#1220 ユグドラシルの木登り
俺とセチアとルーナ、ミールはエルフの森にやって来て、エルフの女王イヴリーフ様にちゃんとユグドラシルに登る許可を貰う。
「お前たちもいよいよユグドラシルを登るか…気を付けていけと言っても今のお前たちなら大丈夫そうだ。そこまでよく腕を上げたな。セチア。エルフの女王としてこの星の精霊と契約したエルフが誕生したこと、嬉しく思うぞ」
「ありがとうございます。イヴリーフ様。では、行ってきます」
「あぁ…ふんぞり返っているアールヴヘイムの奴らに一泡吹かせてやれ。後、ユグドラシルは大抵の攻撃ではびくともしないがお前たちの全力攻撃ならば話は別になる。我々はもちろんオーディン様たちを敵に回すことになるかも知れんからくれぐれも気を付けるようにな」
釘を刺されてしまった。そして気になることを言ったね。アールヴヘイムがユグドラシルにあるなんて情報を俺は知らない。アールヴヘイムは北欧神話版の妖精の国として登場する。北欧神話の九つある世界の中で人間の国ミズガルズの上にあるのがアールヴヘイムだ。
俺たちプレイヤーはユグドラシルを登る過程で確認されていないからてっきりエルフの森がアールヴヘイムの設定だと思っていたけど、この言い方だとどうやらユグドラシルの何処かにあるんだな。この分だとあの時、オーディン様が精霊門の鍵をくれたのが引っかかる。でも、メルたちが精霊界からユグドラシルを登っていて、確認されていないんだよね。
一応イヴリーフ様にどこにあるか聞いてみたが濁されました。やっぱり教えてくれないよね。でも、この質問には答えてくれた。
「アールヴヘイムに行けたら、どうなりますか?」
「まぁ、あいつらと戦闘になるだろうな。ただあいつらは良くも悪くも実力主義者だ。勝つことが出来たならエルフや妖精の専用装備を貰えるかも知れんな」
なるほど。そういう場所なわけね。そしてイヴリーフ様は俺の性格を理解した上でこの情報をくれたということは完全にアールヴヘイムにいる妖精と俺たちをぶつけさせる気満々だ。どうやらあまり仲が良い関係では無さそうだね。話の感じからすると下に見られている感じかな?まぁ、今日の所は目的から外れるので、取り敢えずスルーしよう。もしセチアたちを侮辱したら、潰します。
「精霊門!」
セチアが精霊門を使うとオーディン様が現れた世界になる。それじゃあ、ユグドラシルの木登りに挑もう。メンバーはセチア、エアリー、ルーナ、ミール、スキアーだ。
俺とルーナがスキアー、セチアとミールがエアリーに乗って木登りする。エアリーは軽快なジャンプで登り、スキアーは巻き付くように登っていく。そしてビルの十階くらいの高さまで登ると敵が現れた。
フレースヴェルグLv63
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
緑色の羽毛が特徴的な六枚の翼を持つ怪鳥が群れで現れる。フレースヴェルグは風と雷属性が確認されている。基本的には俺たちを掴んでユグドラシルから落下させることを狙ってくるそうだ。ここでは空が飛べないからそれを狙ってくるのは当然と言えた。
「撃ち落とせ! セチア、スキアー!」
「はい! 矢舞雨!」
「シャー!」
セチアの矢とスキアーの身体から光線が放たれる。スキアーの光線を回避したフレースヴェルグたちはセチアの矢を防風壁でガードする。
「それなら…精霊技! アストラルアロー!」
「ピィ―! ピィ!?」
セチアが放った流星の矢は防風壁の影響を受けずにフレースヴェルグに直撃する。精霊技アストラルアローは障壁や結界、斥力などの力、全ての魔法、鎧や剣、盾などの装備をすり抜けてしまう矢を放つ技だ。
即ちガードと撃ち落とすことが出来ない矢で攻撃する技ということになる。ここに必中スキルを加えると回避も出来なくなり、これで矢が凶悪だとかなり厄介な技に変貌する。それをフレースヴェルグが身を持って証明してくれる。
ヒュドラの毒を受けたフレースヴェルグは墜落する。それを見た仲間が雷轟で攻撃してくる。対する俺たちは俺はスサノオの加護で雷轟を防ぎ、エアリーは雷轟で止めながら、残りの攻撃を跳躍して躱してつつ、ユグドラシルを登っていく。
これを見たフレースヴェルグは痺れ毒がある羽投擲で俺たちの動きをまず止めに掛かって来た。ここで俺は黄龍の仙樹封印杖の各種結界で攻撃を防ぎ、エアリーのほうはミールが遮断結界で防いだ。
