#1133 太陽神ラーの天敵
俺はホームに帰って来た。するとリリーが家から飛び出してくる。
「タクト~! 助けて~!」
「なんだ? い!?」
リリーの顔は落書きされたような顔になっていた。心当たりがあるとすればリリーが最初に欲しがったお化粧だ。そういえばスキアーのクエストに挑む前にリリーの姿がなかった。どうやらあの時にお化粧を一人でしていたようだ。そしてリリーが俺に突撃して来た。
「あれ? どうかしたの? タクト」
「あぁ…腕をやられてな。強くなってもこの有様だ」
「大変! みんな! タクトが怪我しちゃったよ~!」
顔がヘンテコになっても、リリーは変わらないな。そしてローブにリリーの化粧がべったりついてしまった。和狐に洗って貰わないとな。
そして家に入るとみんなが後ろを向いて顔を手で隠していた。
「顔を見ないで下さい。タクトさん」
「すみません。治療したいのはやまやまなのですが、この顔をタクト様に見せる訳にはいかないんです」
「イオンやセチア、ファリーダまで失敗したのか? 何となくだが失敗しそうな気がしなかったんだが」
「もちろんお化粧ぐらい普通に出来るわよ。邪魔が入らなければね」
流れを纏めるとこんな感じだ。みんなでお化粧をして、俺を驚かそうとした。リリーが失敗する。みんなが笑う。リリーが怒ってみんなの顔に化粧をする。結果全員が顔に落書きしたような状態となったわけだ。
「リリー…」
「だって、みんなしてリリーを笑うんだもん」
「まぁ、それが悪いと言えば悪いのか…取り敢えずイクス、アンたちを呼んで治療してくれるか? これなら顔は見ないだろ?」
「イエス、マスター」
ナノマシンで治療して腕を直すと化粧落としを買いに行って、リリーの顔をふいて化粧を落とした。
「よし。元通りの可愛いリリーの顔に戻ったな」
「ど、どうしたの? タクト?」
オシリス夫婦のように自然に言ったつもりが空振りしてしまった。結構なダメージが来るな。オシリス夫婦は凄いわ。
「何でもない。ほら、次はイオン」
「一人でやらせてください」
「りょーかい」
みんなが直している間、暖炉がある部屋で休憩しようとしていると俺の枕の前に佇むノワがいた。
「どうした? ノ…ワ!?」
ノワにあげた俺の枕に化粧が付いていた。これでは流石に使えないだろう。
「どうしたの? ノワちゃん?」
諸悪の根源と思われるリリーがノワに声を掛けるとノワがリリーを見ると仲間を殺された時並みの怒りの目を受ける。落書きされた顔なだけに凄味が増している気がする。
「…リリー、絶対に許さない」
「え? え? 何で怒っているの!? ノワちゃん!?」
「ノワにあげた枕に化粧がべったりついているんだよ。でも、ノワは化粧品を買っていないはずだよな?」
「あ…」
どうやらリリーには心当たりがあるようだ。その後、騒ぎを聞きつけたイオンたちから事情を聞く。どうやら寝ているノワの顔にお化粧をしたらしい。それは完全に悪戯なレベルだ。
「み、みんなも賛成していたんだよ!? ノワちゃん! みんな平等にって!」
「…なら全員許さない」
「枕なら洗えば何とかなるじゃない」
「寧ろリリーお姉様が普通に先輩に見せに行ったことが凄いです」
そこはリリーだからな。しかしファリーダの意見にノワが言う。
「…洗ったら、にぃの匂いも消える。にぃが使ったあの枕はもう戻ってこない」
ノワの悲しみの深さを全員が知った。とりかえずこのままでは内部崩壊の危機なので、ノワには俺が新しく買った枕をあげて、全員と島で決闘して怒りをおさめさせることにした。
「…逆鱗!」
「そこまでするの!?」
「…にぃの枕を失った悲しみをリリーに教えてあげる」
その間にスキアーを進化させようと思っていると燎刃が先に成長させて欲しいと言い出した。あれだけ怒っているノワと戦う訳だからそう思うのも仕方が無いことだ。というわけで成長させた。
『燎刃の成長が完了しました。炎熱装甲、星震、溶岩壁を取得しました』
『燎刃の空脚スキルが転瞬スキルに進化しました』
名前 燎刃 ドラゴニュート・プルガトリオLv20
生命力 247→287
魔力 332→372
筋力 639→689
