#1254 ラグナロク第一回会議
今日の夕飯はおでんの出汁を使ったうどんを作って見ました。昔、コンビニで食べて以来、このおでんうどんの美味しさに目覚めてしまった。そんなうどんを食べた俺はログインするとリアンにがっしりホールドされている。
「先輩…」
寝言と共にリアンの可愛らしいお腹の虫が鳴いた。流石に空腹が限界みたいなので、リアンを起こすとみんなを連れて、魔王同盟の祝勝会でご飯を食べる。
そこでみんなの報酬の話を聞くとみんなは倒したモンスターたちを解体しており、結構な個人報酬を貰っていた。
「このスープ、不思議な味がしますね」
「このお肉も食べたことがないだよ? セチアちゃん」
「このお魚も不思議な味がします」
疑問に思った一部のプレイヤーが鑑定すると急に咽たり、店を飛び出したする。どうやら料理人たちが仕掛けたドッキリに気が付いたらしい。
「タクト? みんなどうしたの?」
「お兄様…まさかとは思うけどこの料理…」
「あぁ…今回の解体で手に入った食材を使ったらしいな」
「「「「うぅ!?」」」」
リリーたちやこれを聞いたプレイヤーたちが一斉に外に飛び出した。俺は料理を鑑定する癖がついているので、セーフだった。
「「「「タクトー!」」」」
「ごめんごめん」
「絶対に反省してない!」
「笑ってますよ! タクトさん」
リリーたちに滅茶苦茶怒られるが鑑定した瞬間に黙っていることを決めた。こういう時間を大切にしたいからね。ここでシルフィとサラ姫様がやって来る。
「遅れてすみません。皆さん、どうかしましたか?」
「「「「べ、別に何もない(です)よ?」」」」
リリーたちはシルフィたちにも料理を食べさせる気だ。そしてシルフィたちにも料理が出されて、これを食べてしまった瞬間にリリーたちはガッツポーズを取る。本当に俺の性格がリリーたちに悪影響を与えているよ。
「ん? どうかしたんですか?」
聞かれたので、リリーたちがネタ話をする。
「シルフィ。この料理ね。昨日の宇宙の戦闘で手に入った食材を使っているんだって」
「へー。そうなんですか」
「道理で食べたことが無い味がするわけだな」
「「ん?」」
二人が重要な事に気が付いてしまった。
「それって、星鯨の肉とかの意味ですよね?」
「まさか武装した変な蛙の肉とか言わないよな?」
リリーたちは素材を知らないので、俺を見て来る。俺はサラ姫様の危惧が正解しているので、これを使った料理人たちを見た。彼らの食堂に逃げ込む姿を見たシルフィとサラ姫様は悟る。
「嘘!? う…」
「気分が…」
そりゃあ、そうなる。因みにこの後、ちゃんとした豪華な料理が出されたがリリーたちは何度も何度も大丈夫か聞いて来た。そしてシルフィとサラ姫様のヘイトは何故か俺に向く。
「やってくれましたね…タクト。今回の雑務処理でへとへとで楽しみにしてたのに!」
「全くだ」
「俺がやった訳じゃないって」
今回は料理人たちが仕掛けたドッキリで俺は関わっていない。何せ食材が手に入ったことも料理を鑑定して初めて知ったからね。それを信じて貰えないのは俺がそういうことをしそうな人間だからだろう。因みに知っていて、黙っていたことは認めました。
ここで俺は料理を運んできたウェイトレス姿の銀から皿裏に隠された紙を合図されたことで気が付き、受け取る。こんな報告のされ方をするってことは極秘の内容だ。後で見るとしよう。
ここからは会議の時間だ。まず今回の戦闘での各国の被害が伝えられる。アザトースの艦隊からの攻撃まで完全に防ぐことは出来ず、各地で被害が出たらしい。この場で生産職たちが被害を受けた各地の村に支援を発表することになった。
そして各自で報酬の話をする。俺が得た報酬はそのまま俺の物になることが決まった。それが終わると今後の話をする。
「まずラグナロクについては開始される前には動いておいたほうがいいですね」
「基本的には防衛戦って形になりそうだもんな」
「防衛戦で守りながらボスを見つけて仕留めるって形ですね」
「問題は敵の戦力と出現場所だな」
「この大陸が標的にされるのは明言されているので、桜花は取り敢えず安全だと思いますけど、相手がロキだからな」
