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#1189 アヌビス戦

俺たちが大きな扉を開けると目の前に漆黒の狼の顔に鍛え抜かれた人間の黒い肉体を持つ神がそこにいた。


冥界監督神アヌビスLv70

通常モンスター 討伐対象 アクティブ


武器はウアス杖だが、以前見た物とは明らかに別物だ。杖全体が金属で杖の先端にはアヌビスを示す黒い狼が描かれていた。


「来たか…久しいと言うのは無粋か?」


「そうね。今の私は昔の私じゃないわ。それでもラーに負けっぱなしで終わるのは私のプライドが許さない。だからここを通させて貰うわ」


「そう言われてすんなり通すわけにはいかんな。ぬん!」


アヌビスが念じると左右にあった巨大なアヌビスの像が動き出した。


アヌビスの巨神兵Lv65

通常モンスター 討伐対象 アクティブ


さっきのアヌビスの兵の二倍はあるな。というか天井が武器を振れるギリギリの高さだ。その武器は二体とも持つところが長い戦斧だ。俺たちはファリーダを見る。


「私もこれは初見ね」


「最初の時は多勢に無勢では無かったからな」


「よく言うわよ。犬をたくさん召喚して来た癖に」


「それを君に全部燃やされてしまったんだったな。あの時のようには行かんぞ」


うーん。アヌビスは理知的な好青年な感じだな。冥府の神で基本的に恐ろしい神のイメージがあるからこれは結構意外だ。


ただアヌビスは一応守護神にもなっている神でオシリスが死ぬ前までは冥界の王をしていたのにオシリスが死ぬとオシリスの補佐となった神だ。ミイラを作るのも大変って聞くし、こういう神になるのも分かる気がする。


俺たちは全員武器を構えて、対決が始まった。


「バーストアロー! バーストアロー!」


「はぁ!」


「ぬん!」


最初にセチアがアヌビスの巨神兵に矢を撃ち込むと同時に恋火とセフォネが襲い掛かった。更にアヌビスにはファリーダが襲い掛かるがこの攻撃はアヌビスに止められる。だが、パワーではファリーダのほうが上でアヌビスは後ろに下がる。


「懐かしいパワーだ。しかし以前とはやはり重さが違うな。影創造!」


「っ!?」


アヌビスの影が伸びると影から手が発生し、ファリーダを掴もうとするがファリーダは後転を繰り返し、回避した。この結果、距離が開く。


「神軍!」


「「「「ワオーン!」」」」


漆黒の狼たちがアヌビスの影から飛び出した。


アヌビスウルフLv63

通常モンスター 討伐対象 アクティブ


これに対してファリーダも魔軍を発動させる。


「引力支配!」


「うお!?」


ここで俺が引力で宙を浮きながら引き寄せられる。そしてアヌビスウルフたちが俺に襲い掛かって来る。これはチャンス。俺は逆立ちになる。


「旋風脚!」


「「「「キャウン!?」」」」


俺は逆立ちのまま旋風脚で回転する。すると蹴りがアヌビスウルフたちに決まった。カポエラの技で有名な回転キックが出来た。格闘技の技の中では一度はやってみたい技が出来て満足です。


「変わった技を使うな…だが! 神技!」


引力支配が消えた。


「よ!」


俺が回転しながら体勢を横向きに丸くなると俺の後ろからファリーダが投げたイフリートバトルアックスの一本がアヌビスに飛来する。


「っ!?」


流石に神技を使用できず、弾くことしか出来なかったアヌビスにファリーダがもう一本のイフリートバトルアックスで下から斬り上げる。アヌビスは杖を横にして、ガードするが天井に背中をぶつける。


「ぐ…は!?」


ファリーダは地面を蹴って、追撃に出ていた。


「グランドスマッシュ!」


「霊化!」


アヌビスが逃げるとファリーダの左右からアヌビスの巨神兵の平手がファリーダを潰した。だが、アヌビスの巨神兵は燃え上がり、平手が爆発して木端微塵になる。だが、砂が集まり、すぐに元通りになった。


