#1180 テューポーン討伐戦、火山島の激闘
先日、間違って更新してしまいました。取り消すのも大変なので、一週間の休みは章終わりとなるテューポーン戦後とさせて貰います。
火口から現れたテューポーンを目視した俺は和狐に指示を出す。
『今だ! 和狐!』
『はいな! 雷撃の護符!』
火口に設置された護符から稲妻が発生するとテューポーンにダメージを与える。これを合図に俺と一緒にノアズ・スクナに乗っているサバ缶さんが全軍に指示を出す。
『全艦、攻撃開始!』
俺たちを除く飛行している艦隊から魔導砲の一斉攻撃が放たれ、海に展開している艦隊から一斉砲撃が行われる。これに対してテューポーンは稲妻を受けながらドラゴンの首たちが一斉にドラゴンブレスを放って来て、対抗してくる。
そしてテューポーンが息を吸い込む。狙いはやはりヘーパイストスが乗っている俺たちだ。
「来るぞ! 風のルーン! 緊急回避!」
「任せて下さい!」
「ドラゴンブレス!」
特大のドラゴンブレスをギリギリで回避した。風のルーンを使っていなかったら、回避出来ていなかったぞ。
「イクス!」
「グラビティキャノン! 狙い撃ちます!」
イクスがグラビティキャノンを放つと重力球をテューポーンは片手で握り潰した。本当に弱体化してます?だが、今回はまだまだ続く。各船に乗っているエクスマキナたちからエネルギーバスターキャノンが放たれる。もうみんなのエクスマキナもこれぐらいの武器を持てるようになっていた。
「電磁場!」
これをテューポーンは電磁場で打ち消して来る。エネルギー系は電磁場の防御範囲に入るんだな。ここでテューポーンはまず空に上がろうとする。これを見たシルフィのフェンリルと虎徹が物凄い速度でそれぞれが片方の翼を破壊する。これを見ると弱体化していると思うな。
「召喚獣か!」
ドラゴンの首が二人に迫るがフェンリルは毛を飛ばしてから爪を振るい、ドラゴンの首をバラバラにしてしまう。そして虎徹も自慢の刀を振るい、首をバラバラにした。
これを確認した火山島の近接戦闘の地上部隊が動く。その中には先陣を切っているのは恋火で指揮しているのがルインさんだ。ルインさんの指示で核爆弾を飛ばすカタパルトやレールガンのアーバレストによる援護攻撃が行われる。
「空間装甲! 荷電光線!」
レールガンのアーバレストが空間装甲に突き刺さり、核爆弾はテューポーンの目から放たれた荷電光線で爆発する。
「ルーナ!」
「ティターニア!」
「「チェンジリング!」」
空に隠れていた二人が月輝夜とスルトと入れ替わり、テューポーンの上から覇撃を叩き込むがテューポーンに気付かれ、爪で止められる。
「舐めるな。お前もだ!」
背後の空間で進化したばかりのジャバウォックが巨大ドリルの腕で襲い掛かったがテューポーンの尻尾でぶっ飛ばされると二人の剣も握られると力任せに二人を投げ飛ばした。
「やぁあああ!」
「「「「はぁあああ!」」」」
「貫け! ゲイボルグ!」
「生物創造!」
恋火やランスロットたちに、 スカアハ師匠とオイフェが攻撃を加えようとした瞬間だった。テューポーンの体が蠢くと無数のテューポーンの子供である怪物たちが現れて、攻撃を妨害すると一緒に進んでいた地上部隊に襲い掛かる。
「「「「ひ!」」」」
流石にフリーティアの騎士たちはこれを見て、怯んでしまう。そんな中、真っ向勝負を挑むのがグレイたちだ。
「「「「ガァアアアアア!」」」」
「「「「ガァアアアアア!」」」」」
お互いに噛みあい、爪で攻撃し合う。そんな戦場でやはりオリハルコンの防具を装備したグレイたちは強い。それよりも目立っているのがフェンリルな訳だけどね。ほとんどの敵が一撃で不死持ちでも餓狼と粒子分解で食べてしまっている。
その怪物対決の中で恋火たちも戦っている。
「雪月花!」
