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#1207 若き八雷神と土の八雷神

転移した俺は八雷神の屋敷の玄関にある木製の引き戸を開けて中に入る。


「お邪魔しまーす」


俺が中に入ると懐かしい感じに襲われる。御剣家はかなり古い家系でその実家ももちろん古い建物だ。その歴史ある建物が放つ独特の空気を八雷神の屋敷から感じて、懐かしい気分になった。ここでの戦闘は気が引けるが壊れないことを信じて戦うしかないな。


俺が襖を開けるとそこには畳のある無駄に広い和室があった。そこに二柱の神がいた。


若雷神わかいかづちのかみ

? ? ?


土雷神つちいかづちのかみ

? ? ?


若雷神は鉢巻を頭に装備している好青年っぽい神で土雷神はごつい大男で手には数珠があった。装備は若雷神は剣一本。土雷神は棍棒みたいだな。


「屋敷に入る前に挨拶をするとは中々肝が据わっているな」


「え? 建物に入る時はお邪魔しますというのが普通なのでは?」


「はははは! あぁ! 確かにそれが普通だな! 土雷神。俺はこいつを気に入ったよ」


「奇遇だな。俺もそう感じた所だ」


ただ挨拶して家に入っただけで何故か気に入られましたよ。まぁ、敵がいる家に堂々と挨拶する人はいないか。まぁ、これは一種の試練クエストみたいなものだし、良いだろう。ここで二人が戦闘態勢になる。


「ま、気に入ったからと言ってここを通す訳にはいかないんだけどな」


「お前が求めるものが欲しいならば我らを実力で倒してみせるがいい」


「あぁ…そうさせてもらうよ。来い! ユウェル、ダーレー、狐子、伊雪、ミール!」


みんなが召喚されると俺、ダーレー、狐子が若雷神。ユウェル、伊雪、ミールが土雷神に分かれる。


「へぇ…これは楽しい勝負が期待できそうだ!」


「我らの属性と装備に合わせて来るか…面白い!」


俺たちの戦闘が始まる。まず最初にぶりかりあったのはダーレーと若雷神だった。最初の力比べはどうやら霸王戟を装備している分でダーレーが勝った。


「おっと…いいパワーだな。そして」


「は!」


「いい連携だ!」


着地する前に狐子が殺生刀で斬りかかるが止められる。だが、狐子もこれで終わる狐子じゃない。


「ふぅー!」


口から獄炎を吐いた。


「わっちっち! あぶねぇ。あぶねぇ。ん?」


「おら!」


獄炎で引いた若雷神に霸王戟を身体を回転させながら放ったダーレーの強烈な一撃を見た若雷神はまた引く。どうやら畳や家は守られているらしい。本来ならさっきの攻防で家は燃え、畳は大破していただろうからな。これで安心して戦える。


「本当にやるなぁ。けど」


ダーレーの前に若雷神が現れると斬撃を放つが、ダーレーは霸王戟の棒部分でガードした。


「そもそも反撃させて貰うぜ!」


若雷神はどうやら片手剣と体術を組み合わせた戦闘スタイルらしい。ダーレーも同じタイプなので激しい格闘戦となるが霸王戟がある分、格闘戦でどうしても有利に立てないダーレーは遂に蹴りの直撃を受けて、ぶっ飛とばされて、若雷神が追撃に出ようとするが狐子が斬りかかって、止めた。


「女でも悪いが手を抜かないぜ!」


「それでいいわよ! ナインテイル!」


「いぃ!? やべ!? うわぁあああああ!? ぐべ!?」


狐子は尻尾で若雷神の足を掴むと振り回して柱に叩きつけた。なんか楽しそうに戦闘する神様だな。見ていて気持ちがいい。一方で土雷神はマルミアドワーズを装備したユウェルも真っ向勝負をしていた。


