#1198 異星の暗黒神
アザトース軍の中継基地から現れたのはマザーシップ級のドラゴンタイプの敵だった。
グロス・ゴルカ?
? ? ?
こいつの胸から次々クームヤーガが現れる。どうやら母艦らしい。この姿を見て、怒るのは当然リリーたちだ。
「こんなのドラゴンじゃない!」
「こんなもの残しておけない! 絶対に破壊しますよ! リリー!」
「もちろんだよ! イオンちゃん! みんな! 一気に落とすよ!」
『ダメです! 待ってください! 勝手な突撃は私が許しません!』
シルフィの指示にリリーたちが止まる。
「でもシルフィ!」
『気持ちは十分分かります。私もドラゴンの事が大好きですから。ですからあれを確実に倒す為に無暗に突撃しては行けません! 命令を聞けない行けない子は後でお仕置きしますからね!』
リリーたちが止まった。俺はそれをマザーシップから感心した目で見ていた。感情的になったリリーたちを止めるのがどれだけ難しいか俺はよく知っている。後で参考にさせて貰おう。
ここでグロス=ゴルカの身体に無数の眼が現れるとそこからホーミングレーザーが放たれるとリリーたちは冷静に対処する。更に体から今まで見たことがないミサイルが放たれる。
これをリリーたちが撃ち落とすと緑色の液体がまき散らされてる。
「あつ!? うぅ…べとべと…なにこれ~」
『溶解液です! 洗い流してください! イオンさん』
溶解液はシックスライムなどの緑色のスライムに確認されているスキルで付着するとずっと火傷状態にして、武器や防具の耐久値を減らし続けて来る厄介なスキルだ。
「はい! 海流操作!」
本来なら水で洗い流すなどで対処できるスキルだが、イオンが水で流そうとしたが付着した溶解液は取れない。粘着スキルまで併用されているらしい。
「流せませんよ!? シルフィ!? どうすればいいですか?」
『えぇ!? えぇーと…こうなったら、倒される前に倒しましょう! ジルニトラ! マリッジバーストです! 行きますよ! リリーちゃんたち! フェンリル!』
「「「「おぉ!」」」」
シルフィ…その判断はどうなんだ?初見の敵を警戒しないといけないから突撃をとめたんじゃないの?
突撃したリリーたちはホーミングレーザーに加えて、頭の左右の角から発生した黒雷の攻撃を受ける。それでも攻撃を受けながら接敵するがシールドに阻まれる。フェンリルも噛み付こうとしていたが噛めていない。フェンリル得意の空間捕食が時空支配によって、阻まれているのか。
そしてリリーたちの攻撃している手が四角い空間に固定されるとそれが捻じれて、リリーたちはそれぞれ手を失ってしまう。そしてドラゴンノヴァでぶっ飛ばされる。
「きゃあああああ!? えぇ!? 何してるの!?」
「私たちの武器を返して下さい!」
グロス=ゴルカはなんと腕を引き千切った際に落としたリリーたちの武器を身体から手を発生させて体内に取り込んでしまった。その結果、リリーたちの武器のスキルをグロス=ゴルカが獲得してしまう。
「く…強い…それにこのままじゃあ、溶解液の効果でリリーちゃんが…それに武器もなんとかしないと」
『シルフィ。俺だ。武器は俺がなんとかする。溶解液はリフレッシュとかじゃ、治せないでいいか?』
「タクト! はい。そうです。まず取り除かないと効果が切れる事はありません」
『燃やして蒸発されるかそれでも取れないなら破壊出来るようにして取り除くしかないな。蒸発が無理なら凍らせてみてくれ。部位破損はマザーシップで治せるよ』