防御力 188→228
俊敏性 274→314
器用値 353→383
スキル
爆拳Lv28 飛翔Lv36 刀Lv30 太刀Lv27 指揮Lv7
紅炎Lv33 第六感Lv31 天言Lv28 神気Lv36 竜気Lv29
神感覚Lv30 天竜眼Lv32 他心通Lv29 心眼Lv26 爆破の魔眼Lv16
堅固Lv29 強激突Lv29 空脚Lv29→転瞬Lv29 万物破壊Lv30 魔力切断Lv28
溶断Lv31 時空切断Lv24 多連撃Lv32 多乱刃Lv28 獄炎Lv14
再生の炎Lv22 魔力回復Lv23 竜鱗装甲Lv26 炎熱装甲Lv1 防御無効Lv27
爆心Lv24 空振Lv21 星震Lv1 重圧Lv12 炎輪Lv18
焼失弾Lv14 大噴火Lv5 熱波Lv14 炎熱操作Lv19 白熱刃Lv17
炎魔法Lv5 爆魔法Lv41 溶波動Lv16 溶岩壁Lv1 火砕流Lv6
日光Lv16 放射熱線Lv13 超集束Lv9 焼尽Lv13 戦闘高揚Lv33
肉体活性Lv29 煉獄Lv2 炎分身Lv15 炎化Lv5 陽炎Lv13
逆鱗Lv4 捨て身の一撃Lv6 覇撃Lv15 竜技Lv31 竜化Lv4
ドラゴンブレスLv21 起死回生Lv4 竜魔法Lv16 惑星魔法Lv5 破壊竜の加護Lv28
太陽竜の加護Lv33
これでよし。そして成長したばかりの燎刃の肩にノワの手が置かれる。
「…こっちに来る」
「…はい」
次はスキアーの進化だ。進化先は一つのみ。
アポピス
エジプト神話で神の敵としては最強クラスなのがこのアポピスだ。アペプとも呼ばれている大蛇で死者が乗る太陽神ラーの船を転覆されると言われている。オシリスが試練になったのはこの船を転覆される神話が冥府の話だから冥府神であるオシリスが出て来たのだろう。俺が島に来たのはかなり巨大な蛇であることが予測されるからだ。さて、説明をみてみよう。
アポピス…砂漠の冥府ドゥアトに住む大蛇。原初に生まれ、太陽神ラーの永遠のライバルとされている。サンドウォール砂漠では、出会ったらまず命はないと言われているほど、恐怖と渾沌の象徴で神々に倒されても死ぬことがない不死の存在。
ちゃんと太陽神ラーのライバル設定があってよかった。これが無かったら、アポピスを選んだ意味がほぼなくなってしまうからね。それじゃあ、進化行ってみよう。
スキアーの前に砂漠冥蛇の宝珠を置いて、進化を実行する。砂漠冥蛇の宝珠から光と闇が発生し、スキアーに流れるとスキアーは紫色の光の柱に包まれる。そしてその中から真っ赤な目に紫色の鱗を持つ大蛇が現れた。
『スキアーがアポピスに進化しました』
『高速遊泳、指揮、侵食毒、毒域、呪滅殺、呪撃殺、呪滅封印、他心通、神感覚、第六感、強行、無我、空虚、先制、重圧、竜鱗装甲、万物破壊、冥気、竜気、瞬間再生、魔力回復、冥波動、石ブレス、砂嵐、消滅弾、石化光線、死滅光線、拡散光線、号令、暗転、闇転移、光吸収、魔力枯渇、妨害無効、耐性無効、日食、霊化、大地支配、刑罰、魔素解放、原初の加護を取得しました』
名前 スキアー ニーズヘッグLv32→アポピスLv1
生命力 253→303
魔力 123→173
筋力 191→241
防御力 120→160
俊敏性 130→180
器用値 86→126
スキル
噛み砕くLv14 巻き付きLv7 薙ぎ払いLv13 高速遊泳Lv1 魔眼Lv16→即死の魔眼Lv16
指揮Lv1 猛毒Lv15→神魔毒Lv15 侵食毒Lv1 毒域Lv1 呪滅殺Lv1
呪撃殺Lv1 呪滅封印Lv1 疾走Lv18→神速Lv18 他心通Lv1 神感覚Lv1
第六感Lv1 強行Lv1 無我Lv1 空虚Lv1 先制Lv1
重圧Lv1 鉄壁Lv18→堅牢Lv18 竜鱗装甲Lv1 熱探知Lv16→魂探知Lv16 万物破壊Lv1
冥気Lv1 竜気Lv1 土魔法Lv8 闇魔法Lv8 登攀Lv3
土移動Lv18 脱皮Lv12 黒霧Lv15→魔霧Lv15 瞬間再生Lv1 魔力回復Lv1
冥波動Lv1 猛毒ブレスLv16→神魔毒ブレスLv16 石ブレスLv1 闇ブレスLv14→暗黒ブレスLv14 ドラゴンブレスLv18
