#1237 鍛え直された草薙剣と異星戦争、遭遇戦
おでんを堪能した俺は栄養全開、元気満々でゲームにログインする。奇襲作戦前に最後の準備をしていく。まずヘーパイストスがやって来て、強化された草薙剣を持って来てくれた。
神剣草薙剣:レア度10 片手剣 品質S+
重さ:120 耐久値:4000 攻撃力:4000
効果:竜殺し、破魔、神気、英気、瞬間再生、魔力回復、時空切断、魔力切断、万物切断、溶断、溶接、多乱刃、旋風刃、神鎌鼬、神障壁、紅炎、浄炎、天候支配、神雨、日光、後光、烈日、日輪、帰還、自動追尾、自動防御、慈雨、陽光、光吸収、毒吸収、光合成、全反射、乱反射、真昼、熱風、神波動、神罰、起死回生、不屈、神威解放、勝利の加護、太陽神の加護
桜花の三種の神器の一つ。元々は桜花の主神天照大神の剣とされており、桜花最強の大英雄ヤマトタケルノミコトに渡った際に名前が変化した。鍛え直されたことで天照大神の力の大半が元に戻り、かつての姿にかなり近い神剣となった。
まぁ、天叢雲剣は超えてはこないよね。それでもかなり強くなった。これはそのままイオンの装備に戻す。防具は流石に間に合わなかったがこれはしょうがない。
「ギャラクシータロスの準備はいいよな?」
「もちろんです」
「黒鉄には負けないよ!」
パンドラに言われた黒鉄は神気を滾られる。こっちもライバル心、剥き出しだ。そして後回しにしていた成長を実行する。
『イオンの成長が完了しました。超加速、時空操作、爆氷、電弧放電、拡散光線、海震、奇跡を取得しました』
『虚空切断が時空切断に進化しました』
『魔力回復が魔力超回復に進化しました』
『海流操作が海流支配に進化しました』
『イクスの成長が完了しました。堅牢、瞬間再生、神速、電磁場、起死回生、不屈を取得しました』
『虚空切断が時空切断に進化しました』
『神の加護が機神の加護に進化しました』
『リビナの成長が完了しました。神速、暴風壁、怪風、魔力回復、電弧放電、雷轟を取得しました』
『高速再生が瞬間再生に進化しました』
『グレイの成長が完了しました。破魔、瞬間再生、魔力回復、衝撃放射、烈日、超加速、大地支配、樹海支配を取得しました』
『慧眼が心眼に進化しました』
これでよし。次にイクスとの買い物の時に買った星海竜の鎧と星海竜の甲冑、星海竜のローブと今回生産職から配給して貰った星屑のネックレスを装備する。
星屑のネックレスは星間行動しかないネックレスだが、能力が弱い分、大量生産を可能にした。ネックレスならグレイたちにも装備出来るので、滅茶苦茶助かった。これで全員参加することが出来る。
後は料理を作って、最後にアテナとヘルメス、スサノオ、九尾に連絡をとって、シルフィを含めたみんなに作戦の説明をする。まずは俺が考えているアザトースに勝つための最後の秘策について、シルフィに聞く。
「ていう感じなんだけど、出来ると思う?」
「理論上は可能ですが…また凄い事を考えますね」
「相手は恐らく創造神の領域にいる。切り札は大いに越したことはないでしょ?」
「そうですね…でも、分かっていると思いますがそれをするのには条件が結構きついですよ」
そうなんだよね…ただみんなにもこの事は伝えていて、協力して貰えることになっている。みんなも今の自分たちの全力を出して、どこまで通用するか試す最高の機会だからやる気十分だ。後はシルフィに一番肝心なお願いをする。
「だからリリーたちの指揮をシルフィにお願いしたいんだ。俺は今回の戦いは基本的にはマザーシップからの指示出しになるからさ。誰かが制御しないと俺が考えた切り札が不発してしまう」
「失礼だよ! タクト! そんな面白いことを聞いたら、ちゃんと我慢するもん!」
「我慢出来ても今回の戦いは相当厳しいんだ。何と言っても相手はエクスマキナの星を潰した相手だからな。実力ではアンラ・マンユを超えている可能性があると思ってくれ」
流石にこの言葉を聞いて、みんなの顔から余裕が消えて、顔は本気になる。アンラ・マンユとの戦争は俺たちが経験した戦争の中で最も厳しかった戦いだ。今回の戦いは規模でも敵の強さでも超えて来る可能性が高いだろう。その上で俺はみんなを見る。
