#1262 砂漠神の試練六階とファラオ連合
サンドウォール砂漠のピラミッドにやって来た俺たちはいよいよオシリスとの対決に挑む。ファリーダによるとオシリスを倒したら、残すはラーとの決戦らしい。今日でこのクエストの終わりに王手をかけたいところだが、もちろん簡単な相手では無い。ファリーダが説明してくれる。
「オシリスは冥界の神でフィールドも冥界を模倣しているわ。前の時は普通に通過させて貰ったけど、今回はそう簡単にはいかないでしょうね」
「あぁ…間違いなく死者の妨害が来るだろうな」
「その場合はやっぱり歴代のファラオが登場する可能性が高いわね」
どんなファラオが登場するかだな。流石にセティとラムセスは一度このクエストで登場したから二度は登場しないだろう。彼らがいなくても歴代のファラオは警戒しないといけないだろうね。というわけでまずアンデッド対策は必須と判断する。
次にファリーダにオシリスとの前回の戦闘の話を聞いてみたが接近戦を普通にして、勝ってしまったらしい。明らかに手加減されているな。なのでここは俺がオシリスと戦う上で一番気にしていることを聞いてみた。
「オシリスに勝利の加護はなかったか? ファリーダ」
「無かったと思うわよ? 何よ。あいつ、そんな加護持っているの?」
「たぶんな。しかも王としての力もあるだろうし、オシリスはただの冥界の神じゃない。生前は植物の神で植物の死と再生を象徴する神様だ。つまり木属性で即死持ちの可能性が高い」
冥界の神としての不死身もあるだろうし、かなり厄介な神様だ。
「タクトの言う事が事実なら加護無効か勝利の加護は欲しい所ね」
「あぁ」
そんなわけでメンバーを選ぶ。選んだメンバーはファリーダ、燎刃、ルーナ、月輝夜、ジークを選んだ。そして一応作戦を決めて、俺たちは階段を上り、オシリスがいる砂漠神の試練六階に到達した。
そこは夜の砂漠のフィールドで砂漠の奧にはピラミッドではなく、城壁のような建造物が見える。ここで空に画面が表示されて、ミイラ姿の神が現れる。
『俺の名はオシリス! よく弟や妹たちを倒してここまでやって来たな! ここまでの戦闘は見させて貰ったが猛烈に感動しているぞ!』
滅茶苦茶テンション高くて暑苦しいな!?ちょっと俺の中のオシリスのイメージが崩れそうだが、イシスとネフティスにあれだけべた惚れされていたことを考えるとなんか納得がいった。後、ミイラ状態でどうやってこれだけクリーンに話せるのか教えて欲しい。
「相変わらずね…あんた」
『神なのだ。そう簡単に変わるはずもあるまい? イフリートの娘には謝らねばならないな。前回はラーの命令とはいえ手加減しすぎた! すまん!』
「いいわよ。この鬱憤は全部ラーにぶつけるから。それに悪い事だけじゃなかったしね」
そういうとファリーダは俺を見つめて来た。それを見たオシリスは笑う。
『ははははは! そのようだな! あの時は俺たちも納得していなかったがこうしてみるとラーの狙いがよくわかる! さぁ、愛する者と頼りになる仲間を得て、ここに戻って来た魔神よ! 今宵は手加減無しだ! 最高の夜にしようではないか! 来い! 我が楽園アルルに眠りし、歴代のファラオと神官たちよ!』
オシリスがそう言うと夜の砂漠から次々武装した神官たちが現れた。ファラオの姿は現時点では見つからない。それぐらいに数が多すぎる。
「面白いじゃない…全員、消し飛ばしてあげるわ! 魔神魔法!」
「魔法破壊!」
神官たちの中にいる何者かにファリーダの魔法が破壊された。簡単にはいかないよな。更にファラオの軍勢全てに加護が付与される。
「やはり勝利の加護持ちか…この軍勢全てに勝利の加護を付与するとかやば過ぎだろ…」
全員がエクスカリバーや神剣グラムを持っているような物だ。流石にそこまではいかないだろうけどね。厄介であることは間違いないがこちらもそれは予測済みだ。
「ジーク! 月輝夜! 思いっきり暴れてこい!」
「キュー!」
「グォオオオオオ!」
月輝夜とジークは加護破壊持ちだ。ジークは拡散光線で奇襲を仕掛けて、敵軍に半減を与えると月輝夜が顕明連で部隊を吹っ飛ばした。すると消えてなくなる。どうやら蘇生はオシリスの加護に頼っているみたいだな。これなら行ける。