一度リリーたちがマザーシップに戻り、ナノマシンによる治療を受けるとシルフィが燎刃とイオンに指示を出すと蒸発は無理で氷結が有効だった。
「取れた! すごーい! シルフィ!」
「え…えぇ…」
「リリーお姉様…お兄様がこっそり対処法を伝えていたの」
「そうなんだ! 流石タクト!」
リリーの明るさに救われるシルフィだった。そしてシルフィはイオンに指示を出す。
「イオンさん。皆さんの溶解液を凍らせられますか?」
「やってみます! ドラゴンコールドフロント!」
ドラゴンの冷気がみんなを覆うと溶解液が氷結し、そのままグロス=ゴルカに襲い掛かるがシールドに防がれる。するとホーミングレーザーがイオンに襲い掛かる。
「む! はぁあああああ!」
イオンは襲い掛かるホーミングレーザーを飛び回り回避するとマザーシップからのホーミングレーザーが撃ち落とした。
「敵、グロス=ゴルカの解析完了しました。マスター。どうやら頭の先にある角がシールド発生装備のようです」
「そうか…敵がどう動くかどうかだが、やってみるしかないな」
俺はユウェルを呼ぶとマモングリモワールをユウェルに預けて、ハデスの隠れ兜を使った潜入特別任務を与えた。
「特別任務! 任せろ! タク! 行ってくる!」
特別任務という言葉がユウェルの琴線に触れたらしい。そして俺は全軍に後退の指示を出す。するとグロス=ゴルカは結界を解除して次々クームヤーガを出すことで崩壊した部隊を立て直して来た。
そしてクームヤーガたちと俺たちが激突する。やはりあの結界は無限に貼り続ける事は出来ないみたいだ。自分の安全を確保できる状態になったことで解除して来た。そこに付け入る隙が生まれた。
俺たちが時間稼ぎをしている間にユウェルがクームヤーガたちが発進している胸への潜入に成功した。
「わたしたちの武器を返して貰うぞ! 全強奪!」
マモングリモワールが全強奪を発動すると壁から次々リリーたちの武器が飛び出してきて、マモングリモワールに回収される。
だが、この結果、当然ユウェルは見つかり、攻撃を受ける。
「竜化!」
ユウェルがグロス=ゴルカの中で竜化する。
『私たちの武器を奪った上に汚した罪がどれだけ重いがたっぷり教えてやるぞ! 本物のドラゴンがどれだけ強いか思い知れ!』
ユウェルの身体中から大砲などが現れるとグロス=ゴルカは大爆発に襲われる。
「今です! 行きますよ! リリーちゃんたち! 私たちの狙いは頭です!」
「うん! 武器が無くても壊すよ! みんな!」
「それはそうなんですが、なんか私たちが筋肉女みたいになってませんか?」
「拳で壊すとは言ってないからセーフだと思うの。後、拳で破壊する気満々の燎刃はちょっと女性として考えた方がいいと思う」
「考えなくて大丈夫です! タクト殿ならそこも好きになってくれますので!」
燎刃も言うようになった物だ。これはいい傾向だね。たぶん力が付いて来たから自信が出て来たのだろう。今まで引きすぎな所があったからね。燎刃にはもっと自分を出して欲しい。もちろんどれだけパワー思考でも俺はそんな燎刃が大好きだと明言しておこう。
リリーたちが向かっているのにグロス=ゴルカは結界を展開しなかった。潜入されたユウェルに相当手こずっているらしい。それもそのはずで最初の一撃でグロス=ゴルカの発着甲が破壊され、ユウェルは発着甲から大量のクームヤーガが配備されている格納庫に潜入。そこを火の海にしていた。
