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#1242 四元の支配者

ヘーパイストスとパンドラの間に勝利の空気が漂う中、怒りの声がそれをぶっ壊す。


「よくもやってくれたな…異星の神と人形風情が」


「わぁあああああ!?」


「きゃあああああ!?」


ギャラクシータロスが吹っ飛ばされるとぶっ飛ばした何かが更に追撃に出るが恋火がそいつに襲い掛かって、追撃を止める。


「やらせません」


「邪魔をするな。虫けらが! 核爆!」


「きゃああああ!?」


恋火はまさかの初撃ゼロ距離から核爆で吹っ飛ばされるが和狐がキャッチする。そして敵の為にファリーダと燎刃が陣取る。俺は敵を識別する。


異星炎魔神クトゥグア?

? ? ?


そいつの姿は人というより悪魔に近かった。燃えている漆黒の身体の胸には一つ目がある。顔は炎で出来ており、そこに獣のような口に左右の目の間に縦の目があった。背には炎の翼がある魔神だ。


「やっと会えたわね。異星の魔神さん」


「ふん…邪魔をするな。異星の魔神。俺は今からあの鉄くずを破壊せねばならんのだ」


向こうからすると確かにファリーダは異星の魔神になるな。


「あれに乗っているのは某たちの大切な仲間、破壊などさせると思いますか?」


「ふん…身の程を知らんな。家畜風情が」


お互いの怒りのボルテージが上がって、その空間の灼熱地獄の熱気になっていく。そして遂に激突する。


『大丈夫か? ヘーパイストス、パンドラ』


『全然大丈夫じゃありません! 身体に付いた肉が蠢いてまだギャラクシータロスを侵食しています!』


『助けて! おじ様ー!』


『とにかく中継基地に行ってくれ。そこにぷよ助を向かわせる』


ぷよ助ならたぶん全部食べてくれると思うがこちらの常識で測れないのがきついところだ。一応ルインさんに報告して、万全の体制を整えて貰う。基地が落とされるのだけは絶対に避けないといけない事だからね。


俺はクトゥグアの方を見る。


「「はぁあああああ!」」


ファリーダと燎刃はクトゥグアの左右から襲い掛かる。するとイフリートバトルアックスと生大刀の攻撃を腕で止められる。


「ふん…」


「「っ!?」」


あっさり二人が弾かれると二人は頭を掴まれ、二人で頭突きをさせられるとまたゼロ距離の核爆を喰らい、二人がぶっ飛ばされると二人に炎の鞭が巻き付き、拘束すると近くにあったバトルシップに叩きつけられる。


その一撃でバトルシップのシールドは破壊され、二人は船に落下して上を見るとクトゥグアが落下して来て、二人を踏み付ける。


「「が!?」」


「弱いな…猛爆!」


二人はバトルシップ諸共大爆発に巻き込まれてしまった。


「バトルシップがあんな一瞬で落されるのか…」


「炎の魔神だからこそだと思われます」


「そうだな…」


攻撃力破壊特化の魔神。みんなの事は心配だが、俺は戦況全体を見ないといけない。まだシュブ=ニグラスにアブホースもたくさん残っているのだ。


「あはははは! クトゥグアの奴、船落とされっちゃっているよ! 兄さん!」


「だっさいな! 弟よ!」


「うん! だっさい! だっさい!」


「私たちも被害を受けたんです。あまり笑える状況ではないですよ」


「あはは! もう修復は済んでいるし、無理無理」


異星の魔神たちに教えてあげたい。それは俺たちの世界ではフラグと言うんだよ。折角言ってくれたんだからその期待に銀たちが答える。


「「「「どっかーん!」」」」


銀たちがそう言うとシュブ=ニグラスの内部から小規模でたくさんの核爆発が発生したことで二つのシュブ=ニグラスは閃光に包まれ、超爆発する。


銀たちが使ったのはリュックに背負える小型核爆弾だ。これを背負った状態で影分身を使うと分身体も小型核爆弾が入ったリュックを背負う。分身スキルは装備品を模倣する特性から忍者たちが考えた新戦術だ。


後はハデスの隠れ兜で敵にバレる事なく、シュブ=ニグラスの中を走り回り、爆破したいところに配置して、核爆弾のスイッチを押せばいい。分身体が死んでも何も問題はないからね。こんな自爆戦術をよく考えたものだ。俺も勉強になる。


シュブ=ニグラスに潜入を許した時点で取り敢えずシュブ=ニグラスを落とせる自信があった。問題はここからだ。


「…やってくれたね。家畜」


右側のシュブ=ニグラスの爆心地に新たな魔神が現れる。


異星風魔神ロイゴル?

? ? ?


