#1178 テューポーン戦作戦会議とゼウスのペガサス
夕飯を食べ終えた俺はログインするとアテナが待っていた。
「お父様からテューポーンの封印を解除する許しが出たよ。アルテミスにその為の武器を渡したらしいからこれでテューポーンの封印を解除する問題は解決出来たね。後は君たち次第だよ」
「はい。というかよく許されましたね」
「サタンが解除することを名言しているし、そもそもボクたちはテューポーンを倒せる英雄たちが集結する日を待っていたんだよ。テューポーンはボクたちを失墜させるために作り出された怪物でその力はボクたちを殺すことに特化している。だからボクを召喚しても戦力にはならないし、逆に言うと他の神との契約者にはテューポーンの力は及ばない。テューポーンを倒せる絶好のチャンスがやって来たと言うならボクたちは喜んで手を貸すさ。あいつ、本当に怖いからね」
「だろうね」
「後、これはボクたちが抱えている問題だからこの戦闘で何が起きても全て僕たちが責任を持って対処させて貰うよ。だから次元の崩壊とか遠慮せずに全力で戦って大丈夫。報酬も用意するから頑張ってね。バイバイ~」
軽いな。しかしこれで全力戦闘が可能になった。物凄くありがたい。ここでヘーパイストスにパンドラのことを話すとやはり反対した。この結果、パンドラとヘーパイストスが言い合いになる。
「どうして分かってくれないの! お父さん、死んじゃうかも知れないんだよ!」
「だからこそ許可するわけにはいかないんだよ。これは僕にしか出来ない仕事だ。これにパンドラを巻き込む訳にはいかない。お願いだから分かって。パンドラ」
「分かんないよ! お父さんの分からず屋! 大っ嫌い!」
そういうとパンドラはヘーパイストスの前から走り去ってしまった。俺がリリーたちを見るとリリーたちがパンドラの後を追ってくれた。
「お父さんは辛いな。ヘーパイストス」
「僕は父親ではないんですけどね…さっきの言葉は効きました」
「それはお前がパンドラの父親だからだよ」
父親じゃ無かったら、ダメージを受けるはずがない言葉だ。確かに血縁関係はないかも知れないがそれでもパンドラが父と呼び、ヘーパイストスがパンドラを我が子と考えているならそれはもう家族であり、父と娘と言っていいと俺は思う。
「だからそこだけは絶対に否定するな。パンドラの為にも自分の為にもな」
「はい」
家族と言うのは本当に難しい物だと教えられるよ。特に血縁関係がない家族は更に難しいだろう。親になった者にとっても、子供になった者にとってもね。
「最後に確認しておくが俺たちが護衛についても許可しないんだな?」
「はい」
「そっか。なら俺の仕事はパンドラとお前をまた再会させることだ。絶対に生きてあいつに勝つぞ」
ヘーパイストスはもう準備を完了しているという事なので、パンドラとの仲直りに行かせた。今の状況では難しいと思うけど、行かせないよりは行かせた方がいいと思ったのだ。そして俺はギルドでリープリッヒの職員とリリーたち総出で料理を作っていた。
俺は巨大な鍋ですき焼きを作製中。やっぱり寒い日は鍋だよね。最もこれから戦う所は物凄く暑い所だけどさ。今、食べる分にはここで食べたい。
「いい匂いですね。それにタクトはウキウキしています」
「…ん」
「なんだ? これは?」
ノワが夜叉に魚を差し出していた。
「…鮭の粕漬け。にぃに教えて貰った」
夜叉は和食が好きそうだし、お酒も鬼なら好きだろう。なので酒粕を使った漬物料理をノワがどうしても夜叉に料理をあげたいというので、あげた。
「ほぅ…くれるというなら貰」
「…もぐもぐもぐ」
目の前でノワが食べた。
「くれるのではないのか!? 性格悪いぞ! このドラゴニュート!」