恋火とセフォネは攻撃を当てているから不死スキルの効果ではない。アヌビスの巨神兵がスキルを発動されたようには見えなかったことから恐らくアヌビスの仕業だ。


その余裕を見せていたアヌビスだが、俺の背後に回ったところでアラネアの地獄糸に引っ掛かる。


「な、なんだ!?」


「魔素爪!」


「ぐ!?」


アヌビスの背中にアラネアの二本の魔素爪が貫いた。そしてファリーダが俺の横を通って、地獄糸に捕まって現れた神様に近付く。とても笑顔で怖かったです。


「糸!? く…ほどけ!」


「そんなことするわけないでしょ?」


「あ…アヌビスの巨神兵!」


「行かせません!」


「お主たちの相手は妾たちじゃ!」


アヌビスは詰んだ。俺の背後でファリーダに殴られまくる音が聞こえて来る。自分の妻のそんな姿は見たくないので、アヌビスの巨神兵と戦う恋火とセフォネを見る。


相手が巨体だから二人とも速さを活かして下の攻撃を中心に攻めていた。アヌビスの巨神兵はやり辛そうだ。そして攻撃を受けてもアヌビスの巨神兵は傷に砂が集まり、治っている。これはアヌビスを先に倒さないとダメな敵だな。


ここで二人のアヌビスの巨神兵が俺を見ると向かって来た。


「終わったわよ」


「あぁ…ん?」


アヌビスの巨神兵の背後で紫の霧が発生するとアヌビスが蘇生する。


「ふ」


「そんな…蘇生を封じて倒したはずよ」


「冥界の神を舐めて貰っては困るな…こういう時の為にこういう物があるのだよ」


アヌビスが見せたのは巻物みたいなアイテムだった。それが消えてなくなる。アイテムで蘇生したのか。こういうの初めてだな。


「いいもの持っているな」


「「オォオオオオオ!」」


「「星震!」」


俺とファリーダが左右のアヌビスの巨神兵をぶっ飛ばすと恋火とセフォネがすれ違い様に斬り裂いて俺たちと合流する。


「いいチームだ。私も切り札を使うとしよう」


アヌビスが黄金の天秤を取り出すと光を受けたファリーダが身体から煙を出して倒れ込む。


「この光…まさかのラーの!? ぐぅうう!?」


ファリーダが倒れ込む。本当にラーはファリーダの天敵なんだな。


「そうだ…私の冥界での功績が認められ、ラーよりこの天秤を授かった」


「あなたね! さっきのアイテムもそれも前の時は使っていなかったじゃない!」


「当然だ。イフリートの娘一人にこれを使ってはオシリスに怒られてしまうよ」


前回は完全に舐められていたことを知ったファリーダが怒り心頭だ。そんなファリーダの頭を撫でる。


「落ち着こうな」


「タクト…はぁ~。そうね。ごめんなさい」


「ほぅ…あの暴れん坊娘がこうまで変わるか。昔なら逆鱗を発動させて、跳びかかって来たというのに」


「五月蠅いわね! 見てるんじゃないわよ!」


なんかここまで感情的になるファリーダは珍しい。なんかこの試練の間はずっとファリーダはいじられる気がするな。そしてそれを仲間に見られるファリーダは色々と大変なことになる未来が見える。


「えーっと…これってどうするんですか? タクトお兄ちゃん」


「アヌビスを先に倒すしかないな。そうじゃないと左右の敵は倒せない」


「よく見ている。しかし簡単にいくかな? 神撃!」


ラーの天秤から放たれた神撃が俺たちに襲い掛かる。俺はファリーダを出して、後ろに下がる。一方恋火とセフォネはアヌビスと距離を詰めた。するとアヌビスの周囲に獄炎の火球が出現する。


