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#1196 マルクトの神

崖の中から出た俺たちは雪山登山を再開すると当たり前のように天使たちの襲撃を受けた。だが、ここでタンニーンとバハムートコンビの開幕流星群が炸裂する。一つの流星群ならまだ躱せるが二つ以上となると流石に厳しい。


しかも逃げた所で恋火たちが襲撃する形となったことでだいぶこちらが優勢に戦えた。ここで俺はつい思ったことを言ってしまう。


「シルフィの戦い方ってパワー重視だな」


「シルフィ、バレましたよ。どうしますか?」


「別に隠していたわけじゃありませんよ!?」


否定しなかった。これでいじるリッチはパワー重視を止めて欲しい派と見た。彼女はパワー重視で攻略出来ない時のための人員みたいだし、苦労が絶えないのだろう。


「そもそもタクトたちだって、結構パワー重視ですから似た者同士です」


「そういうことにしておくか」


「…それが無難」


「そんな風に言われると違うように聞こえるじゃないですか!」


まぁ、俺たちとしてはだいぶ楽が出来るので、ありがたい限りだ。そして山頂が近付くと吹雪が晴れて、果てまで続く真っ白な雲海を見る事が出来た。


「「「「綺麗~!」」」」


絶景に感動する女性陣は絶海並みに綺麗だな。口には出しません。弄られるからね。さて、山頂で恐らくボス戦となるだろう。ここでみんなが全力を出していいか聞いて来る。


「うーん…相手の強さが分からないけど、切り札を使うつもりで挑もう。ここまでの天使たちの強さから見て、弱いことは考えられないからな」


「そうですね。それに天使たちを束ねる者は神だと決まっています。恐らく神様が相手になると思いますよ」


そういえばセフィラにはそれぞれに神名があったな。流石に名前までは覚えてないな。後は可能性としては守護天使がボスの可能性があるか。さて、誰が来るかな?


俺たちが頂上に到達すると三つの門とそこから伸びる光の階段が見えた。間違いない。これでセフィラのルートを選んで行く形になるんだろう。


そして上空に青く輝く球体が発生するとそれが弾けて、ボスが現れた。


天界幽閉神アドナイ・メレク?

? ? ?


アドナイ・メレクがマルクトの神名みたいだな。何故ならアドナイ・メレクには天使の羽がなく、背後に光輪が発生している女神だった。髪の毛は氷で盲目の女神らしい。手には青い本を一冊持っているだけで服装はローブに青いドレープであるキリスト教ではお馴染みの服装だ。普通は青じゃなくて赤だと思うがここはマルクトの世界が影響しているんだろう。


後は頭に浮かんでいる天使の輪が普通の天使の輪ではなく、氷で出来ており、紋様になっていた。


「ようこそ。私の世界へ。私の名前はアドナイ・メレク。このエデンの世界の一つを管理している神です」


「ども。タクトです」


「フリーティアの第一王女シルフィ・フリーティアです」


「あなたたち二人のことはサンダルフォンたちからよく聞いてますよ。特にそちらの男性には先日お世話になりましたね。エデンの神の一柱としてお礼と謝罪を言わせて貰います」


これはアザゼルの一件の話だな。しっかりとお礼と謝罪を言われるとアドナイ・メレクから強烈なプレッシャーが放たれる。


「しかしあなたたちがこのエデンの頂点に向かうというなら私はエデンの神としてあなたたちと戦わなければなりません」


「そうなるでしょうね」


俺たちが全員戦闘態勢になる。どれだけ強いか分からなかったけど、滅茶苦茶強い神様であることはよくわかった。十個あるセフィラにそれぞれ神がいる構図なら強さは数は違えどオリュンポス十二神に匹敵すると考えるべきだったな。


「ふふ。いい気迫です。ドラゴンとドラゴニュートに愛された召喚師の実力を測らせて貰いましょう」


「タンニーン! バハムート! やっちゃってください!」


「「ギャオオオオオ!」」


開幕流星群がアドナイ・メレクに襲い掛かる。


「氷創造。行きなさい」


これに対してアドナイ・メレクは周囲に氷の剣を無数に作り出すと流星群の隕石にぶつけて来た。更に俺たちにまで剣を飛ばして来る。これに対してはフェンリルは毛針を放つと氷の剣が爆発する。


