#1233 天に昇った真なる玄武とデストロイヤーユニット
試練を終えた俺は夕凪の甲羅の上で最後の一撃でまた部位破損した腕を治して貰いながら休憩していた。
「強かったな」
「グォ」
「シャー」
こうしてのんびりしているとこっちのほうが俺の性に合っている気がして来るから不思議だ。
「治りました。マスター」
「何度も悪いな。イクス」
「問題ありません。マスターの健康を管理するのもわたしの役目ですから」
介護を受けるお年寄りの気分になったところで進化をさせよう。進化先を調べると一つだった。
真武…厳しい修行の末に神仙に認められ海神の力を獲得した真なる玄武。深海の水圧と地底深くの地圧に耐える強靭な防御力と体内に独自の空間を持ち、移動する巨大要塞の異名を持つ。一部の地域では神仙の力と海神の力で国を守る守り神として信仰されている神亀。
体内にある独自の空間については俺が戦ったアスピドケロンで経験している物と同じスキルだ。これはアスピドケロンを持つララちゃんからの報告を受けている。何でも体内をホームのように扱えるスキルらしい。
チロルたちの話ではララちゃんはすっかり自分のマイホームに仕上げているらしく、ちょっと引いていた。俺の場合はたぶんリリーたちが色々暴走しそう。俺たちは自分たちのホームをゼロから作ったことは無いからね。
せめて俺が想像しているようなおもちゃが散乱している家だけはやめて欲しい。それだと夕凪があまりにも可哀想だからね。みんなから引かれることは覚悟しよう。それじゃあ、進化を実行する。
夕凪がゲットした神仙亀の宝珠から宇宙と星のような光の帯が発生し、夕凪の中に入ると夕凪の周囲に巨大な水の竜巻が発生し、進化が終わると水の竜巻が弾けて、雨が降る。そして見えたのは黒曜石のような肌と島のような木々が生い茂る甲羅を持つ亀と蛇一体の召喚獣だった。インフォが来る。
『夕凪が真武に進化しました』
『金属創造、宝石創造、回帰、破魔、神魔毒、弱化毒、星間遊泳、神感覚、未来予知、神瞳、神気、星気、気力融合、内気功、瞑想、神ブレス、地圧操作、樹海操作、流星群、星核、神霧、超連携、超集束、竜鱗装甲、肉体活性、戦闘高揚、後光、水晶投擲、多重結界、遮断結界、神岩結界、絶対防御、瀑布、海没、霊化、魔力超回復、封鎖、神罰、神格解放、神仙の加護を取得しました』
名前 夕凪 玄帝Lv40→真武Lv1
生命力 450→510
魔力 272→342
筋力 288→348
防御力 522→582
俊敏性 58→78
器用値 180→230
スキル
噛み砕くLv32 締め付けLv26 薙ぎ払いLv31 金属創造Lv1 宝石創造Lv1
回帰Lv1 破魔Lv1 神魔毒Lv32 弱化毒Lv1 遊泳行動Lv23
星間遊泳Lv1 天耳通Lv32 第六感Lv33 無視Lv32→無我Lv32 天眼通Lv33
他心通Lv33 神感覚Lv1 未来予知Lv1 神瞳Lv1 堅牢Lv41→堅固Lv41
回転激突Lv20 神気Lv1 仙気Lv36 星気Lv1 気力融合Lv1
内気功Lv1 瞑想Lv1 念動力Lv22 仙術Lv27 神魔毒ブレスLv30
石ブレスLv24 海ブレスLv23→大海ブレスLv23 神ブレスLv1 水圧切断Lv26 水圧弾Lv23
水圧操作Lv10 地圧操作Lv1 海流操作Lv24→海流支配Lv24 地脈操作Lv21→大地支配Lv21 樹海操作Lv1
黒雷Lv24 流星群Lv1 星核Lv1 神霧Lv1 譲渡Lv5
多連撃Lv33 超連携Lv1 超集束Lv1 慈雨Lv14 気力装甲Lv34
超装甲Lv34→金剛装甲Lv34 竜鱗装甲Lv1 肉体活性Lv1 戦闘高揚Lv1 光合成Lv25
後光Lv1 地魔法Lv17 海魔法Lv19 神聖魔法Lv17 雷魔法Lv45
土潜伏Lv20 熱探知Lv31→魂探知Lv31 鉱石砲Lv27 水晶投擲Lv1守護結界Lv24
多重結界Lv1 遮断結界Lv1 神岩結界Lv1 絶対防御Lv1 津波Lv3
渦潮Lv14 聖水Lv20→神水Lv20 瀑布Lv1 海没Lv1 霊化Lv1
超速再生Lv35→瞬間再生Lv35 魔力超回復Lv1 天候操作Lv18→天候支配Lv18 休憩Lv18→休養Lv18 宿泊Lv4→別荘Lv4
和魂Lv8 復活Lv21→強化復活Lv21 逆鱗Lv6 封鎖Lv1 神罰Lv1
神格解放Lv1 神の加護Lv27→海神の加護Lv27 神仙の加護Lv1
はい。ぶっちぎりで四神の中で一番強いね。玄武を一番強くに持ってくるのは意外だった。俺の中では青龍、朱雀、白虎のほうが強いイメージがあったからね。アニメや漫画の影響だろうか?