「モーニングスターデスサイズ! どぉりゃあああ! 巨大化!」
「生物創造なのじゃ!」
「デモングランドクラック! ストームスマッシュ! ほらほら! どんどん来なさい!」
次々怪物たちが倒されていくが物量では圧倒的に向こうが上だ。当然前線で戦っている恋火たちとプレイヤーたちをすり抜ける敵が出て来る。迫りくる怪物たちを見たフリーティアの騎士たちは完全に尻込みにしていたがここでサラ姫様が檄を飛ばす。
「来るぞ! 陣形を整えろ! 作戦を思い出せ! これまでの訓練を思い出せ! お前たちは強い! 前衛部隊! 突撃用意!」
「「「「おぉ!」」」」
フリーティアの騎士たちの前衛部隊が一斉に長槍を構える。
「巣窟縛り! 今よ!」
「突撃しろ!」
「「「「おぉおおおおお!」」」」
アラネアの糸に捕まり、身動きが取れなくなった怪物たちにフリーティアの騎士たちの槍が次々突き刺さる。これに怯んだ怪物だがすぐさま反撃しようとするが弓が飛んで来るとサラ姫様と共に剣持ちのフリーティアの騎士が一斉に襲い掛かった。
一度戦うことが出来たならフリーティアの騎士はもう大丈夫だろう。戦いというのは不思議なもので最初は怖くて一歩が踏み出せないものだが、その一歩を踏み出すとそこからどんどん怖さが無くなっていくものだ。アドレナリンが出ているのか理由は知らないけどね。
一方空にいる俺たちにも魔獣の群れが来るとチロルとアルさんが指揮のリリーたちと迎え撃つ。最初に一斉のブレス攻撃が行われて、接近戦を挑む。そんな中、やはり一番に突撃したリリーたちで次々魔獣を倒していく。
「「「王撃!」」」
「エイシェト・ゼヌニム!」
「セイント・スタウロス!」
「才気煥発!」
「…斥力操作。さようなら」
俺の召喚獣たちはテューポーンの怪物たちとは戦闘経験が豊富だ。しかもリリーたちが突撃したことが敵の撹乱になっている。因みにイオンは海方面の指揮をリアンと取っており、ノワとアリナがリリーと燎刃の面倒役になっていて、二人のぼやきが聞こえてきてます。
一方でシルフィが担当している艦隊ではシルフィのドラゴンたちが圧倒的な強さを見せていた。こっちは安定感抜群だ。
当然艦隊は海にもいるので、空を飛ぶ魔獣たちは海の艦隊にも襲い掛かる。しかし艦隊には海の召喚獣たちが守りについており、噛みつかれるなどして海に引きずり込んでボコボコにしていた。
しかしテューポーンにとっては魔獣をみんなが相手している間は自分に攻撃が向かないことで隙が生まれ、翼やドラゴンの首を復活させると巨体が空に動き出した。
「ドラゴンライダーズ! 構え! 吶喊!」
「「「「超連携! ドラゴンダイブ!」」」」
空からドラゴンテイマーたちによる突撃が実行される。魔獣たちをぶち抜いてテューポーンに突撃するが超連携が通らない。
「調子に乗るな。人間ども」
テューポーンは強化復活や肉体活性で弱体化した分を補おうとしていた。その成果が出始めて来たのだ。ここでテューポーンが電弧放電を使うと雷が避雷針に向かう。
「あれか…俺様の火山雷の邪魔をしていたのは!」
テューポーンのドラゴンの首たちが火山島のあちこちに設置された避雷針に狙いを付ける。
「来るぞ! フリーティアの騎士の誇りに掛けて死守する! 攻撃の手も緩めるなよ!」
「「「「おぉ!」」」」
サラ姫様たちには避雷針の護衛を頼んでいた。これが守られないとテューポーンの雷撃に晒される。テューポーンの得意属性の一つを封じる意味でもこれを守る事は重要だ。
ただ守ってばかりいては恐らくフリーティアの騎士たちが持たないので、敵の攻撃を緩めるという意味でも反撃はしなくてはならない。
ここからはもう総力戦だ。リリーたちに続くように飛行部隊が一斉に襲い掛かるがテューポーンの尻尾やドラゴンの首に悉く迎撃される。
