナから火炎旋風が発生する。それを見たイクスは襲い掛かる。
「戦神サババの破壊の炎の斬撃! 受けてみるがいい! 神剣技! ニンギルス・ラハット!」
イクスに神剣シュルシャガナが向けられると破壊の火炎旋風がイクスに襲い掛かる。イクスは神バリアを展開するがこの斬撃で破られて、必殺技が直撃して、地上に落下すると町が大爆発して、消し飛ぶ。
「勝てませんでした。マスター」
「あぁ。よく頑張ってくれたな。イクス」
イクスを抱きしめて、褒めてあげる。さて、イクスは俺の妻アピールが終わったところで最後は俺だ。ギルガメシュが最後に言ったイクスの願いは神剣シュルシャガナの必殺技を俺に見せたい願いだったのだろう。俺はそれに答えないといけない。他のみんなもそれぞれがギルガメシュと頑張ってくれたから気合い入れて、戦わせて貰おう。
予想外に長引いたので、タクトとギルガメシュ戦は次回に持ち越します。




