#1176 シルフィとの初冒険
そんなわけでシルフィたちと最初の冒険の地に選んだのはゴルゴーン島だ。天候は現時点で安定していて、敵は強い。アテナの助言もあるし、テューポーン戦前の戦いの場所にはとてもいい所だと思う。
今回は俺とシルフィたちのパーティーとルークたち男召喚師パーティー、チロルたち女召喚師パーティーに分かれて攻略する。みんなとしてはやはりシルフィ姫様の召喚獣に興味津々だ。
「タクトは誰を選びますか?」
「俺は恋火、イクス、リアン、夕凪、叢雲で行こうと思います」
「なるほど…うーん…どうしたらいいでしょうか?」
「悩むんですね」
「当たり前ですよ。他の人と冒険したことなんてないんですから」
あぁ…それは確かにどうしたらいいか分からないよな。
「シルフィは確かスターペガサスを仲間にしていたはずだよな?」
「えぇ」
「レベルは進化に達していないなら選んだ方がいいよ。あくまで予想だけど、ここにはスターペガサスの進化素材が手に入る可能性があるから」
ペガサスの誕生の話はメデューサしかないはずだからここに進化素材がある可能性は滅茶苦茶高い。ぶっちゃけルークたちもそれを狙っており、見つけた人もの勝ちとなっている。
「ほ、本当ですか!? 絶対に選びます!」
そしてシルフィと話し合って、ティターニアと夜叉に加えて初となる白兎の最終進化であるムーンラビットとレッサーガーゴイルの最終進化であるロードガーゴイルが選ばれた。
「「「「可愛い~!」」」」
ムーンラビット、女性陣から大人気である。話を聞くとスターペガサスに一緒に乗っているらしい。夜に強そうなイメージだが、どんな戦いをするか気になる所だね。
ロードガーゴイルは巨大な岩の槍と盾に鎧まで装備した完全武装したガーゴイルだった。こちらはかなり強そうだ。スルトやフェンリルは夜の戦いのために温存した。
「皆さん、強いのは知っていますからね。今日は助けて下さい」
「ま、任せて下さい!」
「い、一生懸命頑張ります!」
恋火とリアンはガチガチだ。ここで俺が言う。
「今回はシルフィには俺と夕凪、叢雲が付くから二人は決着を付けれなかったあいつらと決着を付けて来てくれ。イクスも装備のテストだ。暴れて来ていいぞ」
「だ、大丈夫ですか? タクトお兄ちゃんを心配しているわけじゃないんですが」
「一緒に戦ったことはあるけど、こうして冒険したのは初だからその心配も分かる。正直俺もシルフィも手探りな状況だからな」
「そうですね。全力戦闘はお互いに実力を把握しましたけど、召喚獣全ての連携が取れているとはとてもじゃないですが言えないので、最初は離れないで戦わないほうがいいですね」
そんなわけで夕凪に合わせてゆっくり復活した森を進んでいく。跡形もなく消し飛ばしたのにこのゲームの自然は凄いね。ここでブラックマンバがスターペガサスに乗っているシルフィを狙う。
「キュ!」
「シャ!?」
スターペガサスの頭に乗っていたムーンラビットが一回転すると神鎌鼬でブラックマンバの首が切れた。
「ありがとうございます。ムーンラビット」
「キュ~」
シルフィに頭を撫でられてご満悦だ。俺はムーンラビットについて感想を言う。
「感知能力が高かったですね」
「流石によく見てますね。この子は感知役で補助も戦闘も出来る凄い子なんですよ」
「キュキュ!」
どうだと言わんばかりのポーズを決められた。俺はムーンラビットも凄いも理解したがそれよりも周りの召喚獣たちのムーンラビットへの信頼があの一瞬で理解した。誰もがブラックマンバの攻撃に対してぴくりとも動じなかったからな。ちょっとした戦闘でもこういうのは分かってしまう物だ。
しかし感知役ならこちらも負けてはいない。
「マスター…敵が六体。木の上を移動しながらこちらを囲もうとしています」
「クリュサオルだな。前は奇襲をされたが今度はやり返させて貰うとするか。恋火、イクス、リアン。頼む」
「「「はい!」」」
「夜叉とロードガーゴイルもお願いします」
五体が分かれて、クリュサオルに奇襲を仕掛けた。最初に仕掛けたのは恋火だった。
「っ!? 何!?」
「爆炎之太刀!」
「く!? この森で我々に奇襲だと!?」
「今日は昨日のようには行きませんよ! はぁあああ!」