船員のヴーアミスたちも攻撃をしているが狭い空間で竜化したユウェルを相手にするのは無茶苦茶厳しいと俺自身が思う。それでもグロス=ゴルカの体内にいることに変化はなく、壁や天井、床から肉片の手がユウェルに襲い掛かる。
『わたしに触れていいのはタクだけだー--!』
身体中から銃弾を乱射して、身体に触れる事すら許さなかった。こいつらの敗因は自分たちのレーダー能力を過信した所だろう。潜入などさせないと思い込まないと結界の解除などするはずがない。
「核爆! でぇえええええい!」
燎刃がグロス=ゴルカの頭に核爆をお見舞いすると頭が消し飛ぶ。だが、肉の壁が動いて修復しようとする。
「気持ち悪すぎです! 直すというなら直せなくしてしまいますよ!」
「了解です! アルゴ!」
「リリーもいっちゃうよ! レインボードラゴンバースト!」
「全員! 核ミサイルをお見舞いしてやれ!」
あの…みなさん?誰か忘れていませんか?この戦闘で一番頑張った子がグロス=ゴルカの体内にいるんですけど?俺が言うよりも早くにグロス=ゴルカが大爆発に包まれて燃えながら撃沈する。
「「「「やったぁあああー!」」」」
「やったじゃないぞ…」
「「「「あ…」」」」
喜ぶみんなの後ろにノワに助けられたユウェルがいた。どうやらイオンとアリナがユウェルのことに気が付き、ノワを救助に向かせてくれたらしい。
「えーっと…ユウェルちゃん?」
「タクなら絶対に忘れたりしなかったぞ…シルフィ」
「うぐ!?」
ユウェルの抗議の視線を受けて、シルフィは何も言い返すことが出来なかった。するとここでレーダーを見ていたトロワが危険を知らせる。
「轟沈したグロス=ゴルカの中に巨大な魔力反応!」
「まだ敵がいるぞ! 油断するな! シールド展開!」
「イエス、マスター!」
グロス・ゴルカが中継基地に向かって落下して爆発に包まれると爆炎の中から無数の緑色の銃弾が放たれる。リリーたちが回避しようとしたが被弾すると緑色の液体がリリーたちの身体を包み込み、拘束する。
そして爆炎が収まるとそこから二足歩行の巨大な黒いヒキガエルが姿を見せた。
「ゲコゲコゲコ! 捕まえたぜ!」
識別する。
異星暗黒神ツァトゥグァ?
? ? ?
ヴーアミ族が崇拝する神として登場するアザトースの仲間に分類される神だ。現実でもヒキガエルのような姿とされているが巨大なガトリングガンが鎧には装備されていない。ここはゲームのオリジナルだな。
「久々に見る上玉の女だぜ。俺様が求めていたのはこれなんだよな!」
どうやら性欲盛んな蛙らしい。こういう敵が出て来るともう大体な流れが決まっているんだよな。するとイクスが言う。
「データにない敵です。マスター。少なくともエクスマキナの母星に攻め込んだ敵の中にあいつはいませんでした」
「聞こえているぜ。機械人形。俺様がお前らの星に興味を持つはずなんてねーだろうが! お前たちは見た目はいいが旨くないからな」
「「「「旨くない?」」」」
この瞬間、リリーたちやメルたちに嫌な予感が過り、必死に逃げようとする。
「その点、お前らの星はいいよな? アザトースから聞いたぜ? お前らのような女がゴロゴロいるんだろう? それいう事なら俺様が行かねーとな!」
なるほど。どうやらこいつは人間の女を食べる為に今回のアザトースの侵攻に参加したようだ。なので当然狙いはリリーたちやメルたちとなる。今まで女性を拉致したりする感じだったけど、食べるのが目的は初めてかな?
