#1138 虎徹の甲冑とノワの封印剣
今日から十二月で日曜日だ。気温も下がって来て、布団からなかなか出れない季節だが、ゲームのために朝早くに起きて、朝食を食べてからゲームにログインするとまた布団の中。しかも恋火がいるお陰でぽかぽかだ。
ここで元気なリリーの声が聞こえてきた。
「雪だー!」
これを合図にホームがバタバタしだす。恋火を起こして一緒に降りていくと恋火がリリーに拉致られる。どうやら外で遊ぶらしい。外を見ると雪合戦をしていた。これはもう後で大変な事になるな。
「…どうして寒いのに外に出るのか意味不明」
「炬燵でずっと寝ていたら、健康に悪いぞ。ノワ」
「…冒険のときに動くからずっとじゃない」
ごもっとも。そして案の定、全員が雪まみれで震えて帰って来た。
「「「「さ、寒い…くしゅん!」」」」
「ほら。タオル。それと温かいご飯を使ったから早く拭いておいで」
「準備が完璧ですね」
「雪遊びは大体こうなるものさ」
俺も雪遊びをした後は大体こうなっていた。だから経験則で朝からシチューを出した。何気に五つ星シェフとしては最初の料理となる。
「「「「お、美味しい!」」」」
俺も飲んでいるといつも作るシチューより味が濃厚になっている気がする。これをどうとるかは個人に寄るな。味が濃厚なのが嫌いな人もいるから。ただリリーたちははっきりとした味が好きなので、評判はかなりいいみたいだ。
因みに鑑定では効果時間の上昇と今までになかったバフの追加が確認できた。ステータスのバフは料理の効果には書かれていないが全体的に20ぐらい上がっていた。20アップは成長ぐらいの強化になるから頑張った甲斐があったものだ。ここでリリーが代表して聞いて来る。
「タクトが昨日作った料理はないの?」
「それは夜に作るよ」
「やったー! わ!?」
「何やっているんですか…リリー」
万歳したリリーが喜びすぎて、椅子から転がり落ちた。本当にリリーは変わらないな。ここで昨日は渡せなかった草薙剣を正式にイオンに渡す。
「俺たちを何度も倒した剣だ。大切に使ってくれ」
「すっごく使いにくいんですが!?」
「それだけ強い剣ってことだよ」
次はどうやら金曜日に注文した武器と防具が完成したようだ。早速確認して行こう。まずは虎徹の防具だ。
虎徹のオリハルコンの鎧は甲冑のデザインをベースに作られていた。以前尻尾を斬られたからか尻尾の根本付近まで鎧が装備されている。さて、このデザインを見ると名前は漢字がいいな。よし。決めた。
神鎧誠心理心:レア度10 魔法鎧 品質S+
重さ:10 耐久値:10000 防御力:5000
魔法鎧効果:全属性耐性、半減、神気、神障壁、黄金障壁、神鎧、堅固、衝撃無効、絶対防御、光吸収、後光、聖療、全反射、乱反射、瞬間再生、復活、烈日、陽光、光化、全滑走、環境無効、重力場、重力支配、隕石、武器破壊、妨害無効、魔法無効、神の加護、地竜の加護
宝玉効果:全属性アップ(究)、魔法再時間短縮(究)、魔力超回復、天候支配、炎熱支配、物理支配、海流支配、粒子支配、魔素支配、時空支配、宝玉解放、宝玉全解放
刻印効果:無限のルーン、超加速、星間行動
オリハルコンとグラビティサイトの合金と最高級の宝石、内側にはゴッドウールで作られた剣聖虎専用に作られた究極の甲冑型の魔法鎧。全てのダメージを半減させてしまう能力があり、魔法に対しては攻撃を受け付けない。更に地竜の力で武器に対しても圧倒的な防御力を誇っている。
性能はグレイの神鎧グレイリリコスアーマーとほぼ同じだ。ただグレイのように鞍などはない。虎徹にも乗って戦いたい気持ちはあるが尻尾の武器が虎徹のメインの攻撃手段だからお互いに戦い辛くなるのが予想される。そこは連携をし続けていると解消されるかも知れないが俺たちは隣に並んで戦ったほうがきっと合っていると思う。
防具の名前である誠心理心という四字熟語は存在しない。誠心は誠心誠意という四字熟語から貰った。意味は損得を考えずに人に尽くす純粋な気持ちのこと。理心は近藤勇が使っていた剣術の流派として有名な天然理心流から貰った。
虎徹に俺はこの防具に込めた思いを伝える。
「いいか? 虎徹。この防具でお前は間違いなく強くなる。その強さに頼るのはいい。だが、奢れることは許されない。この防具も虎徹が持つ刀たちも全て力だ。でも、力の始まりはいつも心からやって来る。戦うぞという気持ちが無ければ力は使われる事はないからだ。故に正しい心が力を持つ者には求められる。虎徹は今までそれがぶれてなかったと思う。だから今までの心のまま一緒に強くなって行こう」
「ガウ!」
俺はわざとみんなにこれを聞かせた。虎徹だけじゃなく、この心得はみんなに持っていて欲しい。俺の狙い通りにみんなの気持ちが引き締まったところで注目のノワ初の武器を鑑定する。
ルーンノワール:レア度10 片手剣 品質S+
重さ:150 耐久値:8000 攻撃力:200
効果:魔神殺し、神殺し、天使殺し、堕天使殺し、竜殺し、破魔、万物切断、魔力切断、神鎖、封殺、神岩結界、帰還、死滅光線、後光、神雷、神波動、神威解放、天罰、耐性無効、神の加護