ここで天使たちが召喚されて、メタトロンの光の槍がテューポーンに降り注ぐ。それを受けながらもテューポーンは空に動き続けていた。よく見ると光の槍が鱗で弾かれている。
「この! もう! この首、邪魔だよ!」
「どんどん固くなっている…少しでも減らさないと」
「…さっきからジークの半減が効いていない?」
ノワの指摘は正しく無常の果実以外の状態異常や弱体化スキルは全て効かないようだ。テューポーンを生み出したのはギリシャ神話の大地母神であるガイアだ。圧倒的な防御力と防御能力を持っているのは当然と言えた。
ここで復活した火口部隊が戦いに参加する。だが、自分に少しでも多くの人間が集まるこのタイミングをテューポーンは待っていた。
「怪風! 時空切断!」
テューポーンが羽ばたくが何も起きず、突っ込んだリリーたちの体がバラバラになる。
「「「「え?」」」」
痛みよりも自分たちに何が起きたのか理解できていない。これを見た俺とシルフィはすぐさま指示を出す。
「視認できない無数の時空切断の鎌鼬です! ノアズ・スクナは俺が守ります! 近くの部隊はノアズ・スクナの後ろへ!」
『全軍、緊急防御! 近くの飛行部隊はノアズ・スクナの後ろへ!』
「っ!? 全軍、艦隊の後ろへ! 急いで逃げて下さい! ジルニトラ! お願いします!」
逃げ遅れた人が次々バラバラになり、俺はスサノオの加護でこれを吸収して難を逃れたが、シールドを貼ったノアズ・スクナの同型艦のシールドが粉々になり、間に合わなかった船はバラバラになってしまった。なんて力だ。
「ふはははは! 弱い! 弱すぎるぞ! この程度でよく俺様を倒す気になれたものだな! む!?」
スサノオの加護で吸収した怪風が天羽々斬に宿り、返すとテューポーンの体のあちこちに斬撃の傷がつく。
「貴様も使えたか…旋風刃!」
俺たちに向かって、巨大竜巻の刃が迫る。ここで俺が飛び出す。
「吸収しろ! スサノオの加護!」
「ほぅ…そういう仕組みか。道理で俺様のスキルまで加わっていたわけだ」
俺はスサノオの加護でテューポーンの竜巻を吸収すると天羽々斬に宿る。
「そーら! 返すぜ! 爆風波!」
「ぬぅううん! 二柱の神と契約していたとはな。随分と短期間で力を付けたものだ。しかしそれで俺様に勝てるかな?」
「俺一人なら無理だろうな」
俺が守ったみんなから攻撃が放たれ、遮断結界で難を逃れた地上の部隊が襲い掛かる。和狐を地上部隊に配置して良かったよ。次々ドラゴンの首や大砲の砲撃や魔法攻撃を受けるテューポーンだが、真っ直ぐ俺を見て来る。対する俺もテューポーンから目を離さない。この間にリリーたちは回収されて、治療を受ける。
「強化復活! 行くぞ!」
もうそろそろケラウノス・キャノンボールを当てないとダメージが通らなくなる。幸いまだ弱体化が効いているように見える。だからこそ今の内に決めないとな。既に俺の背後ではノアズ・スクナが動いている。後はどうやって、テューポーンに攻撃を命中させるかだ。
テューポーンが初めて動いて来る。その翼の羽ばたきだけでみんなが吹き飛ぶ。俺はその場で立ちどまり、迎え撃つ構えを取る。
「竜技! ドラゴンクロー!」
ここ!俺は文明神竜の封印杖を取り出して構える。
「シフトチェンジ!」
俺と海底にいたクリュスと入れ替わり、ドラゴンクローはアイアース・アスピスでガードした。
「逃げたか…」
このテューポーンの一言にクリュスはキレる。
「あなたにはお父様が逃げたように見えたのかしら? 馬鹿な怪物ね。そんなのだから神に負けるのよ」
「なんだと?」
今度はテューポーンがキレて、お互いのドラゴンの首が噛みつき合う。そしてクリュスが俺が逃げたわけじゃないことを証明してくれる。クリュスの体からルーンレーヴァチェーンが飛び出すとテューポーンを拘束する。
「ふん。これで俺様を拘束したつもりか!」