それでもフェンリルの毛針は止まらず、アドナイ・メレクに襲い掛かる。


「神技。マルクト・キャッスル」


アドナイ・メレクを覆うように巨大な氷の城が作り出されて、フェンリルの毛針は城壁に突き刺さる形で止まる。すると城にある氷の大砲が一斉に火を噴き、城から青く太い光線が俺たちに放たれた。


俺とシルフィ、リッチが魔法で撃ち落として戦闘が落ち着く。


「不味いな。攻守ともに隙が無い」


「ですね。先程の剣の攻撃もご自身の周囲に剣を待機されていましたし、神の性格が出てますよ」


シルフィと同意見だ。どうやらアドナイ・メレクは常に備えをするしっかり者のイメージを持った。先程の攻防でも冷静に対処しているように見えた。これはちょっとやそっとでは攻略出来そうにないな。


「神軍!」


更にアドナイ・メレクと同じ天使の輪がある氷の兵隊が城の前に配備される。これにみんなが対処するがここで城の中にいるアドナイ・メレクがとんでもない魔力を高めているのを感知する。城に籠って、兵隊を配備してからの大魔法。本当に隙がなく容赦ない。


「兵隊を相手にしている余裕はないな。シルフィ! みんなを突撃させてくれ」


「わかりました!」


俺は魔導書を展開して、神剣エスカトンリープリングを構える。


「「「「アークフレア!」」」」


『『『『アークフレア』』』』


氷の兵隊たちが空から放たれる赤い光線に焼かれるが生きていた。これで吹っ飛びもしないのか。魔法の選択を間違えたか?だが、ここでタンニーンとバハムートがドラゴンダイブで城に突撃するとフェンリルがその後ろから後を追い、突撃したバハムートの背になるとそのまま城の天辺を噛み砕いた。


「ホー!」


それを待っていたコノハが捨て身の一撃を発動させて、城の中にいるアドナイ・メレクに襲い掛かろうとしたが城の中に配備されていた氷の騎士に邪魔される。他のみんなもフェンリルが作った城の穴に攻撃をするが配備された氷の騎士にガードされる。くそ!魔法を止められない!


「禁呪。アブソリュート・ゼロ」


氷魔法の禁呪を神が使うのか!?


「やばいやばいやばい! 逃げ場が…っ! チェス! 地面だ! 雪を掘ってくれ! みんな! 引け!」


「戻って下さい! タンニーン! バハムート!」


「シルフィ!」


「はい!」


俺たちが地面に雪の穴を掘るとそこに逃げ込み、ルミが入り口を雪だるまさんで塞ぐとかまくらを作ってくれるとそこに入り、俺は火を焚く。これでなんとかなる魔法ならいいんだが…すると雪の中に氷が広がって来て、俺たちの所に到達すると焚火ごと全員が凍りついた。無理だったか。