「さて、まずは俺様の船を落としやがったお前たちから頂こうか!」
「「「「やっぱりー!?」」」」
巨大な舌がリリーたちに伸びる。翼も武器も使えないリリーたちはどうしようもない状態だ。グレイたちや満月さんたちも捕まってしまっている。
「狙えるか?」
「問題ありません。エクスギャラクシーキャノン、狙い撃ちます」
マザーシップからエクスギャラクシーキャノンが放たれ、舌の中間地点を貫き、リリーたちは難を逃れる。
「機械人形風情が俺様の食事を邪魔してんじゃねーよ!」
ツァトゥグァがガトリングガンを乱射し、鎧の肩部分が開くとホーミングレーザーを撃って来た。対するこちらは全フライヤーとホーミングレーザー、各種キャノン砲で応戦する。
手数では完全にこちらが上だがキャノン砲はツァトゥグァに効果がなく、ホーミングレーザーは命中はするが爆発することなく、身体に弾かれていた。
「光吸収か魔力吸収に身体はゴムみたいな装甲持ちだな」
「行きますか? マスター」
「だな。みんなは助けられそうか?」
「ウェザーフライヤーの冷気で救出可能を確認しました」
「なら救出と援護を頼む。行くぞ。イクス」
俺たちは外に出ると指輪を掲げる。
「「マリッジバースト!」」
マザーシップの甲板にジェノサイドユニットに換装した俺たちが降り立つと俺たちはツァトゥグァは腕を焼き斬る。
「あん?」
「星震!」
「ぐえ!? なんてな!」
ツァトゥグァは星震を受けて後ろに下がるがその後、星震が弾かれた。
「衝撃無効と言うよりは衝撃を弾いている感じだな」
「へ…俺様の超弾性はあらゆる攻撃を弾く。焼き斬る判断は良かったが…魔素支配! 物理化!」
斬った腕から魔素が吹き出し、俺たちに魔素の腕が伸びて来る。俺たちは後ろに下がりながら荷電粒子砲を構える。
「ち! 魔神技! ンカイ!」
ツァトゥグァの周囲が暗黒の球体に包まれる。俺たちは構わず荷電粒子砲を放つが暗黒の球体に無力化される。マザーシップからの援護も効果はなかった。
「はっはっは! 残念だったな! そーら! 喰らいやがれ!」
俺たちにガトリングガンとホーミングレーザーが放たれる。俺たちが対処しているとガトリングガンが弾切れになる。そのタイミングで距離を詰めようとするとツァトゥグァの背後からキャノン砲が肩に担ぐ形で現るとぶっ放して来た。
俺たちが回避するとそのキャノン砲は追尾してくる。俺たちはマザーシップに近付き、キャノン砲を撃ち落として貰う。
厄介な装備を揃えている。本体は防御特化で装備で火力を与えている感じだな。接近戦が弱そうだから勝機はそこにある気がするが、このレベルの敵になると完全に誘っているように見える。
ここで復活したシフォンが背後からツァトゥグァに襲い掛かってくれた。
「白熱刃!」
「へ! 魔神技! ゾタクア!」
ツァトゥグァの身体のあちこちから紫色の煙が噴射されるとシフォンのエクスカリバーは力を失い、シフォンも全スキルが封印されて、神魔毒に侵される。
「うっぐ…あ」
「頂きまーす」
「それだけはいやぁあああああ!?」
シフォンがこれだけ絶叫するのは珍しい。それだけ蛙に食べられるのは嫌なんだろう。たぶん好きな人はかなり稀な人だと思う。
「次元アンカー!」
食べられそうになったシフォンは次元アンカーで身体を巻き付かせて、引くことで救出した。
「助かっ…ひ!?」
「逃がすかよ!」
今度は舌を伸ばして来た。すると雷化を使った誰かが下に襲い掛かった。
「ぶち抜いたれ! アキレウスの槍!」
レイジさんのアキレウスの槍は舌に突き刺さり、そのまま中継基地の地面に突き刺さり舌を固定してくれた。そしてメルたちが襲い掛かろうとした時だった。
「魔神域!」
宇宙空間が紫色の沼地のような場所に変化する。そしてその空間から巨大な蛙が次々現れる。それを見たメルたちは斬り裂くと斬られた巨大蛙の鳴嚢が真っ赤に染まると大爆発した。