「でぇやぁあああああ!」


「ぬぅうううううん!」


お互いに大振り攻撃の連続で完全に力比べをしていた。マルミアドワーズを使うユウェルと互角に戦えるとは土雷神は相当強いな。


「これでは埒が明かんか」


「そんなことはないぞ! でえやぁあああああ! あ」


「許せよ。竜の少女。神技! 雷神正拳!」


「かは!?」


跳びかかったユウェルの腹に土雷神の拳が決まるとユウェルは畳の上をバウンドしながら壁にぶつかる。ここでユウェルの戦闘を見守っていた二人が戦闘を始める。


流石に二人はユウェルとの戦闘を見ていたから力とのぶつかり合いを避けていた。しかし攻撃を当てれば勝てると言う敵でもなかった。


「硬い!」


「離れて下さい! 伊雪お姉様! ゲイミストルティン!」


ゲイミストルティンが土雷神に突き刺さる。


「弾けなさい。死針!」


ゲイミストルティンが土雷神の体内で弾けると土雷神は踏みとどまり、ミールを棍棒でぶっ飛ばした。


「そんな…どうして」


「鍛え抜かれた肉体は鋼となり、更に極めると体内まで鋼となる。中々凶悪な武器だったがその程度の攻撃力では俺の心臓までは届かんぞ。ふん!」


突き刺さったところから死針が体外に出されてしまう。いやいや。ちょっと待て。おっさん。体内まで鋼ってどういう事?体内の筋肉や内臓まで鋼だと言いたいのか?神様基準だからよく分からない。まだ神様だから心臓なんてないと言われた方がまだ納得がいった。


「さて、残りはお主だけだな?」


「…そうですね」


伊雪と土雷神がぶつかり合う。見た感じパワーとスピードで負けているが伊雪のほうが武器の扱いが上手かった。それを感じた伊雪は防御に徹する。槍と棍棒なら間合いには差がない。ただ一件すると先が刃物である槍のほうが有利に思えるが武器とのぶつかり合いではそうとも言えないのが問題だ。


棍棒が金属なら当然刃では斬る事が出来ないし、刃は斬れ味を求めるが故に金属を細く鋭く作られる傾向がある。同じ素材の場合でぶつかり合ったら、棍棒の方がどうしても有利になってしまうのだ。


だから伊雪は刃で攻撃を受けたりしていなかった。この辺りの読みは凄い所だ。そして棍棒の攻撃を守られている土雷神が次に動くのが格闘戦だった。それを伊雪は下がって、拳の間合いから外れていた。


「上手いな」


「鍛えられていますからね」


「そうらしい…」


「ドラゴンホイール!」


復帰したユウェルが車のタイヤの様になって、土雷神に襲い掛かる。それを棍棒を横にして止めると下から掬い上げた。


「おわ!?」


「甘いわ! っ!?」


追撃に出ようとした土雷神の横から天逆鉾が突かれ、土雷神は後ろに下がる。


「そこは私の間合いですよ」


「いいや。俺の間合いでもあるぞ!」


土雷神が思いっきり大振りした棍棒が伊雪に迫る。ここで伊雪が取った構えはなんと再びの突きだった。


「星光刃!」


『相打ち狙い!?』


「樹海操作!」


「神障壁!」


畳から木の根が発生し、土雷神の棍棒と手足に巻き付いた。その結果、天逆鉾に発生した星光刃が土雷神を神障壁を貫いた。その結果、土雷神の手から棍棒が離される。


「ぬぅ…いい連携だ。ぬん!」


土雷神は貫かれたまま、木の根を引き千切ると星光刃を握ろうとしたところで伊雪が元に戻す。すると目の前に雷光で移動した土雷神が現れると伊雪の腹に拳が入り、伊雪の身体がくの字に折れて、ぶっ飛ばされる。


「伊雪お姉様!? っ!?」


「ほぅ…自動防御か。だが間に合わない速度の攻撃に対応出来るか? 転瞬!」


ミールにも放たれそうになった凶悪な拳は自動防御で現れた木の壁に阻まれた。しかしそれを見た土雷神が壁の反対側に回り込んで再度攻撃を放つ。自動防御は間に合わない攻撃だったためミールは殴り飛ばされる。


