#1204 アスラドラゴン討伐戦
最初に仕掛けたのはアスラドラゴンだった。
「魔素解放! 物質化!」
アスラドラゴンの身体から膨大な魔素が発生するとその魔素が恋火たちに襲い掛かる。
「キュー!」
アルビオンドラゴンとなったジークがその巨体でぶつかるとそのままアスラドラゴンとの距離を詰める。そして物質化した大量の魔素を突破したジークだったがそこにはアスラドラゴンの姿はなかった。
「黒星!」
「キュ!?」
アスラドラゴンは魔素を目くらましに使って、魔素支配で自分の位置を上手く偽装した。この罠にまんまとハマってしまったジークはアスラドラゴンの黒星を上から叩き込まれて、下に落下中に大爆発する。
「溶断!」
「牢獄!」
恋火はジークに構わずアスラドラゴンに攻撃を仕掛けたことで斬ることに成功する。しかしアスラドラゴンは恋火が恋白を振ったことで止まった隙を狙い、牢獄で恋火を捕らえた。
「しまっ」
「ドラゴンクロー!」
「きゃあああああ!?」
強烈なドラゴンクローでぶっ飛ばされる。
「くぅうう…来てください! 觔斗雲!」
觔斗雲がクッションのようになり、落下した恋火を止めてくれた。その間にストラとリースがアスラドラゴンと戦闘する。
「行くぜ! その首、手あたり次第食ってやるよ!」
「「「「シャー!」」」」
ストラの首が襲い掛かるとアスラドラゴンは爪と牙でストラの首を破壊していく。ここで発生しているのがリースとアスラドラゴンの読み合いだ。リースは確実に必殺技を当てたい。対するアスラドラゴンはそれを避けてリースを仕留めるのを狙っている。
「爆風波!」
「ふん!」
リースが牽制に爆風波を放つが当然アスラドラゴンは相手にしない。
『どうしよう…今、放てば絶対に躱される。でも、このままじゃ、距離を詰められて必殺技を使う機会が無くなっちゃうかも知れない。こんなとき、主様やブランお姉様なら…』
ここでリースは俺の言葉を思い出す。
「もう少し自分を信じてもいいんじゃないか?」
リースは神剣グラムを見ると頷いて、構える。
「自分を信じて見ます。主様」
リースの目付きが変わった事にアスラドラゴンは警戒するがリースは構えたまま、動かない。
『それならこのまま潰してくれる!』
ストラも奮闘するが弱化毒の効果で弱まり、アスラドラゴンの勢いが増していく。
「「「「シャアアアー! シャー!」」」」
ストラは逆鱗も発動させて、決死の攻撃に出た。ストラの覚悟を見たリースは神剣グラムを構える。
『来るか』
「英雄技! クラウ・エイン」
リースのクラウ・エインはアスラドラゴンの霊化によって躱される。上手くクラウ・エインを囮に使った。
「ち!」
「神剣技! シグ・ヴォルスング!」
「ぐぅううう! 舐めるな! 小娘! 逆鱗!」
シグ・ヴォルスングが直撃したアスラドラゴンだったがなんと爪で押し返す。
「くぅううう」
「そいつ諸共落ちるがいい!」
大ピンチのリースとストラだったがアスラドラゴンは自分がリースとの駆け引きとストラとの戦闘に時間をかけ過ぎていたことに気が付くべきだった。
「天竜解放!」
恋火の恋白から巨大な光のドラゴンが現れる。そして恋火が飛び出すと光速でアスラドラゴンに激突する。
「貴様!?」
「やぁあああああ!」
そのままアスラドラゴンは上空に連れて行かれると光の大爆発を受ける。
「邪魔…してんじゃねーよ! ドラゴンテイル!」
恋火にドラゴンテイルが迫るとここでドラゴンブレスが飛んで来て、ドラゴンテイルに直撃する。
「キュー!」
ジークが逆鱗を発動させて、アスラドラゴンに戦いを挑む。
「てめぇごとき小僧が半減を受けたからって俺に勝てると思ってんじゃねーよ! 狂戦士化!」
「キュー!」
黒と白のドラゴンが大空で激突する。それは遠距離ではなく、激しい打撃戦となった。同じ毒使いの戦いだ。違うのはアスラドラゴンは災禍をばら撒き、光を吸収する。片やアルビオンドラゴンは災禍を浄化し、闇を照らす。こんなライバル関係である二体のドラゴンが打撃戦になるのはある意味必然だった。
アスラドラゴンの重い一撃はジークの装甲を一撃でかなり崩壊させている。しかしそれでも全てを削るにはそれなりの時間が掛かり、その間にジークの攻撃はアスラドラゴンに決まっていた。
それを気にする素振りを見せず、アスラドラゴンは激しい連打でジークの装甲を削った。俺たちもそうだったがアルビオンドラゴンの攻略法はどれだけ早く装甲を剥がすかにかかっている。半減の効果を最小限にする一番いい方法がこれなのだ。それをすぐに実行している辺り、アスラドラゴンはアルビオンドラゴンの攻略法をある程度知っていると見るべきだな。
