#1226 北欧の天界アースガルズとオーディンの依頼
俺たちはヴァルハラがあった天界と同じく雲の地面があるフィールドに転移すると周囲に巨大な家をいくつも発見する。
そして俺たちの前にまたカラスがやって来た。
「よく来たのぅ。ここが儂らの天界アースガルズじゃ。それぞれ見える館に神々が住んでおる。儂らと契約したい場合は例外を除いてそれぞれの館に行くまでの試練を突破し、館の中でも試練を受けて貰う。儂らの武器が欲しい流れもお主たちなら理解しておるじゃろうから同じ流れじゃ」
オリュンポスと同じような流れな訳だね。しかしここで予想外の提案をオーディンから受ける。
「さて、今儂らはロキのせいで色々問題を抱えておる。できればお主たちの力を借りたいんじゃがどうじゃ? もちろん協力してくれるならそれなりの報酬を出すぞい」
「どんな問題ですか?」
「まずはトールの最強の武器が霜の巨人の王であるスリュムに奪われてしまっておる。お陰でトールはかなり弱体化していての。しかも交換条件がフレイヤという女神で行くのを拒否しておるのだ。どうにも手づまりな状況で困っておるんじゃよ。スリュムにミョルニルを使われるのも問題じゃしな」
これは有名な話だね。本来ならトールがフレイヤに女装して、ロキがスリュムを上手く騙すことでミョルニルを奪い返したトールがスリュムを倒す神話になっている。これがロキが裏切っている状態なので神話が手詰まりになっているんだろう。
更に別の問題が伝えられる。
「もう一つはわしらが最も警戒しておる武器レーヴァテインについてじゃ。これはロキの奴が作った剣なのじゃが、本体のスルトの妻であるシンモラが管理しておる。これをなんとか奪って欲しいのじゃよ」
そして最後の問題が伝えられる。
「最後は本体のフェンリルを封印しておるグレイプニルについてじゃ。恐らくロキはフェンリルを解放して来るじゃろう。フェンリルを止めるにはあの鎖がどうしても必要じゃ。しかし作れるのはドウェルグだけでのぅ…わし等が言っても最早聞く耳持たんじゃろう。そこで交渉をお願いして欲しいじゃよ」
最後は面倒臭そうな依頼だな。ここで纏めのインフォが来る。
特殊クエスト『雷神トールの宝』:難易度SSSS
報酬:ヤールングレイプルかメギンギョルズ
スリュムヘイムに行き、霜の巨人の王スリュムから雷鎚ミョルニルを盗み出せ。
特殊クエスト『最強の鎖グレイプニルを作れ』:難易度SSSS
報酬:神鎖グレイプニル
ヴァインリーフに行き、最強の鎖グレイプニルを作製せよ。
特殊クエスト『終焉の剣レーヴァテイン』:難易度SSSSS
報酬:終焉の剣レーヴァテイン
ムスペルヘイムに行き、九つの鍵を集めてスルトの妻シンモラが持つ終焉の剣レーヴァテインを盗み出せ。
トールのクエストミョルニルが貰えないんかい!しかもどちらか選ぶというケチさ!いやでも、盗むならミョルニルを手にして鑑定する機会があるかも知れない。それならヘルメスのチケットでゲットできる可能性があるぞ。
これは受けたいがこれを受けると誰かがフレイヤの役をすることになるかも知れない。夫としてはリリーたちにその役はさせたくないね。出来れば女装するトールのフォローする役割がいいな。
そしてトールのクエストを超えて来るグレイプニルのクエストがもう面倒臭い予感しかしない。レーヴァテインはまぁ、難易度は納得がいく。
「この話、他の人間にしてはいけませんか?」
「構わんぞい。元々ロキが儂らに宣戦布告した時に伝えようとしておったものじゃからな」
よし!グレイプニルはクロウさんたちに任せよう!何せ最初の頃にヴァインリーフに行ったプレイヤーだからね。交渉とかの話ならルインさんのほうが得意だし、これが最適解だ。そしてトールのクエストについて、詳しく聞く事にした。
「ヘイムダルはトールをフレイヤに変装させるのがベストと言っておるが儂らにはスリュムを騙せる神はおらん。悪知恵を出せるものもおらんし、お主たちに任せようと思っておる」
「悪知恵を期待されてますよ。タクト」
「シルフィもなんじゃないの?」
「ふぉっふぉ。あのロキがわざわざ姿を見せてまで勧誘したほどじゃ。そんなお主に儂らが期待をしてしまうのは当然と言えぬか?」
知っているのね。いや、オーディンに隠せるとは思っていないけどさ。案外あの勧誘はオーディンから神剣グラムを託された俺を仲間に引き込むことでオーディンに批判を集めようとしたのかも知れない。ロキならあり得るな。
俺はリビナを召喚して、聞いてみる。俺たちのメンバーの中でこのクエストに最適なのは多分リビナだからね。
「話は分かったよ。まずスリュムって奴はどれぐらい強いのかな?」
「武力だけで見るなら儂らと同等の力を持っておる。じゃが神ではなくあ奴は巨人族の王じゃ。故に人の心を読んだりは出来ぬから騙すことは一応可能なのじゃよ。フレイヤの姿もあ奴は見たこと無いからのぅ」
つまり筋力だけは神並みにある筋力馬鹿ということだろうか?まぁ、召喚獣でもジャイアント系は状態異常にとことん弱い所があるからね。
「それなら会うことが出来ればいくらでも手がありそうだよ。眠らして夢でフレイヤっていう女神に合わせることは出来そうだし、幻術でも行けそうかな? ただどうやって合うかが問題だよ。タクト」
そこは考えてなかったな。これを聞いたオーディンが教えてくれる。