「それだけじゃ不十分だから私がここにいるのよ」
クリュスがテューポーンを押さえつける。その背後にはノアズ・スクナがケラウノス・キャノンボールの発射態勢になっていた。
「エネルギー充填完了。ケラウノス・キャノンボールの制御に問題なし。いつでも撃てるよ!」
「ケラウノス・キャノンボール! 発射ぁあああああ!」
サバ缶さんがそう言うとヘーパイストスがトリガーを引き、ケラウノス・キャノンボールがクリュスに向かって放たれる。流石にこれにはテューポーンも危険を感じ取る。
「何をするつもりだ!」
「ふふ。こうするのよ。液状化!」
水になったクリュスの体をケラウノス・キャノンボールは通り抜け、同時に鎖と格闘していたドラゴンの首たちからも離脱することに成功する。そしてケラウノス・キャノンボールがテューポーンに直撃し、吹っ飛ばされると大爆発の後に電磁場と大雷霆でテューポーンは焼かれる。
「ぐぉおおおおおお!? これは!? ゼウスが使っていた武器の雷!?」
俺は効果が持続している間にクリュスとノアズ・スクナに合流する。
「取り敢えず上手く行ったな」
「えぇ。流石お父様が考えた作戦ね」
後はどれだけこれが効果があるかだ。クリュスには海に向かわせた。そしてケラウノス・キャノンボールの効果が切れると体のあちこちが焦げて、ボロボロになっているテューポーンの姿があった。そしてその顔が怒りに変わる。
「お、おのれぇえええええ! 俺様にまたこの雷を思い出させるか! 人間ども! 逆鱗!」
テューポーンが本気になると天候が急変し、俺たちのフィールドにハリケーンが発生する。そして体が急速に元通りになるとルーンレーヴァチェーンを破壊してしまう。これはもうケラウノス・キャノンボールを当てるために既に壊れる覚悟を持って、使用したから問題はない。寧ろこれぐらいの犠牲がないとテューポーンにケラウノス・キャノンボールを当てる策を思いつかなかった。
「全て…全てを破壊し尽くてやる! 竜技! イスキローテリ・テューポース!」
フィールド全体を無数の竜巻と共に暴風と大雨が発生し、更にとんでもない太さの雷が降り注ぐ。雷は避雷針に向かうが火山島で守っていた騎士たちを守っていた結界が竜巻の直撃を受けて砕け散ると風に巻き込まれて、次々空に飛ばされていく。
「全軍洞窟内に撤退!」
「だが、避雷針が」
「装置よりも自分や騎士たちの命のほうが大切でしょ!」
「そ、そうだな! 全軍撤退!」
「ダメどす!?」
騎士たちが撤退するよりも早くに技が地上部隊に炸裂し、島中に設置した避雷針は風に巻き上げられてしまった。被害はそれだけでなく、海に展開していた船も竜巻に襲われる。
「結界ごと巻き上げられるぞ!?」
「大丈夫…のはずです」
「海流支配! 物質化!」
飛びそうになった船が巨大な水の手に握られることで空に巻き上げられる事を阻止される。クリュスを海に行かせたのはこれが出来るからだ。他にも水の召喚獣や黒鉄も船が飛ぶのを阻止する。
ただ空に展開していたみんなも暴風に巻き込まれ、モンスターや人、船が次々ぶつかってしまう。天候支配が全く通用せず、これが怖くて距離を開けていたのだが、それでもダメだった。
一方で俺の周辺はスサノオの加護で守られていた。これを見たテューポーンは技が終わると姿が消え、ドラゴンテイルで俺とノアズ・スクナを島に落下させてきた。
「速い…」
「死ね! 星の神!」
「やらせません!」
ノアズ・スクナにテューポーンのドラゴンテイルが迫るとブランが神盾アイギスでなんとかガードしてくれた。
「ゼウスの盾! どこまで俺様の邪魔をすれば気がするんだ! ゼウスゥウウウ! ドラゴンテイル!」
「きゃあああああ!?」
ブランがぶっ飛ばされ、地面に叩きつけられてしまった。ブランが作った時間は無駄にはしない!