「おらおらおら! そら! 見えたぜ! 小僧!」
「キュー!」
装甲が剥がされたことでジークの本体が飛び出し、アスラドラゴンに体当たりするとアスラドラゴンは両手を合わせて、ジークに両手を叩き込むとジークは下に落下するが力は見た目ほどなかった。半減の効果が効いているようだ。
「へ…何勝ったような面してやがる。ドラゴンフォース! 死ぬのはてめぇのほうだ!」
「キュ…キュー!」
再び打撃戦となる。速さのジークとパワーのアスラドラゴンといった形の勝負だ。お互いにもう攻撃を躱す思考はほぼないに等しい。しかしこうなると確実に半減が決まるジークが優勢となる。
「キュキュキュ! キュー--!」
「ぐ…は!」
ジークの連打で距離が開いたアスラドラゴンにジークは止めとなるドラゴンブレスを放った。そしてここでみんなの切り札が時間切れを迎える。
「随分苦しそうだな? お前たち」
「キュ!?」
ジークが道連れで発生した邪竜の手に捕まるとヴリトラが蘇生する。マハーバーラタに登場するヴリトラはインドラと一度戦った際にヴィシュヌの仲介でインドラと和平を結んでいる。その内容が木、岩、武器、乾いた物、湿った物、ヴァジュラのいずれによっても傷つかず、インドラは昼も夜も自分を殺すことができないという不死身に匹敵する内容だった。
結局は明け方または黄昏時に狙われて、ヴィシュヌが入った海の泡でヴリトラは死ぬことになるのだが、このゲームのヴリトラも不死身を獲得していた。ヴリトラがジークとの打撃戦を選んだのは半減のデバフは死ぬと解除される弱点を知っていたからだ。
道連れスキルで死んでしまったジークだが奇跡で蘇生する。だが、ジークは不死ではない。残りの蘇生は起死回生の一回のみだ。ここでまたヴリトラと戦闘して半減を与えて、殺しても最初の状態でヴリトラは蘇る。
「終わりだよ。お前ら…怨念!」
みんなに俺が警戒を呼び掛けた怨念スキルが放たれ、呪いと回復封印、一定ダメージの状態異常になる。これでストラの不死身も封じられた。
「ははは! 絶望的だな! ん?」
本来なら負けが確定的な状況だが、ヴリトラが見た恋火たちの目には光が宿っていた。戦う前に俺は恋火たちにあるお願いをしていた。それはヴリトラを一度だけ倒して欲しいというお願いだった。
このお願いがあったからみんなこいつを一回倒す為に全力を出すことが出来たのだ。後は俺とスピカの仕事だ。
「超連携!」
「ぐぅうううう!? 何!?」
俺とスピカの超連携がヴリトラの首に炸裂し、そのまま山頂に落下させる。
「がは!? 馬鹿な…てめぇらは俺のスキルで」
「お前も自分のスキルを過信しすぎたな…ヴリトラ。ジークの半減が死ぬことで消えるようにお前のスキルも死んだ瞬間に無くなるんだよ」
このゲームでは永遠毒などの例外を除いて一度死ぬとスキルは解除される仕組みになっている。次元封鎖が例外に該当する可能性はあった訳だが、永遠として言葉はないし、ヴリトラが半減の攻略に不死身を使って来ることは分かっていた。それならこれに賭けてみるのもいいと思ったのだ。結果が大当たりで良かった。もし違っていたら、恋火たちに怒られる所だったよ。
「狙ってやがったのか…だが、この程度で俺が…っ!?」
「お前の竜穴を狙わせて貰った。そしてパラス・アテナの槍は不死殺しの槍だ。俺の仲間がやられた分とラーマたちを苦しめた罪はお前の死で償って貰うぞ。超連携! 大雷霆!」
「ヒヒーン!」
俺とスピカの大雷霆が融合し、超巨大な大雷霆になる。ヴリトラに撃ち込むが死なず、ずっと暴れられなかったスピカが彗星や星座魔法のサジッタや惑星魔法のジュピターを喰らわせると最後は復帰したみんなと一緒に同時攻撃で仕留めた。そしてインフォが来る。
『救援クエスト『猿神ハヌマーンを復活させよ』をクリアしました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント8ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント8ptを獲得しました』
『恋火のレベルが30に到達しました。成長が可能です』
『リースのレベルが40に到達しました。進化が可能です』
まぁ、流石に第五進化のドラゴンを倒したら、レベルアップが来るよな。俺もずっとレベルが上がっていなかったけど、ここで二レベルアップが来た。ドラゴンの経験値は美味しいね。ここでヴリトラが言う。
「まさかインドラ以外の奴に負けるなんてな…おい、お前ら。この俺に勝ったんだ。ラーヴァナや他の神に負けるんじゃねーぞ」