そして俺たちの魔導書からそれぞれ反撃の魔法が放たれる。
『『『『『ニュークリアエクスプロージョン』』』』』
『『『『『ソーラーフレア』』』』』
『『『『『ナパーム』』』』』
『『『『『ウルトラバイオレットレイ』』』』』
俺たちの容赦ない攻撃がフレースヴェルグに襲いかかり、墜落者が出るが驚いたことに空から降り注いだ攻撃をわざと数匹のフレースヴェルグが受けることで下の仲間の傘になり、俺たちの攻撃の被害を最小限にした。
ニュークリアエクスプロージョンを喰らってくれる敵でもないし、これは困った。その後、俺たちの攻防が続く。俺たちは登り続けて、フレースヴェルグは大気ブレスや荷電光線、暴旋風をしながら空を飛び回り超加速でスピードを上げていく。
そしてビルの二十階ぐらいの高さまで来ると別の鳥が追加される。
ヴェズルフェルニルLv65
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
空色の羽毛を持つ怪鳥が現れる。ヴェズルフェルニルはフレースヴェルグと同一視されることがある鳥だがこのゲームでは別として扱っているようだ。その能力は風特化。特に厄介なのが大気壁と天候支配、気流支配、魔法破壊だった。この能力のせいで余計にフレースヴェルグへの遠距離攻撃が封じられることになる。
メルたちはここでテューポーン戦の報酬である青銅の鐘を使って、追い払うことでユグドラシルを安全に登ったらしい。しかし俺たちは戦う道を選ぶ。何故なら新しい鳥肉ゲットに飢えているメンバーがいるからだ。
そしてそのメンバーのためにミールが空を飛ばずに解体する方法を考えてくれた。そして事前情報の通りでフレースヴェルグたちがこのタイミングで嘴をドリルのように回転させて、強激突で飛び込んで来た。
この瞬間を待っていたぜ!
「「ユグドラシル様、失礼いたします。樹海支配!」」
ユグドラシルから木の根が発生すると俺たちとフレースヴェルグたちを包み込む。そして嘴の攻撃はエアリーが角で受け、逆に弾き返し、俺は剣のルーンでルーナはエクスカリバーでカウンターを決めるとスキアーが尻尾で樹海支配の木の根に叩きつける。
危険を感じ取ったフレースヴェルグたちは出口に逃げようとするが俺たちが塞ぐ。
「残念だが、逃がさないぜ。ルーナ、スキアー!」
「媚毒鱗粉!」
「シャー!」
スキアーの口から毒の煙が発生し、毒域が展開されると上からルーナが媚毒鱗粉をばら撒く。密室空間でのこれはもう致命的だ。フレースヴェルグたちも風を発生させるがその時に俺たちの攻撃を受けて、毒と鱗粉に沈む。さて、解体しよう。
俺が解体していると外のフレースヴェルグたちがドリルの嘴と荷電爪で木の根を破って来た。仲間を助けようとする気持ちは分かるがこちらからすると完全に的だ。
「ヴェー!」
「シャー!」
「「「星波動!」」」
みんなが敵を吹っ飛ばしている間に解体完了。結果を見ている暇がないので、俺たちは上に登っていく。ここからはもうお互いに遠距離攻撃のやり合いになる。フレースヴェルグの心理からすると嘴で激突か荷電爪で攻撃しながら俺たちを落としたい所だろうがさっきの罠のせいで前に出れない。
そして可哀想な事だが、ヴェズルフェルニルがかなり数を減らしている。原因はスキアーの拡散光線から放たれる死滅光線だ。死滅光線の即死効果を諸に受けていた。 フレースヴェルグは超加速の効果で結構回避しているが彼らもまた即死対策が無く、死滅光線の餌食になっている。そしてそんな彼らを俺たちはユグドラシルから木の根を伸ばし、木の根の地面を作り出して、解体させて貰った。
ただしそんなことばかりしてもいられない。何せここではフレースヴェルグとヴェズルフェルニルの無限沸きが確認されている。つまり減らしてもすぐに増えるので、魔力の消費やダメージを考えると長くこんなことをしていると詰んでしまうのだ。
なのである程度解体出来たら、守ることを優先して上に登ることを優先する。ここでようやくゴールであるユグドラシルの天辺が見えた。そしてそれを合図にユグドラシルの木登り最後の試練がやって来る。
上から無数の木の実が落下してくる。これを合図にフレースヴェルグたちは接近戦を挑んで来た。まずは邪魔なフレースヴェルグたちには退場して貰おう。