相手の動きや能力を封印することに特化したサマエルの封印釘を剣に加工することで封印特化の剣となった。サマエルの毒とサマエルと神の呪いは解除されており、誰でも使えるようになっている。
攻撃力の少なさとかをヘーパイストスから説明を受ける。
「分かっていた事ですけど、僕との相性がめちゃくちゃ悪い素材でした。もう毒とか込められた呪いとかの解除に凄く苦労しましたよ。神は死ねとか他神が触れるなとか罵詈雑言の嵐でした」
「大変だったみたいだな」
「えぇ。でも、これで諦めたら、僕の負けになりますからね。鍛冶だけは負けれませんよ」
なんだかんだで俺の周りには負けず嫌いが多いな。類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。
「それでやっぱり合金とかは難しいか?」
「元の素材が僕の力を持ってしても分からない謎の金属でしたので、合金は作れませんでした。後、僕たちの力も拒絶されました。それでも武器として作った結果がこれです」
「あまり武器向きじゃなかった訳だな。それでも封殺がある武器はとんでもない武器と言えるからよく完成させてくれたよ」
「…ん。感謝。大切に使う」
ノワも武器の用途をしっかり理解しているようだし、上手く使うだろう。そして封印武器シリーズはヘーパイストスが担当することになった。とてもじゃないがパンドラやユウェルに扱える代物じゃないらしい。
最後に改造されたアイアース・アスピスを確認する。
アイアース・アスピス:レア度10 大盾 品質S+
重さ:160 耐久値:5000 防御力:6000
効果:竜気、強行、先制、英気、英雄障壁、黄金障壁、多重障壁、絶対防御、堅固、大気壁、物理耐性、魔法耐性、衝撃無効、透過無効、破壊無効、伝説解放、地竜の加護
英雄大アイアースが使っていたタワーシールド。青銅の盾の上に守護金竜の竜鱗と6枚の牛革を張った盾で動く壁、要塞とまで喩えられた伝説の盾。どんな武器でも破壊することが叶わなかったとされている。
うん。確実に強くなったな。地竜解放を得られなかったのは残念だけど、こんなところだろう。これで確認終了。次は依頼をする。まずヘーパイストスにはセフォネの封印鎌を依頼して、残りには防具の依頼となる。
「ユウェルたちにはチェスの鎧を」
「ホー!」
コノハをスルーしたら、めっちゃ頭をつつかれた。
「コノハも鎧が欲しいのか? でも装備なんて出来るとは思えないんだが」
俺が危惧しているのはコノハのサイズだ。
「ホー! ホッホー!」
謎のポーズを決めてめっちゃアピールしてくる。ここまでされたら、俺も考えないと行けない。
「…あー。セチア? どうにか出来そうか?」
「宝玉を小さくすればなんとかなると思います。それでいいですか? コノハさん」
「ホー!」
いいらしい。まぁ、コノハはギリシャ神話だからオリハルコンには思う所があるのかもしれない。
「コノハはパンドラ行けるか?」
「作り方は分かったから問題ないよ! おじ様!」
それじゃあ、ユウェルには狐子の刀を依頼しよう。使う素材はずっと放置していた殺生石だ。
「作れそうか? ユウェル」
「ん~…初めて使う素材だし、毒や呪いが凄いからちょっと自信がないぞ」
「そこは僕がフォローしますよ。サマエルの封印釘に比べたら、こんなの…う!?」
どうやらヘーパイストスは殺生石の怒りに触れたようだ。慌てて距離を取る。
「はぁ…はぁ…ふぅー」
「サマエルの封印釘を鍛冶している時はずっとこれを繰り返していたんだよ」
「なるほど…本当に大変だったみたいだな」
和狐たちにはコノハのフォローと中断していたアリエスの防具を依頼する。和狐とブランが辞退したので、セフォネのを依頼する。ここでセフォネがお願いをして来る。
「ローブよりマントのほうが欲しいのじゃ」
「それならそっちを作るか」
「色は黄金のままでいいんどす?」
「出来れば外は黒、内は赤がいいな!」
いかにもヴァンパイアらしいマントの注文だな。これで依頼は終了。次は生産作業をしつつ、本日の聖杯タイム。千影がルミを優先して欲しいということなのでルミの武器を考える。プルートデスサイズもありだが、ここは新しい武器を選ぼう。そんなわけで出したのが堕天使イベントで交換出来る武器だ。
サリエルの鎌:レア度9 専用装備 品質S
重さ:125 耐久値:1200 攻撃力:800
効果:天使装備時全ステータス+30、天使殺し、堕天使殺し、即死の魔眼、即死、虚空切断、死滅光線、暗黒波動、サリエルの加護、神の加護
天使サリエルが持つ大鎌。刃が柄に差し込まれているところには即死の魔眼があり、見たものを問答無用で死を与える。中でも天使や堕天使には非常に強力な力を持っている。
レア度9とは思えない破格の能力なんだよな。サリエルの加護は耐性無効と加護無効、蘇生と復活を封じる効果に死んだ後に効果が発動する呪い系のスキルの無効化だ。
「はい。どうぞ」
「…ありがと。千影お姉様も」
「なんの。色々武器を作って貰ってますから譲るのは当然でありますよ」
自分の召喚獣がそういうことを言ってくれると誇らしくなる。俺が教えたわけじゃないんだけどね。さて、ここからは冒険タイム。午前中に目指すのはインドラに依頼されたヴリトラのクエストクリアだ。