そう思っていたのだが、敵が次々弓矢や投げ槍で攻撃を仕掛けて来た。完全に月輝夜を狙って来たな。数では圧倒的に向こうが有利だ。ここで一人ずつ確実に潰して行く判断をするということはいい指揮官があの部隊にはいるな。
「グォオオオ!」
月輝夜は弓矢を獄炎で焼き払うとここで覇撃の弓矢が飛んで来て、月輝夜の顔に命中すると月輝夜はその威力で倒れてしまった。弓の使い手もいるのか。
倒れた月輝夜にエジプトの神官たちが殺到していくがみんな仲良くファリーダと燎刃に吹っ飛ばされる。
「そう簡単に行くはず無いでしょ?」
「某たちとも手合わせお願いします!」
二人の援護とジークの空からの援護のお陰で月輝夜を起き上がり、先程の弓矢が放たれた方向に鬼神の咆哮を放つが全く見当違いな方向から覇撃の弓矢が飛んで来て、また倒れてしまう。
「何やっているのよ! 月輝夜」
「グゥウウ~…」
月輝夜が悔しそうな唸り声を出した。そんな中、ジークが弓矢が放たれた場所にドラゴンブレスを放つとまた違う場所から覇撃の弓矢が放たれ、ジークまで吹っ飛ばされ、墜落してしまった。
「パパ…今、何が起きたんですか?」
「恐らく相対転移か何かで弓持ちのファラオの位置を入れ替えているだろう…間違いなく優秀な指揮官が最低二人以上いるな」
「二人ですか?」
「あぁ…ルーナ、ジークと合流するぞ」
空間索敵で俺たちが戦闘している間にじわじわ側面の敵が動いているのがはっきりわかった。敵の狙いは俺たちを包囲することで間違いない。弓での狙撃に気を引きつけて本命の作戦はこっちだろう。ただ俺には弓兵の位置を巧みに操っている指揮官と軍をこっそり動かしている指揮官が同じとは思えないなかった。
とにかく俺たちは包囲されないようにジークと合流して、ファリーダたちの退路を確保しないといけない。しかし敵の容赦ない攻撃は続く。
「英雄技! ギザ・ピラミディオン!」
俺たちの周囲に謎の巨大な影が出現すると俺たちは上を見ると巨大なピラミッドが全員に一個ずつ落下して来た。
「「星震!」」
俺とファリーダがピラミッドを破壊しようとしたがびくともしなかった。
「キュ…キュー!」
「グォオオオ!」
ジークと月輝夜が起き上がり、落下してくる巨大な三つのピラミッドの破壊に動くがびくともしてない。これはもう破壊不能になっているな。こうなるともう逃げれそうにない。俺たちはそれぞれ三つの巨大なピラミッドを受け止めることにした。
「「「「はぁあああああ!」」」」
はい。無理ですね。みんな仲良くピラミッドの下敷きにされました。俺たちが潰れたのを確認すると巨大ピラミッドは消えてなくなる。寧ろ三つの巨大ピラミッドに潰されて、無事な俺たちはかなり成長しているんだなと実感した。
「「「「おぉおおお~!」」」」
敵軍が突っ込んで来る中、ルーナを庇った俺は立ち上げると敵軍を睨み付けた。
「よくもやってくれたな」
俺たちを包囲しようとしていた敵の側面部隊が巨大な雷光刃で一掃される。
「大丈夫か? ジーク」
「キュ~…キュ!」
「よし。俺たちはこのまま側面を叩く。ジークは空から援護してくれ。行くぞ。ルーナ」
「はい! パパ!」
俺たちが敵の側面を叩く一方で中央でも月輝夜の反撃が始まった。オーガラッシュで敵軍を次々吹っ飛ばしていると覇撃の弓矢がまた飛んで来る。しかしそれは燎刃が生大刀で撃ち落とす。この結果、月輝夜は完全に謎の弓兵の位置を把握して、息を吸い込む。
「グォオオオ!」
月輝夜のゴッドブレスで敵軍が消し飛ぶ中、弓兵はまたしても転移する。しかしその姿は空を飛んでいる燎刃から丸見えだった。
「ドラゴンブレス!」
「ぬぅううん!」
燎刃のドラゴンブレスが直撃したように見えた攻撃だったが弓兵は拳でドラゴンブレスを止めた。ここで弓兵の正体が明らかになった。
アメンホテプLv75
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
アメンホテプ二世か。エジプトのファラオの歴史において、剛腕を誇ったファラオでその剛腕から放たれる弓を使い、戦争で活躍したと言われているファラオだ。
このゲームでの姿はかなりの身長で腕や足は筋肉隆々なファラオだった。顔はいかつく威厳たっぷりだ。そんなアメンホテプが燎刃との対決に応じたように見えたけど、燎刃が襲い掛かった瞬間、姿が消える。そして周囲にいた神官たちが襲い掛かって来た。
