#1163 エキドナ討伐戦とテューポーン攻略の鍵
俺が選んだメンバーは虎徹、優牙、スピカ、クリュス、リースにメルたち三人が抜けたところに恋火、和狐、ファリーダだ。集まってくれたのは満月さんたちと与一さんたち、シフォンたち、竜騎士のみんなとレイジさんたちが来てくれた。
そして作戦を決めていると俺が尻尾でぶっ飛ばされたと聞いた虎徹が剣をぶつけてアピールしてきた。ぶった斬る気満々だ。斬ってくれるならありがたいし、失敗してもフォローすればいいので、ここは虎徹に任せる事になった。
「開けるぞ。準備はいいか?」
「ガウ!」
満月さんに聞かれた虎徹が宝刀解放を使い、三日月宗近の力が解放される。そして扉が開かれると容赦なく尻尾が向かって来た。
「ガァアアア!」
虎徹が気合一閃で三日月宗近を振り降ろすと三日月の斬撃がエキドナの尻尾とぶつかり合うと火花が散る。そして虎徹の斬撃が押される。やはりこの時点では厳しいか。
「恩恵! 破壊神の加護!」
破壊神の加護を受け取った虎徹は咥えている十拳剣の神格解放を発動させる。
十拳剣(神格解放):レア度10 片手剣 品質S
重さ:100 耐久値:2200 攻撃力:5000
効果:神技【火之神裂き】、逆鱗効果二倍、神殺し、神気、無我、戦闘高揚、肉体活性、時空切断、神波動、原初の加護、神の加護
拳十個分の長さを誇る剣。本来の強さは失っており、効果として残っているのは一部のみとなっている。桜花では原初の神剣とされており、この剣から数多くの桜花の神が誕生した伝説が残っている神産みの神剣。
虎徹の後ろにイザナギと思われる神の姿が映る。
『我が悲しみと怒りが宿りし、一撃。撃てるものなら撃ってみせよ』
「ガ…ガァアアアアア!」
一瞬笑ったように見えた虎徹が雄叫びを上げると十拳剣が七色の光に包まれて、渾身の斬撃を放つとその斬撃は弾かれた三日月宗近の斬撃と同じ所に命中し、尻尾を斬り裂くとそのまま斬撃がエキドナを襲う。
「斥力場! 空間装甲! 竜鱗装甲!」
言葉を話したエキドナが腕をバツの字にして、虎徹が使った火之神裂きを受け取るとエキドナの腕が斬れる。
「凄まじい斬撃ね。っ!?」
エキドナの目に光速激突で突っ込んで来るレイジさんたちの姿が映る。
「「「「テンペストペネトレイター!」」」」
エキドナの体にレイジさんたち五人がそれぞれ分かれて、突撃するとエキドナを押して奧の壁に叩きつけた。するとレイジさんたちはエキドナの体を蹴って、後方に跳び上がる。入れ替わるように突撃するのが竜騎士たちだ。
「「「「ドラゴンダイブ! ドラゴンクロー!」」」」
突撃してからドラゴンクローを使った剣で連続で攻撃するが流石にこのまま押せる相手では無かった。
「斥力場!」
「「「「どわ!?」」」」
「ガァアアア!」
竜騎士たちがぶっ飛ばされると優牙が極寒ブレスを吐いてエキドナを凍らせるが一瞬で解除される。だが、その間に展開を終えた与一さんたちとトリスタンさんが銃撃を浴びせるとシフォンたちと恋火が乗り移ると武器を突き刺して、走り抜ける。
この間に満月さんたちとクリュスが守りを堅めて、俺たちは虎徹を見るとダウンしていた。あの一撃は相当な負担だったようだ。
「最初の一撃に全力を入れたのは怒るべきところだろうが、よくやってくれたよ。虎徹」
「ガウ…」
流石に俺のために頑張ってくれた虎徹を叱ることは出来なかった。
「主様! 尻尾が動いています!」
スピカに乗っていたリースが警告してくれると斬られた尻尾からオルトロスが生まれると俺たちの背後から襲い掛かって来た。それで背後を取ったつもりならば片腹痛い。
「クリュス! 和狐!」
「任せて!」
「はいな! 狐技! ハーミットテイル!」
二人の尻尾で薙ぎ払われる。だが斬られた尻尾から次々出て来るオルトロスは炎ブレスを放ってきた。これに対してスピカがカーレントラピッズで相殺する。これを見たリースが仕掛ける。
「今! 英雄技! クラウ・エイン!」
「ガ!? グゥウウ! ガァ!」
「なんの! 英雄技! エインシールド!」
