#127 リープリッヒ開店とプレイヤー到着
翌日、学校で海斗の奴が自慢気に話し掛けてきた。どうやら新しい国に行くらしい。海斗によると他のプレイヤーたちの多くが今日移動するらしい。佳代姉たちも今日って言ってたからな。賑やかになりそうだ。
学校が終わり、気合いを入れる。今日はお店をオープンする日だ。成功するかどうか俺の手にかかっている。
よし!いざ!出陣だ!
ゲームにログインして、ベッドから起きると目の前には四人の可愛いメイドさんがいた。
「「「「お、おかえりなさいませご主人様」」」」
ぐはっ!?ログインしてから速攻で致命傷をおった。
「タクト、大丈夫!?」
メイド姿のリリーが来る。リリーのメイド服はクラシカル。マンガとかでよく見掛けるメイド服だ。
「あ、あぁ…大丈夫だ」
「ふふ。タクト様には刺激が強すぎでしたね」
「あ、当たり前です! こ、こんな格好!」
恥ずかしがっているイオンのメイド服はメイド喫茶でよく見掛けるミニスカだ。恥ずかしいならなぜ着たんだ。ミニスカ抑える仕草が反則だ。
全く恥ずかしがっていないセチアのメイド服はフレンチ。けしからんやつです!セキュリティで何も見えないけど、少しは恥ずかしがってくれ。
恋火のメイド服は和風。ホッとする。巫女服をいつも見てるから不思議と違和感がない。
今回は感想を聞かれなかった。セチア曰く。
「聞くまでもないですから。タクト様の反応が答えですよ」
くっ!ぐうの音も出ない…仕方ないだろ。普通のウェイトレス姿だと思ったんだがらさ。
「というかなんでメイド服なんだよ?」
『アウラさんがお店をするならこれだって』
因みに最初の言葉もアウラさんの差し金だったわけだな?何やっているんだ!あの人は!ありがとうございます。
しかし問題はこのままリリーたちをお店に出すと完全にメイド喫茶になるんだが…どうするんだよ…これ。
俺が下に下りるとレギンさんがいた。レギンさんの姿はレストランの普通のウェイトレス姿だ。おい。
「タクトさん、お店の前に凄い行列が出来てますよ」
え?マジで?外を見るとお店の前にかつてない行列が!?
に、逃げ場を封じられた。せめてリリーたちの服装をなんとかしたいがメイド服しか貰っていないらしい。しかもリリーたちはやる気満々だ。
アウラさん、リリーたちに何か吹き込んだな。
はぁ、仕方ない…このままオープンするか。
「おまたせいたしました。『リープリッヒ』オープンいたします!」
俺がそういうと歓声が起こる。そこまで楽しみなのか?
ハチミツジュースが飛ぶように売れていく。値段はアウラさんが決めたものだ。俺はジュースを作るだけでいっぱいいっぱいだ。
作ったジュースをリリーたちが忙しなく運んでいる。絶対何か起きると思っていたんだが、ちゃんとジュースを運んでいる。これなら大丈夫そうだ。
お店に来た目標は大きく二つあるみたいだ。ハチミツジュースが美味しいと聞いて来た人とリリーたちの可愛い姿を見ることが出来ると聞いて来た人だ。
リーゼ様とアウラさんの仕業だ。だがそれが無くてもある程度人が入ったみたいだ。理由はリリーたちだ。思い返してもメイド服を着なくても人気があった。
人はリリーかレギン、リザードマンはイオン、ドライアドはセチア、セリアンビーストは恋火をわざわざ指名している。
途中でリーゼ様とアウラさん、ネフィさんも来た。約束はちゃんと守ったよ。後が怖いからね。
しかし俺は普通の喫茶店をしたかっただけなんだが…どうしてこうなった?
お店を閉める。
『疲れた(ました)!』
全員が椅子に座る。たくさんあったハチミツが半分程に減ったぞ。当然料理スキルが上がった。お金もざっくりだ。お店の売上はルインさんと半分の約束だけど、それでも大金だ。
これがあれば食材には困らないかな。
しかしこれを続けるのはきっついな…やはりお店を出すのは生産職じゃないといけないというのがよくわかった。
「レギンさん、お疲れ様でした。助かりました」
「タクトさんもお疲れ様です。こういうの初めてで不安でしたがお役に立ててよかったです」
そりゃそうだろ…ワルキューレがウェイトレスなんて聞いたことがない。現時点では名前が一緒という話だけどね。
俺はレギンさんに報酬を渡し、夕飯のためにログアウトする。
夕飯と風呂を済ませて、ログインする。
下に下りるとお客さんがたくさんいた。ルインさんたち、メルたちとルークたちだ。お店の中、ぎゅうぎゅうなので、召喚獣を石に戻す。
『あぁ~!?』
ロコモコを堪能していた女性プレイヤーたちから悲鳴が…欲しかったら、自分で召喚してください。
というかメルたちのメンバーを初めて見たが俺は彼らを知っている。だが先に全員に謝らないとな。
「いらっしゃい。悪いな…忙しくて返事返せなかった」
料理している最中にメールが大量に来ていたのは知っていたがとてもじゃないが返す余裕がなかった。
「お店、大繁盛だったみたいね」
「はい。お金はかなり稼げましたけど、大変でした。生産職は大変ですね」
「たぶんタクト君の場合は例外よ。リリーちゃんたちに助っ人NPCがいるからね」
ガタッ!