何か聞こえるが料理でそれどころじゃない俺は集中していると人状態のダーレーがやって来た。
「あいつらの遊び相手があいつになってくれて助かったぜ」
「逃げて来たのか?」
「それとつまみ食いだ」
「堂々という事じゃないぞ。それじゃあ、味見してくれ」
ダーレーの味見でオッケーがでたので、後は鍋の監視を頼んで俺は作戦の最終確認のためにお城に向かった。
「こ、こえー…」
「みんな涎を流してこっち見てるんやけど、逃げてもええ? めっちゃ怖いんやけど」
「ダメよ」
料理人のみんなには頑張って貰いたい。そして作戦会議が始まる。
「まず初めに今回の編成はフリーティアの艦隊とフリーティアの第一騎士団を除いた騎士たち、獣魔ギルドそして私たちフリーティアの冒険者とこの戦いに参加してくれる冒険者たちと他国の援軍で挑みます」
「封印の解除はアルテミスと契約したトリスタンさんの一撃で封印を解除出来るそうなのでこれが開戦の合図となります」
これはアテナが伝えてくれたことでどうやら矢を使うようだ。まぁ、封印を解除するのに遠距離武器なのはありがたい。というかトリスタンさんがアルテミスと契約していなかったら、話が俺の所に来たのだろうか?その場合、槍で突撃することになっていた気が…考えるのはやめよう。
「最初は四つの火口の洞窟を使った攻撃と火口の上からの攻撃がメインよ。ここでテューポーン討伐の鍵であるアイテムを食べさせるための作戦をします」
「この作戦リーダーは私がするよん。テューポーン相手に普通に戦えないからとにかく私を守ってねん。守ってくれたなら作戦をばっちり成功させてみせるよん」
自信満々だな。洞窟からの奇襲にはメル、鉄心さん、ブルーフリーダム、マグラスさんがそれぞれ指揮を担当する。
火口には与一さんたちとシリウスさんたちに加えて、サラ姫様が指揮のフリーティアの騎士団と洞窟戦に参加しない冒険者たち。空にはトリスタンさんの護衛にシフォンたち、竜騎士部隊と召喚獣部隊にフリーティアのグリフォンを中心にした飛行部隊が展開される。この指揮を取っているのがシルフィだ。二人で話し合って、それぞれの役目を全うすることにした。もちろんピンチになったら、助け合うことも言っている。
そして島を囲むようになるべく船同士の距離をあけて海と空に艦隊が展開する陣形だ。この空の中にノアズ・スクナがおり、俺たちはその護衛に付く。最も全員ではなく戦える者はガンガン戦闘に参加する。
今回はアジダハーカの時に近い総力戦となる。テューポーンが一体どこに向かうのか全然予想が付かないので、どうしても島を包囲する陣形になってしまう。どこに向かうか特定できるならその方向に戦力を集めて、奇襲を目的にした部隊を展開するんだけどね。残念ながら今回は出来ない。
普通ならゼウスに復讐するためにオリュンポス山を目指すのだろうがフリーティアが狙われる可能性はかなりでかい。ヘーパイストスがいるし、ギリシャ神話の神と結構関わりが深いからね。
他にはポセイドンのアトランティスを狙う可能性も高いだろう。その場合はウィザードオーブに向かう事になる。この事は既にディアドラ姫たちとポセイドンに報告済みで警戒態勢になっている。
ここからは作戦の細かい連携などを確認して行き、各自で準備を整える。俺はまずスピカの進化をさせよう。進化先はこちら。
スプリームペガサス
スプリームは以前にも説明したと思うがゼウスのことをスプリームゴッドと呼ばれている。つまり進化先はゼウスのペガサスという事だ。そりゃあ、最終進化先にもなるだろう。因みにペガサスはアポロンなどの太陽神とも関わりがあるので、そっちもワンチャンあるかと予想していたが最終進化なら確かにこちらが相応しいだろう。それじゃあ、説明を確認してみよう。