「よくも二人をやったな!」


「残すのはお主だけだな。っ!?」


畳から種子棘が生えると土雷神に突き刺さる。更に寄生種が土雷神の身体から生える。


「罠は相手の動きを読んで、自分がされたら嫌な所に貼るべし。だそうですよ」


「私を誘い込んだのか!?」


「今までのお返しだ! ぶっ飛べ! 王撃!」


「木牢! 植物召喚! ホウセンカ!」


マルミアドワーズの王撃が炸裂し、壁に叩きつけられた土雷神は木に拘束されると下から実を付けたホウセンカが生えて、実が発光すると大爆発した。それを見ていた若雷神が言う。


「おいおい。何やられててんだよ。土雷神」


「余裕そうに言ってんじゃないわよ!」


「お前も少しは本気を出せよ!」


「あちゃ~。バレてた? でも、後ろの召喚師が全然動かないしな~」


ダーレーと狐子は若雷神の視線から俺が見えないように立ち塞がる。


「あいつのことは気にすんなよ」


「そうよ。それに安心しなさい。こういう時のタクトはギリギリまで見守る人よ」


「なるほど。道理で鍛えられているわけだ。それじゃあ、俺も少し本気を出そうか。雷化!」


「こいよ! 神速!」


ダーレーと若雷神がぶつかり合う。するとダーレーが何度も殴られる。神速は一瞬の加速はとんでもないものがあるが常時その加速が使えるわけじゃない。武器で攻撃を止められるとその瞬間、解除されてしまう。そこを若雷神は正確に狙っていた。


それでもダーレーは引かずに戦闘を続ける。すると二人の速度が超加速の効果でどんどん速くなる。


「しつこいな! いい加減にしろ!」


「ぐ…!? おぉおお!」


顔面にパンチをくらってもダーレーは引かない。すると若雷神はどうしても狐子の動きが気になって来る。狐子は鬼火に飯綱、幻狐を周囲に展開して臨戦態勢を取っていた。こうなるといつ仕掛けて来るのか分からないのがどうしても気になって来る。


「焼失弾!」


狐子は若雷神の雷化が切れたタイミングで焼失弾を放つ。しかし若雷神の危険予知に何も反応を示さなかった。この一瞬、若雷神が狐子の方を向く。


「ジョルト!」


「ぐぼ!?」


ダーレーの拳がようやく若雷神の腹に突き刺さる。この千載一遇のチャンスにダーレーは今までやられた分を返す。


「よそ見してんじゃねーよ! ドラゴンクロー! ドラゴンテイル! ドラゴンダイブ! 消し飛びやがれ! 太極波動!」


「やべ!? 脱出!」


霸王戟のドラゴンクローを下段から上に斬り上げ、前回転からのドラゴンテイルで地面に叩きつけるとドラゴンダイブで突進し、至近距離からの太極波動をぶっ飛ばすが脱出スキルで強引に逃げ出した。


「あっぶねぇ…っ!?」


「私を忘れたりしたらダメじゃない」


若雷神は背後から殺生刀に貫かれる。狐子に脱出スキルの逃げ道を完全に読まれた。


「嫌らしい戦いをするなぁ」


「私たちの召喚師がこういう戦いをして来たからね。それを間近で見て来た私たちも色々戦い方を勉強して来たつもりよ」


「なるほど…戦略の女神と荒くれの英雄神と契約した人間はこういう戦いを好むわけね。俺も勉強になったよっと」


殺生刀に刺さった若雷神は強引に逃げ出すと土雷神と合流する。それを見たこちらも俺の元にみんな集まる。


「こりゃあ、鳴雷神と伏雷神のことを笑えなくなったな。土雷神」


「俺は最初から笑ってはいなかったぞ」


「あぁ~…そういえば笑っていたのは黒雷神と俺だけだったな。反省反省。後であいつらに謝らないとな」


「そうしてくれると助かるな。家の中のぎすぎすした空気ほど嫌な空気はない」


俺たちが先に鳴雷神と伏雷神に勝ったことで屋敷の空気は悪くなっているらしい。俺も近衛家の養子になった時に家族の空気の悪さというのは散々感じて来たから土雷神の言うことは結構心に来るものがあった。針の(むしろ)のような感じがするんだよね。しかもそれが誰の得にもならないというオチがある。家族全員の心身の健康のために解決できるものなら解決した方が絶対にいいと俺は思う。ここで狐子が言う。