男性プレイヤーが立ち上がった。なんだ?
「リリー様と一緒にお店だと?」
「そうだけど? リリーたちは単独行動が出来るようになってるから助かってるよ」
『えへへ~』
リリーたちが嬉しそうで、ちょっと自慢気かな?
「助っ人NPCってまさかそこにいる美少女?」
「そうだけど? 昨日雇ったばかりだ」
「お店の衣装はそこのNPCと同じ?」
「リリーたちは何故かメイド衣装で接客していたよ」
『お店開いてください! マジお願いします!』
男性プレイヤーが全力でお願いする。気持ちはわかるぞ。だが…
「却下」
「そ、そんな…せめてメイド衣装姿を」
「なお却下」
リリーたちのメイド衣装なんて見せられるか。俺がそんなことを言っているとメルたちのメンバーの一人が声をかけてきた。
「すっかり頑固親父になったね。タクト」
「お前は相変わらずもやしだな」
「あはは! 懐かしいね。その呼び名! でもだいぶ変わったでしょ?」
このもやしの名前は宮内真也。ゲーム名はレッカ。佳代姉と暮らしていた時の学校の友達で昔はガリガリで一緒にゲームで遊んでいた仲だ。
因みに俺はゲームでこいつに負け越している。
「そうだな。えのきに昇進させてやるよ」
「なんできのこなのさ…」
「言っていいのか? お前のプライバシーに直撃するぞ」
俺が真也の下を見る。それだけで奴は察した。
「やめてよ!? というか相変わらず容赦ないね」
そこでもう一人の男性プレイヤーが話しかけてきた。
「このやり取りも懐かしいがな。久しぶりだな。タクト」
この人は佳代姉の男友達。俺が佳代姉たちの所に住むようになって、いきなり殴り合いの喧嘩をした水野賢吾。ゲーム名はケーゴ。適当に決めたな…この人。喧嘩の理由は本人のために言わないでおこう。ヒントは佳代姉。
「よくメルとパーティー組めるな」
「ぐ…仕方ないだろ? 頼まれたら断れないんだよ」
やれやれだ。男は辛いね。
最後は俺が精神的に苦手だった人。佳代姉の友達でスポーツ万能だった川口 桃子先輩。ゲーム名はユーコ。俺が苦手な理由が…
「タクト君! 決闘! 決闘しましょう! もちろん受けてくれるよね?」
「もちろんお断りします」
子供のころから戦えだのうざかった記憶がある。それは今も変わらないようだ。
「えー。本気のタクト君と戦いたいな」
「いいですよ。俺の召喚獣が相手になります」
「あはは! それもいいね! いざ尋常に」
俺はアラネアとサビクを召喚する。
「…勝負は待とうか。うん」
この人は虫やヘビとか苦手なのだ。まぁ、女性なら苦手なのは当たり前かも知れない。
「く…私の苦手な召喚獣を用意するとは卑怯な!」
「へいへい。卑怯で結構です」
「うぅ…昔は可愛げがあったのに!」
「いやいや、こいつは昔からこんな感じだったぞ?」
「そうそう。戦略ゲーで徹底的に潰してくるタイプです」
やったことないゲームと嘘をついて、ボコボコにしてきたやつに言われたくないな。そこでルインさんが入ってくる。
「積もる話はあるでしょうけど、タクト君は用事とか大丈夫かしら?」
「今日の召喚がまだなので、召喚をして、レベル上げに行きたいですね」
『召喚!』
全員が反応する。どうやら全員まだみたいだ。それじゃあ、獣魔ギルドに案内するとしますか。
名前 タクト 中級召喚師Lv7
生命力 41
魔力 82
筋力 30
防御力 20
俊敏性 26
器用値 57
スキル
格闘Lv7 蹴り技Lv12 杖Lv18 片手剣Lv8 投擲Lv3 高速詠唱Lv7 召喚魔術Lv20
封印魔術Lv2 錬金Lv9 採掘Lv14 伐採Lv11 解体Lv21 鑑定Lv10 識別Lv17
風魔法Lv20 火魔法Lv20 土魔法Lv20 水魔法Lv20 闇魔法Lv19 光魔法Lv25
雷魔法Lv18 爆魔法Lv17 木魔法Lv16 氷魔法LvLv16 時空魔法Lv16
読書Lv8 料理Lv21→Lv25 餌付けLv6 釣りLv8 シンクロLv4
2章で恋火の登場級の爆弾を投下しました。
思えば1章で料理のバイトしてからようやく書けました。いやー、長かった。
因みにメイド衣装のリリーたちは仕事着なので、お店のお手伝いをするときはずっとメイド姿です。
※小学生を働かせることは労働基準法で原則禁止となっています。例外はありますが、メイド喫茶は間違いなくアウトなので、ゲームの世界だけでお楽しみください。