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#1210 ギャラクシータロスVS八岐大蛟

お昼休憩を取ってからゲームにログインするとみんなが炬燵で寝ている俺をニヤニヤしながら見下ろしていた。どうやらノワと炬燵で寝ている姿をずっと見ていたらしい。


「…なんだよ」


「「「「可愛いぃ~」」」」


よし。わかった。これはもうずっと弄られる流れだな。すぐに炬燵から脱出しよう。俺はまず戦闘職のパーティーに島の使用許可を貰うために連絡を入れる。待っている間に俺はマザーシップに向かい、中継基地攻略の際に発生したダメージの修復状況を確認しているとシフォンたちから使わせて貰える許可を貰えた。


ギルドで待ち合わせをして、初めてシフォンたちの島に行く。戦闘職は基本的に木々を育てるメリットがそこまでないので、鉱山と自分たちがモンスターと戦いやすいフィールドがメインとなる。そのため、延期していたギャラクシータロスのテストには持って来いの場所なのだ。


ヘーパイストスたちが準備している間、アーレイが俺に聞いて来る。


「シルフィ姫様から何か聞いてないか?」


「聞いてないぞ。というかサラ姫様の試練をまだ受けていないのか?」


「いや、お前と戦った後すぐに試練を受けるのはどうなんだろうって考えていてだな」


「意外だな。アーレイは勢いで生きる男だと思ってた」


「おい! なんだよ。それ。褒めてねーだろう」


この言葉が褒めているかどうかは場面で違ってくるだろうな。少なくともアーレイの今の状況なら俺は勢いで行った方がいいと思う。サラ姫様には話が言っているんだし、寧ろアーレイが来ることを待っている可能性がある。


その場合、相手を待たせると非常に印象が悪くなる。だからこの場合は勢いで生きるというのは誉め言葉になると思う。逆に何も考えずに敵に突っ込む奴のことを言うと悪口になるだろうね。ここで話を聞いていたミランダがアーレイを一刀両断する。


「こういう時だけ、ヘタレるのよね」


「へ、ヘタレ!? 俺が!?」


「あ、あははは…」


「何乾いた笑いで視線を逸らしているんだよ! シフォン!」


アーレイが弄られているとヘーパイストスから準備完了の報告を受けた。しょうがないので、友達として少しだけ背中を押してあげよう。


「このゲームの終わりはもう確定しているんだ。早く告白して結婚しないと後悔するぞ。今日の夜に決闘の申し出をすれば明日の決戦に称号も間に合うし、頑張って見たらどうだ?」


「け、けどよ」


ミランダのヘタレ発言に同意せざるおえないな。


「俺と戦ったのはこの時の為じゃないのか? 男なら腹くくれ。俺に本気を出させたんだ。あの時のように戦えばいいんだよ。分かったならさっさとサラ姫様に予約を取り付けてこい!」


「いて!? 背中を叩くなよ…ふぅー。わかったよ! 行けばいいんだろう!」


そういうとアーレイは島から出て行った。


「全く世話が焼ける」


「まぁ、そこのアーレイらしさだと思うわよ」


「だな」


「これが男の子の友情…」


何故か目を輝かせているシフォンを無視して、俺はヘーパイストスたちに通信する。


『それじゃあ、敵を出すぞ』


『お願いします!』


『ギャラクシータロスの初陣! 飾って見せるよ』


俺が操作して敵を出すと巨大な蒼い鱗を持つ八又の蛇が現れる。俺が選んだテスト相手は八岐大蛟だったのだが、スサノオと戦った時と姿が違うな。なんでだろう?うーん…分からん。


八岐大蛟は草薙剣の強化素材を落とすことがスサノオに名言されている。しかし考えてみると俺たちが戦う必要は無い。そんなわけでギャラクシータロスの戦闘テストと草薙剣の強化素材ゲットチャンスの一石二鳥を狙ってみた。


念のためにパーティー登録で俺、夕凪、アリナを登録している。ぶっちゃけると夕凪のレベルアップも狙ってます。アリナは俺たちが狙われた時用の保険だ。こいつを確実に倒す術は俺はもう持っている。どれほどの力かは分からないが試すのもありだろう。全ては戦況次第で決まる。