俺たちが蘇生すると蘇生出来ない人をリヴァイブで蘇生すると回復しながら考える。


「さて、どうするかな…」


「あの城が壊せることはフェンリルが証明しましたから正面突破がいいでしょうか」


「どうせ城の天井は直されているだろうし、戦力を分散してもいいこと無さそうなので、ごり押しの正面突破が正解な気がしますね」


ここで伊雪が別の案を出す。


「このまま地下から城を襲うのはどうですか?」


「それを許してくれる神とは思えないな。アドナイ・メレクは城の中心にいたし、当然下は警戒されいるだろう。最悪進んでいる最中に襲撃されるな」


「それは不味いですね」


「考え自体は悪く無かったぞ。伊雪。ただ今回の相手が悪すぎる。こういう全てに備えるタイプはその備えを超えるのが一番勝率が高いと思う」


「タクトが言うと説得力がありますね」


シルフィから見たら、俺も同じタイプに見えるみたいだ。シルフィとの戦いでは結構備えたからそう見えてもしょうがないのかも知れない。俺はみんなに付け加える。


「正面突破が出来たとしても時間を与えるとたぶんこの状態に戻される。短期決戦で決着を付けよう」


「そうですね。先陣は私たちに任せて下さい」


「お願いします。俺たちは城の中に入って、アドナイ・メレクに奇襲を仕掛ける。ブラン、コノハ、チェス、伊雪、ルミ。手加減無しで行くぞ」


「「「はい!」」」


俺も天羽々斬とありったけの魔導書を展開して、本気モード。


「ルミ! 雪だるまさんを消してくれ」


「…うん!」


「フェンリル!」


「ワオーン!」


ルミの雪だるまさんが消えて、俺たちが穴から飛び出すとそこにはさっきまでは無かった巨大な城壁が何重にも建築された難攻不落の巨大な氷の城が完成していた。時間を与えている間に作ったのか。多分俺たちの作戦会議を聞かれていたな。それへの備えがこれなのだろう。


そして城から再び、魔力の高まりを感知する。


「再びお願いします! タンニーン! バハムート! 行きますよ! フェンリル! 逆鱗、使っちゃってください!」


「ワオーン!」


フェンリルが巨大化すると城門に襲い掛かると一撃で城門を破壊する。空間捕食と餓狼で食い破ったみたいな。そして俺たちはバハムートに乗り、フェンリルの後に続く。


ここで城門の上に配備された氷の騎士たちから弓矢と氷塊が落とされる。


「ムーンラビット! リッチ!」


「キュ!」


「斥力操作!」


氷塊は途中で浮かぶと城門の上に戻され、城門に触れると爆発する。あれは爆弾だったのか。危なかった。地下を進んでいたのがバレていたなら、たぶんあれを登っている最中に落とされていた。


弓矢は斥力で俺たちに届かず、弾かれて、終わる。そしてタンニーンは中間地点に陣取る。俺たちが敵に挟まれないようにする配慮だ。シルフィのこのメンバーはどれだけ突撃に慣れているのがよくわかる連携ね。


こうしてフェンリルが次々城門を突破し、最後の門を破壊すると城から大砲が放たれる。するとフェンリルはそれを無視して城の前に陣取る氷の兵士たちに向けて、ゴッドブレスを放つと道が出来た。


しかしフェンリルは氷の大砲がフェンリルに迫る。簡単にはやさせない!


「「「「ディメンションフォールト!」」」」


『『『『ディメンションフォールト』』』』


フェンリルに当たる前に氷の大砲が空間に吸い込まれる。


「そーら! 返すぜ!」


俺が城に氷の大砲を返すが氷の騎士たちが攻撃から守った。その間に俺たちはバハムートのドラゴンダイブで接近すると先に落下した氷の騎士たちが盾を構えてキャッスルガードを発動してバハムートのドラゴンダイブと激突する。


「負けないで下さい! バハムート!」


「力のルーン! 恩恵! 破壊神の加護!」


「ギャ! ギャオオオオオ!」


俺の援護を受けたバハムートがキャッスルガードを破壊し、そのまま氷の騎士たちを薙ぎ倒すと氷の城の壁まで破壊した。しかし城の中には氷の騎士たちが沢山配備されており、一斉に襲い掛かって来た。


ここで俺たちはバハムートの背から飛び降りると同時に氷の騎士たちを破壊する。


「時間がない! 星震!」


俺が天井に向けて、星震を放つが壊せなかった。破壊神の加護を渡したのはミスだったか。


「恩恵! 勝利の加護! タクト!」


シルフィから勝利の加護を貰う。これなら行けるか?


「星震!」


天井が壊れた。するとそこから氷の騎士たちが湧いて来る。うざったい!というか時間がない。禁呪をもう一発喰らったら、終わりだ。


「夜の戦いには参加出来そうに無いな…天羽々斬! 神威解放! 伝説解放!」


天羽々斬が全力状態になる。それをアドナイ・メレクも感知する。


「異星との戦いを捨てて、私に勝ちに来ますか!」


「天すら斬り裂く斬撃に耐えられるか? 天空雷覇斬!」


落下して来ていた騎士たちが盾を構えるが一瞬で消し飛ばれて、アドナイ・メレクが建築した城が真っ二つの斬り裂かれ、エデンの天空まで斬り裂いた。これで禁呪の発動は止めた。