「ちょっと待って。なんであいつ殺生刀の毒が効いてないのよ」


「ん? あぁ。俺たちにはどんな毒も効かねーぞ」


「この世界はある意味、毒の世界より凶悪な世界だからな。ヘルズゲートを通って来たお主たちなら問題はないが現世で死んでこの世界に落ちた存在は神であっても朽ちてしまう世界だ。そこに住んでいる我らは例え神魔毒や永遠毒であったとしても効果を受ける事はない」


「なるほど…毒無効持ちってことか」


これで狐子の大きな力がこいつらに効かないことが証明された。狐子が俺を見て来ると俺は狐子の頭を撫でる。


「心配するなよ。狐子の力は毒じゃないだろ?」


「え、えぇ!」


俺たちがそんなやり取りをしている間に二人は本気になる。


「「神威解放!」」


若雷神に黄金の雷鼓、土雷神に緑色の雷鼓が背中に装備されて、二人は宙に浮かぶ。あれが二人の本気状態か。


「ここじゃあ、お互いに本気で戦えないから場所を映そうか。神域!」


俺たちは金色の雲が漂う山の山頂に転移した。


「確かにそうだが、これってお前たちが有利なフィールドで戦えってことなんだが?」


「俺たちの家で戦っていたんだ。あまり条件は変わらないでしょ。それとも止めるかい?」


「…いいや。折角の神様からの申し出だ。受けて立たさせて貰おうか」


狐子、伊雪、ミールがそれぞれ切り札を切る。ユウェルとダーレーは一先ず温存させた。何せ相手は人の姿をした神だ。全員が大きくなると不利になることがある。それを考えるとユウェルとダーレーは今の姿で戦わせた方がいいと思ったのだ。


「いいね。楽しくなりそうだ!」


「ゆくぞ!」


「こい! でぇやあああああ!」


最初に土雷神とユウェルがお互いに飛び出す。


「神技! 雷鳴猫騙し!」


「うぐ!? なんだ!?」


土雷神がユウェルの目の前で両手を突き出して掌を合わせて叩くと雷光と雷鳴がユウェルを襲う。ユウェルからすると至近距離でスタングレネードを喰らった形となり、ユウェルの動きが止まってしまう。


その間に土雷神はユウェルの懐に潜り込む。


撞木反(しゅもくぞ)り!」


「なんだ!? なんだ!? うぐ!?」


ユウェルは横向きに肩に担ぎ上げると後ろに反って地面に叩きつけられる。撞木反りは相撲の決まり手の一つで柔道の肩車に似ている技だ。力士たちは対格差や体重さはあれど流石に肩車までされるような事は早々起きないため、最も珍しい決まり手の一つに数えられていると爺ちゃんが言っていた。


確かじいちゃんが一度見たことがあると言っていたけど、相撲には興味ないため、技としては始めて見た。ユウェルは頭から落下したがたぶん本来はそこまで危険な技ではないと思う。やはり日本の雷神といえば建御雷が出て来るから桜花の雷神はみんな相撲の技が得意なのかも知れないな。


そして頭から地面に刺さっているユウェルは蹴り飛ばされる。するとユウェルを助けようと伊雪が太極波動を放つが障壁と肉体でガードされる。しかしここでミールの木が襲い掛かると土雷神は後ろに下がった。


「石雷!」


土雷神の雷鼓から緑色の雷が放たれるとミールの木が石化する。状態異常無効が効かないだと?