「獄炎弾!」


「「はぁあああああ!」」


二人は斬り裂いて間合いを詰める。


「冥界に眠りし魂たちよ! 我が敵を捕らえよ! 神技! バー・バランプ!」


アヌビスの杖から紫色の(もや)が複数伸びて来ると恋火とセフォネが捕まる。


「な、なんですか!? これ!?」


「な、なんじゃあああ!?」


二人が壁に叩きつけられているとセチアの矢とアラネアの糸がアヌビスに襲い掛かるが靄が動き回り、攻撃を弾いた。まるで太い鞭だな。


「どうした? こないのか? 日光!」


ラーの天秤から光線が飛んで来るが俺が弾く。よく言うぜ。あの天秤で何かを誘っている癖に…とはいえ恋火たちをこのままには出来ない。どうやらあの技には捕まっている間、スキルを封じる効果があるみたいだ。神様は誰でも厄介な技を覚えてるよ。


「ファリーダを頼む」


「はい。任せて下さい。あの巨神兵は私が押さえます」


「タクト」


「分かってるよ。任せておけ。セチア、頼むな」


俺がエスカトンリープリングを構える。


「ふふ。どうする?」


「そうだな…こんなのはどうだ?」


俺の防具から太陽の光が発生する。


「む!? これは太陽の光!?」


「お前だけが太陽の力を使えると思ったのか?」


「く…! ラーの天秤よ!」


お互いの間に太陽の光が集まる。


「「烈日!」」


二人の烈日が激突する。そこだ!


「閃影!」


「何!?」


俺の斬撃はアヌビスが構えていたラーの天秤を捉えて、弾き飛ばす。俺の烈日は防具によるものだ。それに比べてアヌビスはラーの天秤をわざわざ俺に向けて構えなければならなかった。それを見ていた俺がそこを狙うのは難しくない。


「く…!」


アヌビスが下がると俺は追撃に出る。するとアヌビスの巨神兵が俺を狙って来た。


「「フォレストジャイアント!」」


フォレストジャイアントがアヌビスの巨神兵に襲い掛かった。見事だが、長くは続かないだろう。ここで決める。


「く! は! でや!」


「は! ん! だぁ!」


アヌビスは杖を使った接近戦もかなりの物だった。お互いに攻防を続けていると鍔迫り合いなる。


「誰か忘れているんじゃないか?」


「何?」


「閃影!」


「イレイズスライサーなのじゃ!」


拘束されていた恋火たちは烈日のぶつかり合いの際に解放されており、恋火が手、セフォネが首を斬り落とした。


「まだだ! 霊化!」


首を落としても死なないか。流石オシリスの子供だな。霊化で後ろで復活したオシリスは恋火に斬られた手も首も元通りになっていた。だが、アヌビスは肝心なことに気が付いていない。


「まだまだ戦いはこれから…ぐ!?」


「あら? それは良かったわ」


霊化で現れた所でラーの天秤から復活したファリーダがアヌビスの首を掴んでアヌビスを持ち上げた。


「よくも嫌な記憶を思い出させてくれたわね」


「あ…が…」


アヌビスは手を斬られた時に杖まで失っている。武器なしの状態でファリーダと戦うのは厳しいだろうな。


「セチア! アラネア! またお願い!」


「えぇ。列石結界!」


「地獄糸!」


これでアヌビスの神としてのスキルは封じられ、ファリーダとアヌビスを囲むようにドーム状に張られた地獄糸で逃げ場もない。完全に詰みだ。


「さて、俺たちはアヌビスの巨神兵の相手をするか」


「はい!」


「そうじゃの…流石の妾も今のファリーダを見るのは怖いのじゃ」


ちょうどフォレストジャイアントがアヌビスの巨神兵の武技で破壊されたところでチェンジすることになって良かった。


ボコボコにされたアヌビスが倒れたことでアヌビスの巨神兵も回復能力も復活能力も失われた。その代わりなのか自分の主人が死んだからは分からないが逆鱗を発動させて、手あたり次第の武器を振り回して来る。