「舐めるな!」
二人が木を足場に激しい剣撃を繰り広げると恋白の半減の効果でクリュサオルを恋火は追い詰めていく。
「く…!? 厄介な武器をあいつらは何をしている!」
前回は敵の援軍に苦しめられたが今回はそう簡単にはいかない。恋火が戦っている頃にはイクスも戦闘を開始していた。
「機械人形!?」
「違います。デウスエクスマキナです」
「は! 何処が違うと言うんだ!」
「瞬間換装」
通常状態のイクスにジェノサイドユニットが一瞬で装備される。これがユニット装備の恐ろしい所だ。無防備だと思って襲い掛かったら、いきなり四本のアームと高周波エネルギーブレードで襲われたら、溜まったものではない。
「な…」
「実力が違います」
「お、黄金障壁!」
黄金の障壁に四本の高熱を帯びた高周波エネルギーブレードが襲い掛かると徐々に斬り裂かれていく。
「く…この! あが!?」
「わたしの手の装備は自由です」
あくまでジェノサイドユニットの装備は四本のアームだ。イクスの手に武器はイクスに選択権がある。つまりジェノサイドユニットを装備した状態で銃を使ってもいい訳だ。至近距離から顔にデウススナイパーエネルギーライフルを撃たれたクリュサオルは仰け反りを戻してイクスに襲い掛かろうとしたが一瞬でジェノサイドユニットに斬られた。
「な…ぜ?」
「黄金障壁ぐらいこの装備なら簡単に斬れるからですよ」
徐々に黄金障壁を斬っていくのは完全な遊びだった。装備のテストとは言ったが流石に舐められたクリュサオルには同情してしまうな。イクスが背後を向けるとクリュサオルの体の一部から蛇が発生し、イクスに襲い掛かるとイクスは後ろを見ずに全て斬ってしまう。
「あなたに勝ち目はありません。別に狙撃している最中に攻撃したければ勝手にどうぞ。わたしはあなたを斬りながら狙撃してみせますよ」
こうして勝負を決めたイクスは敵の増援の足止めに徹したことで恋火たちの一対一が続く結果になった。
「く…ならばクリュサオル・パノプリア! 伝説解放!」
説明によるとクリュサオル・パノプリアから放たれる光には石化される力がある。それを恋火たちには事前に行っている。
「我が鎧の呪いを受けるがいい! 英雄技! アルゴス・アクティノヴォロー!」
どす黒い緑の光が放たれて、光を浴びた草木が石化する。
「ふははは! 油断したな! 馬鹿め! 武器に頼るからそうな」
「閃影。油断しているのはそっちです」
仙郷移動で光を躱していた恋火は技が終わったタイミングで元の世界に戻り、見事に首を斬ると消し炭になった。一方俺たちにもお客さんが来ていた。
「むぅ…中々すばしっこいですね」
「地形をよく把握しています」
シルフィたちが魔法で攻撃をするがクリュサオルは木から木に飛び移りながら見事にこちらの距離を潰してきていた。
「今だ! 叢雲!」
「ギー!」
「ふん!」
叢雲のドラゴンブレスを棍棒で弾かれた。そして木のしなりを利用して跳びかかって来る。
「シャー!」
「おら! 喰らえ! カタストロフィ!」
「キュ!」
「何!?」
夕凪の蛇が躱されて棍棒武技の最強技が使用されようとするとムーンラビットの重力操作で地面に叩きつけられる。すると今度は空に挙がっていくとまた叩きつけられた。
「月の引力で引っ張っているのか」
「正解です。引力支配になると色んなものに敵を引っ張らせることが出来るんですよ」
勉強になるが逆に怖くもある。これでは罠の設置場所に強制的に向かわせることが出来るし、壁や剣山、マグマに引きずり込むことまで可能だ。引力の恐ろしさを実感するよ。
「お、おのれ! 巨大ぐは!?」
「目の前でそんなことさせるわけがないだろうが」
パラス・アテナの槍を出して、串刺しにすると殴られた夕凪の蛇が噛みつく。これで終わりだと思っていると次々巨大化したクリュサオルが現れた。
「わー! 凄い光景ですね! タクト様!」
「様?」
「う…なかなかなれませんね。今はそれどころじゃないですよ! 行きましょう! スターペガサス!」
俺を置き去りにして吶喊してしまった。
「さて、どうしたものか…今までどうしていたのかな?」
「もちろんついて行きましたよ。私たちの苦労を少しは分かって頂きました?」