「それがこの世界の力か」


「一度の攻撃で見切るか」


「バレちまったら、しょうがないわな。この世界は雷系のスキルの威力を上げて、雷系のスキルで発生する状態異常を確定で相手に付与する。状態異常無効や神の加護は状態異常にならないことが前提のスキルだからこの世界の効果は擦り抜けてしまうのさ」


すごい屁理屈を言われている気がする。つまり状態異常無効や神の加護は状態異常を防ぐスキルであって、消し去るスキルじゃないからミールの木は影響を受けたってことか。そういう事なら消し去る魔法を使えば治るってことだな。俺は神剣エスカトンリープリングを取り出す。


「リフレッシュ」


俺がミールにリフレッシュをかけると石化が治る。


「なるほど。さっきの説明は合ってるらしいな」


「ふ。すぐにこの世界の攻略法を思いつくか」


「参ったね…まぁ、べらべら能力を話した俺が悪いんだけどな」


「獄炎!」


「暴風壁!」


狐子の放った地獄の炎が複数の竜巻にガードされる。


「荷電刃! いけ!」


若雷神の雷鼓が分離すると一つ一つの雷鼓の側面に金の刃が発生すると荷電粒子の刃が発生し、高速回転しながら狐子に襲い掛かった。


「格好いい武器だな!」


『そんなこと言っている場合じゃないでしょ! ナインテイル!』


狐子は刃を避けて、上手く雷鼓の表と裏を尻尾で当てて弾き飛ばす。すると全ての雷鼓が表側を狐子を向ける。


「雷波動!」


それぞれの雷鼓から雷波動が放たれると狐子に直撃する。すると全ての雷鼓は若雷神の元に戻る。あれはずっと展開していられないみたいだな。俺は土雷神を見る。


「でぇやあああ!」


「はぁあああ!」


「電磁場! ふん!」


ユウェルと伊雪が同時に攻撃すると電磁場で弾き飛ばされて二人は拳と蹴りでぶっ飛ばされていた。ここで俺は狐子と伊雪をそれぞれ相手をチェンジさせる。


「ん? おっと」


「おいおい。どこに行っているんだよ。狐」


「自然波動!」


「おっと…なるほど。相手を交代したってことか。それで俺たちを止めれるかねぇ!」


もちろん止めれると思ったから交代させたのだ。


「荷電刃!」


伊雪に高速回転する雷鼓が迫る。


「猛吹雪! 暴風雪!」


高速回転する雷鼓が暴風雪の突き進む。


「そんなもんでこいつが止められるわけねーだろうが!」


止める必要なんてない。俺が伊雪に指示したのはあれを使えなくすることだ。


高速回転する雷鼓が伊雪に当たる頃には巨大な雪玉になっており、荷電刃が見えなくなっていた。それを伊雪は打ち返した。


「うお!? なんじゃそりゃ!?」


雪は一つ一つは大した力はないが集まれば車のタイヤを動かなくさせてしまうほどの力を発揮する。流石にこのゲームではスキルで回転しているので、止めるところまではいかないみたいだが刃を雪で埋めることが出来た。


「攻撃力半減ですね」


「…そうでもねーだろう。雷波動!」


巨大な雪玉となった雷鼓から雷波動が伊雪に放たれる。それを伊雪は脱出で回避する。


「予想が外れたな! っ!?」


「覇撃!」


伊雪に意識を向け過ぎていた若雷神にダーレーの一撃が直撃する。


「光化! はぁあああ!」


「神速! おらおらおら!」


「な!? ぐ!? が!? やべ!?」


勝敗を決めるのは一瞬の隙だ。覇撃を受けて落下中の若雷神に光化で現れた伊吹が攻撃を加えるとダーレーもそこに加えて、二人で左右交互から連続攻撃を加える形となった。


これが堅固スキルなどを持っていれば攻撃を受けながら反撃することが可能だが、持っていない人からするとスキルを発動する時間がなくボコボコにされる形になる。


そして若雷神は助けを求めようと土雷神のほうを見るとそこには大焦熱地獄が広がっていた。その地獄の中で更に獄炎を浴び続けている土雷神の姿があった。


土雷神のほうはユウェルが攻撃した際に電磁場で弾き飛ばされた瞬間に狐子の獄炎が放たれた。これを土雷神は電磁場を貼った状態で受けてしまった。これは明らかな選択ミス。電磁場では炎を遮ることは出来はしない。


この選択ミスをしたせいでミールに足を拘束されてから大焦熱を使用され、そこからずっと動けないまま狐子に焼かれ続けていた。それでも土雷神は石雷で反撃してきたがこれは俺が治し続けさせて貰った。