「卑劣な…猛爆!」
襲い掛かって来た神官たちが爆発する。燎刃が怒っているのはアメンホテプに対してではない。燎刃にシンクロビジョンを使って見ていたけど、アメンホテプは完全に燎刃と戦うつもりでいた。
燎刃が怒っているのはそれを転移の使い手が邪魔した上にそれを利用したことに怒っているのだ。それが指揮官や軍師の役割なんだけどね。
軍師の立場から言うと弓使いが大太刀の使い手と接近戦をするなんて勝てる見込みがない。それなら遠距離で月輝夜の邪魔をしたほうがいいという判断をしたんだと思う。それならこっちはこのまま燎刃とファリーダが月輝夜の護衛をして、進軍させる。
こうなるとここからは月輝夜の殲滅力が発揮されていく。顕明連の薙ぎの一撃で敵軍は吹っ飛び、焼尽と雷轟で次々敵が吹っ飛んでいく。防御無効と加護無効がある月輝夜に普通の兵士に相手をさせるのはかなり酷だ。
その間に俺たちも進撃を続けている。さぁ、敵の司令官はどうするかな?そう思っていると敵が動く。
「頼むぞ。イムホテプ」
「お任せ下さい。我がファラオ。英雄技! カーバインド!」
敵軍から謎の霊が出現するとみんなに群がり、動きが封じられる。そして更に敵が動く。
「我が軍勢の力を示してくれようぞ! 英雄技! ハトシェプスト!」
今まで戦っていた軍より更に二倍いや三倍の数の軍が召喚され、俺たちは完全に包囲されて、一気に総攻撃が開始される。
「俺たちが大攻勢を受けたら、防御に回るとでも思っているならそれは読み間違いだぞ。後光!」
霊が後光の光で消し飛ぶと俺は旭光近衛を構える。
「百花繚乱!」
ルーナとジークの霊と飛んできた無数の弓矢、群がって来た敵を全てを斬った。
「ジーク! 三人を助けてやってくれ」
「キュー!」
ジークの拡散光線が正確にファリーダたちを拘束していた霊と襲い掛かって来ていた敵軍に降り注ぐ。
「流石ジーク殿!」
「自由になったら、こっちのものよ! デモングランドクラック!」
「グォオオ!」
これで戦況はほぼ元通りだ。敵軍は多いけど、月輝夜とジークがいるならすぐに数は減る。それよりもまずは厄介なファラオたちを少しでも減らそう。
「敵の位置は分かったか? ルーナ」
「はい。少なくとも霊で拘束して来た敵は向こうにいます」
「じゃあ、聖剣解放で道を作ってくれ」
「わかりました! パパ! 聖剣解放!」
ルーナのエクスカリバーが一撃が敵軍を消し飛ばすと途中で斬撃が止まる。結界で止めたな。敵の姿を捉えた。
イムホテプLv70
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ファラオじゃないね。有名な映画に出て来る敵役のモデルになった宰相だ。こいつがいるならその時代のファラオもいるのが確定かな?とにかく邪魔であることは間違いない。このゲームではローブ姿のお爺ちゃんみたいだが、容赦はしない。
「雷光! 雷光刃!」
「ぬ!?」
「時空切断!」
イムホテプが転移の光に包まれていたが俺の斬撃のほうが速かった。
「石版壁!」
俺に無数の石板が飛んで来て、躱していると敵の姿を捉えた。
スネフェルLv75
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ギザの大ピラミッドを建造者として知られているファラオだ。俺たちを巨大ピラミッドで潰した犯人はこいつだな。どうやらこのゲームでは魔法使いのファラオらしい。
俺たちが大気壁の土属性バージョンスキルに対処しているとここでファリーダがデストロイヤースマッシュで敵軍をぶっ飛ばして、現れる。
「はぁああああ!」
「っ!?」
「やらせん!」
スネフェルを倒そうとしたファリーダの攻撃をアメンホテプが間に入り、ファリーダの攻撃を弓で止めるとファリーダを殴り飛ばした。
「く!」
「覇撃!」
「強閃!」
ファリーダに覇撃の弓矢が放たれるが空から燎刃が覇撃の弓矢に生大刀を叩きつけて、撃ち落とした。そして二人が睨み合うとお互いに武器を構える。俺はその隙にスネフェルを狙うが俺の突然現れたファラオに殴り飛ばされる。
ジョセルLv75