「パンドラ! まずはミサイルだ!」


「うん! 全弾発射!」


え?いきなり全弾なんて使って大丈夫なのだろうか?俺の心配を他所にギャラクシータロスの身体中からミサイルが放たれる。すると八岐大蛟は液状化でミサイル全てを回避してしまう。そりゃあ、躱しますよね。


「躱された!?」


「水になったよ!? お父さん!? 敵はど」


「「「「シャー!」」」」


真正面から噛みつかれ、押し倒される。


「わー!? 倒れるー!?」


「スラスター全開! 喰らえ! 電弧放電!」


電弧放電を察知した八岐大蛟は後ろに下がると一斉のブレス攻撃を放つ。これがギャラクシータロスに命中すると反射装甲の効果でブレスが跳ね返り、八岐大蛟に直撃する。


「どうだ!」


「これがギャラクシータロスの力だよ!」


テンション上がっているのは伝わって来るがさっきの反射した攻撃がファーストアタックなんだよな。


「「「「シャアアアー!」」」」」


八岐大蛟の代名詞とも言える毒域や腐蝕ブレスが吐かれたがギャラクシータロスは無傷だ。


「ギャラクシータロスのギャラクシーメタル装甲の前では毒や腐蝕は通用しません! パンドラ!」


「必殺! スターブレイクロケットパンチ!」


物騒な名前を付けたな。手がドリルに変化するとレールガンロケットパンチが放たれる。


「シャ!」


それが八岐大蛟の尻尾であっさり弾かれてしまう。ドリルじゃない部分をよく狙って弾いたな。


「「嘘だー!? は!?」」


「「「「シャー!」」」」


大津波がギャラクシータロスに襲い掛かる。そういえば泳げるという情報は聞いていないな。すると大津波が直撃するがギャラクシータロスは佇んでいた。流石の大津波もギャラクシータロスの大きさを飲み込むまでは行けず、また質量を流すことは出来なかったみたいだ。


「パンドラ!」


「いくよ! ギャラクシータロスキャノン! ファイヤー!」


ギャラクシータロスは空いている手にキャノン砲を構える宇宙空間のような巨大な波動が銃口から放たれる。その直線的な攻撃が八岐大蛟に直撃する。普通なら液状化などで躱しているはずの攻撃だ。それをしなかったという事はあの武器には激突と必中の効果が最低でもあるな。


防御を固めていた八岐大蛟だったがこの攻撃で五つの首が消し飛んだ。そして八岐大蛟の目が真っ赤に変化すると天に向かって吠えると姿が消えた。そして島の上空に紫色の怪しい雲が覆うとそこから巨大な蒼い鱗の大蛇の首が八つも姿を見せる。


『ちょっとタクトさん!?』


『こんなの聞いてないよ!? おじ様!?』


『俺もこんな切り札があったなんて初めて知ったよ』


これは恐らく最初に感じたスサノオが戦った八岐大蛟の姿と違う所に原因があるな。それから流星群や雷轟、暴旋風、火山弾などが降り注ぐ中、考えると思い当たることがあった。


「そう言えばあの八岐大蛟はスサノオに負けて封印されている設定だったな」


つまり俺たちが最初に出会った八岐大蛟は全盛期の八岐大蛟では無かったということになる。でも、全盛期の頃と封印されていた八岐大蛟の識別結果が同じ名前だった場合、島で出現させたら、どうなるかが問題だ。そしてその答えが今、俺の目の前で起きている。


「とんでもない罠じゃないのか? 運営さん」


普通なら封印されていた状態で出されるべきだろう。まぁ、明らかに姿が違ってたら、流石に疑問には思って、戦闘をキャンセルするのが普通だと思うけどさ。それともレベルの設定で姿が違う可能性もあるか。


そして俺には運営の他にもう一つ文句を言いたい人物がいる。スサノオは間違いなくこうなる結果を知っていて俺に情報を渡しただろうからね。俺には責める権利がある。きっと文句を言ってもそれぐらいお前の実力なら問題ないだろう?とか言われて終わりな気がするけどね。


「草薙剣の強化の道は厳しいってことか」


神バリアを貼っていたギャラクシータロスを見た八岐大蛟は雲から身体を伸ばして来る。帰還で戻した腕を再び放つなど攻撃をするがびくともしない。そして八岐大蛟はついにギャラクシータロスに巻き付くとそのまま空に連れて行き、神バリアが強烈な締め付けにひびが入る。