砂嵐Lv1 即死Lv13 火炎弾Lv17→火山弾Lv17 消滅弾Lv1 石化光線Lv1
死滅光線Lv1 拡散光線Lv1 号令Lv1 暗転Lv1 闇転移Lv1
光吸収Lv1 魔力枯渇Lv1 熱無効Lv3 妨害無効Lv1 耐性無効Lv1
日食Lv1 霊化Lv1 大地支配Lv1 刑罰Lv1 魔素解放Lv1
逆鱗Lv3 原初の加護Lv1 冥府の加護Lv14→邪冥龍王の加護Lv14
進化したスキアーはコブラではなく普通の蛇タイプだった。これは古代エジプトではコブラは王の守護者とされており、他の蛇がアポピスの眷属にされている伝説から来ていると思われる。ただ普通の蛇と言っても、鱗はごつごつしており、頭や背中には角や棘があることからドラゴンっぽさが強い大蛇だった。
スキルで注目は日食。基本的には月食と同じ効果だ。ただ月食が夜にしか使えないスキルであるように日食は昼間にしか使えないスキルだった。そして叡智で詳しく調べるとどうやら日食と月食はそれぞれ太陽や月に関わるスキルの妨害効果もあることが判明した。これに合わせて光吸収と熱無効で太陽神ラーの天敵とされている訳だ。
そしてもう一つの注目が邪冥龍王の加護だ。ここに不死身スキルと道連れ、状態異常無効に加えて、弱体化スキルを強化スキルに変えてしまう効果と自分を殺した相手に呪い、感染症、弱化毒、永遠毒、耐性スキルと加護スキルの封印をするという加護が追加された。流石闇属性ドラゴンの頂点とされる邪冥龍王の加護スキルと言うべきだな。
「よっと…強くなったな。スキアー。これからもよろしく頼むな」
「シャシャ!」
うん。見た目は怖くなったがやはりスキアーの性格は変わらない。頭に乗っても大丈夫だ。ここで進化クエスト中に来ていたと思われるメールを確認するとメルたちがヴァナラ村に到着したらしいのがどうやら俺の仲間とは思って貰えないらしく、村に入れないようだ。
「ちょっと行ってくるな。お留守番は頼んだぞ」
「この状況じゃ出来ないと思うのですが! タクト殿!?」
「…隙あり。ドラゴンブレス!」
後ろで爆発音が聞こえたがまぁ、決闘だし、大丈夫だろう。そしてラーマに俺は事情を説明して、みんなを村に入れて貰った。
「まさかこの村の為に援軍を手配してくれるとは思って無かったぞ」
「悪い。事前に説明しておくべきだったな」
「気にするな。誰にでも失敗はある」
「そうだな。一人で敵地につっこんだり失敗はするよな」
「ぐ…そ、そういうことだ」
失敗二人組にメルたちは苦笑いをしている。するとブルーフリーダムのリーダーが話しかけて来た。
「なんか仲いいですね」
「この者とは似ていてな。不思議と気が合うのだ」
それは俺も感じている所だ。まぁ、共通点が妻のことになると頭に血が上ると言う変な共通点なんだけどね。
「因みにこの人は俺よりも強いから」
「ちょ!? タクトさん!?」
「そうなのか。上級の神二柱と契約したものより強いとは凄いのだな」
「「「「え?」」」」
みんなが俺を見て来る。そういえばまだスサノオと契約した話はしてなかったな。ついでにヤマトタケルノミコトに勝ったことも報告する。
「またタクトに先を越されたね…」
「鉄心さんが悔しがるよ」
「そもそも召喚師が侍の英雄に勝ってどうするのよ」
「戦っているうちに引けなくなったんだから仕方ないだろ?」
因みに他のみんなもチャレンジはしているみたいだけど、完膚なきまでに負け続けているらしい。
「正直ユーサー王に勝てる気がしません」
「そんなに強いのか?」
「はい。どうやらウェルシュドラゴンとグウィバードラゴンの能力を持っていて、アーサー王の武器まで使って来ます。活路は最初だと思うんですけど、それをさせてくれる相手じゃないんですよね…」
つまり半減の能力を使って来るわけだ。そりゃあ、強いね。ここで俺は一度帰って来るとたっぷり決闘したみんなの姿があった。
「派手にやったな。温泉でも入るか」
「「「「賛成~」」」」
こうして変に時間を使ってしまった俺は温泉から上がるとみんなに生産作業を頼んで、終わるとログアウトすることにした。俺が夜に狙うのはずっと陰ながら準備をしてきた五つ星シェフのクエストだ。