「これが桜花の暴れん坊の力ですか…出鱈目ですね。む!」


「「「はぁああ!」」」


ブラン、伊雪、ルミがそれぞれアドナイ・メレクに襲い掛かるが周囲に待機されていた氷の剣でガードされる。鍔迫り合いになったが弾かれるとがら空きになった天井から切り札を発動させたコノハとチェスが襲い掛かる。


チェスの弓矢の乱射を氷の剣で全て撃ち落とすアドナイ・メレクだったが続くコノハの影分身からの捨て身の一撃が襲い掛かる。本気となったコノハの槍が氷の剣を次々破り、初めてアドナイ・メレクにダメージを与えた。


「ぐ…」


「これで氷の剣は無しです!」


ブランと伊雪、ルミが同時に襲い掛かる。


「時よ。氷結せよ。時間停止」


時が止まったことでみんなの動きが止まるとアドナイ・メレクは空に逃げる。


「やれやれ。流石に今のは危な…っ!」


俺の襲撃にアドナイ・メレクは氷の剣を瞬時に作り出して、ガードした。


「残念だったな。俺に時間停止は効かねーよ!」


「…そうでしたね。失念してましたよ!」


クロノスクロックのお陰だ。これがなかったら、負けてたかも知れないな。


「おぉおおお! おら!」


俺は氷の剣を破壊する。しかしアドナイ・メレクは負けてない。


「く! 氷創造!」


新たな剣と同時に周囲にまた剣が展開されると俺の攻撃を手に持った剣で受けて、俺の左右から氷の剣が飛んで来る。これには俺も後ろに避けるしかない。


「神波動!」


「雷神蒼嵐波!」


波動のぶつかり合いは俺が勝ち、アドナイ・メレクの近くで爆発した波動の撃ち合いの結果、アドナイ・メレクは後方にぶっ飛ぶ。その後、俺たちは激しく斬り合う。


「お行きなさい」


「おらおらおらおら! 雷神熱閃!」


飛来して来た氷の剣を全て弾いて、雷神熱閃を放つが剣ではなく氷の大盾で防がれる。しかし雷神熱閃はそれすら斬り裂き、俺が前に出ようとした時、俺の視界にアドナイ・メレクの上斜めに分銅鎖が出現しているのが見えた。


「武装射出」


「が!?」


勢いよく発射された分銅鎖に俺はぶっ飛ばされる。


「調子に乗り過ぎましたね…氷創造。お行きなさい」


俺に無数の氷の剣が襲い掛かって来た。


「ふ」


俺がにやつくと下から無数の氷の剣と普通の剣が飛んで来て、アドナイ・メレクの氷の剣を撃ち落としてくれた。


「時間をかけ過ぎましたか…」


「はぁあああ!」


「く…!」


アドナイ・メレクの背後からブランが襲い掛かるがまた氷の剣で防がれるが今回のブランは連続で斬りまくる。その結果、展開された氷の剣がブランの攻撃に回る事になる。


「覇撃!」


「くぅ! 魔氷装甲!」


チェスの覇撃の矢が襲い掛かり、爆散する。更に伊雪とルミが襲い掛かると二人の攻撃を両手に作った氷の剣で止める。しかし二人の周囲にはアドナイ・メレクの戦い方を真似るように武器が展開されており、武器が発射されるとアドナイ・メレクを貫きながら吹っ飛ばす。


「ぐ…流石に状況が悪いですね…仕方ありません。逆鱗! 猛吹雪!」


今まで晴れていたフィールドが猛吹雪に包まれる。しかしそれでも俺たちは止まらず、アドナイ・メレクに襲い掛かると雪になる。雪分身か!


「上だ!」


「神の怒りを知りなさい。神技! マルクト・グラディウス!」


突如吹雪が晴れると空から無数の氷の巨剣が巨大隕石のように落下して来ていた。あれが落下したら、シルフィたちがやばい!


「主! あの剣に挑発を受けてます!」


「何!?」


本当だ。攻撃のターゲットがあの剣にしか向かない。ここで下のタンニーンからドラゴンブレスが放たれたがドラゴンブレスが斬り裂かれている。どうする?どうする?