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ジョセルはネチェリケトという名前のほうが知られているかも知れないファラオだ。最初にピラミッドを作ったとされているファラオでイムホテプが仕えていたファラオだね。このゲームではどうやら格闘タイプのファラオらしい。これはネチェリケトが神の肉体を意味しているからだと思う。
しかしこの配置換えの代償は高くついた。ジークが転移を使った術者を見つけてドラゴンクローで襲撃した結果、ファリーダのところに敵が降り立つ。
トトメスLv75
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
トトメスは恐らくトトメス3世の事だろうな。エジプトのナポレオンと評されるファラオで領土を大幅に拡大したことからそう呼ばれている。こいつが軍師で軍の配置や新たな軍を呼び出したんだろう。
「くそ! は!?」
ファリーダと目が合うとトトメスの顔が絶望に染まる。しかしすぐさま神官たちが援護に来るがファリーダに吹っ飛ばされる。
「タクトには悪いけど、私も燎刃に相手を取られたから相手をしてくれるかしら?」
「冗談じゃない! 魔神なんかと戦えるか! お前たち、こいつに一斉攻撃しろ!」
「「「「は!」」」」
「いいわよ。全員纏めて相手をしてあげるわ!」
こうしてそれぞれの相手が決まる。
「ルーナ、スネフェルを頼む。ジョセルは俺がやる」
「はい!」
「僕もファラオだ! 負けないぞ!」
「私も負けるわけにはいきません!」
俺たちがそれぞれの相手と激突する。ジョセルとアメンホテプは普通に強い。俺たちの斬撃を素手で防いで来ている。
そんな戦闘をしている間に転移しようとしたトトメスにファリーダの拳が腹に決まって、終了する。軍師に戦闘をさせたら、こうなることは分かっていた。
次にピンチなのはスネフェルだ。ルーナが次々石板を斬って、距離を詰めると後ろに下がるがいつまでも下がれるものではない。追い詰められたスネフェルはルーナに斬られて終わった。まぁ、トトメスと比べたら、かなりマシな最後だ。
俺たちが戦闘している間に軍隊はボロボロだ。もうジークは地上でドラゴンクローとドラゴンテイルで敵を吹っ飛ばしており、月輝夜も殲滅している。勝利の加護持ちの軍隊なんだけどな。それが全く感じないという酷い戦場です。勝利の加護の存在意義が問われてますよ。加護の中でもかなり強力な加護なんだけどね。
ここで遂にアメンホテプの弓が壊れてしまう。するとアメンホテプは拳を構えた。
「最初は邪魔が入ったが今は邪魔する者はいないだろう。最後までファラオらしく戦わせて貰うぞ」
「望むところです!」
アメンホテプの格闘技はかなりのレベルだったが流石に燎刃と生大刀を相手にするのはきつかった。燎刃が両手を斬り飛ばして、勝負ありだ。
俺とジョセルの戦闘はお互いに一歩も引かない戦闘になっている
「神拳! 神剣! はぁ!」
「くぅうう!? はぁあああ!」
「ぬぅうう!」
ジョセルは旭光近衛の速度に完全に対応しており、刃を表面を殴ることで器用に斬撃に対処してから神拳の連打や鋭い蹴りが飛んできた。それを受けた俺は下がってしまうがすぐさま斬りかかり、接戦となる。ここでジョセルが聞いて来る。
「どうした? なぜスキルを使わない?」
「あなたほどのファラオには実力で勝ちたいと思うのは当然ではないですか?」
「ふ…嬉しいことを言ってくれるな! はぁ!」
「く…」
俺が吹っ飛ばされるとジョセルは拳を構える。
「そこまで言われたなら私も本気を見せよう。神技! ゴッドクラッシャー!」
「受けて立つ! 森羅万象!」
魔力で作られた黄金の神の拳が俺に向かってくると俺は森羅万象でゴッドクラッシャーと激突するとゴッドクラッシャーは旭光近衛に斬られて、そのまま間合いを詰めて、ジョセルの首を斬った。
「…見事だ。異国の英雄たちよ。お前たちならオシリス様に挑む資格があるだろう」
そういうとジョセルは倒れ、光となって消えた。
「安らかに眠ってくれ。歴代の偉大なファラオたちよ」
俺たちはその後、俺たちに向かって来た神官たちを始末しながらジークと月輝夜の戦闘が終わるまで見守ることにした。そして戦闘が終わったことを確認して、俺たちはオシリスがいる謎の建造物に向かった。




