#1152 ティル・ナ・ノーグの試練
俺たちがストーンヘンジに近付くと最後の試練が発動する。ストーンヘンジの中心が輝くと岩の巨人が現れる。
ガーディアン・スプリガン?
? ? ?
俺たちは武器を構える。
「あいつを倒せってことだよな?」
「たぶんね」
「よーし! いっちばーん!」
リサが突撃すると上から大海波動を浴びて、ぶっ飛ばされる。リリーがいなくても俺はこういう戦闘を見る運命にあるんだろうか?
俺たちが上を見ると手が羽になっており、上半身が女、下半身が魚の敵が無数に現れていた。
セイレーン?
? ? ?
マーメイドのローレライ分岐の最終進化として判明している敵だ。
「ふふ。ここはわたしたちの住処よ」
「人間は立ち入り禁止」
「大海波動!」
「きゃああああ!?」
リアンが彼らの前に立ち塞がる。
「あなたたちの相手は私がしてあげます」
「そんな…数が多すぎ」
「メル…どっちみちここは戦力を分けるしかない。リアンが飛び出した以上、あいつらの相手は俺たちが適任だ」
「はぁ…ここは怒るところだよ。タクト君」
確かにリアンが勝手に動いたところは怒るべきか?するとセチアたちが言う。
「メルさん、タクト様は怒れませんよ」
「パパは優しいですから」
「それにこいつも飛び出しているだろうしな」
「だってさ…なるべく早く仕留めてくれ」
「ふふ。努力するよ。行こう! みんな! 速攻で決めるよ!」
俺たちは分かれると俺はリアンに襲い掛かったセイレーンをぶっ飛ばした。そしてルーナとダーレーが続く。
「先輩!?」
「何よ! あなたたち!」
「俺はリアンの夫だ。俺たちとも遊んでくれよ」
「な…海底でしかもわたしたちの縄張りで惚気ているんじゃないわよ!」
怒らせたらしい。事実を言っただけなのにな。
「へ…おら!」
ダーレーが霸王戟を振るとセイレーンたちが吹っ飛ばす。
「さて、どうする?」
俺が考えるとミールからお願いが来て、作戦が決まる。
「場所を移すぞ」
「了解っと! 馬化!」
俺がダーレーに乗って、その場を少しだけ離れるとセイレーンたちは追跡してくる。ここでストーンヘンジ方面から大爆発が発生した。自爆か?セチアにシンクロビジョンを使い、確認するとストーンヘンジが輝き、ガーディアン・スプリガンが復活するところだった。
『タクト様、見ましたか?』
『あぁ…ストーンヘンジの岩の一つが光っていなかったな。メルに伝えてくれ』
『わかりました』
恐らくストーンヘンジの岩の数だけ蘇生するって事だろう。数は十二。今での一つ減ってはいるが向こうは向こうできつそうだ。
「待ちなさいよ! 侵略者!」
「酷い言われようだな。まぁ、住処を荒らしたのは事実だからそういうことになるんだが」
「でも、向こうからいきなり攻撃してきましたよ」
「だよな」
俺たちが海底スレスレを動き回って時間稼ぎをする。その間にセイレーンたちからの攻撃に俺たちはさらされる。まずローレライ分岐の特徴の一つが歌による攻撃だ。とにかく歌が聞こえる範囲内にいるとずっとダメージを受ける事になる。
そしてセイレーンはこれに加えて、相手を混乱や魅了、弱体化をさせる歌を使って来る。残念ながら俺たちには混乱と魅了は効かなかったが地味に弱体化がきつい。
後は遊泳時の機動力ではリアンを上回っていた。スピードではリアンのほうが上のようだが、翼がある分、羽ばたくことで上下移動を可能にしている。因みにセイレーンは空の飛行も可能でオーケアニスより、行動範囲が広い。だからこそ海での戦闘は負けられない意識がリアンには強くあるのかも知れない。
セイレーンの弱点はまず武器が持てない。手が翼になっているから当然だ。ただし魔法は使うことが出来て、風、水、氷、闇属性を確認した。他の攻撃スキルでもこの四属性と見ていい。
リアンは接近戦を挑もうとするが機動力で攻撃を躱されてしまっている。最もその際に使用された羽投擲は全て防いでいるから負けているわけじゃない。
俺たちもちょくちょく魔法攻撃をしているとメルたちのほうで予期せぬ援軍が現れた報告をセチアから受ける。シンクロビジョンで確認するとガーディアン・スプリガンの肩に俺が良く知る妖精と男の妖精がいた。
ティターニア?