「封印石召喚! 来い! ケツァルコアトル!」
「ケツァルコアトルか…だが、その前にまずお前たちからだ!」
ノアズ・スクナにテューポーンの拳が迫ると地面から膨大な星の光が発生する。
「大精霊召喚! 来てください! 星の大精霊エリュシオン様!」
下から巨大な星の大剣がテューポーンに襲い掛かり、テューポーンをぶっ飛ばすと星の光の中から盾に鎧まで装備したテューポーンよりも巨大な大精霊が降臨した。
「なんだ! 貴様は! ぐ!?」
テューポーンがエリュシオンを睨み付けると天空から日輪のレーザーがテューポーンに直撃する。
「私を無視するとはいい度胸ですね」
「貴様!」
「ガンマレイバースト!」
「ぬぅ! えぇい! 鬱陶しい! 大雷轟!」
雷轟の上位スキル!?まずい!?避雷針はもうないぞ!?最低でもノアズ・スクナは守って見せる!セチアが死んでしまったら、エリュシオンが消えてしまう。
フィールド全体が紫色の雷に包まれる。なんてスキルを使ってくれるいんだよ。
「ぐぅうう! マジックバスター!」
「超充電!」
いぃ!?跳ね返した雷を吸収された!?
「貴様だけが雷を吸収できると思っていたか? まずは貴様からだ! 太陽神竜! ドラゴンブレス!」
「ドラゴンブレス!」
二つのドラゴンブレスがぶつかり合うが俺のせいで強化された分、ケツァルコアトルに勝機はない。ここでエリュシオンの盾が光輝く。
「精霊技! エリュシオン・ストリーム!」
エリュシオンの盾から星光の奔流が放たれ、テューポーンに直撃するがテューポーンはびくともせず、ドラゴンブレスのぶつかり合いを制してケツァルコアトルは爆散してしまった。しかしその後、エリュシオン・ストリームを背後から受けていたテューポーンも大爆発する。
しかし爆発の中から現れたテューポーンにドラゴンクローでエリュシオンが襲われる。これをなんとか止めるがエリュシオンはテューポーンのドラゴンたちに噛み付かれてしまう。更に俺には急激に伸びた尻尾がとんでもない速度で振るわれ、ぶっ飛ばされる。
そしてエリュシオンが烈日を放とうと光り出すがそれを許してくれるテューポーンではなく、背後から尻尾に貫かれるとそのまま投げ捨てられ、消えてしまう。
「エリュシオン様!? 早く切り札を」
「やらせると思うか? 魔獣技! テラス・ヴリヒスモス!」
みんなが慌てて、切り札を使おうとした瞬間、テュポーンが咆哮を挙げるとノアズ・スクナに乗っていたセチアたちとサバ缶さんたちが洞窟内同様に倒れ込む。
俺はどうやらぶっ飛ばされたおかげで効果範囲から逃れたようだ。スサノオの加護の力でなんとか海の上空で止まる。
「さっきの雷は貴様の仕業であることは分かっているぞ! 貴様が神だというなら俺様と正々堂々と戦え!」
「鍛冶の神様に何を言ってるんだよ! 神波動!」
「邪魔をするな! 人間! 無限乱刃!」
「舐めんな! 無限乱刃!」
無数の刃が俺とテューポーンとの間で飛び交うが一発一発の威力の差が出て、俺はボロボロに斬られる。致命傷は避けているがこれ以上は生命力が持たない。
ここで切り札の発動の光が発生するとグレイたちがテューポーンに襲い掛かった。
「良かった…生きていたんだな…」
「お父様!」
クリュスも生きており、墜落した俺を捕まえてくれる。
「邪魔だ! 雑魚ども! 次元震!」
グレイたちは危なくなったら洞窟内か地面に逃げ込むように言ってあり、無事だとは思っていたがやはり戦いの最中で安否が分かっていなかった。
次元がひび割れ、その衝撃波でグレイたちがぶっ飛ばされ、俺に向かって来た攻撃はクリュスが体を使って守ってくれた。
「次こそ止めだ!」
「「「封印石召喚!」」」
「「「「大精霊召喚!」」」」
「「「「ギャオオオオオ!」」」」
シルフィの麒麟と獣魔ギルドの封印石の魔獣たちが召喚される。これに加えて、それぞれが持つ第五進化のドラゴンたちとジーク、大精霊たちがテューポーンに戦いを挑む。