そういうとヴリトラは黒い霧となって消えて、アイテムを落とすと山から水が流れ出した。これで一先ず一件落着だな。それじゃあ、ステータスポイントを俊敏性に全て回して、残りのスキルポイントは289ptとなった。
これでよし。次に落ちたアイテムを鑑定する。
憎悪悪竜石:レア度10 素材 品質S+
憎悪悪竜アスラドラゴンの魂が宿っている石。憎悪悪竜アスラドラゴンを討伐したものにしか扱えない特殊な石。
スラー酒:レア度10 通常アイテム 品質S+
効果:全ステータス二倍、強化効果二倍、時間制限二倍、全状態異常回復
三十分後効果:悪酔い、全ステータス1、全スキル封印
神が飲む酒の中でも最も恐ろしい酒と言われているお酒。飲むととんでもない力を獲得することができるが効果が切れると恐ろしい泥酔に襲われ、神すら地獄を味わうと言われている。
憎悪悪竜の宝珠:レア度10 素材 品質S+
神すら恐れる仙人の憎しみが封じ込められている宝珠。ダークネスドラゴンが進化するために必要なアイテム。
ジークの進化クエストとほぼ同じような報酬だ。最大の違いはスラー酒だな。時間制限二倍というのは恐らく解放スキルの使用時に発生する時間制限だろうな。これはとんでもない物を手に入れてしまった。
ただ恐ろしいのが副作用だな。俺でも飲めるみたいだけど、神様すら地獄を味わうって人間に耐えられるレベルじゃないと思うんだけど、こういうのって怖い物飲みたさが出て来るんだよね。
いや、待てよ。俺。もしこれを飲んで意識が飛んでいる内にリリーたちやシルフィに嫌われるようなことをしたら、離婚のピンチになるかも知れない。このゲームに離婚システムがあるのか知らないけど、折角幸せな結婚生活をお酒によってぶっ壊されるなんて馬鹿馬鹿しいにも程がある。大人しくインドラ様に渡すとしよう。
「なんというかドラゴンっていうのはみんなこんな感じなのかね?」
自分を負かした相手の強さを認めて、その者に負けないように要求する。何故そうするのか?自分が負けた相手が負けると自分もそいつに負けたことになるからだ。現実でもスポーツのトーナメント戦で自分たちを負かしたチームを応援する気持ちと同じだろうね。
「あたしは悪い気はしませんよ? 負けるのが怖くはなっちゃいますけど」
「恋火らしいな。さて、何度も自分の半減を過信して突進したどっかの誰かさんは後でたっぷり叱るとして」
これを聞いたジークはギクッとするとストラの後ろに隠れた。隠れてもシンクロビジョンで見ていたから不可避です。俺はリースの頭を撫でる。
「よく自分を信じたな。偉いぞ。リース」
「あ…あれはその…主様が訓練の時に言ってくれたからで」
「俺が言ってもそれを実行したのはリースだよ。素晴らしい判断だった。進化のレベルに到達したけど、今回の戦いの事は忘れないようにな」
「は、はい! ありがとうございます! 主様!」
俺がリースをべた褒めしていると恋火の尻尾が暴れていた。顔には出さないが尻尾には出てしまう恋火である。
「恋火もよくリースとストラを信じて待ってくれたな。偉いぞ」
「えへへへ~。それほどでもあります~」
恋火はストラとアスラドラゴンが戦っている時には既に天竜解放を使える状態だった。ただあの状況で飛び込んでも当てれる相手じゃないと恋火は考えていた。そして恋火が出した結論が待つことだった。
あの場面でリースがもし駆け引きに負けたならそれを助ける為に使えばいいし、リースが駆け引きに勝ったなら自分とジークの攻撃を当てれると恋火は考えた。血醒と荒魂の発動中にこれを考えることが出来た恋火は相当成長している。
ストラとジークも褒めていると背後に雷が落ちる。
「もういいか? スラー酒を飲むんじゃねーかとヒヤッとしたぜ」
「そんなことするはずないじゃないですか~。これが約束の品です」
「おう。そんじゃあ、俺も約束を果たすとするか。あの村はピンチ見てーだしな」
やっぱり襲われているのか。トリガーになったのはガルダの宮殿に到達した時だな。上に上がっている時にメール音がしたから間違いないと思う。
インドラ様が手を天に向けると雷が天に上がり、村の村長の家に置かれていたハヌマーンに落ちるとハヌマーンが復活する。
「ウッキー! やっと自由になれたぜー!」
「新手か!」
「俺の仲間を随分と虐めてくれたな。アスラ共! 覚悟は出来ているんだろうな?」
「ふん。たかが猿の神風情がこの俺様に勝てると思っているのか?」
「その言葉、そっくり返させて貰うぜ! 来い! ガダ!」
ハヌマーンが手にメイスを出現されると雷を纏って敵将と激突する。そして俺の前では用事は済んだと言わんばかりにインドラ様はいなくなった。それじゃあ、俺は下にいるみんなのところに行ってからラーマたちのところに向かうとしよう。