進化した夕凪はとにかくでかい。何せ甲羅だけで山がある島レベルの大きさだ。そこを支える身体を想像して貰えると大きさがある程度伝わると思う。尻尾の蛇も亀の大きさのせいで小さく見えてしまうが実際はかなりでかい。八岐大蛟の首と同じくらいの大きさはあるかな?
説明に書いてあった移動要塞の異名も納得が行くスキル構成だな。相手の攻撃を強制するスキルがない所が玄武らしさをちょっと感じるかな?後は攻撃したければご自由にどうぞ。こっちは攻撃しながら進みますという確固たる意志も感じるね。
「シャー」
「お?」
「グォ」
俺は夕凪の蛇に咥えられると甲羅の天辺に運ばれた。
「一番に乗せてくれてありがとな」
「シャー!」
「グォ!」
二人は嬉しそうだ。折角だし、ここでスキルの確認をしよう。
最初は休養スキル。甲羅に引っ込むスキルなのは変らずらずでその間、無敵となり、休憩スキルよりも回復量が増加し、状態異常も直してくれるスキルだ。ただし一度の戦闘で一回しか使う事は出来ない。これは何度も使うことが出来たら、強すぎるからだろう。
別荘スキルはさっき話した体内をホームにするスキルだ。もちろんログアウト可能なのは前のスキルと同様。最大の違いは島のように体内で生産が出来ることだ。これはホームで家庭菜園などが出来る点がこのスキルに反映されているのだろう。更にホーム設置で効果が発動するアイテムも有効になる。
注意点は俺がアスピドケロン戦でしたように敵に侵入される可能性があるところだ。ここらへんのなんとかケアを考えないといけない。
最後は神仙の加護。神の加護と同様の効果に加えて、天耳通、他心通、神足通、念動力、仙気、仙術スキルを一段階強化し、物理無効も付与される。これにより夕凪は他のみんなより念動力などのぶつかり合いで勝つことが確定することとなった。これはかなりやばい加護だ。他の神様とか結構涙目になるんじゃないかと思う。
それじゃあ、リリーたちを呼んで夕凪の別荘スキルを確認しよう。
「口の中に入るって不思議な感覚よね」
「自ら食べられに行っているものじゃからな」
まぁ、ファリーダとセフォネの意見が普通だろうな。俺たちはごつごつした夕凪の体内を進んでいくと階段に辿り着いた。そしてご丁寧に地面に矢印が発生する。どうやらここを登った先が別荘スキルのエリアになっているらしい。
俺たちが洞窟の階段のような道を登った先には觔斗雲のような金色の雲が漂う明るい空間に出た。
「アスピドケロンとの差が酷いな」
まず明るいだけでだいぶ違う。ララはランプの設置だけで結構大変で俺が体験したあの体内の雰囲気を変えるために四苦八苦したそうだ。チロルが冗談で提案したカラオケなどで見られるミラーボールの設置を本気にしたと聞いた。
その点、この空間は何もしなくても問題は無さそうだ。そして入り口が狭いことも大きい。普通に階段を登った先にドアを設置するだけである程度の防犯は出来そうだ。もしくは罠を設置するかだね。俺はもちろん罠派だが、罠を作るなら自分たちの安全も考えて罠を作らないといけないな。取り敢えずはドア設置にしよう。
そして話を聞いたリリーがやはり一番最初に言い出す。
「まずはキッチンだね!」
意外にまともな意見が出たな。
「次にご飯を食べるところとご飯を食べるための食器と食べ物を入れるところと~」
リリーの中で睡眠欲より食欲のほうが上であることはよくわかった。これを聞いたイオンはすかさず仕掛ける。
「リリーがそれを言うならタクトさんの寝るところは私が決めますね」
「では、順番で次は私ですね? 恋火にはタクトさんの頭を上げます。タクトさんの枕になってあげて下さい」
「セチアお姉ちゃんは何を言っているんですか!?」
恋火の尻尾は十分枕として使えると思います。ここでファリーダが言う。
「順番の話ならここは逆からの順番のほうがいいと思うわ。だって、屋敷のほうは全部リリーたちが決めたんでしょ?」
「「「「う…」」」」
「正論だな。それじゃあ、燎刃からか」
「某から!? えぇーっと…では、タクト殿の頭を」
「「「「まさかの頭優先!?」」」」
これはリリーたちにとって、衝撃だな。しかし燎刃には燎刃なりの考えがあった。
「何を考えてるの? 燎刃」
「それは…タクト殿に膝枕をしてあげたくて…」
「意外だね…燎刃ってそういうタイプだったんだ…ブランと同じだね」
「う…」
そこは言い返さないとリビナの言動を認めることになるぞ。ブラン。
「それならお兄様の隣はアリナが貰うの!」
「なら逆は私だな!」