狭い部屋で武器を振り回されるだけで結構な脅威だ。だが、アラネアの糸とセチアの木で拘束されて詰み。


「狐稲爆! すぅぅ…太極ブレス!」


「消し飛ばしてくれるわ! 吸血鬼魔法! ブラッティサークル!」


恋火とセフォネが木端微塵にしてインフォが来た。


『セフォネの吸血鬼魔法のレベルが20に到達しました。吸血鬼魔法【プールオブブラッド】を取得しました』

『ファリーダの魔神技のレベルが30に到達しました。魔神技【デモンズオーラ】を取得しました』


そしてオシリスが言う。


「見事だ…先に進むがいい」


そういうとアヌビスが紫色の光となって、消えるとアイテムを一つ落とした。更にアヌビスの巨神兵からも同じアイテムが手に入った。


アヌビスの書:通常アイテム

効果:自動蘇生

持っている人を一回のみ自動で蘇生することが出来る巻物。


アヌビスの像:通常アイテム

効果:設置した場所の周囲にいる味方にアヌビスの加護を付与する。

お座りをしている黒い犬の像。神の像の中でも動物の姿をしている像は非常に珍しく、他の神の像と比べてインテリアとして使いやすいことから人気が高い。


アヌビスの像はサイズもお手頃で滅茶苦茶いい。なんか気配りを感じる。でも、ホームやフリーティア城の自室に飾ったら、ファリーダとシルフィに怒られそうなので、ギルドマスターの部屋に飾ろうかな。持ち運びにも便利で強力な加護だから一つはギルドに寄付して、色々攻略の役に立つだろう。


そしてアヌビスが蘇生に使ったアイテムは死者の書では無かったんだな。これはいい物を貰えました。ただラーの天秤はいつの間にか消えていた。弾いたんだからくれよ。


「まぁ、ラーの天秤はファリーダが苦手みたいだし、いいか」


「そうですね」


「…何よ」


「「別にぃ~」」


「…お礼を言おうと思ったけど、気が変わったわ。絶対に言ってあげない」


ファリーダがそっぽを向く。そう言った時点で半分以上お礼を言っているようなものだ。


「今日はここまでかの? タクト」


「いや、もう一階上がろう。ボス戦をするかは時間を見て、決めるよ」


「了解よ。次の階で待っているのは確かセトだったわね。一番敵の数が多い階だから気を付けてね」


戦いの神様だもんな。ファリーダから詳しい話を聞く。


「セトについてはサンドウォール砂漠の神の中で一番タクトに近い神ね。杖と変わった剣でガンガン前に出て来るタイプよ」


「そっくりですね! にゃ、にゃんであたひの頬を引っ張るんでふか。タクトお兄ちゃん」


「なんとなくだ。階の敵はどうなっている?」


「武装した兵士たちがやって来るわ。最後には死んだファラオが出て来たはずよ。フィールドは一階と同じ通路を通って広い部屋がある感じだったわ」


なるほどね。相手がファラオの軍団なら数は滅茶苦茶多そうだ。さて、これを加味してメンバーを決めよう。


「通路で人間の軍隊を相手にするなら私の宝石の矢が大活躍すること間違いないかと」


「あたしの炎もです! タクトお兄ちゃん!」


「妾もじゃ。相手が人間の軍隊なら役に立つぞ。タクトよ」


「まぁ、私は決まりよね」


滅茶苦茶アピールして来た。リリーたちがレベルで結構先行してしまっているからな。少しでも追い付きたいのだろう。もしくは戦えなかったストレスが爆発している可能性もある。そこで今回覚えた技を見ることが出来るだろう。一方でアラネアは自信なさげだ。


「うーん…蜘蛛の巣で妨害は出来ますが微妙でしょうか?」


「次の階は一階の通路よりは広さがあるからきついかも知れないわね」


通路が狭いと数の利が活かせないからな。そこら辺まで考えていそうだ。


「十分脅威だけどな。みんなガンガン行きそうだし、今回は交代でいいか?」


「はい」


というわけでアラネアに変えて、黒鉄を投入する。


「あら? 黒鉄を選ぶの?」


「折角強くなったんだからその雄姿を一目みたくなったんだよ」


「タクトらしい選び方ね」


もちろん選んだ理由はそれだけじゃないけどね。そんなわけで次の階に突入した。

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動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
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