? ? ?
オベロン?
? ? ?
ここで妖精の女王と王様が登場してくるかよ。どうやらガーディアン・スプリガンを半分である六回倒したことがトリガーになっているみたいだ。
オベロンはこのゲームではピクシーのグレムリンルートの最終進化で現実ではティターニアの夫として登場する妖精として知られている。
能力がデバフ特化で妖刀と同じ効果がある魔剣を持っているそうだ。戦闘はとにかく状態異常や弱体化を多用して、逃げてばかりいるらしい。そして相手が十分に弱くなるのを確認すると攻撃に転じる実にいやらしくある意味ではゲームの基本戦闘を守っている妖精と言える。
俺たちからすると結構苦手なタイプだと思う。だからメルたちが相手をしてくれて助かった。そう思っていると流石に時間稼ぎをしていることにセイレーンたちも気が付き、ガーディアン・スプリガンの方に向かう。
だが、気付くのが遅い。俺たちも海底を選んだのにはちゃんとした理由がある。ストーンヘンジ方面に向こうとしたセイレーンたちに次々海底から生えた木々が襲い掛かった。
「く…何よ!? この木!」
俺たちは回避行動を取ったセイレーンたちに不意打ちをする。更に助けに入ろうとしたセイレーンは海底の地面から飛んできたゲイミストルティンに貫かれて、即死した。やられた仲間を見たセイレーンが言う。
「そういうこと…時間稼ぎをしている間に罠を貼ったのね」
「あぁ。俺の仲間がここにいる全員だと言って無いしな」
海底の地面からゲイミストルティンを手元に戻したミールが現れる。海底こそ水樹の加護があるミールのホームグラウンドだ。
「ふふ。でも残念だったわね。わたしたちを捕まえる為には罠が少なすぎるわ!」
理想は確かにセイレーンたちを木の檻に閉じ込めることだった。それをするためには時間が確かに少なすぎた。だが、俺たちを放置して、メルたちのほうに行くのは俺たちを舐め過ぎだな。
「先輩」
「あぁ…行くぞ! リアン!」
「「マリッジバースト!」」
俺たちを中心にとんでもない渦巻く海流が発生するとその海流を吹き飛ばして、神の力に覚醒したオーケアニスの戦士が降臨する。
「何よ!? あれ!? ひ!?」
俺たちは一瞬で距離を詰めると神槍カリュブトライデントを突きつける。
「喰らい尽くせ。カリュブトライデント!」
『暴食!』
狙ったセイレーンと近くにいたセイレーンが神槍カリュブトライデントに喰われる。
「く…爆音波!」
「おせーよ!」
俺はセイレーンの頭を掴むと海底に叩きつけて、次の獲物に向かう。
「あの男…よくもわたしの顔を地面に! 絶対に許さない! っ!?」
置き去りにされたセイレーンが追撃しようとすると足に木が絡みついており、追撃することが出来なかった。
「タクト様を許さないというなら倒すしかないですね。楽には殺しませんので、覚悟してください。植物召喚! トリカブト!」
海底のトリカブトが現れるとそこにセイレーンを叩きつけて、トリカブトの毒に汚染される。更にミールは動けないように木牢で拘束すると寄生種を使い、じわじわセイレーンを殺した。うちの子たちは怒らすと本当に怖い。
「この! この! 来るなぁあああ!」
「ほい。暴食。次」
『逃げている奴らがいます』
「じゃ、仕留めるか」
俺たちが立ち塞がるとセイレーンたちは引き返した。俺が追撃しようとすると覇撃が飛んで来る。ガーディアン・スプリガンだ。更にオベロンがルーナの前にいた。