こっちの名前で来たか。クトゥルフ神話の風の王はロイガーとツァールとは別名でロイゴルという名前が登場する。ただこちらの場合だと一柱のみの言い方だ。俺たちは声が二つ聞こえたから二柱の神が登場すると思っていたが現れたのは一柱のみだった。


身体は緑色で顔全体を隠している白い仮面を装備している。仮面の目の部分は黒で目のような赤い目がある。背中には蝶のような虹色の羽に手が千手観音のようにたくさんあった。ただし手の一つ一つには一つ目がある。


そして左のシュブ=ニグラスから魔神が現れるが現れたのはジェル状の謎の生物だったがそれが球体になると魔神本体が姿を見せた。


異星水魔神イタカ?

? ? ?


イタカも前に名前が挙げたイタクアの別名の神だ。どちらかというとイタカのほうが有名かもしれない。イタカは魚人のような魔神だった。体は黒と青色でなんとも不気味だが髪の毛が白髪で。知性を感じる顔をしている。


「やれやれ。だから私は言ったんですよ」


「へーん! どれだけ言っても自分もやられていたら、意味ないじゃん」


「そうですね…私たちが召喚獣やエクスマキナばかり注意した結果です。甘んじてこの大失態を受け入れましょう」


「お前のそういうところ、嫌いなんだよね」


「それはお互い様ですよ」


このまま潰し合ってくれたら、良いんだけどそんな風にはいかない。


「ま、今は先にこいつらを倒されないとアザトース様に消されるからちゃっちゃとやりますか」


「そうですね」


ロイゴルとイタカが動こうとした瞬間に進路を塞ぐようにドラゴンブレスが放たれる。


「簡単には行かせないの」


「あなたの相手はこっちです」


「面倒臭いなー。どうせ全員死ぬんだから大人しくしていろよ。怪風!」


みんなはテューポーン戦を経験しているからこれの回避に成功するがアリナも含めて、みんなが驚く。


「うそ…宇宙空間では風属性は使えないはずだよ」


シフォンの言う通りでこのゲームの宇宙空間では風属性のスキルは使用できない。それなのにそれをいきなり破って来た。


「どうして僕たちが風の魔神にまで昇り詰めれたと思う? 僕たちがこの宇宙空間で風属性スキルを使用することが出来るようになったからさ!」


こいつの加護の力か。アリナやシフォンにとってはかなりの屈辱だ。それでもみんなは引く気はなく戦闘は続く。ロイゴルは基本的に手から大気波動や旋風刃を放ってきた。手が沢山あることで死角がなく、どこにでも連続攻撃をしている。しかしその程度で止まるシフォンでは無かった。


「アクセラレーション! はぁあああ!」


魔導書で加速したシフォンは攻撃を掻い潜り、斬りかかる。


「ふ…」


「雷光」


シフォンの斬撃が雷速で躱される。いや、それよりも雷光スキルを使った声が違っているぞ。


「雷拳! あははは!」


「くぅうう! きゃあああああ!?」


シフォンは雷速の拳の連打を受けて最後にぶっ飛ばされる。アリナがロイゴルを見ると仮面から角が生えていた。


「この魔神、同じ体に二柱の神がいるの!」


二重人格ってことか。それなら一体で声や雰囲気が変化する説明が付く。


「あは! よく気が付いたね! ご褒美に虐めてあげるよ! 荷電球!」


「くぅうう…脱出!」


「逃がさないよ…ほーら! 喰らっちゃいなよ!」


「きゃあああああ!?」


アリナの目の前に突然現れたロイゴルは手に荷電球を作り出すとアリナにぶつけて来た。アリナは咄嗟にガードして、その間に脱出するが脱出先を読まれて、頭を掴まれると躱した荷電球に顔を押し付けられる。


「アリナちゃん! この!」


「あは…掴まえた」


「あ!?」


助けに入ったリリーだったが攻撃が躱されると沢山ある手の二つに捕まってしまう。


「リリーお姉様! この!  エンジェルダイブ! な!?」


「君も一緒に喰らいたいなら望みを叶えて上げるよ。ほーら!」


「「きゃああああ!?」」


背後からエンジェルダイブで襲い掛かったブランだったが槍を手で止められて、エンジェルダイブもそこから先に進めなかった。そしてリリーとブランはアリナが喰らっている荷電球に放り込まれて、荷電球は爆発する。


ここで千影が襲い掛かると千影はまた武器を掴まれそうになり、後ろに下がったところでロイゴルが最初の仮面のに戻ると手が拳を握る。


空拳(くうけん)!」


圧縮された空気の拳が千影に連続で襲い掛かる。千影が飛び回り回避する。


そしてイタカの方でもイオンたちが戦闘を開始するがイオンが斬りかかるとイタカの周囲に展開されている水球がジェル状のモードになって、イオンに襲い掛かるとイオンは危険を感じて距離を取る。