この間にクリュスは海の中に潜り、水中で指揮をしていたイオンがやって来て、切り札が終わったタイミングで攻撃に出るように指示する。そして俺は夕凪の上で歌でフォローしてくれていたリアンから治療を受ける。
「無茶しすぎです。先輩」
「それだけ強い敵だってことだ。あれで弱体化しているなんてとんでもない事だぞ。そうだ。みんなはどうなっている!? いで!?」
「傷だらけで飛び起きるからですよ。リリーお姉様たちは洞窟で治療を受けているようですが謎の毒に侵されて、回復が難航しているようです」
あの怪風というスキル。ただ見えない鎌鼬というだけじゃなかったのか。難航ということは回復不能までは言っていないな。恐らく回復しにくい毒を受けているんだろう。リリーたちとマリッジバーストが出来ず、シルフィの俺との勝負で神召喚と切り札を使ってしまっている。今にして思うとかなり今回の攻略に影響が出ているな。ルークのサマエルは暗黒大陸の攻略に使われたからしょうがないがシルフィとの結婚は完全に俺個人の都合だ。
でも、シルフィとの結婚のお陰でステータスが上がったからこれのお陰で粘れることが出来たから大目に見て欲しいな。今の内に現状確認するとリリーたちは洞窟内におり、他にも地上部隊の多くは洞窟内に逃げ込むことが出来ていた。
治療はミライがしているが聞いた通りで難航しているらしい。どうやら新種の毒らしく解毒アイテムや状態異常回復魔法では治せないみたいだ。ワンチャンあるのがマサラーの宝珠だが、これを使うのはなかなか勇気がいる。元々はラーマたちのクエストの過程で手に入ったアイテムだからね。何かしらの毒に悩まされる可能性が高い。
そして地上部隊の全員の無事も確認された。逃げ遅れた騎士たちを救ったのはオイフェとスカアハ師匠の影転移の英雄技だった。これで全員を洞窟内に避難させたらしい。
ここで激闘していた封印石召喚や大精霊が消えたという報告を受ける。それと同時に水中部隊のブレス攻撃と共にイオンたちが飛び出し、洞窟内からランスロットたちも戦いに参加する。
「ありがとな。リアン。セチアと入れ替わるから見てやってくれ」
「任せて下さい」
「シフトチェンジ!」
俺が船にいるセチアに入れ替わると拳を振りかぶっていた。やばい!?杖装備しているんですけど!?どうやら俺が転移したタイミングはみんながちょうどぶっ飛ばされた所だったらしい。タイミング最悪だ。
「死ね! 覇げ」
「エクセリオンフリーティア!」
サラ姫様の必殺技がテューポーンに決まる。しかしサラ姫様の攻撃はびくともしておらず、テューポーンはサラ姫様を見る。というか周囲にフリーティアの騎士が誰もいないんですけど!?何しているの!?
「神にすら契約出来ていない人間の女が俺様に何かしたか?」
「私はフリーティアの姫で騎士だ! 例え神と契約しておらずともお前などに恐れる事はない」
「言うではないか。では、試してやろう」
気付かれてない?ラッキー。俺は武器を天羽々斬と神剣グラムに構える。
「い!?」
二つの剣が手から落ち、俺は倒れ込む。これは麻痺!?それにリリーたちが受けた毒まで!?いつ仕掛けられ…無限乱刃に仕込まれていたのか。しかも時間差で発動してきた上にリアンでも気付けなかった。
「ふん。そこで女が死ぬのを待っているがいい」
この状況を意図的に作り出したのか?性格悪いな。しかしそんなことが可能なのか?いや、出来る。時間で発動するのは厳しいが発動条件が回復や状態異常回復なら瀕死状態になったならまず回復魔法を使う。その後、すぐに戦いに戻ることを考えられたら、この状況を作り出すことは可能だろう。
テューポーンは両手を胸の前に構えると両腕の中心に核爆が発生するとそれがどんどん大きくなっていく。
くそ!こんな大事な時に俺は何をしているんだよ!ふざけんな!動け!せめて天羽々斬を手に取れればワンチャンあるのに手や腕が痺れる!