「何タクト君に攻撃しているの!? こいつ!?」
「しかもマリッジバースト中だぞ! お前、死に急ぎすぎだろ!」
「でも、見て! オベロンがルーナちゃんをナンパしている!」
「「「「よかった…」」」」
なんか酷いことを言われている気がする。視線を戻すとダーレーに殴り飛ばしたセイレーンが飛んできたので蹴り返すとダーレーも蹴り、ガーディアン・スプリガンに命中した。完全に狙ったな。
「「「「おぉい!?」」」」
「攻撃! 攻撃して! タゲをこっちに向けてるの!」
メルたちは大変そうだな。ティターニアはシフォンと戦っているから取り敢えずオベロンをぶっ殺そうと思っているとルーナの聖剣解放でオベロンはぶっ飛ばされ、ガーディアン・スプリガンに叩きつけられるとガーディアン・スプリガンの生命力が残りわずかとなり、自爆した。
「大丈夫か? ルーナ?」
「はい! あいつ、気色悪くて嫌いです。パパ」
見事にふったらしい。寧ろ同時に現れた以上、シフォンと戦っているティターニアとは夫婦関係だろう。それなのに目の前で別のティターニアをナンパするってオベロンの神経を疑う。俺たちが爆発地点を見ているとオベロンがこちらに向かって来た。するとメルが襲い掛かった。どうやら俺とルーナの気持ちを組んでくれたらしい。
ここでリアンが教えてくれる。
『先輩。セイレーンの数が増えました。元の数に戻ったみたいです』
『これはずっとこのままな感じだな。マリッジバーストが切れる前にノアズ・スクナに戻るぞ。それまでは暴れよう』
『はい! 全力で行きます!』
俺たちは切れる前になるとミールを回収して、ノアズ・スクナに戻ると追って来たセイレーンたちはノアズ・スクナの砲撃とシャローさんたちとセチアの射撃と魔法を浴びる。
「よっと。結構暴れたな。状況はどんな感じだ?」
「ティターニアとオベロンは倒されました。ガーディアン・スプリガンも残り蘇生回数は二回です」
セチアが教えてくれるとガーディアン・スプリガンが自爆による発光が発生する。これをシャローさんたちは待っていた。
「船首をガーディアン・スプリガンに!」
「アイアイサー!」
シャローさんたちが完全に横取りを狙っていることがこの瞬間、判明した。自爆して蘇生すると自爆地点に蘇生するから狙いやすい上に蘇生後すぐに防御スキルを使わないと行けない。それを判断するためには事前に攻撃が来ると予想しないと難しいだろう。果たしてこれがガーディアン・スプリガンに出来るかどうかだな。
「魔導砲、発射用意!」
「エネルギー、魔導砲に回すよー」
ここでメルたちも気が付き、文句を言いながら、退避する。シャローさんが俺を見ると俺は手でどうぞとジャスチャーで返す。ここでガーディアン・スプリガンは爆発する。
「んん! 魔導砲、発射ぁあああああ!」
最後の蘇生をしたガーディアン・スプリガンに魔導砲が直撃すると爆散する。流石に無理だよな。これでストーンヘンジの岩の光が全て消えると、ストーンヘンジを囲むようにエメラルドグリーンの光が円を描くとエメラルドグリーンの光の柱が発生した。
「これに入れってことでしょうか?」
「だと思います」
「では、突撃します。全員に帰還命令を!」
「アイアイサー!」
メルたちは帰ろうとするがセイレーンたちの妨害にあい、俺たちが援護して、なんとか全員を船に乗せて、光の中に入ることが出来た。
ステータスは次回に持ち越しとなります。