「ちょ、ちょっと待って!? あれ、全部爆発する蛙なの!?」
「うわぁあああ!? シールドの中から現れた!?」
「降って来るぞ! 船内に逃げろ!」
みんな、爆発する蛙に大混乱だが、マザーシップはすぐに弾幕を貼り、敵を寄せ付けていない。ミアたちは優秀だよ。
「タクト!」
「どうしますか? タクトさん」
結局リリーたちは俺と合流してしまった。俺としては嬉しい気持ちはあるがシルフィを見ると苦笑いを浮かべていた。そういう気持ちになるよね。
見た感じ爆発する蛙は大きさは違えど俺たちが知る蛙と大して変わらないように見える。毒の煙もまだ覆われているし、ここはアリナの出番だな。
「でも、風は使えないの。お兄様」
「風は使えないが衝撃は有効だ。それにアリナなら爆発する前に離脱出来る。風のドラゴンが風だけじゃないところをあいつらに教えてやれ」
「お兄様にそこまで言われたら、やるしかないの! 竜化!」
アリナが竜化する。
竜化したアリナが羽ばたくと蛙の群れに向けて突進を開始する。突進された蛙たちはぶつかった方向に飛んでいくと爆発状態になる。しかし既にアリナは旋回し、爆発する蛙たちから離脱していた。
それを見たアリナはコツを掴み、次々爆発する蛙に対処する。それを見たプレイヤーたちも武器で蛙たちを遠くに飛ばして対処する。
「ち…トカゲには興味ねーんだよ!」
『食べようとした奴に言われたくないの! 轟爆!』
ごもっともである。アリナの爆発による衝撃波で毒の煙は吹き飛んだ。
「しゃ! 行くぜ! 溶断!」
「ぬぅ! 魔神技! サドゴワア!」
ツァトゥグァの眼から謎の光線がアリナに向けて放たれる。アリナは普通に回避したがアーレイなどの攻撃を仕掛けようとしたプレイヤーたちが光線を浴びると蛙人間になった。キルケーの時と同じ感じだな。こっちは蛙以外の選択肢はないみたいだ。
「「「「なんじゃこりゃあああ!?」」」」
「「「「いやぁあああ!?」」」」
蛙人間となったみんなの悲痛な叫びが戦場に響き渡った。だが、問題はこれだけでは無かった。蛙人間となったみんなが操られ、襲い掛かって来た。
「精神誘導を受けているみたいだよ。タクト」
「やり返せるか? リビナ」
「難しいと思う。それにやりたくない」
「なら倒すしかないな。ん?」
俺の所に炎のエクスカリバーを持った蛙人間がやって来た。
「俺との決闘は明日の予定だぞ。アーレイ」
「俺もそれぐらい分かっているよ! いぃ!? 聖剣解放!? ちょっと待て!? そんなの使ったら」
「主! はぁ!」
ブランのヴィーザルサンダルの一撃が蛙人間アーレイの顔面に炸裂して、地面にクレーターが出来た。生きてることを祈ろう。流石にエクスカリバーの聖剣解放なんて使われたこっちも手加減が出来なくなってしまう。そこらへんはアーレイも理解しているようだった。
ここでアーレイに続くように次々俺たちに蛙人間がやって来る。
「彼らの相手は私たちがしますよ! リリーちゃんたち! タクトとイクスちゃんはあいつをお願いします」
「うん!」
「了解。一気にあの蛙をバラすぞ! イクス!」
『イエス、マスター。雷化、発動します』
俺たちの攻撃を察知したツァトゥグァがゾタクアを発動する。
「ゲロゲロゲロ! お前たちじゃ、俺様のゾタクアは突破出来ねーぞ!」
確かに荷電粒子砲を防いだあれを雷化で突破出来るとは考えられない。
「イクス」
『解析完了。あの闇はツァトゥグァの周囲を覆う形で展開されているようです。マスター』
「なら勝負あったな」
「へ! どうやって俺様に攻撃をするぅ!?」
ツァトゥグァの身体が空間から現れたジェノサイドユニットの刃に貫かれて焼ける。
「ぐぅうううう!? 馬鹿な!? 時空操作を使っていたはずだぞ!? まさか」