どこまで信じていい物かみんなも分からず、一応準備だけはしておく結論となる。
「攻めるとなるとやはりユグドラシルの下ルートか?」
「そうですね。オーディンのクエストと一緒に進めたいところです」
「グレイプニルは俺たちに任せてくれ」
クロウさんたち、やる気満々だね。後はレーヴァテインと雷鎚ニョルニルだが、これは各自でチャレンジすることになった。
次に議論するのは次の魔王同盟としての攻略についてだ。俺たちの次の攻略目標はイクスが仲間になるきっかけとなった無人島イベントで戦ったアスタロトの領地となる。もう既に準備は出来ており、後は仕掛けるのを待っている状態だ。なので時間だけを決める。
「全員の集まりがいいのは水曜の夜かしら?」
「だな」
定時退社日が水曜に多い関係で平日で集まり安いのは水曜みたい。なのでアスタロトの領地攻略日は水曜の夜に決定した。それ以外は基本フリーだ。ここで各自の報告がされる。まずアザゼルの領地の下がベルゼブブの領地であることが判明した。この場所が滅茶苦茶やばい所だった。
「ごみだらけのフィールドですか…」
「あぁ…ゴミの臭いと汚物の臭いがして、対策なしだと毒や感染症になるフィールドだった。その上、臭いの霧で視覚が悪く、暑さもやばい」
「防護服を着ていると暑さで死ねます。とはいえマスクとかは必須なので冷感能力がある完全防護服が必須だと考えてます」
臭い攻めはベルゼブブが蠅の魔王だとされているからだろう。これを聞いた俺はベルゼブブ攻略を辞退することを決めた。理由は臭いに敏感な召喚獣たちにとって、最悪のフィールドだからだ。
「つまり召喚獣や猛獣使い、馬なども使えないと見るべきか…」
「移動要塞はそっちに配備したほうが良さそうですね」
「確かに移動要塞があると非常に助かるな。是非頼む」
臭いとかから解放される拠点があるのはかなりでかそうだからな。それでもまず装備を整えてからじゃないと攻略出来ないからまずは暗黒大陸の北エリアの周囲を解放して行くことが決まった。
「南のエリアは結構攻略しましたからそちらの攻略を手伝った方がいいですか?」
ルークたちはシトリーとベレトと戦ったらしい。どちらの魔王も『ゴエティア』に載っている魔神でシトリーが豹の耳に尻尾があるセクシーな悪魔として登場したそうだ。敵としては動物姿のサキュバス軍団が現れた。その結果、これは女性プレイヤーの同盟が撃破した。
ベレトはルークがサマエルを召喚して倒したらしい。ベレトは青白い馬に乗った王子タイプの悪魔として現れた。これならまだ良かったのだが、召喚獣が嫌う大音量のラッパとキュートな長靴をはいた猫軍団を前にしてチロルたちは戦えなかったそうだ。
「いや、そのまま南西攻略してくれ。どうしても必要になったら、声をかけさせて貰う」
「了解です」
次はハロウィンイベントで解放された町についてだ。こちらも無事に解放したらしいのだが、問題は進める攻略だ。
「西がヴァンパイア、東がベリアル、南がルシファー、北が海ですか…」
「話を聞いた感じだとシトリーの東エリアが日中でも暗闇になっていたので、そこがヴァンパイアのエリアですね」
「ヴァンパイアのエリアはどうする?」
「ヴァンパイアはサタンとは協力関係にはないようなので、放置でお願いします。もし俺たちと敵対すると言うなら俺とセフォネがなんとかします」
「わかった。とはいえルシファーの領地は結界で包まれて入れなかった。ベリアルの攻略をするならしっかり準備した方がいいだろう。こちらの攻略組は北エリアを手分けさせて貰う」
つまり北エリアの攻略が北西組と北東組に別れる形となった。そして俺たちの方面も攻略状況が報告される。
「ラーマたちの村にはナラーンタカの軍が透明化状態で襲って来たで。透明化はヴィビーシャナが破って、ナラーンタカは伝説の通り、アンガダが倒して、防衛は成功したわ。その軍の中にはヴィビーシャナの部下もおったらしくてな。戦力アップとヴィビーシャナの信頼はなんとか得られそうな感じや」
「ラーマは無事にガルダ神の協力を得られたようです。既にトリプラースラの都市跡地に送り届けました。そこでハヌマーンも帰って来て、フィールド状況が分かるようになりました。どうやら目的地に行くには荒野と森を抜けると湖があり、その真ん中に島があるらしいです」
