#1194 エデン第二階層
俺たちが転移した先の予定通り雪の洞窟の中だ。どうしてこうなっているのかシルフィに説明する。
「へぇ。確かにこれなら吹雪は入ってこれないですね。こんなことを考えつくなんて凄いです」
「俺は教えて貰っただけですけどね」
「それでも思い出して、実演するところが凄いと思います」
俺よりも最初にこんなことを考え付いた人のほうがずっと凄いと思うのだが、褒められたので、素直に喜んでおこう。さて、俺が選ぶメンバーはブラン、チェス、優牙、伊雪、ルミだ。黒鉄だけ成長確認して、優牙を確認しないのは不公平だからね。選んでみた。
そして注目のシルフィが選んだのがフェンリル、タンニーン、バハムート、ムーンラビット、リッチだった。
「リッチなんていたんですね」
「いたんですよ。ティターニアが連れて行けない時用の獣魔魔法要員なんです。リッチは寒さなんてへっちゃらなので今回選びました」
アンデッドの女王は伊達ではないようだ。それじゃあ、外に出て、攻略を開始しよう。外は変わらず猛吹雪でホワイトアウト状態だ。
「寒さは大丈夫ですか?」
「大丈夫ですが見ているだけで寒くなりますね」
「わかります。鍋が食べたくなるな」
俺の呟きにチェスたちが反応し、激しく頷き舌を出す。夜のご飯は決まったな。
「へっへっへ」
「はいはい。フェンリルたちの分も用意してあげるよ」
「私はシチューという物を飲みたいです」
リッチがしゃべった!予想外に可愛らしい声だった。声からマイナスイオンが出ている感じがする。これは頑張らないといけないな。
俺たちを囲むように進んでいくと先頭のフェンリルに何かが飛来して来た。フェンリルはこれを食べて破壊しようとしたが破壊した瞬間、爆発するとフェンリルの顔が凍りつく。もちろんこの程度、フェンリルはすぐに解除してしまう。
「見えました?」
「氷の弓矢でしたね…恐らく氷爆の矢だと思います。敵の正体は分かりませんでした」
「ホワイトアウトの中で遠距離からの狙撃か…厄介だな」
みんなが周囲を警戒する様子を見た俺は地面に目を向ける。もしさっきの攻撃が陽動だとするなら俺なら雪の中からの奇襲を狙う。そしてこの俺の予想は的中する。
雪の下から細剣を持つ何かが飛び出して来た。俺が受け止めるよりも早くにルミがサリエルの鎌で受け止めてくれた。
そこで視認した姿は女の子で短髪の氷の髪に耳が水晶、更には天使の羽や天使の輪まで氷で出て来ている見たことがない天使だった。
マルクト・エクスシーアLv65
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
マルクトの名前が出てきてくれたならこのエデンのクエストのおおよその流れが分かったな。マルクトはセフィロトの樹の一つの解釈で登場する言葉だ。この解釈にはセフィラという十個の球体があり、それぞれのセフィラは線で繋がり、木の様な構造となっている。
その木のような構造の最初の地点がマルクトだ。この事から恐らくこのエデンはマルクトから上がっていく形になるんだろう。問題は十個も登らないと行けないのかどうかだな。
「…パーパを狙うとはいい度胸!」
ルミが斬りかかると空に逃げる。やはりエクスシーアは速いな。吹雪に隠れようとするとタンニーンとバハムートが羽ばたき、吹雪を浮き飛ばすとドラゴンブレスで攻撃しようとする。
ここで俺たちの後方から魔力を目視する。
「後ろから魔法!」
「行きますよ! リッチ!」
「うん!」
二人の魔法と背後から放たれた魔法がぶつかり合い、相殺した結果、二体のドラゴンブレスが放たれて、マルクト・エクスシーアに直撃するが起死回生で復活する。
「逆鱗! エンジェルダイブ! はぁああ!」
「ガウ!」
タンニーンに決死の攻撃を見せたがタンニーンの鱗は硬く、攻撃が通っていない。しかし鱗を凍らせていた。敵ながらあっぱれだがフェンリルの爪の一撃が直撃し、倒される。
それを見たからは分からないが背後の敵と弓矢の敵が同時に襲い掛かって来た。