「だけど、俺たちは確実にあの時の俺たちよりも強くなっている。だから今回の戦いも必ず勝つ。そのためにもシルフィにお願い出来ないかな?」
「分かりました。私はほとんど召喚獣を連れて行けませんし、喜んで引き受けさせて貰います」
シルフィは星屑のネックレスの供給を受けていない。というのもやはりプレイヤーの参加を優先しないとレベル差が広がる一方だし、ただでさえ終わることが確定したゲームだ。プレイヤーを優先しないと更にゲームを辞める人が増えてしまう危険性がある。だからシルフィの召喚獣たちにはアイテムが回り切らなかったのだ。
「助かるよ。そんなわけでシルフィの指示をよく聞くようにな」
「「「「はーい!」」」」
これで俺の準備は完了した。リリーたちを見る。
「それじゃあ、行こうか」
「「「「おぉー!」」」」
俺たちは中継基地に転移するとインフォが来る。
『特殊クエスト『異星戦争』を開始しますか?』
これにはいボタンを押して、クエストが開始され、奇襲作戦に挑む。編成は星海竜の甲冑を装備したダーレーにリアン、ヒクス、スピカ、サフィにした。俺、ヒクスにはブルーフリーダムのリーダーが、スピカにはメル、サフィにはリアンが騎乗する。
リリーたちにイクスとシルフィまで加えないことに不満が噴出する。しかしちゃんとした理由が存在している。
「イクスにはマザーシップにいて貰わないと奇襲で得た情報を伝えられなくなるから困るんだよ。リリーたちもここにいて、追われて来る俺たちを守って欲しい。シルフィはこんなこと言いたくないけど、王女に危険な任務をさせる訳にはいかないんだ。分かってくれ」
「そういうことならわかりました。マスター」
「任せてタクト! タクトたちの命はリリーたちが守るよ!」
「む~。それを言われると引くしかないじゃないですか」
理解を得たことだし、作戦を開始するとしよう。まず奇襲なので、正面からぶつかることは出来ない。しかも次元転移を使ったとしてもアザトース軍のレーダーに取らえれられるので、転移で背後を取ることは不可能だと作戦会議中にアポに教えられた。
結果、俺たちは敵部隊のレーダーに引っ掛からない側面の場所に転移してから奇襲を仕掛ける事になる。
「行くぞ」
俺たちがアポに指示された場所に向かうとスピカが急に反応する。
「え? どうしたの!? スピカちゃん!?」
「敵襲! 全員回避!」
俺の指示でみんながそれぞれ回避行動を取ると無数のビームが飛んできた。
「なんで敵がこんなところにいるの!?」
「向こうも同じ考えだったってことだな」
「奇襲部隊の遭遇戦ですか…」
「そういうことだ。まずはこの奇襲部隊を蹴散らそう。遠距離戦は不利だ。突っ込むぞ!」
「「「「はい!」」」」
俺は同時にイクスに通信を送り、イクスから本隊に奇襲部隊が遭遇戦をしたことが伝えられ、俺たちが選んだ逆方向にも大至急に部隊が出動する。
そして俺たちはホーミングレーザーに対処しながら距離を詰め、敵部隊を補足する。
アブホース?
? ? ?
月サイズの紫色の肉片で作られた船を発見する。アブホースは神話ではアザトースと同じ外なる神に属しており、巨大な灰色の水溜まりのような姿をしている神だ。やはりこのゲームはクトゥルフ神話を独自解釈していることが分かる。
ただやはりある程度の設定は反映するらしい。アブホースの周囲には黒い丸型の球体が沢山展開されていると一斉に黒い球体から一つ目と翼が現れると俺たちに向かって、一つ目からビームを撃って来た。
神話のアブホースは分裂体を絶えず出し、またその分裂体を食べるとされている。これを空母から戦闘機が離着陸する光景と解釈したんだろうな。
俺たちがアブホースの分裂体を斬り裂くと液状化して、元に戻ってしまう。
「ここは任せて!」
「周りの取り巻きを頼む。俺は例のあれを試して見る」
「分かりました。先行します!」
「みんなも行くよー!」
俺たちが更にアブホースとの距離を詰めるとここでアブホースの身体から無数の一つ目が現れて、ホーミングレーザーが放たれる。
「数が多すぎる…きゃ!?」
「チロル!? この!」
「ララ! 後ろ! 小さいのが来てる!」
「は!」
ララのピンチは鉄心さんが斬撃を飛ばして回避させるがまたくっついてしまう。ぷよ助がこれを見たら、バチバチになりそうだな。残念ながらぷよ助は宇宙戦闘出来ないから参加させていないけどね。