攻撃を当てたリースに半減の火山弾が飛んで来るがエインシールドでガードした。それを見たオルトロスはリースに襲い掛かるが満月さんのパーティーメンバーが大盾で弾き返すと槍を投げて仕留めてくれた。
「ありがと」
「「「「きゃあああああ!?」」」」
「「「「うおぉおおおおお!?」」」」
恋火たちの悲鳴が聞こえた。見るとエキドナの体に恋火たちがまるで底なし沼の中に沈んでいくかのような状態になっている。与一さんたちが必死に攻撃してくれているが銃弾まで吞み込まれていた。
「これはティアマトが使っていた沈殿スキルだよ! 急いで助けて! 吞み込まれると即死しちゃう」
沈殿スキルはみんながティアマト戦で大苦戦させられたスキルだ。物理攻撃の無力化に加えて体に触れた物を自分の体内に呑み込むスキルで武器を投げたりすると与一さんたちの銃弾のように呑み込まれてしまい、返って来ることはない。
これは聞いた俺はゾッとしたものだ。何せエンゲージバーストやマリッジバーストを使い、武器を飛ばしていたら全て失っていた可能性があったわけだからね。最も帰還スキルで対処は可能らしい。
そしてシフォンが言うように人間を呑み込むことも可能でティアマト戦でこれでかなりの死者が出た。水中行動などのスキルを覚えている人なら即死を免れられるみたいだが、アイテムや加護ではティアマトの力の前に即死確定だったらしい。
俺たちが助けに行こうとすると背後の尻尾からケルベロスとキマイラが生まれている。これで尻尾が消えたが完全に挟まれた。満月さんに聞かれる。
「どうする?」
「まず背後の奴らから倒しましょう。俺とスピカ、リースでみんなの救出と時間を稼ぎますので、虎徹と背後の敵のことを頼んでいいですか?」
「あぁ。任せてくれ」
「和狐、クリュス、優牙、背後の敵を頼む」
「はいな」
俺はスピカとリースと共に前に出ると満月さんたちも後ろに下がって貰って、与一さんたちは銃を改造を重ねられてきた魔法銃に変えて援護をしてもらう。現在の魔法銃はマジックバスター規模の魔力砲ぐらいの出力が出るようになっている。純粋な魔力なら沈殿の効果を受けないことはティアマト戦で証明されていた。
「リース!」
「はい!」
リースが手を伸ばすと恋火の手を掴んで強引に体から救出した。
「た、助かりました~」
「ホッとしている暇は…っ!」
「ヒヒーン!」
俺はスピカに合図を送ると跳び上がると巨大な尻尾の一撃が俺たちをいたところを襲う。まぁ、復活させて来るよな。
「恋火、一人で助け出せるか?」
「外にでれたら、こっちのものです!! 觔斗雲の術!」
「よし! 行くぞ!」
「はい!」
「放射熱線!」
俺たちはエキドナの攻撃を躱しながら、みんなを救出していくとエキドナの体からオルトロスの首が突然現れて、スピカが噛みつかれる。
「ヒヒーン!?」
「この! 聖波動!」
リースが至近距離から聖波動を浴びせるがオルトロスの首は健在でリースのほうを見る。するとここで銃を瞬時に変えた与一さんのレールガンがオルトロスの頭を撃ち抜いた。そして解放されたファリーダが伸びた首を切断する。
それからのみんなはまず全員がエキドナの体に触れる事は禁止した。まずこれでさっきのような事態は避けられる。ただエキドナは次々魔獣を出す上に生命力の多さと回復が半端じゃなかった。
しかもエキドナの体から顔が出る魔獣たちが厄介だ。お陰でエキドナの死角が見当たらない。しかも必殺技で身体中から魔獣を出して、一斉ブレスという技まで見せて来た。これをガードしてくれた満月さんたちは流石だ。
一方こちらの背後の敵は和狐が地面に仕込んだ雷撃の護符と沈下の護符が炸裂する。優牙は時間を稼いだら、満月さんたちとクリュスが強制的に設置した罠のところにモンスターたちを誘導して落とし穴においてモンスターや雷撃で麻痺したモンスターをボコボコにして終わった。
その結果、現在は挟まれることなく、しっかり陣形を整えて魔法などの遠距離攻撃で確実にエキドナを追い詰めていた。満月さんたちが前衛で陣取ると安定感が半端ない。エキドナの尻尾の攻撃を全員で受けてめていた。