マルクト・ドミニオンLv65
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
まぁ、天使シリーズでこのまま来そうだな。槍を構えて突っ込んで来たマルクト・ドミニオンにブランがウリエルの聖双剣で受け止めた。一方弓矢はチェスが星矢で撃ち落とした。
「今の狙撃で敵の位置が分かったな。優牙」
「ガウ!」
優牙が雪の中に潜って接近する。すると別の方向から狙撃が来る。まぁ、複数来るか。これはタンニーンが防いだ。
「同じ天使ですが我が主を殺そうとするなら容赦はしませんよ」
「やってみるがいい! そこらの天使と私たちはレベルが違うぞ!」
鍔迫り合いになっていた二人が同時に距離を取ると二人が武器を構えて、突撃するとブランは回転しながらウリエルの聖双剣の片方で槍を弾くとそのまま回転して、もう一本のウリエルの聖双剣で斬り裂いた。
「私も我が主の天使。普通の天使よりも強いですよ」
「く…!? おのれ! 逆鱗!」
ブランが止めを刺そうとした時だった。もう一体がブランの背後から現れて、ブランは二人の攻撃をウリエルの聖双剣で止める。
「く!」
「ははは! 終わりだ! がは!?」
逆鱗を発動されていたマルクト・ドミニオンの背後からサリエルの鎌が貫いた。そしてルミが現れたのを見たマルクト・ドミニオンは下がって、魔方陣を展開する。
「…魔力喪失!」
「何!? 魔力が…あ」
「…終わり」
マルクト・ドミニオンの首が跳ぶ。ここでルミに追加で現れたマルクト・エクスシーアが襲い掛かるがこれはブランが止めて、マルクト・エクスシーアをブランは圧倒する。その頃狙撃役のマルクト・デュナミスは愚痴る
「く…あんな化け物がここに来るとはな…」
「ガァアア!」
「な!?」
雪から現れた優牙に噛み付かれてる。それを見た他のマルクト・デュナミスが優牙に攻撃を集中するが優牙は雪に潜って氷の矢から逃れる。流石に遠距離特化のマルクト・デュナミスは追撃に出ない。雪の中では接近戦が強い優牙に分があるからな。
しかしこれで勝負あった。狙撃手が奇襲される状態に晒されてしまったら、狙撃は出来ない。狙撃すればその瞬間、優牙に襲われるからだ。
「く…私を守れ! 狙撃する! サウザンド」
「ガァ!」
雪の中を移動している間超加速で俊敏性を上げていた優牙が神速まで加えて雪の中を飛び出すと優牙の爪が狙撃しようとしたマルクト・デュナミスを貫くと氷爆の効果で爆散する。
「う、撃て! 撃て!」
「雪に潜らすな!」
その判断はいいがこちらにも狙撃役がいるのを忘れている。
「が!?」
「しまった!?」
チェスの星矢が降り注ぐと命中したマルクト・デュナミスが氷爆の効果で次々爆発するとそれをみた優牙が次々爪と牙で襲い掛かり、全滅させると優牙は次の獲物を求めて、移動する。そして戦闘終了を知らせるインフォが来た。
『ブランの二刀流のレベルが15に到達しました。二刀流【カウンタークロス】を取得しました』
まぁ、序盤だし、こんなもんだろう。解体すると手に入ったのは氷精石のみ。それじゃあ、先に進もう。次に出て来たのがこちら。
サファイヤケルビムLv70
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
プリズムケルビムの青い体バージョンの敵だった。こいつは脱出してからの拡散光線の冷凍光線や氷柱をばら撒いて来た。そして接近すると自爆するという厄介な敵だった。ただ封印が決まったことでタンニーンとバハムート、フェンリルにボコボコにされる結果となる。
解体するとこちらも氷精石が手に入る。どうやらここは氷精石の宝庫らしい。欲しい人がいるなら教えてあげるとするか。
そんな戦闘を繰り返した俺たちの目の前にほぼ垂直の雪山が姿を見せた。崖登りをするのかと警戒したがどうやら螺旋階段のように回りながら上がっていく道があった。それじゃあ、登山を開始するとしよう。