「いい読みです」


「イオンお姉様、あのジェルの敵、ぷよ助さんより厄介みたいです」


「あなたも未来が見えますか…では隠しても無駄ですね。このイタクアは私の相棒です。とても食いしん坊で、ありとあらゆるモノを取り込み、食べます。それこそ」


イタクアと呼ばれたジェル状の生命体は急にシュブ=ニグラス以上に膨張するとイオンたちを吞み込もうとする。


「氷山!」


イオンが氷山を出すとイタクアは氷山を包み込もうとする。その間にみんなが距離を取るが氷山が跡形もなく消滅してしまう。


「星一つを一瞬で食べてしまうほどです」


「…あの体に触れること自体避けた方が良さそうですね」


「え…でもそれだとどうやって攻撃しますか?」


「遠距離攻撃しかないですよ…ドラゴンブレス!」


イオンがドラゴンブレスを放つとイタクアに吸収される。


「無駄ですよ。それと氷山!」


イオンたちやエクスマキナの艦隊の頭上に巨大な氷山が落下してくる。これはなんとかエクスマキナの艦隊が破壊する。


「私もこれぐらいは出来ます」


「自慢ですか?」


「いえ。ただ私の実力を知って貰いたかっただけです。私は彼らと違って、あなたたちを評価しているんですよ。特にあなたたちの主は称賛に値します。私に我らが主神を倒す未来を見せるなど普通ではあり得ませんからね」


イオンたちは驚愕すると同時に俺たちの切り札が敵にバレていることを知る。


「く…」


「安心しなさい。この事は今、知った事。アザトース様や他の者は知りません」


「それを信じろと?」


「えぇ…それは言っても信じて貰えるかは分かりませんけどね。ただ一つだけ言っておきます。私たちとアザトース様は対等な立場ではありません。私たちは彼女の命令で動きますが私たちから彼女に何か意見を言うことなどないのです。雄一例外はナイアーラトテップでしたね。あなたたちの星の神もそんな感じでは無いですか?」


確かに創造神というのは各神話でも最強の神に位置している。基本的には孤独なイメージが強い。同一の神がいてもニ、三柱が普通かな?少なくとも創造神クラスの神と主神クラスの神の接点はほぼないと言っていい。エジプト神話が例外になるかな?ラーと創造神を同一に扱ったりするからね。このゲームではどうなのか分からないから結構びくびくしているところです。


イタカの問いにリアンが答える。


「確かに創造神に意見を伝える機会はほぼないです…世界を創造したら、基本的には世界から放れて、私たちを見守ってくれているのが普通だと思います」


「やはり同じですか…さて、無駄話はこれで終わるとしましょう。あなたたちの切り札の鍵は別のところで戦っているので、私はあなたたちを倒して少しでも力を弱めるとしましょう」


このイタカという異星の魔神は他の異星の神と全く違う感じがするな。話の感じからすると未来予知の能力があるから何かを悟っている感じがする。それにさっきのやはり同じですかという言葉には何か諦めや悲しいのような感情を感じた。


そんなイタカが戦闘に気持ちを切り替えると強さを発揮する。まずイタクアがジェル状の身体から牙が沢山ある口を出すと青い閃光がイオンたちに放たれ、イオンたちが回避するとバトルシップのシールドを閃光が貫通し、バトルシップが炎上爆発する。


この三柱の魔神。強さが異常だ。というか本当にナイアーラトテップと同格なのだろうか?明らかにナイアーラトテップより強く感じる。少なくともマザーシップ単体で彼らに勝てる気はしない。


俺のこの疑問をイオンが代わりにイタクにぶつけてくれると答えてくれる。


「その疑問は持つでしょうね。あなたたちが戦ったナイアーラトテップはあなたたちの星に潜入するために自身の神格をアザトース様に返還していました。悪意を持つ異星の神をその星の神が放置するはずがありませんからね。だからわざと神格を落とすことであなたたちの星の神の目をすり抜けたんですよ」


つまり本来の力を無くしてまで潜入をしていたわけだ。そのプロ精神は敵ながら凄い事だな。だからこそナイアーラトテップはアザトースに意見を言える立場だったのかもしれない。


それにしても弱体化状態でポセイドンたちと戦ってアトランティスに結構な被害を与えたんだから滅茶苦茶強い敵だったのは間違いない。


そしてアトランティス人の真実を知った今となってはナイアーラトテップがアトランティスを狙ったのには色々な意図がありそうな感じもするな。


俺たちは取り敢えず全艦隊を中継基地にまで一度引かせることにした。この三柱の魔神との戦闘に艦隊を巻き込ませたら、被害は拡大する一方だからだ。


敵側は引かせる気配はなく、寧ろこっちが引いたことで前進して来た。そんな状況の中でも三柱の魔神とリリーたちとプレイヤーたちの戦闘は激化していくのだった。

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動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
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