「一応あ奴にフレイヤを渡す連絡をすればあ奴自身かあ奴の部下がやって来るはずじゃぞ」
それでスリュムの住処に連れて行かれるわけね。これだけはワンチャンあるから聞いておくか。
「スリュムヘイムの鍵を持っているんですけど、スリュムがそこにいたりしますか?」
「おらんぞ。あ奴がおるのはヨトゥンヘイムの最奥にある氷の宮殿じゃからな」
そこは神話に忠実だよね。残念でした。ただ今の所の情報だと個人的に難易度に疑問が出る。オーディンの話の通りならヨトゥンヘイムのボスがスリュムということになるから難易度が高いのは納得がいくがそれは戦闘になることが前提の話だ。騙してミョルニルゲットするだけなら話ならここまでの難易度にならないと思うのだ。そう考えるとこの難易度になる要因に心当たりが浮かぶ。
「ロキが動く事はないですか?」
「ぬ…無いとは言えぬな。スリュムがロキの言うことを聞くとは思えぬが何かしらの嫌がらせはして来る可能性は十分にある。そういう嫌がらせが生き甲斐のような神じゃしな。それにトールにミョルニルが戻るのはあ奴にとっては痛手じゃ。妨害は十分に考えられる」
まぁ、俺たちの悪巧みをスリュムに暴露する感じだろうな。そして怒り狂うスリュムと戦闘になる流れになるとみた。神話の通りならその場にトールがいて、ミョルニルを手にすることが出来れば勝ち確定となるはずだが、そこをどうするかだね。
「ちょっと考えさせてください」
「構わんぞい。最後にヴァルキリーを召喚したお主には伝えておこうかの。わしの宮殿でヴァルキリーの専用装備が手に入る八つの試練がある。どれか一つしか受けることしか出来ぬがそれによって、ヴァルキリーの強さの方向性がだいぶ変化する装備じゃ。内容だけは見せておこうかの」
確認するとどうやらワーグナーオリジナルのブリュンヒルデの妹と戦い、それぞれの特徴的な装備を貰えるクエストみたいだった。これは困ったぞ。纏めるとこんな感じだ。
槍特化ならゲルヒルデ、剣特化ならオルトリンデ、集団戦特化ならヴァルトラウテ、虎徹のように複数の剣を使うならシュヴェルトライテ、集団防衛線特化ならヘルムヴィーゲ、勝利の加護が欲しいならジークルーネ 、個人守り特化ならグリムゲルデ、騎乗戦特化ならロスヴァイセの装備を貰える。確かにこれは強さの方向性を決めてしまう可能性がある。
「んん~…困った」
「あれ? オルトリンデを選ぶんじゃないんですか?」
「剣特化は結構うちにはいるからね。個人的にはシュヴェルトライテかロスヴァイセかな? 守りが弱いから守りを強化するのもあり」
「困ってますね。でも、笑ってますよ?」
「それはまぁ、楽しい悩みですからね」
シルフィもこれには同意してくれた。随分面白いクエストを用意してくれたものだよ。結論はリースの戦闘を見てから判断することにした。
「儂の話はこれで終わりじゃ。先に話したクエストを受けたいならこのカラスたちに言うが良い。おっと、それと告白するなら見届け人をやってもよいぞ?」
最後の最後で俺がエンゲージリングを用意していることをバラしやがった!このカラス!そもそも告白の見届け人ってなんだよ!いらんわ!
「え? それって」
「もうリースさんのエンゲージリングを用意していたんですね」
「はぁ…そうですけど、ここでは出来ません」
「ほぉっほぉ。若いのぅ。ぐぇ!?」
喋っていたカラスの背後に突如現れた露出大目な服を着た女神がカラスの首を掴んでしまった。
「フ、フレイヤ!?」
「どうして余計な一事を言ってしまうのかしら? オーディン。折角間近でヴァルキリーへの愛の告白が聞けるチャンスでしたのに」
あれがフレイヤなのか。みんなにフレイヤの役をさせる案は無くなったな。そう思っているとリリー、リビナ、ブラン、シルフィから同時攻撃を受けた。シルフィに至っては目潰しだったんですけど!?
「す、すまんかった。ではの」
「あ!? ちょっとこちらのお話も聞いていただけませんか?」
「ん? 何かの?」
解放されたカラスが話を聞く体勢になる。セーフ。俺たちが今、ユグドラシルに登っているのには個人の目的の他に別の目的があるのだ。
「この星を狙っている異なる星の神についてご存じでしょうか?」
「うむ。一応知っておる。お主たちがこれから戦いに向かう事もな。しかし儂の力はこの星にだけ適応される。この星以外のことは残念ながら知らぬよ」
オーディンの力はそうだろうな。オーディンは北欧神話の最高神であり、創造神だ。これには所説あるのだが、重要なのはオーディンは自身の宮殿にある玉座から世界を見渡していると言われている。この世界がこの星のみの事なのかがポイントだった。
俺はオーディンにアザトースと俺たちが危惧している事を伝えた。
「お主たちが考えておる事態が実際に起こると言うなら儂らはそれを看過せぬ。ただ世界全てを守る義務がないことも事実じゃ」
「それはつまりこの周辺は守ってくれると言う認識でいいですか?」
「うむ。約束しよう」
「それを聞けて安心しました。話は以上です。引き留めてしまい、申し訳ございません」
「この星の事を考えてのことじゃ。謝る必要などないぞい。この星で生まれた神なら聞かねばなるまいて。色々大変じゃろうが応援しておるよ」
俺たちはオーディンから聞きたいことは聞けたので、感謝を伝えて、フリーティアに転移した。ちゃんと目はその後、治して貰いました。