「大変だったみたいだな…まぁ、俺も似たタイプだから人の事は言えないけどさ。叢雲、乗せてくれ」
「じゃあ、お邪魔させて貰います。自分で飛ぶのは大変なので」
そんなわけでシルフィのティターニアと叢雲と一緒に空に羽ばたくといきなり弓を構えているクリュサオルがいた。完全に狙ってやがった。
「覇撃!」
「星震!」
星震の衝撃と弓矢の覇撃が激突すると弓矢が勝つ。俺たちに矢が命中しそうになると森から矢が狙撃されて、俺たちから狙いが逸れる。一瞬止めたとはいえそれにすぐさま反応したイクスは流石だ。
「何!? く…そこか!」
クリュサオルは飛び上げるとイクスがいたところに狙って、矢を放つ。そのタイミングでイクスがブースターで飛び出すと放たれた巨大な矢を全て躱して距離を潰した。空を満足に飛べないのにジャンプしたのは間違いだったな。
イクスのジェノサイドユニットの全ての剣から真っ赤の白熱刃が発生すると光閃と伸縮、無限連撃で巨人化したクリュサオルは一瞬でバラバラになった。この時、俺は初めてまじかで見たのだが、恐ろしい装備という印象しかない。
しかし蛇を確認した俺はすぐさまパラス・アテナの槍を投げて、不死を封じるとイクスが止めを刺した。そして刺さったパラス・アテナの槍を回収するとロードガーゴイルが巨人化したクリュサオルと戦っているのを目撃する。
どうやらお互いに得意な石化が通用せず、武器でやり合っている状況みたいだ。
「うーん…どうやらこちらの仲間たちは不死に苦戦しているみたいですね」
「あぁ…そこら辺はあまり考えてなかったな」
ここでシルフィ姫様たちが帰って来た。
「勝てません!」
「勝利の剣を使えばいいのでは?」
「あ、私が持ったままですね。ごめんなさい。シルフィ」
召喚師あるある装備をつけっぱなしにしてしまうが発生した。今日の俺はちゃんと貸した装備は回収済みです。するとシルフィたちが戦っていたクリュサオルが向かって来ており、跳び上がり、剣を振り下ろしてきた。
「貰ったぞ!」
「カラミティ」
「神速! 踵落とし!」
俺の神速踵落としが決まり墜落する。
「みんなが倒せるようにちゃちゃっと攻撃だけ当てて来るか。神速!」
俺は次々不意打ちでパラス・アテナの槍をクリュサオルたちに当てて、不死を封じた。
「この! いない!? どこだ!」
「生身であの速度か…改めて恐ろしい召喚師だな。それと隙を見せすぎだ」
夜叉は俺の攻撃を見た瞬間にクリュサオルの首を斬っていた。そしてロードガーゴイルも不死が封じられたことを事を確認すると槍がドリルのように回転すると突撃し、串刺しにすると雷轟が発生し、クリュサオルを倒した。
こうして全滅させたクリュサオルを解体するとクリュサオル・アオルとクリュサオル・パノプリアが一つ。新しいのがこちら。
クリュサオルの皮:レア度10 素材 品質S+
黄金の巨人の皮。石化の力があり、防具や盾の素材として使用される。通常の巨人の皮よりも重たいのが難点だが見た目が豪華で能力が強力なため、そこまで気にされていない素材。
巨人の皮だな。これが二つ落ちた。アイアース・アスピスの強化に使おうか悩む素材だな。武器と防具、素材の一つはシルフィに上げた。
「わぁ! ありがとうございます! 誰に装備させましょうか」
「剣なら俺だろ」
「いいえ。私も興味があります。ルーナに負けた原因の一つは剣術でしたからね」
「それが分かっているなら剣よりも先に剣術を磨け」
夜叉とティターニアの間で火花が散る。そして二人がシルフィを見る。
「えーっと…喧嘩はよしましょう!」
装備をどちらに渡すか決めないんだ。
「「…はぁ」」
「大変だな。ロードガーゴイル」
「ガウ…」
ロードガーゴイルは目を細めていた。いつもの事だという感じだが、どことなく嬉しく感じている気がする。考えてみるとこれが久々の冒険なんだから無理もない。
ここで他の所でも巨人化したクリュサオルが現れる。みんなも頑張っているようだ。無視して先に進むと山にある巨大洞窟を発見した。ここがボスの住処だろうな。
「ここにワープポイントを設置しますね」
「お願いします」
シルフィがしっかりワープポイントを設置すると俺たちは洞窟攻略に向かうのだった。