それを見たエキドナは連続攻撃してくるが満月さんたちが崩れてもみんなが攻撃して時間を稼いでいる間に恋火と和狐の結界が貼られて、クリュスが入れ替わるとその間に満月さんたちの回復が行われると入れ替わる。
エキドナもモンスターを出してなんとか突破口を開こうするが正直もう負ける気がしない。
ここで俺の後ろから声が聞こえてリースを見ると自分の剣を見て悔し涙を流していた。俺はそんなリースの頭を撫でる。
「弱い事は悔しい事だよな。それでいい。その悔しさをずっと忘れないでいてくれ。強くなってからもずっとな。そうすればどれだけ強くなってもきっと道を踏み外さず進めるはずだ。この剣も安心して預けられる」
俺はリースに神剣グラムを渡す。元々リースのエインフェリアはオーディンと深い関りがある。召喚獣としては一番神剣グラムと相性がいい召喚獣だろう。
「主様…これ」
俺は神剣エスカトンリープリングを取り出して言う。
「行くぞ。リースの強さをあいつらに見せてやろう」
「っ! はい!」
「悪いがスピカ、付き合ってくれ!」
「ヒヒーン!」
俺はみんなに仕掛けることを伝えて、俺たちは飛び出すと二人でエキドナの体を斬り裂いていく。するとオルトロスの首が二つともリースを狙う。
「や! は!」
「「キャウン!?」」
「主様から預かったこの剣で負けるわけにはいきません!」
「その調子だ。超連携、行くぞ!」
「はい!」
スピカが天井近くまで上昇すると俺とリースはスピカから離れて、剣を合わせると超連携が発動する。二人同時に剣を振るとエキドナが超連携の斬撃で吹っ飛ばされる。
「これがオーディン様の剣の力…そして主様たちの冒険を支えてきた勝利の剣…」
うっとりしている。これはちょっとあげる事も考えないといけないかな?出来れば上げる前に代わりになる武器を手に入れたいところだ。
「逆鱗! 死ね! 伸縮! ドラゴンクロー」
「っ!? 主様! 絶対防御!」
リースが守ってくれると優牙が伸びた腕に噛み付くと腕は鞭のように動いて優牙を壁に叩きつける。
「魔獣の咆哮!」
エキドナが叫ぶと魔獣の群れの魔力が俺たちに向かって来る。
「グゥウウ…ワオーン!」
優牙が意地の魔狼の咆哮を放ち、相殺しようとしたが僅かに止めるだけに留まる。だが、これでファリーダにとっては十分な時間だった。
「デモンクラッシャー!」
魔獣の咆哮をデモンクラッシャーで殴りつけて、攻撃のコースを変えた。更にレイジさんたちが投槍を構える。
「「「「ゲイボルグ! 死棘!」」」」
六つのゲイボルグがエキドナの沈殿スキルを受けて体の中に入るとエキドナの体内から外に死棘が飛び出す。そこには無数の魔獣がゲイボルグに貫かれて即死していた。
「行くぜ! 聖剣解放!」
「グランドサザンクロス!」
「神波動!」
アーレイがエクスカリバーで斬り裂き、シフォンが続くと最後はユーコがクラウ・ヌアザからの神波動を浴びせまだ続く。
「「「「英雄技! ドラゴンブレイカー!」」」」
空で剣を構えていた竜騎士たちが竜殺しの波動を浴びせた。
「「「「英雄技! 掃射一掃!」」」」
最後は与一さんたちの英雄技で与一さんたちが知る射撃武器が与一さんたちの背後の空間から現れると一斉に放たれる。その中には堕天使たちが使っていた武器やレオナルドのイベントで見た武器に最新のミサイルまであり、全てが殺到し、大爆発を起こした。
「た、倒しました!」
「いや、まだだ。簡単すぎる」
爆煙からエキドナゆかりの魔獣たちが大群で現れた。エキドナの姿がない事から最後の置土産とみるべきだな。空を飛んでいる俺たちに倒し損ねたアイトーンの群れが向かって来た。
「千本鳥居!」
「「「「ガ!?」」」」
「「「「シャ!?」」」」
「「「「ピィ!?」」」」
それぞれの魔物の首に鳥居が落下して、地面に抑え込んだ。和狐は完全に見切っていたな。タイミングが完璧だった。
「サウザンドレイン!」
抑え込まれた彼らにトリスタンさんが使ったアダマントとダマスカス鋼の合金の矢が降り注いだ。これで不死は封じた。
「スピカ!」
「ヒヒーン!」
「流星群!」
「行くわよ! シャイターン・ラッシュ!」
