#1190 砂漠神の試練三階
三階はファリーダが言う通り、結構な広さがあった。お陰で黒鉄が使える。広いと言っても通路だ。そんな通路にガトリングガンを装備したゴーレムがいると言う恐怖を思い知るがいい。
俺たちが進んでいくと広い部屋に出た。しかし通路がない。でも、俺たちが通って来た道は一本道だった。
「来るぞ」
「侵入者だ!」
「「「「うおぉおおお!」」」」
部屋の壁が開いて、敵の大群が一気に部屋に流れ込んで来た。敵も馬鹿じゃないな。通路で仕掛けて来なかったか。
ファラオの戦士Lv60
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ファラオの弓兵Lv60
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ファラオの重戦士Lv60
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ファラオの槍兵Lv60
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ファラオの魔法使いLv60
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
まさに軍隊だ。しかもしっかり陣形を組んでいる。ファラオの軍隊というだけはある。
「煉獄!」
ファリーダが煉獄で燃やすが怯む様子はない。だがダメージは受けていた。
「分かれて戦ったほうがいいわね。正面は私がするわ」
「そうじゃな。妾は右の相手をする」
「じゃあ、あたしは左ですね」
「では、私と黒鉄さんで後ろを担当します」
俺の担当場所は無し。まぁ、みんなの戦闘を見守ろう。まず最初に仕掛けたのは黒鉄だった。腕を構えると敵前衛に展開している重戦士たちに向かってパンチを繰り出す。
「「「「キャッスルガード!」」」」
これはガードされる。敵も連携もいいね。だが、成長した黒鉄の見せ場はここからだ。手首から駆動音が聞こえると蒸気が発生した瞬間、キャッスルガードを貫通した衝撃波が放たれ、敵が一団が吹っ飛ぶ。これが衝撃放射か。かっけー!
「なんだ!? 今のは!?」
「我々の防御が突破されたぞ!?」
「が!? 狙撃!?」
セチアの矢が黒鉄が潰した場所に展開されていた剣士に命中する。
「宝石解放!」
「「「「ぎゃあああああ!?」」」」
刺さった矢が爆発する。黒鉄が前衛を潰したお陰で中堅に展開していた剣士で発生した爆発は部隊の陣形を一瞬で破壊した。そして黒鉄は両肩が開くと機関砲が姿を見せた。
「なんだ!? 今の爆発は!?」
「どうなって」
「「「「ぎゃあああああ!?」」」」
いきなり部隊の真ん中で爆発が起きたら、そっちを見てしまう気持ちは分かるけど、盾持ちが目の前の敵から視線を逸らすのは最もしてはいけない事だ。そのせいで黒鉄の機関砲が部隊全てに降り注ぐことになった。蘇生は無さそうだし、こっちはもう終わりだな。
「デモングランドクラック!」
「「「「ぎゃああああ!?」」」」
ファリーダを見ると重戦士たちがぶっ飛んでいた。地面を吹き飛ばす技は防御し辛いよな。
「太極ブレス!」
敵の後ろから突然現れた恋火が太極ブレスをぶっ放して敵を消し飛ばす。流石の重戦士も背後から太極ブレスまで撃たれたら、溜まらない。仙郷移動を上手く使ったな。
最後にセフォネを見ると敵部隊は大混乱となっていた。影創造で自分たちの下から奇襲を受けたせいみたいだ。
「ブラッティレイドボムなのじゃ!」
「なんだ!?」
「気にするな! ガードしろ! いで!? この! なんだ!? このへんてこ蝙蝠は! あ…ぎゃあああああ!?」
影創造の蝙蝠たちに気を取られ、ブラッティレイドボムの蝙蝠たちに噛み付かれて、爆発されている。
折角編成や陣形はいいのにな。まぁ、セチアたちが強すぎるのが原因な訳だが、酷い戦闘だ。そう思っていると恋火たちの進軍が悪くなる。どうやら強い敵もいるみたいだな。
「今だ! あの召喚師を倒せ!」
「「「「うぉおおおおお!」」」」
槍兵や剣士が一斉に襲い掛かって来た。重戦士を置き去りにするとはいい度胸だ。
「黒鉄」
「「「「ぎゃあああああ!?」」」」
機関砲で全滅する。うーん…やっぱり格好いいし、強いな。ここで機関砲が止まる。どうやら弾数制限があるらしい。無限に撃てたら強すぎるもんな。
「止まったぞ! 今がチャンスだ!」
「行くぞ! お前ら!」
「「「「シールドタックル!」」」」
黒鉄がパイルバンカーを構えて、腕を伸ばす。そして突っ込んで来ていた重戦士たちにパンチが入るとこれは見事に止めて見せた重戦士たちだが、次に来るパイルバンカーで肉片と化した。それでも対応出来るのは一面が限界だ。
「星震!」
俺は星震で敵軍をぶっ飛ばして恋火たちが敵を倒すための時間稼ぎをした。するとここで敵に共通している強化に気が付いた。どうやらダメージを受ける度に強化が発生しているようだ。恐らくはこれがセトの加護の強化だろう。