ギャラクシータロスを持ち上げたという所だけ見てもとんでもないパワーの持ち主であることが嫌でもわかる。ここでついに神バリアが砕けてしまい、本体を締め付ける。だが、ギャラクシータロスはびくともしていなかった。


「ギャラクシータロスはギャラクシーメタルとオリハルコンを大量に使用して作った神造巨兵(しんぞうきょへい)! 潰すことなら不可能ですよ!」


「そーだ! そーだ! お父さんとパンドラが作ったギャラクシータロスは最強なんだよ!」


もの凄い強敵と戦っているんだが、二人は楽しそうだな。それだけギャラクシータロスに自信があるという事だろう。取り敢えず防御面では圧倒的な安心があることは分かった。


ここでギャラクシータロスは電弧放電を放ち、胸がスライドすると銃口が現れる。そして魔力が集まっていく。


「へーパンドラスマッシャー! 発射―!」


放たれたプラズマの波動の一撃が本気となった八岐大蛟の首を吹っ飛ばした。この兵器のネーミングは絶対プレイヤーが名付けたな。恐らくクロウさんだ。クロウさんはオリハルコン装備がだいぶ慣れてきており、この機会にヘーパイストスと契約するための試練を受けているらしい。


ただヘーパイストスと契約するための試練は武器、防具、装飾品をそれぞれ一品ずつ作りヘーパイストスが査定すると言うのもだった。これがかなり厳しい。査定の基準は武器の性能、出来栄え、独創性で評価されるらしい。ここまでならまぁ、普通だがヘーパイストスの場合は何がダメだったのか教えてくれないという物だ。これはつまりそれぐらい自分で気付けてこそ一人前の鍛冶屋という意味だろう。


クロウさんからするとどこまでの物が合格ラインなのか分からないのが怖いと言っていた。その答えに俺は完璧な物と答えておいた。鍛冶の神なら当然それを求めると思うんだよね。


消し飛ばされた八岐大蛟の首は蘇生しなかった。アダマントが使用されているみたいだな。更にギャラクシータロスの身体中からミサイルが放たれる。


「「「「シャー!」」」」


八岐大蛟が叫ぶと暴風が吹き荒れて、雷が降り注いでミサイルが爆散する。その間に着地をしようとしたギャラクシータロスだったが両足に八岐大蛟の首がぶつかり、足払いのような形になる。


「ジェット噴射、全開!」


なんとか踏みとどまる。その後、剣を構えて星光刃や目から死滅光線など武装を見ることが出来たが残念ながら八岐大蛟を倒すには至らない。対する八岐大蛟も必死に攻撃するがギャラクシータロスに一切ダメージも状態異常も通用しない状態だ。


こうなると相手の切り札が先に切れて勝負有りな気がする。そんな風に思っていると八岐大蛟の首が俺たちのほうを向き、攻撃を仕掛けて来た。


「そうかよ。そんなに俺たちに殺されたいなら実験に付き合って貰うぞ」


俺はスラー酒を取り出す。夕凪がガードを構えていたことで八岐大蛟の首が俺たちのほうに向かって来ており、スラー酒に気が付くと目の色が変わった。


こいつはスサノオにやられる前の八岐大蛟だ。酒に興味を持つのは当然であり、恐らく俺が最初に見た八岐大蛟のように泥酔の耐性は持っていないだろう。


「そーら。たっぷり飲みやがれ!」


「シャー! んぐ!? シャ?」


でかい口を開けた所にスラー酒を放り込んだ。まぁ、何が起きたのか分からないだろうな。


「「「「シャー!」」」」


八岐大蛟たちがうめーと言わんばかりに叫び声をあげると強化が発動する。


「タクトさん!?」


「強くなっているよ!? おじ様」


「落ち着け。アリナ」


「お任せなの。時間加速!」


八岐大蛟の時間が加速し、スラー酒の強化時間が失われる。さて、これで何が起きるかだな。


「「「「シャ? シャ―――――!?」」」」


八岐大蛟の切り札が解除されると八岐大蛟がのたうち回りながら空から島に落下する。その間も地面でグネグネのたうち回る。とてもじゃないが戦える状況では無さそうだ。頭が割れそうな頭痛と気持ち悪さに苦しんでいるように見える。