「結局左右はドラゴニュートに取られるのね…」
「次からは真ん中から選ぶようにしないといけませんね」
リアンの言葉にリビナ、ブラン、和狐、セフォネ、ファリーダは頷くのだった。こんな話をしているが実はベッドも家具も調理道具も何も用意していないんだよね。取り敢えずどんな空間なのか知らないと何が必要か分からないからね。
「イクスの買い物と一緒に揃えて来る…」
「了解です。マスター。少々お時間を下さい」
おや?イクスがそんなことを言うとは珍しいな。俺たちはホームに戻っているとイクスが二階から降りて来る。
「お待たせしました。マスター」
「あぁ。は?」
俺はフリーズする。そこにはニットセーター、チェックのスカート、ロングコートを着たイクスがいた。
「これがマスターとのデート専用装備です」
「ちょちょちょ。ちょっと待ってくれ。そんなの買っていないだろう?」
かなり失礼だとは思うがイクスがスキルでこの服装をするとは思えない。現実世界の冬服コーデと差がないほどに完璧な服装だった。
「シルフィにマスターとデートすると伝えたところ私に任せて下さいと言うとアウラも何故か現れて、一緒に用意してくれました」
なるほど。シルフィが原因なら納得がいった。そして一体どこでアウラさんは現れたんだよ。聞くのが怖いぞ。まさか城でいきなり現れたりしていないよな?アウラさんならあり得そうなので、聞くのはやめた。シルフィとアウラさんには後でお金を払おう。
こうして俺とイクスのデートが始まるわけだが、当然のようにリリーたちはついてくるが流石にここはイクスも怒る。
「これは決戦前の大切なマスターとの時間です。譲ってください」
「わ、わかったよ。イクスちゃん」
そう一度は言ったリリーたちだったが、建物の影に隠れて俺たちを監視している。流石にイクスの探知能力の前ではこれはバレる。リリーが建物の屋上から顔を覗かせた瞬間、リリーの髪の毛にテイルメーサーガンが掠める。
「リリーの髪がぁあああ!?」
流石にイクスの本気度がみんなに伝わり、デートの監視は終わった。そして俺たちは手を繋ぎながら買い物をしていく。しっかりイクスの装備素材も買って、デートが終わる間際にマフラーに目が留まった。今のイクスの服装を見ていると似合いそうな気がした。
「これ下さい」
「毎度」
「イクス、はいこれ。必勝祈願」
俺はイクスの首にマフラーを巻いてあげる。
「やっぱり似合う似合う」
「マスター、必勝祈願とはなんですか?」
「必ず勝てますようにってお願いすることかな? まぁ、勝利のお守りと思ってくれ。こんなので勝てるような甘い相手では無いだろうが、やらないよりはましだろ?」
「そうですね…ありがとうございます。マスター」
こうして無事にデートが終わると髪の毛でショックを受けているリリーと慰めているシルフィがいた。
「お帰りなさい。デートは成功しましたか?」
「はい。ありがとうございました。シルフィ姫」
「ふふ。それはよかったです。あら? そんなものあげましたっけ?」
「これはマスターがわたしのために買ってくれたお守りです」
意図的にわたしを強調したな。そして当然リリーたちは超反応する。
「「「「ふーん…」」」」
少し前までは自分も買ってとか言ってきてたんだけどな。変わったもんだ。
「今日はイクスだけにさせてくれ。イクスにとって、一番大切な戦いの前だからさ」
流石にこれを言われるとリリーたちも納得する。そしてマザーシップで最強のエクスマキナの武装ユニットを作製する。
完成したデストロイヤーユニットはかなりの大きさだった。
「大丈夫か?」
「宇宙戦闘では問題ありませんがここでは厳しいです」
重力があるこの星ではデストロイヤーユニットは使えないことが分かった。まぁ、当たり前と言われたら、そうなんだけどね。ただでさえ重い武器をいくつも付けているんだから重量オーバーになるのは当然の結果だ。荷重操作とか重力支配を使えたら、ワンチャンあるって感じかな?
「そうなるとぶっつけ本番になるが大丈夫そうか?」
「はい。マスターがくれたマフラーとこのデストロイヤーユニットで敵を倒して見せます」
「いい答えだけど、マフラーは置いて行こうな。一発で消し飛ぶぞ」
「それは困りますね。折角のマスターからのプレゼントなのでマザーシップに飾っておきます」
マザーシップに飾るんだ。ホームと答えないのがイクスらしさだな。イクスが決意を新たなにしたことだし、現時点で俺が出来る決戦前の最後の準備に取り掛かるとしよう。俺が狙うのはもちろん黒鉄の進化クエストだ。