スプリームペガサス…ゼウスの雷鳴と雷光を運ぶという名誉ある役割を与えられたペガサス。その功績を称えられ、ゼウスの力の一部も与えられている最強のペガサスで知られている。ゼウスの力によるものか謎だが、最も女性に甘い馬としても有名。
スケベとは書かないのは運営の優しさだな。それじゃあ、進化行ってみようか。スピカの前に至上天馬の宝珠を置いて実行すると至上天馬の宝珠から蒼雷が発生し、スピカの体内に入っていくとスピカが輝き、進化する。
『スピカがスプリームペガサスに進化しました』
『戦闘高揚、肉体活性、水鏡、超連携、超電磁、他心通、神感覚、時間遅延、空間歪曲、次元転移、脱出、紅炎、極光、ガンマ線、拡散光線、大気壁、旋風刃、星光刃、空圧操作、電磁支配、天候支配、大気震、海震、星震、焼尽、炎魔法、爆魔法、惑星魔法、雷轟、大海波動、烈日、日輪、彗星、光球、光分身、光化、雷化、捨て身の一撃、超覚醒、奇跡、共栄、太陽神の加護』
『惑星魔法【ジュピター】を取得しました』
名前 スピカ スターペガサスLv40→スプリームペガサスLv1
生命力 224→304
魔力 360→440
筋力 600→680
防御力 120→200
俊敏性 575→655
器用値 201→281
スキル
星角Lv57→神角Lv57 天眼Lv32→神眼Lv32 光速激突Lv54 万物破壊Lv47 戦闘高揚Lv1
肉体活性Lv1 水鏡Lv1 集束Lv39→超集束Lv39 超連携Lv1 超電磁Lv1
騎馬Lv46 他心通Lv1 神足通Lv40 星間行動Lv12 危険予知Lv43→第六感Lv43
気配遮断Lv20→空虚Lv20 残像Lv42 神感覚Lv1 時間遅延Lv1 空間歪曲Lv1
次元転移Lv1 脱出Lv1 紅炎Lv1 星雨Lv36→神雨Lv36 雷放電Lv34→電弧放電Lv34
光線Lv38→日光Lv38 石化光線Lv1 荷電光線Lv26 極光Lv1 ガンマ線Lv1
拡散光線Lv1 天鎖Lv28→神鎖Lv28 大気壁Lv1 暴風壁Lv37 旋風刃Lv1
星光刃Lv1 天鎧Lv25→神鎧Lv25 加速Lv46→超加速Lv46 飛翔Lv48→高飛翔Lv48 空圧操作Lv1
光圧操作Lv16 電磁支配Lv1 天候支配Lv1 衝撃波Lv33→空振Lv33 大気震Lv1
海震Lv1 星震Lv1 星虹Lv28 焼尽Lv1 英雄騎手Lv45
浄化Lv33→浄炎Lv33 全反射Lv19 夢幻Lv38 木魔法Lv41 炎魔法Lv10
海魔法Lv18 神聖魔法Lv22 雷魔法Lv45 爆魔法Lv35 時空魔法Lv44
星座魔法Lv8 惑星魔法Lv1 超再生Lv22→瞬間回復Lv22 魔力超回復Lv1 聖療Lv6→神療Lv6
雷轟Lv1 雷霆Lv26→大雷霆Lv26 大海波動Lv1 天波動Lv24→神波動Lv24 烈日Lv1
日輪Lv1 狂戦士化Lv13 流星群Lv11 彗星Lv1 光球Lv1
蘇生Lv7→不死Lv7 光分身Lv1 光化Lv1 雷化Lv1 譲渡Lv5
捨て身の一撃Lv1 逆鱗Lv10 超覚醒Lv1 共栄Lv1 奇跡Lv1
星獣の加護Lv36→神馬の加護Lv36 太陽神の加護Lv1 神の加護Lv26→ゼウスの加護Lv26
進化したスピカは白い毛並みに変化はなく、かっこいい黄金の鎧に美しい蒼い角と鬣が特徴的なペガサスとなった。加護から分かる通り、太陽神の馬としての力も加わっているんようだ。
「わぁー! これがスターペガサスの最終進化なんですね!」
「ヒヒン」
「乗せてくれるんですか? え? でも、最初は」
「いいですよ。あ、スターペガサスにちゃんと許可を取ってからにしてくださいね」
「もちろんです」
シルフィが乗っている間に新しいスキルを確認しよう。