発動条件がダメージだから煉獄でダメージが発生し続けているせいでどんどん強くなってる。そんな彼らにセフォネとファリーダの技が炸裂する。
「吸血鬼魔法! プールオブブラッド!」
セフォネの前方の地面が血の海と化す。その結果、地面にいたファラオの軍団は血の海に落ちることになった。
「なんだ!? これは!?」
「身体が沈む!?」
「く…! 空脚! スキルが発動しない!?」
これがプールオブブラッドの能力だ。範囲内の敵のスキルを封印し、血の海に沈める魔法。水中適正があれば溺れる事は無いが周囲が血である以上、血の海はセフォネのホームグラウンドだ。助かるのはかなり厳しいだろうな。案の定、水中適正があるファラオの軍団は血竜に襲われて終わった。
「あの魔神を討伐するぞ!」
「「「「スクリューランサー!」」」」
「ふふ。倒せるものなら倒してみなさい。魔神技! デモンズオーラ!」
ファリーダの身体から炎のオーラが発生するとそのオーラが自在に動いてファラオの槍兵たちに襲い掛かると直撃した瞬間、大爆発する。ファラオの戦士が魔力切断をしようとしたが触れた瞬間爆発しており、盾でのガードはオーラが擦り抜けていた。
どうやら防御無視、切断無効の技らしい。速さはそこまでないから逃げるしかなさそうな技だ。しかもこの技は消費する魔力で威力が変化する確定ダメージ技だった。つまりファリーダはこれで硬い敵に確実にダメージを与える手段を得たことになる。しかも狭いとはいえ範囲技だ。これは強そうだね。
そんな新技のお披露目があると無事に戦闘が終わる。
「私が以前来た時より人数も多いし、こんな仕掛けの部屋もなかったわ」
「相手がセトだからだろうな」
「どういうことよ」
「いつも同じ戦闘をしていたら、つまらないだろう? それじゃあ、戦いの神とは言えないさ」
戦闘はいつも違うからワクワクドキドキするのだ。これが毎回同じ相手と同じ戦闘を繰り返していたら、お互いが普通に飽きる。最終的には戦闘ではなくただの作業と化すかも知れない。セトは多分そこらへんを分かっており、ファリーダが以前体験したフィールドを俺たちに合わせて変えた可能性が高い。
「納得したわ。流石似ているだけあって、相手の思考も分かるのね」
「そうかも知れないな。まぁ、セトがどう来るかお手並み拝見と行こうか」
ここで黒鉄に変えて、リースを選んだ。これ以上、黒鉄を見ると俺の心がぶれすぎてしまう。俺たちがセトが考えた迷路を歩いて行くと俺の挑発に答えるように様々な敵や戦術を見ることが出来た。最初に遭遇したのがこちら。
ファラオの狂戦士Lv62
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
マッチョな軍団で通路でまだ見えていない状態からのセフォネのブラッティレイドボム、セチアの宝石の矢の奇襲を受けてもなおただ真っ直ぐに突っ込んで来た。どうやら不屈を持っているらしく、結構焦ったが冷静に多乱刃などの複数ダメージを与えて不屈を攻略した。
次に来たのがこちら。
ファラオの特攻兵Lv62
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
木で作られた荷車にたくさんの樽を摘んで俺たちに突撃して来た敵だ。荷車を破壊すれば終わりだと思っていたのだが、自分も自爆するという特攻っぷりだった。厄介なのがひっきりなしに現れたことだ。どれだけ特攻が好きなんだ。更にこいつと組み合わせて厄介だったのがこいつだ。
ファラオの呪術師Lv62
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
こいつのせいでファラオの特攻兵が死ぬと俺たちに呪滅のダメージが入るようになる場合があった。呪滅のダメージが入った瞬間に通路に隠れているこいつがいることが確定するので、そこまでの脅威はなかったが地味に封印も発生したり、呪いを受けたりしてうざかった。
他にも毒矢が発射されるトラップや巨大な鎌、ゾンビが大量発生している穴に落ちる落とし穴、床が落ちて来る罠などを突破して、目の前に階段がある部屋に到着した。
「ここが目的地よ。流石にファラオの部屋までは変えれなかったみたいね」
「やっとつきました~」
「妾はもう二度とこの階は来たくないぞ…」
「同感です」
落とし穴に落ちそうになったセフォネが言葉には説得力があった。何せあそこで落ちていたら、不死身が災いして永遠にゾンビに弄ばれる状態になっていたからな。ヴァンパイアキラーのトラップをよく考えた物だ。他のみんなもボロボロで俺はみんなの頑張りのお陰で元気です。
「どうする? しんどいならメンバーを変えるが」
「こ、ここまで来て、引けません!」
「そうじゃ! そうじゃ! 妾を罠に嵌めようとした奴を倒すまでは引けないのじゃ!」
そんなわけでメンバーの変更は無しでそのままで挑むことになった。
次、長いので、ここで切ります。