スピカとクリュスの流星群とファリーダの炎の拳が降り注ぎ、次々爆散する。後はみんなに任せよう。みんなが魔獣たちを全滅されるとインフォが来る。
『虎徹のレベルが30に到達しました。成長が可能です』
『リースの光剣のレベルが20に到達しました。光剣【連続斬り】を取得しました』
『リースの光盾のレベルが20に到達しました。光盾【インパクトカウンター】を取得しました』
虎徹の進化は後にして、先に解体すると結果はギルドクエストとほぼ一緒という結果に終わった。そりゃあ、出て来る敵がほぼ同じなんだからこうなるとも道理だ。新しい素材はこれのみ。
アイトーンの肉:レア度10 食材 品質S+
アイトーンの鳥肉。不死の力がある鳥肉で食べると不死になると言われている。ただし臭みが強く、美味しく食べるには料理人の腕が要求される。
そりゃあ、巨人のおっさんの肝臓ばかり食べていたら、臭みも出るだろうよ。
「暫くハーブとかに付けこんでから唐揚げかな?」
「「「「唐揚げ!」」」」
みんな大好きだから大興奮だ。みんなを落ち着かせて、宝箱を確認する。ここにテューポーン攻略に必須と思われるものがあった。
無常の果実:レア度10 食材 品質S+
望めば望むほどに望みが叶わなくなるモイライが持っている果実。永続的に弱体化が発生する効果があり、一度食べると回復が不可能になるので、決して食してはいけない。
勝利の果実:レア度10 食材 品質S+
望めば望むほどに力を得られるモイライが持っている果実。永続的に勝利の加護を得る事が出来るが増やすことが出来ないので、注意が必要。
無常の果実はテューポーンの敗北のきっかけになった果実で勝利の果実はゼウスに勝つためにテューポーンが欲した果実だ。どうやら聖杯などでは出すことが出来ない代物らしい。まぁ、出せれたら、反則級のアイテムになるから出せないんだろう。
戦闘において力を欲するのは当然のことだ。俺も何度もっと力が必要だと思ったか分からない。そう思った瞬間、力が失われるんだから溜まったものじゃない。しかもこれが永続的に続くなんて願うことが許されない人生を送るような物だ。そんな廃人にする可能性がある果実を何とかしてテューポーンに食べさせることがテューポーン攻略の最大の鍵になる。
「私たちだけで考えていてもしょうがないわよ。とにかくギルドで待っている生産職を呼びましょう」
彼らには明日のテューポーン攻略の為に色々準備して貰う手筈だ。
「避雷針、設置しに行くぞ。護衛頼む」
「「「「任せろ!」」」」
「それなら壁製作班を同行させてもらうわ」
「大砲に爆弾、弾薬、回復アイテムを各洞窟に運んで!」
しっかり下準備をしてくれた生産職のみんなには感謝だ。ここで果実を見せる。
「わざわざ二つの果実を置いたという事に意味があるんだと思うわ。テューポーンを倒すなら無常の果実だけでいいもの」
「つまりルインさんはテューポーンが無常の果実を警戒してくると考えているんですか?」
「えぇ。もしかしたら食べた可能性もあるけど、少なくともここに封印されているテューポーンはゼウスに一度負けている。それなら勝利の果実を欲しがるんじゃないかしら?」
ここで銀たちが会話に加わる。
「話は聞かせて貰ったよん! 騙すなら忍者の役目だねん!」
「いいのか? かなり危険な任務になるが」
「任せて! アーレイ君みたいに食べられることなく、華麗に任務を遂行して見せるよん」
「華麗じゃなくて悪かったな!」
アーレイの伝説はもうギルド内に広がっていた。噂は広がるのが早いね。
「タクト君はこれから海よね?」
「はい。ここをお願いします」
「任せて頂戴。ちゃんと安全に戦えるフィールドを作ってあげるわ。あ、それとこれね」
俺はルインさんから霊符と護符の素材を貰うと和狐に預ける。護符や霊符を扱えるのが少ないから和狐にも仕事が回って来た形だ。どこまで通用するかは謎だが、何でもやることに意味がある。
戦闘職だけじゃない。生産職も確実にレベルアップしていた。俺は安心してシャローさんたちが待つノアズ・スクナに向かった。