「死ね。核爆!」
「逃げて下さい! サラー!」
テューポーンの攻撃に対してサラ姫様が諦めたかのように見えた時だった。サラ姫様の隣を過ぎ去る影がおり、その影は核爆に飛び込むと大爆発し、サラ姫様は爆風に吹っ飛ばされるが生きていた。
「へへ…生きてるよな? サラ姫様」
「アーレイさん?」
テューポーンの核爆に飛び込んだのはなんとアーレイだった。いくら炎が得意と言ってもテューポーンの核爆に飛び込むなんて無茶が過ぎる。しかし結果的にはサラ姫様をアーレイは守った。
「俺はタクトじゃない。それでもサラ姫様を助けることは出来るつもりだ…ぐっ!? おら! どうした! 怪物! そんな攻撃じゃ、俺は殺せねーぞ! 掛かって来いよ!」
「あの馬鹿! 何やってるのよ!」
「危ないよ! ミランダちゃん!」
「言ったな! 小僧! 溶ブレス!」
「聖剣解放! でやぁああああ! 俺よりサラ姫様を頼む! シフォン! ミランダ!」
普段のおちゃらけのアーレイとは思えない姿にシフォンとミランダはサラ姫様を助ける事を優先した。
「な…離せ! あいつが私のために!」
「大丈夫よ。あいつは殺しても死なないような奴だから」
ミランダはそう言うがテューポーンの溶ブレスを受けたアーレイは倒れ込む。流石のエクスカリバーでも無理があったみたいだ。
「まだ…まだ…」
「ふはははは! そんなみっともない姿でよく言えたものだな!」
このアーレイの姿がみっともないだと?俺の頭の中でキレる音がした。
「…うな」
俺の手に天羽々斬が握られる。
「ん? 何か言ったか?」
テューポーンが俺を見る。
「笑うなと言ったんだ! 天羽々斬! 神威解放!」
俺にとんでもない蒼雷が発生し、俺の背後にスサノオの姿が映る。
神剣天羽々斬(神威解放):レア度10 片手剣 品質S+
重さ:100 耐久値:15000 攻撃力:13000
効果:片手剣【雷神熱閃】、神技【雷神蒼嵐波】、竜殺し、神殺し、神気、英気、時空切断、水圧切断、溶接、電子分解、大海壁、暴風壁、雷雨、気流支配、海流支配、天候支配、気圧支配、水圧支配、重圧、畏怖、厄払い、電弧放電、衝撃放射、旋風刃、暴風刃、暴旋風、無限乱刃、雷光刃、神鎌鼬、後光、荷電光線、大気波動、雷波動、神波動、爆風波、雲海、渦潮、大瀑布、大津波、海没、神嵐、蒼天雷、黒雷、雷轟、大雷霆、覇撃、神撃、伝説解放、破壊神の加護、神仏の加護、スサノオの加護
嵐神スサノオが持つ神剣で桜花の神代三剣の一本。八岐大蛇を倒した桜花最強の竜殺しの神剣で天に掲げれば天災級の嵐を呼び、突き立てると津波を起こし、振ると天地を割るとされている。恐るべき力を持つがそれ故に桜花の人々から畏敬の念を抱かせている神剣。
アーレイとサラ姫様の間に何が起きたのか俺には分からないがアーレイが心動かされる出来事があったのは間違いないだろう。
「お前が倒したそいつはな。女を守る為に命を張ったんだ! 誰であろうともアーレイを笑う事は許さない!」
『そうだ! 女を守る為に立ち上がった者こそ真の英雄! そんなことも分からなず笑う事しか出来ない哀れな怪物に教えてやれ! 女を命懸けで守る男がこの世で一番強いってな!』
「ふん。いくら叫ぼうが動けなければ意味は」
「厄払い!」
俺は立ち上がると天羽々斬に雷が発生する。
「雷神熱閃!」
「がは!? 何!?」