「大気震! 木の実を撃ち落とせ! 爆発するぞ」
大気が震えて、フレースヴェルグたちは仲良くみんな吹っ飛ぶ。そしてセチアたちが木の実に攻撃を加えると爆発する。この木の実が流星群のように落ちて来るのがユグドラシルの木登り最後の試練だ。
ここでエアリーとエアリーに乗っているセチアとミールが俺たちの前に立つ。
「援護します。エアリーさん、思いっきりお願いします!」
「ヴェー!」
エアリーが光速激突で木の実を落とす敵に突撃を敢行する。
「星矢! 矢舞雨!」
「ゲイミストルティン! 死針! 日光!」
セチアとミールが援護するが援護しきれずに木の実爆弾が次々エアリーの身体に当たり、力尽きてしまうが落下を木の根でエアリーを捕まえる事で阻止し不死で復活したエアリーは再度突撃する。
それを繰り返し、爆弾魔の犯人がいるユグドラシルの木の枝に到着した。
ラタトスクLv70
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
そこにいたのは複数の巨大なリス。ラタトスクはユグドラシルに住んでいるリスでフレースヴェルグとニーズヘッグを喧嘩させている悪いリスだ。
「「「「キキ!」」」」
ラタトスクたちは手に木の実を作り出すとセチアたちの投げつけて来たが、セチアとミールが降りるとエアリーが爆発を受けながら怒りの突撃をするとラタトスクたちを纏めてぶっ飛ばした。
「「「「「キキー!? キ? キキーーー!?」」」」
彼らは空が飛べないので、木の枝から落下したら、助かる術はない。プレイヤーの間ではLv70とは思えない雑魚さと評判なリスさんだ。ただ解体するとニトログリセリンや電管発火装置などの手榴弾や爆弾素材をたくさんくれる大変ありがたいリスさんで出会ったプレイヤーに島で標的にされているらしい。そりゃあ、倒すだけで爆弾作れるなら狙われるよね。
俺たちはもう簡単に落として終わる。こいつらは無限沸きじゃないからこれで俺たちの安全が確保できたので、セチアたちと合流し、そのままゴールに辿り着いた。ここで戦闘終了のインフォが来る。
それじゃあ、解体結果を見るとしよう。
フレースヴェルグの羽:レア度9 素材 品質S
新緑色の羽で風を発生させる力がある。使用される物として人気なのが靴で空を飛べるようになる靴が作れる。更に超加速で足も速くなることから速度が欲しい人や偵察する人が敵地から逃げる際に使用される。
フレースヴェルグの肉:レア度9 食材 品質S
ミント風味がする鳥肉。わざわざミントソースやミントの味付けをする必要がないので、料理が苦手な人には便利な食材。料理人からはミントの味が消えないことから賛否がある食材となっている。
ヴェズルフェルニルの羽:レア度9 素材 品質S
風を打ち消す効果がある羽。アクセサリーが人気だが、盾や鎧、兜などにも使用される。竜巻や嵐の中に突っ込んでも風の影響を受けずに進むことが出来る事から冒険者には人気の素材。
ヴェズルフェルニルの肉:レア度9 食材 品質S
レモンのような爽やかさが特徴的な味がするお肉。わざわざレモンの味付けをする必要がないので、料理が苦手な人には便利な食材。料理人からはレモンの味が消えないことから賛否がある食材となっている。
お肉については賛否なんてないと思います。運営さん。だって、ミントやレモンの味に悩まされるなら普通の鳥肉を使えばいいじゃんって話になると思うんだよね。なぜこれらの肉の良さを生かそうとしないのか理解に苦しむ。
フレースヴェルグの羽で作った靴はテウメソスシューズをたぶん超えるだろうな。魔導書には向いていないし、俺は速さ重視だから作りたい。
ヴェズルフェルニルの羽は説明から見て風属性無効の素材だね。一つの属性を無効化出来るってかなり強いので、これも何かしら作りたい素材だ。出来れば出雲大社に行く前とかテューポーン戦前に欲しかったね。こればっかりはしょうがない。ドラゴニックマウンテンで風属性のドラゴンは必ず出て来るだろうからそれまでに防具を作りたいね。全体的にいい物が手に入りました。
さて、次はこの上にある歩くことが出来る不思議な雲に乗り、少し進むとボス戦になるらしい。ここでシルフィから連絡が来たので、迎えに行くとしよう。