「「うぉおおおおお!」」


必死に叫ぶ二柱の神だったが若雷神はダーレーと伊雪の止めの一撃を浴びて倒れ込み、土雷神は狐子に削られ続けて、倒れ込むのだった。


「ひでぇ…ひでぇよ…」


「ぬぅ…自分たちのスキルの奢りが敗北を招いたか…いや、俺たちを冷静に分析して、戦うメンバーを変えたお主の采配を褒めるべきだな」


「ども。俺は先に進みたいんだが、いいよな?」


「あぁ…俺たちは負けちまったからな。お前たちをこれ以上阻む権利はねーよ」


「だが、心せよ。ここから先の八雷神は俺たちよりも強いぞ。それと我々に勝った褒美だ。そこの掛け軸の後ろにある隠し部屋を見るといい」


そう言うと二人は消えるのだった。俺は土雷神に言われた通り、掛け軸をめくり、壁を押すと隠しドアとなっており、動いた。ここは忍者屋敷だったのだろうか?


「狭いな」


「わたしに任せろ! タク!」


ユウェルが意気揚々と突撃し、帰って来た。


「宝箱があったぞ!」


ユウェルの頭を撫でてからせっかくなのでユウェルに宝箱を開けさせてあげた。出て来たのはこちら。


天詔琴(あめののりごと):レア度10 琴 品質S+

重さ:100 耐久値:1000 攻撃力:1000

効果:神殺し、不死殺し、破魔、神気、冥気、覇気、快音波、不快音波、爆轟、探知波、超低周波、気圧操作、神撃、神威解放、王の加護、勝利の加護、神の加護

スサノオが所有する三秘宝の一つ。スサノオから大国主神の手に渡った桜花という国を作った楽器と言われている神の琴。大国主神はこの琴を使い、八十神を時に魅了し、時に苦しめたと言われている。神威解放を使うと生命力を器用値に変換する特殊な力が発揮され、解除しないと全ての生命力を吸い取られる危険性があるかなり危険な楽器。


俺が知る楽器の中ではかなり重たいな。新しいスキルである快音波と不快音波が説明に書かれている魅了と苦しめたという文章な気がするな。そしてこの楽器は呪われてない?スサノオの武器であることを考えるとなんか納得してしまう能力だけどね。


「誰か使える人いるかな?」


「わたしは無理だぞ!」


「見ればわかるよ」


ユウェルが抗議の頭突きをしてくるが、宝箱の中身をみた瞬間、物凄くがっかりしていたからな。本人が一番よく分かっているだろう。ここで狐子が言う。


「一応私は使えるわよ」


「意外だな」


「失礼ね。淑女の嗜みよ」


まぁ、九尾は確かに琴なら演奏できそうな気はするな。九尾は元々は中国発祥だし、琴が中国から日本に伝来したのは奈良時代と言われている。玉藻前は平安時代後期と言われているから位の高さから考えても琴を演奏していても不思議ではない。


こうなると和狐も演奏できそうな気がするね。恋火は聞かないで欲しい。何故か家の窓が全部割れる予感がしたことだけは言っておこう。ここで伊雪が手を挙げる。


「私も一応出来るかと…天人の知識の中に琴の演奏があります」


便利だな。知識スキル。こうなるとセチアも可能性的にはありそう。ルーナも出来そうだが、重いのが難点だな。取り敢えず使うかどうかわからない武器だし、伊雪に預けておけば大丈夫だろう。


「ふーん…これで私の演奏をする機会は無くなったわね」


「どうしてそうなるんだよ。借りればいいだろう?」


「嫌よ」


「ふふ。狐子は拗ねているだけですよ。お父さん。お父さんが頼めば聴かせてくれると思いますよ?」


「しないわよ」


うーん。伊雪が教えてくれたことを覚えておこうかな?今は演奏を聴く余裕なんてないけど、いつかみんなでご飯を食べながら、演奏会を開く日が来るかも知れないからね。それじゃあ、屋敷の奧に進むとしよう。

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