『…ルミに任せて。パーパ』


「ルミ!?」


「…氷創造! はぁあああああ!」


同じ武器を作り出して相殺するつもりか。しかし落下している分、向こうに分がある。それに神技ではないせいか時間もかかっている。まずはこの時間から稼ぐ。


「時間停止!」


クロノスクロックで時間を止めると氷の巨剣も落下が止まる。後はあの落下をどうにかするかだ。そこで俺は優牙が作り出すある光景を思い出した。あの魔法なら落下を止められるかも知れない。


『シルフィ! フェンリルはスーパームーンって使えるか?』


『え? もちろん使えますよ』


『今すぐ俺たちのところに使ってくれ!』


『分かりました』


時間停止の効果が無くなると氷の巨剣の落下が始まる。間に合ってくれ。


「ワオーン!」


「来た!」


「な!?」


スーパームーンの引力に引き寄せられた氷の巨剣たちは落下スピードを失い、その場に止まる。これなら勢いが付くルミが勝つはずだ。


「…むぅううう! …つ、作れた! …行って!」


ルミが作り出した氷の巨剣が発射されると見事に氷の巨剣を弾いた。この瞬間、挑発が切れた。


「雷神熱閃!」


「エンジェルダイブ!」


「神鎖!」


襲い掛かった俺たちは神鎖に拘束される。


「私がこれで諦めると思いましたか? 神」


「巨大化! 伸びよ! 天逆鉾!」


神撃の発動状態になっていたアドナイ・メレクに巨大化した鉾が突如伸びて来て、身体全てを貫かれた。そして伊雪が元に戻すとアドナイ・メレクはボロボロ状態で逆鱗も解除されていた。


「戦術に仲間との連携、咄嗟の判断力。実に見事でした。この勝負はあなたたちの勝ちです。あなたたちが先に進むことを認めましょう」


そういうとアドナイ・メレクが青い光となって、消えるとアドナイ・メレクが持っていた本だけが残された。そしてインフォが来た。


『伊雪のレベルが30に到達しました。成長が可能です』

『伊雪の神聖魔法のレベルが20に到達しました。神聖魔法【レインボーサークル】、【サンクチュアリ】を取得しました』


俺たちは城も何も無くなった山頂で集まると座り込む。


「「「「疲れた~」」」」


最初に出るのはまずこれだろう。下が雪とかそんなこと考えられないほど疲れた。いや、本当に強かったよ。神軍の兵がもう少し強かったら、詰んでいたかも知れない。すると元に戻ったルミが俺の膝に倒れ込む。