「こえー…」


「アリナたちも飲んでいたら、こうなっていたの?」


「たぶんな…いや、もっと酷かったかも知れない」


「あ、危なかったの…アリナはもう絶対に飲まないと誓うの」


流石にこの惨状を見てしまうと飲むのが怖くなるのも無理はない。ただアリナの発言に違和感を感じた。


「自分だけじゃなくて、みんなも飲まないようにしてくれよ」


「それは嫌なの。リリーお姉様たちがどうなるのか非常に興味深いの」


みんなが苦しんでいる姿を高みの見物をするつもりだ。最悪ではあるがアリナらしいといえばアリナらしいか。取り敢えずスラー酒のデメリットの利用法の一つを試せたのは良かった。また自分が飲む際の覚悟にもなったかな。


俺はヘーパイストスたちに止めを刺すように指示した。


「ちょっと気が引けますがこれも戦闘テストです! パンドラ!」


「うん! ギャラクシーカリバー! 星光刃展開! いっけー!」


巨大な星の剣が八岐大蛟に直撃し、あっさり斬られてしまった。防御スキルを使えないとなるとそうなるのも仕方ないな。さて、解体前にまず戦闘テストの結果を言おう。


「機体の強さは分かったがパイロットに問題があると判明した戦闘テストだったな」


「「うぐ!?」」


なんというか操作方法だけ教えて貰ったパイロットが訓練なしでロボットに乗るとこうなりますというお手本を見せられたような気がする。


後はロボットと怪獣が対戦するとこうなりますという結果も見せられたな。今回の勝負で分かる通り、これはロボットの強さと怪獣の強さで結果が異なるんだと思う。武装が効かない怪獣が相手だとロボットに勝ち目はないし、逆に武装が有効ならロボットのほうが有利だと思う。


ただ今回の戦いを見て思ったが基本的に機動力ではロボは怪獣には勝てない。ギャラクシータロスの凄いところは怪獣の攻撃に耐えて、倒れなかったことだろう。


「基本的に巨大な敵や後方支援がメインになるんだろうが」


「相手にどれだけ通用するかが問題だと思うの」


「そこだよな…最初から後方に陣取らせるかそれとも後出しか。敵を見て判断する感じでいいかな?」


「結局結論はいつもと同じなタクトお兄様なの」


うるへー!相手の情報が少なすぎるからこうなるしかないんだよ。後方支援で最初から陣取ると的になるからな。それがいいのか悪いかが分からないのが困る所なのだ。


ここでもう一つのこの訓練の目的だ。頼むぞ。俺の解体スキル。草薙剣の強化素材よ。来い!


叢雲(むらくも)砥石(といし):レア度10 素材 品質S+

太陽と雲の力が宿った天然砥石。特定の武器を研ぐ際に使用される砥石で研ぐことが出来た武器は真の力を取り戻すことが出来ると言われている。特定の武器以外は研ぐことが出来ず、逆に耐久値を減らす結果になるので、試す際には注意が必要。


来たー!よくやったぞ。俺の解体スキル。しかも八岐大蛟の尾のおまけつきだ。残念ながら蛇石は出なかったが十分すぎる成果だろう。


さて、ヘーパイストスに聞いてみる。


「う、うーん…残念ながら僕にはわかりませんね。でも、タクトさんが契約した神がそんなことを言っていたなら確実だと思います」


流石に桜花の国のことはヘーパイストスの専門外か。俺にはこれが草薙剣にのみ使用されると書かれていない所が気になっている。まぁ、ほぼ間違いなく天叢雲剣を研ぐことは出来るだろう。他の武器がどうなるかだな。俺の刀を注文する前にテストして貰いたいところだ。


「わかりました。色々調べて使えそうなら使いますね」


「頼む。ただ明日の夜には間に合わないよな?」


「今、受け持っているのをパンドラに任せれば行けますよ。出来る? パンドラ」


「任せて! 頑張っちゃうよ!」


「それなら頼む」


俺は須佐之男命の神石を使った刀の素材全てをへ―パストスに託して、解散する。俺は時間を見て、次の予定を決めるとシルフィを待つことにした。

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