#125 お店の店員と店名決定
夕飯と風呂をすませてゲームにログインする。
下に降りるとリーゼ様たちとルインさんたちが会話していた。
「タクトよ。邪魔しておるぞ!」
「いらっしゃいませ。リーゼ様。ルインさんたちもいらっしゃい」
「ふふ。完全に店長みたいになってるわよ? タクト君」
ん?確かに変か?お店の準備が整ってきたので、変になっているのかも知れない。
「ルインたちと連携を組んだようじゃし、どうせ直ぐにお店を出すのじゃ。問題ないじゃろ。それよりもハチミツジュースを所望じゃ」
『所望じゃ!』
リリーたち…リーゼ様に取り込まれたな。
「ハチミツジュース? タクト君、そんなものを作ったの?」
「なんじゃ? ルインよ。知らぬのか? この店の目玉商品じゃぞ?」
「聞いてないわね~」
ルインさんたちからの視線攻撃。リリーたちとは違う怖さを感じる。振り返るな。命はないぞ。
結局、俺は人数分のハチミツジュースを出すと全員に喜ばれる。
そしてルインさんに事の顛末を説明する。
「…確かに普通に美味しいジュースは驚異ね」
「それだけじゃないよ。ジュースが出来たなら野菜ジュースとかだって、可能なはずだよ!」
ユウナさんの言う通りだろうな。ただその際に重要なのが配分。ハチミツだけで配分を見つけ出すのに苦労したのだ。野菜ジュースの完成までにどんな目に会うのか想像はしやすい。
「それはユウナさんに任せますよ」
「野菜ジュース…」
セチアから悲しい声…こらこら。ポーションの悲劇を忘れないでくれ。
「それでタクト殿はお店をいつ出すおつもりですか?」
「実は先ほどハニービーを狩ってきたので、明日の午後にお店をオープンしてみようと思います」
「なぬ!? こうしてはおれんぞ! 爺よ! 皆に知らせねば!」
「お供いたします」
リーゼ様たちは慌ててお店を出ていった。どういうこと?俺が疑問に思っていると残っていたレギンさんが説明してくれる。
「ご友人の方々にハチミツジュースのことを自慢していたので、お店が開くことを知らせにいったのではないかと」
自慢していたの?というかこれは大変な事になるんじゃないのか!?
「タクト君は明日の午後はフィールドに出られそうにもないわね。夜は私たちがお店をするにしても、絶対店員さんを雇わないときついわよ」
前に話していましたね。じゃあ、早速探しにーー
「その件でお話が…私をここで働かせてくれませんか?」
『え!?』
ちょっと待って…ワルキューレで有名なレギンさんをお店で働かせていいのか?色んな意味で!
「助けていただいたご恩に報いたいのです。ダメ…でしょうか?」
ぐぬ…ワルキューレの上目遣い攻撃…卑怯だ。男が断るわけないじゃないか…
そしてルインさんたちはニヤニヤしてる。くそ!面白がってやがる!
「いえ…人手は欲しいと思っていたので、非常に助かります」
「で、では!」
「はい。歓迎いたします」
ここで謎のインフォ。
『NPCレギンが仲間になりました』
しかしレギンさんが手伝ってくれても全然店員が足りないな。やっぱり探しにーー
「話は聞かせて貰ったわ!」
『ヒッ!?』
突然アウラさんが乱入。リリーたちは慌ててキッチンにいる俺の元に逃げ込む。
「タクト君には店員さんがもういるわ!」
ん?レギンさんのことか?
「姉さん…気持ちはわかりますが暴走しないでください」
ネフィさんも来た。説明によるとリーゼ様に先程出会いお店のことを話して、それを聞いたアウラさんが慌ててここに来たらしい。
ついでにアウラさんの発言も説明してくれる。
「亜人種の召喚獣を店員にすることが出来るのよ!」
あー。その手があったがリリーたちは以前リーゼ様たちにジュースを作ったことがある。それなら店員が出来ても不思議ではないな。
そこでアウラさんが追撃する。
「今ならリリーちゃんたちの店員衣装を負担してあげるわ!」
「ちょ、ちょっと姉さん!?」
ネフィさんが慌てるがアウラさんが手で制する。
「ただし、条件。私には入店する優先権を貰うわ」
そ、そう来たか…この人、お店に毎日来てウェイター姿のリリーたちを楽しむつもりだ!
「姉さん! いくらなんでもそれは!」
「あら? ネフィはいいのかしら? ロコモコちゃんの優先権が欲しくないの? 優先権貰わないとお店来てもモフれないわよ?」
「…し、しかしギルドのお金を使うわけには」
ネフィさんが揺れている。
「それくらいわかってるわよ。個人的に買えばいいんでしょ?」
「あ、それなら大丈夫ですね。わかりました。私も負担しましょう。権利はロコモコちゃんの優先権で」
あぁ…ネフィさん、丸めこまれちゃった…アウラさん、策士だ。
結果逃げ場がなく、むしろちゃんとした衣装が手に入るなら大いに助かる。
それを聞いていたルインさんたちはーー
「掲示板に書いたらどうなると思う?」
「このお店にプレイヤーが大量に流れ込んでお店が潰れるわね」
怖いこと言わないで!?
それから俺は商売ギルドでお店の登録と店員の登録をすることになった。
当然、お店の名前が必要なわけだが…全員おまかせ体制だ…クランはドイツ語、お店も近い名前にするべきか?うーん…リープ…リープ…俺はふとリリーたちを見る。
「リープリッヒ」
『リープリッヒ?』
あ、やべ。口に出てしまった!?
「いや、忘れてくれ」
「あら? 素敵な名前じゃない」
ぐ…ルインさん、意味を知ってて!
「リープリングに似ている言葉ですがどういう意味ですか?」
セチアがルインさんに聞く。聞かなくていいって!
「リリーちゃんたちが可愛いって意味かしらね? タクト君」
ドイツ語で子供や若い女性に対して愛らしいや可愛いという意味だ。リープリングから連想していたら、つい口を滑らせてしまった。
「あ、あー…そうかも知れないが何か別の名前を」
『ダメ!』
…リリーたちがお店名を決定してしまった…どんな店名だよ。時空魔法で過去に戻りたい。