「その島がランカー島になるわけね」
伝説の通りだと荒野と森で恐らくイングラジットが率いる軍と激突する。これに勝てば恐らく残すはランカー島にいるラーヴァナとの決戦だ。
「日曜日の昼からラグナロクであることを考えると土曜日に一気に攻略する形がいいかしら?」
「ですね」
それまでは各自の判断で動くことになる。これで各自が解散すると俺は銀に渡された紙を見る。
『ライヒ帝国がエクスマキナ提供の武器を狙っている情報あり』
予想を裏切らないな。この情報は恐らくライヒ帝国の忍者仲間からの情報だろう。わざわざこんな方法で連絡される辺り、俺だけでなくこの場にいる全員が目を付けられているな。下手に諜報員か何かを見つけても曹操の怒りを買うだけだし、こっちはこっちで動くしかないな。
取り敢えずは劉備と孫策、ワントワークには警告しておかないといけないな。最低でも日曜日までは動かさないようにしないとね。ラグナロクイベントの標的はこの大陸と言われている以上、各国が攻撃される可能性が極めて高い。
そこでライヒ帝国でかなりの損害が出れば曹操も変な気を起こすことはしないだろう。戦争というのは勝ってこそ意味があるからね。自分の国がボロボロ状態で他国に戦争を吹っ掛ける程、曹操は馬鹿じゃないはずだ。後ろには司馬懿もいるしね。
ここで俺はあることを思いついた。諜報員がここにいるならそれを逆に利用しない手はないな。
「趙雲さん、周瑜さん。ちょっと話いいですか?」
「フリーティアの英雄殿に話しかけられるとはな。なんの話かな?」
「ここでは話せない話なのだろう? 別室で話を聞こうか」
流石は呉を代表する軍師である周瑜だ。俺の意図がすぐにわかったらしい。
「それで話というのは何かな?」
「その前にお茶を入れますね」
俺がお茶を出すと周瑜さんが俺に合わせてくれる。
「美味い…む。これは…なるほどなるほど。よく考えたな」
「面白いでしょ?」
「あぁ…そうだな…我が国としては実に興味深い話だ」
俺と周瑜さんが趙雲さんを見るとこちらの演技に趙雲さんも気が付いた。趙雲も諸葛亮が信頼するほどの賢さを持っている英雄だ。そして俺たちに瞬時に合わせてくれる。
「なるほど…そういう仕掛けか…この話は本気か?」
「はい。俺の話は以上です。貴重な時間を取らせてしまい、申し訳ありません」
「何…有意義な時間だった」
「ですね」
そして俺たちは別れるとそれを見ていたシルフィは何も言わず、俺たちはフリーティアに戻るとホームに入る。
「そろそろ聞いてもいいですか?」
「そうだね。ライヒ帝国がエクスマキナが提供している武器に興味を持っている情報が入ったんだよ。あの場にはライヒ帝国の人間と恐らく諜報員もいたから、わざと密談しているかのような演技をしました。これでライヒ帝国が上手く警戒してくれるといいんですけどね。信憑性を上げるために時間がある時にお土産を持ってお邪魔しようかと思います」
「やっぱり悪巧みをしていたんですね」
「タクトはそればっかりなんだよ! あ!?」
リリーの背後に回って、頭を捕まえる。
「俺のステータスは筋力以外全部リリーを超えているんだぞ?」
「あ、あわわわ…み、みんな」
イオンたちは一斉に知らん顔をする。絶望したリリーをたっぷりお仕置きをしてから俺は予定がある程度、固まったのでここでテューポーンに杖に付いてリクエストを聞いてみた。
『どうせならオリハルコンとアダマントの杖が理想だな』
『え? 相性悪いんじゃないか?』
『間違いなく悪い…だがゼウスの奴が嫌がるだろ?』
なるほど。嫌がらせ目的なら協力せざるを得ないな。ここでヘーパイストスとセチアと協議する。
「封印石の杖なら金属の杖でも十分行けるので、大丈夫ですよ。魔法杖には出来ますか? セチアさん」
「行けると思います」
というわけで二人にはテューポーンの封印杖を注文した。セチアは現在作製しているエアリーの鎧の仕事が終わってからの作業となる。ここからは攻略の時間だ。予定通りサンドウォール砂漠に転移した。