神馬の加護は覇馬の加護に状態異常無効、神の武器や防具、スキルを強化する加護だ。これに加えて乗っている者の装備のスキルを自身に付与する能力もある。既にスレイプニルで確認されているスキルで神の装備を持っているかどうかでかなり加護としての力が変化するスキルだ。俺としてはかなり嬉しい限りである。
太陽神の加護は炎と光の力を吸収する能力に加えて、闇や魔素、呪いなどを打ち消す力がある。これを知った瞬間に以前のファリーダが負ける理由も何となくわかる。自分の得意分野を悉く封じられたら、絶望しかないだろう。
そしてゼウスの加護は予想通りで武技や必殺技系以外の属性攻撃スキルの無効化。ただしこれはスキルのレベルによって無効化出来るスキルが決まるらしい。今の状態では中級のスキルしか無効化出来きず、25レベルごとに少しずつスキルの無力化範囲が増えていくらしい。
スキルから見ても完全に攻撃型の馬だ。遠距離でも近距離でもどちらでも強いが角があり、スキルの無力化があることから俺にはガンガン突進していくタイプのように見える。まぁ、これは乗り手次第でだいぶ変わるだろうな。
シルフィが遊んだ後に俺も乗せて貰うと乗り心地もそうだが、動きが全然違う。機動力ではヒクスとちょっと判断するのが難しいな。まだ旋回力ではヒクスのほうに、予想だが上下の移動や単純な速度ではスピカに分がありそうだ。
「スピカ、トリスタンさんたちを頼んだぞ」
「ヒヒーン!」
進化したばかりで気合十分だ。
「スピカを頼みます」
「任せてちょうだい。頑張って進化させてくれた分の仕事はちゃんと果たして見せるわ」
そして準備を終えたみんながブルーメンの港町に集結する。例によってまた号令は俺だ。シルフィにお願いされたら、もうどうしようもない。
「これより火山島に封じられている怪物テューポーンの討伐作戦を開始する! この戦いは最早避けられない戦いだ。だからこそ敵の思い通りにされないために先手を打つ戦いとなる。こいつを弱らせる手段も作戦もある! 厳しい戦いになるだろうがみんなの力を合わせれば倒せない敵などこの世には存在しない! それは俺たちがこれまでの戦いでずっと証明してきた! 人類と召喚獣、モンスターたちが力を合わせた力がどれほどの物か。今一度この戦いで証明してやろう!」
「「「「おぉー!」」」」
「全軍出陣!」
ブルーメンの港町に停泊していた艦隊が次々転移していく。準備をしてくれたルインさんたちに感謝だ。
「あぁ…緊張したぁ~」
「いつもそう言ってますけど、ノリノリで言ってますよね?」
「いつもノリノリで言って、無反応だった時の恐怖と戦っているんです」
これだけ恥ずかしいことを言って、静寂なんてされた時には俺はもう島にこもってシルフィとリリーたちと一緒に隠居している。
「ふふ…それじゃあ、行きましょうか」
「あぁ。ん? 樽なんて背負ってどうしたんだ? ユウェル?」
「タク!? えーっと…これはだな。しょ、食料?」
なぜ疑問形。ユウェルはかなり大きな樽を背負っていた。ユウェルなら格納で納められるはずでわざわざ背負う必要は無い。それに食料は俺の管轄だ。嘘を付くなら武器とか燃料とかこの事を考えると樽の中身については予想が付いた。
「はぁ…見ないようにしておいてやるから甲板の後ろの所に置いておくといい」
「流石タクだぞ! 行ってくる!」
「ありがとう。おじ様」
格納では人間は納められないからな。怪しさ満点だ。するとリリーが抱き着いて来た。タイミングからしてみんなも共犯だな。
「えへへー。頑張らないとね。タクト」
「あぁ。行くぞ! みんな!」
「「「「おぉ~!」」」」
こうして火山島に戦力が集まり、いよいよギリシャ神話最強の怪物との決戦が始まろうとしていた。