『はい。わたしたちが使ったのは時空転移。時空支配でないと防げません』
「がぁあああああ!? ゲ…ゲロゲロゲロ…やってくれるぜ! 機械人形風情がよ! 強化復活! 惑星魔法! サターン!」
武装まで破壊されたツァトゥグァは両手足を復活されると俺たちにサターンを使って来た。
『今のわたしはマスターと一心同体。故に機械人形ではありません。新たなエクスマキナです! 光分身!』
「お前にどんな事情があるかは知らないけどな。侵略して来ると言うならぶっ殺させて貰う! 巨大化! おらぁあああああ!」
巨大化した高周波エネルギーブレードがサターンを真っ二つに斬り裂くとそのままツァトゥグァに襲い掛かる。これをツァトゥグァは受け止めた。
「舐めてんじゃねーぞ!」
『いいえ。終わりです』
光分身で展開された俺たちの分身がツァトゥグァの身体をバラバラにする。それでもまだ肉片として生きていた。この生命力は恐ろしい所があるな。
「まだだ~!」
「そりゃあ、良かった。死ぬ前にエクスマキナのマザーシップの攻撃を受けていけ」
『ロックオン。完了しました。マスター』
「撃て」
「くそったれがぁあああああ!」
マザーシップの一斉攻撃が瀕死のツァトゥグァに降り注ぎ、跡形もなく消えさると蛙人間にされた皆が元に戻る。
「助かった…あれ? インフォが来ない?」
「グロス・ゴルカが出したクームヤーガたちがまだ残っているんだよ。ほら、艦隊がまだ戦っている」
蛙人間にされたみんなが怒りの矛先をそいつらに向けられたのは言うまでもない。そして全滅させたことでインフォが来る。
『中継基地を制圧しました。拠点として使用することが可能になりました』
なんとか宇宙空間での艦隊戦の初戦を勝利で飾れて良かった。しかし全くのノーダメージと言う事はなく、エクスマキナのバトルシップやノアズ・スクナたちは手痛い損害を受けた。結果、今から大至急で修理することになった。
俺はアポに戦闘結果を報告する。
『そうか! 勝ったか! ご苦労だった。そちらの基地の護衛艦隊はこちらから出そう。それにしてもアザトースたちは我々の通信を傍受していたことを戦う前に知れたのは大きいな』
「はい。ただ今回の手が次も通用するのか怪しい所ですね」
『アザトースたちも罠に嵌められたことに気が付くだろうからな…しかし次の戦いはアザトースたちの本体が相手になるだろう。私の計算では真正面でのやり合いになる。我々が侵略を受けた時もそうだったが奴らは圧倒的な数と力でねじ伏せて来る。戦い方を変えるとは思えない』
「それが一番の脅威ですからね。少しでも戦いが有利になるようにこちらも知恵を考えさせて貰います」
『頼む』
これで通信終了。取り敢えず今回の戦いで敵も戦艦や空母のような敵がいる事を知れたのは相当でかい。これで俺が考えている作戦がまず一つ有効であることが知れたからだ。どこまで通用するのかは分からないが何も作戦がないよりはあったのが気持ち的に楽になる。
後は日曜日にアポも含めて、みんなと一緒に作戦会議をしないといけないな。戦力差は分からないが物量で負けているならそれを埋めるための作戦を考えないといけない。どれだけ敵の戦力を分散させるかが鍵になるかな?
さて、明日はアーレイとの決闘が朝にあるし、しっかり睡眠を取って備えるとしよう。俺たちはエクスマキナの艦隊が到着してから後はクロウさんたちに任せて、フリーティアに帰還した。
今回の作戦結果を一応報告して、俺は部屋に戻るとセチアを召喚する。
「今日は私とですね」
「あぁ…ただ流石にシルフィも疲れているだろうな」
「そうですね…では、シルフィと私が挟んで寝るだけにしましょうか」
「お待たせしました!」
元気なシルフィが登場した。俺とセチアが二人で苦笑いすると今夜も話が長くなることを覚悟して、ログアウトするのだった。