「ルミ!? 大丈夫か!?」


「…すぅ」


「寝てるだけか…驚かすなよ」


今回一番頑張ったのはある意味、ルミだったからな。


「お疲れ様」


「…うん」


「起きてるんかい」


「…ぐぅ」


言葉が変わっただけだった。まぁ、今回は大目に見て上げよう。ルミを抱いて、鑑定する。


マルクト書:レア度10 魔導書 品質S+

重さ:10 耐久値:300 魔力:150

効果:無詠唱、複合詠唱、氷属性アップ(究)、氷創造、自動防御、武装射出、時間加速、時間遅延、氷雷、冷凍光線、神軍、氷牢、氷獄、神撃、神の加護

エデンにあるマルクトの世界の力を内包した魔導書。氷の魔導書の中でも極めて強い魔導書で氷造像に特化している。攻守共にサポートしてくれる優秀な魔導書。


氷創造が物凄く早く感じたのは時間加速のせいか?後で確認して見るか。加護の能力なのか分からないからな。そんなわけでこれは頑張ったルミにあげることにした。


「…いいの?」


「あぁ。それと寝るのはもういいのか?」


「…あ。…すやー」


結構寝る演技を考える時間が掛かったな。ここでフェンリルが俺に近寄って来ると思いっきり舐められた。それを見ていたシルフィが言う。


「たぶん助けてくれたお礼ですよ」


「なるほど」


少しはフェンリルに認めて貰えたのかな?ちょっと誇らしくなった俺はみんなと共に三つの門の前に立つ。そこには看板があった。


「一つの門を選べ。選び直しは出来ない。左の門が栄光の門、中央が基礎の門、勝利の門ね」


もうクエスト内容は疑い用がないな。しかし俺が理解出来ているのは現実世界での話を知っているからだ。それを知らないシルフィは当然頭を傾げる。


「どういう意味でしょうか?」


「簡単に言うとゴールに辿り着く道が三つ以上あるってことだね」


以上というのは次を選んだ先でルートが分岐する可能性があるからだ。もしルートが分岐するならセフィラを制覇するルートが存在していることになる。もし制覇したら、たぶん称号を貰えそうだけど、時間的に切り捨てるしかないかな?優先すべきは称号よりもロンギヌスの槍の完成だからね。


「どの門がいいんでしょうか? 簡単そうなのは中央な気がしますが」


「たぶん中央が結構バランスが取れている道だと思う。最初が優しくて、後が難しい感じになるかな? 左が難しくて、右が簡単って感じになると思う」


俺がそう決めつけたのは三つのルートにはそれぞれ名前が付いているのだ。左が峻厳(しゅんげん)の柱。峻厳とは非常に厳しいという意味だ。つまり難易度は難しいと予想される。


右が慈悲(じひ)の柱。慈悲は楽を与えて、苦を取り除くという意味だ。つまり難易度が優しいと予想される。


中央が均衡(きんこう)の柱。均衡は釣り合いが取れているという意味だ。つまり難易度が普通だと考えられる。


普通なら時間もないし、難易度が優しいを選んでさっさとクリアするのがいいと思うのだが、二つ問題がある。まず第一に難易度の簡単を選んだ際のデメリットが気になる。流石に難易度が違っているのに報酬が同じになることは無いだろう。まぁ、その報酬がロンギヌスの槍の性能なのか手に入る武器や素材で変化を出すのか分からないけどね。


そしてもう一つが基礎と勝利のセフィラにいるボスだ。


「簡単と普通なのに問題があるんですか?」


「あるんだよね…俺の記憶が確かなら基礎の神は裸の男性で勝利の神は裸の女性だったはずなんだ。先に言っておくけど、基礎は行かないからね」


「では、勝利もなしですね。因みに難しいほうの神には変な神はいるんですか?」


「いないかな? 成熟した女神がいるはずだけど、裸とどっちがいいかって話になる」


「それなら成熟のほうを取りますね」


そんなわけで俺たちが選ぶルートは難しいルートに決定した。まぁ、このゲームの性質で全裸は無いはずだけど、お互いのために一番いい道を選んだ方がいいだろう。


そして俺たちがホームに帰るとエデンにある天使の園にサンダルフォンがやって来た。


「たはー! 負けちった! やっぱり強いね。あの二人と召喚獣たち」


「お疲れ様です。サンダルフォン。どうやら彼らは峻厳の柱を選ぶみたいですよ」


「まぁ、エデンの事を知っているみたいだし、結婚している二人ならその道を選ぶよねー」


「実力もありますし、サタンやルシファーに挑むというならその道を選ぶのは当たり前なのかも知れません」


「そうだねー。負けっちった私からすると是非彼らには主の試練を乗り越えて欲しいよ」


そういうとウリエルとサンダルフォンはエデンからフリーティアを見るのだった。一方ホームに帰った俺はルミを寝かせるとグレイと優牙による猛烈な舐め舐め攻撃に合う。


「タクトお兄ちゃん、誰かに舐められたりしましたね?」


「あ、シルフィのフェンリルに舐められました」


「それが原因です!」


どうやらフェンリルの舐められたのを上書きしようとしているようだ。マーキングみたいな感じだな。結局べたべたになった俺は恋火と温泉に入ってからそのまま部屋に直行する。


「きょ、今日は一杯撫でてくれてもいいですよ! タクトお兄ちゃん!」


また誰かに何かを教え込まれたらしい。


「そっか。それじゃあ、遠慮なく寝ながらモフモフしてあげよう」


「へ? ちょ、ちょっと待ってください! あうあうあうあう~」


恋火が撃沈したので、ログアウトすることにした。

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