「烈日!」
メルが烈日を発動させて、分裂体を完全に吹き飛ばす。こうするのが一番の攻略法だろうな。しかしメルは呪滅コンボを喰らい、アブホースの身体全体から消された分の分裂体が現れる。
「本体を潰さないとダメみたいだね…」
「なら全員でタクト君の突撃を援護するのが一番いいな」
「皆さん! 敵に動きがあります!」
リアンに言われて、アブホースを見ると無数の腕のような物が合われるとその巨大な手に星核が作り出されると俺たちに向かって、投げ込んで来た。
「「「「きも!」」」」
女性陣が全会一致で感想を言ったが俺たちが回避しようとすると身体が動かなくなっていた。見ると分裂体の一つ目が怪しいオーラを出して俺たちを見ていた。俺たちの動きを封じる魔眼か。それならこっちは目潰しをするまでだ。
「後光!」
「動ける!」
「ナイス! タクトさん! みんな、回避!」
俺たちは回避するが分裂体がビームで攻撃して来る。実にうざったいがここでみんなが俺の道を作るために動いて貰った。俺は装備をパラス・アテナの槍に変更して超連携を発動させる。ここでアブホースは腕や身体から無数の触手を出すとその触手の先端には謎の針があった。
「毒!?」
「何かは知らんがいい予感はしないな!」
「一つだけ言える事があるわ…針長すぎやろ!」
たぶん月輝夜とかに注射する設定になっているのかな?人間に刺す大きさじゃない。
「俺、針恐怖症なんだよな…」
「あぁ!? 先輩のやる気がゼロに!? しっかりしてください! 先輩! イクスお姉様のためですよ!」
それを言われると行くしかないな。リアンはよく俺のことを理解しているよ。
「行くぞ! ダーレー!」
「おう!」
俺たちが突撃すると一斉に触手の針が俺たちを狙う。お願いします!刺さらないで!
「「バスターカリバー!」」
「テンペストペネトレイター!」
「閃影!」
「「「「超連携!」」」」
みんなが触手の破壊に動いてくれたが残った触手の針が俺たちに迫るが炎と水の竜巻がこれを弾いて、アブホースの超連携が炸裂する。
「よし! うへぇ…」
「くっせ! 最悪だな。ここ」
アブホースの内部に入った俺とダーレーが見たのは肉片の通路だった。どちらかというと人体の内部に入った感じに近いのかな?ダーレーが言ったように生ごみを梅雨の時期に長時間放置したような臭いがした。
どれくらい臭くなるかは知れないけど、普通の生ごみの臭いは超えていることだけは言える。
「ん!? おい!? 身体が沈んでいくぞ!?」
「沈殿スキルか…長いは無用だな。俺たちの世界の神様の呪いだ。たっぷり味わいやがれ」
俺は切り札である呪霊玉を投げ込むと天井や壁から触手がまた伸びて来た。
「「電弧放電!」」
俺とダーレーの電弧放電が触手と床の肉壁を焼いたことで俺たちは脱出に成功する。それを見たみんなも退避するとここで俺が思いついた切り札が発動する。
呪霊玉に封印した金の子牛の呪いが解放されて、かつてカリュブディスを襲った天罰がアブホースに襲い掛かる。とんでもない量の雷に焼かれたアブホースはあちこちから爆発が発生すると緑色の血しぶきを上げて、爆散した。それに連動するように周囲にいた分裂体も同じように爆散する。
「効果抜群だね」
「あぁ…これで取り敢えず空母のような敵は簡単につぶせることが証明されたな」
「飛び込む勇気が要求されるだろうけどね」
鉄心さんの言う通りだな。そう思っているととんでもない魔神波動が爆発地点から放たれて、俺たちは回避すると煙から巨大な複数の影を捕らえた。
クトゥルフ?
? ? ?
このクトゥルフはクトゥルフ神話のことではなく、クトゥルフ神話に登場する神の名前だ。姿で一番似ているのはダゴンだろうな。ダゴンとの最大の違いは翼だ。身体の色は苔色。目は真っ赤で縦に三つずつ合計六つもあった。
背中からは無数の触手があり、ひげまで触手になっていた。まだ人型で良かったが大きさでは月輝夜ぐらいはある。それが六体も現れた。そして背中の触手から一つ目が現れると一斉に攻撃が開始された。
俺たちが攻撃をすると神バリアが展開される。それを見た俺は決断する。
「これ以上は無理だな…撤退する!」
俺たちはここで撤退を選択するのだった。