テューポーンの毒が効いているはずの俺がテューポーンを斬り裂いた。俺が思った通りだ。
「残念だったな。俺が契約した嵐神は優しい神様じゃない。時に人間を苦しむ試練を与え、時に救う神様だ。だからお前の毒は俺には効かないんだよ」
天羽々斬の神威解放で追加された厄払いには禊と同じ自身の状態異常を解除する効果と弱体化を解除する効果があった。
「なるほどな。俺様と似ている神と契約したわけか。面白い…どちらが強いか決めようではないか」
「「雷化!」」
俺たちが雷化し、空で暴風を発生させながら激しくぶつかり合う。この間にアーレイもミランダに助け出される。
「どうした! それで終わりか! 人間!」
「まだまだやってやるよ! 逆鱗!」
早くみんなの援護が欲しいがそんなことを考えている余裕は俺にはない。とにかくテューポーンの体で雷と風属性のせいか物凄く速いのだ。巨体の最大の逆転は速度が遅くなることで更に的も大きくなることがハンデになるのだが、テューポーンの速さがその弱点を克服している。
しかも無数のドラゴンの首からの攻撃がうざったい。手をこまねいていると逆鱗の解除の時間が来た。
「終わりだ! 荷電球!」
「天羽々斬! 伝説解放!」
神剣天羽々斬(神威解放、伝説解放):レア度10 片手剣 品質S+
重さ:100 耐久値:17000 攻撃力:15000
効果:片手剣【雷神熱閃】、神技【雷神蒼嵐波】、神技【天空雷覇斬】、竜殺し、神殺し、神気、英気、気力融合、時空切断、水圧切断、溶接、電子分解、大海壁、暴風壁、雷雨、気流支配、海流支配、天候支配、気圧支配、水圧支配、電磁支配、重圧、畏怖、厄払い、電弧放電、衝撃放射、旋風刃、暴風刃、暴旋風、無限乱刃、雷光、雷光刃、神鎌鼬、後光、荷電光線、大気波動、雷波動、神波動、爆風波、雲海、大渦潮、大瀑布、大津波、海没、神嵐、蒼天雷、黒雷、雷轟、大雷霆、覇撃、神撃、雷化、破壊神の加護、神仏の加護、スサノオの加護
嵐神スサノオが持つ神剣で桜花の神代三剣の一本。八岐大蛇を倒した桜花最強の竜殺しの神剣で天に掲げれば天災級の嵐を呼び、突き立てると津波を起こし、振ると天地を割るとされている。恐るべき力を持つがそれ故に桜花の人々から畏敬の念を抱かせている神剣。
せめてアーレイを侮辱した分は返させて貰うぞ!
「ぬ!? 消し飛べ!」
「気力融合! 天空雷覇斬!」
俺が放った斬撃はテューポーンの荷電球を真っ二つにするとテューポーンの多重障壁、テューポーン本体まで真っ二つにすると台風の空まで斬れて、夜空が見えた。
「やってくれたな…小僧」
真っ二つにされたテューポーンの体がくっついてしまう。そして俺の神威解放が終わるとテューポーンが発光する。
「死ね。ドラゴンノヴァ!」
「絶対防御!」
ドラゴンノヴァは防いだが俺は火山島に落下してしまう。
「しぶといな! ドラゴンダイブ!」
テューポーンが突進してくる。その時だった。大ピンチの俺の目に巨大なハンマーが映ると突撃中のテューポーンに直撃し、地面に叩きつけると炎が燃え上がるだった。
「ヘーパイストス!? 何やっているんだ! 早く逃げろ!」
「逃げません! 望み通り僕が相手をしてやるぞ! 化け物!」
あぁ、もう!どうしてこうなるんだよ!普通、こうはならないだろう!完全に運営が意図的に仕組んでいるだろうう!これ!俺はそう思わずにはいられなかった。




