#113 合成召喚の推理と悪魔対策会議
翌日、学校で合成召喚のことばかり考えていた。もはやどうしようもないところまで来ているのかも知れない。だが岩石のモンスターがまるでわからない。
調べて出てくるのはゴーレム、ドラゴンぐらいだ。流石にドラゴンはないと思いたい…となると充当にゴーレムなのか?でも別の進化先はマッドゴーレム。泥と岩石混ぜたらなんになるよ?セメントかコンクリートか?いや、それはないな。たぶん。
「随分悩んでいるみたいだな。誠吾」
「なぁ。岩石のモンスターで何浮かべる?」
「は? ゴーレムじゃないか?」
「蚕に聞いた俺が馬鹿だった」
「まさかの虫!? 俺の名前は海斗だ! それだけは絶対に言わせないからな!」
蚕のこと、よく知っていたな。
しかし結局わからないままか…一応怪しいのではにわやモアイがいたが…進化先どうなるよ?金剛力士像とか奈良の大仏とかになるのか?金剛力士像なら欲しく感じてしまうが…とりあえず黒鉄は普通に成長させようと思った。
他にも色々調べた結果、候補を絞ってみた。
まずはずっと言っているグリフォン。これはひよりの次の進化先とライオンの進化先で確認したレーヴェかその進化先の可能性が高い。
次に狙えそうなのがワイアーム。手足がないドラゴンと言われる幻獣だ。その姿は大蛇に羽がある姿だ。つまりスネークの進化先とひよこの進化先である可能性がある。
スネークだと考えると残念ながらブラックマンバではないだろう。なぜなら大蛇じゃないからな。可能性が一番高いのはキングコブラ。何故ならスネークの進化先で毒液を飛ばすのはこのキングコブラだけだからだ。
後は一度出会ったウッドゴーレム。木のゴーレムと言うことで合成召喚獣の可能性が高いと思う。ただ黒鉄の進化先じゃないだろうな。岩石よりも泥のほうが木に近い気がする。問題は相手がわからない。
トレントはテイムモンスターだから合成召喚の相手の筈がない。何かしらの植物系の召喚獣か水と土で木みたいな可能性があるな。
とりあえず狙いは決まった。学校が終わり、スーパーで買い物を済まし、ゲームにログインする。
ルインさんからメールがない。夜にメール来るかな?
俺が下に降りるとリリーたちとヘーパイストス、レギンさん、アウラさん、ネフィさん、リーゼ様、アンリ王女様が倒れている。近くにコップがあるが…毒液を飲んで一家心中したみたいになってるぞ。
「おーい。何があったんだ?」
するとリリーたちが説明してくれる。
「みんなで…」
「ジュースを…」
「作ろうとして…」
「不味かった…です」
あぁ、ジュースで失敗したんだな。分量さえ間違わなければ大丈夫なはずだが、その分量を間違えたんだな。俺が確認すると大量にハチミツが無くなっていた。
使いすぎだろ!?俺が作っているところいつも見てたよな!?
とりあえず俺がジュースを作って、全員無事に復活した。どうやらリリーたちに料理をさせたのは、アウラさんらしい。
「ごめん…タクト」
リリーたちが謝ってくる。怒れないよな~これは。
「いいよ。でも料理がしたいときは俺に話してからにしてくれ。作り方教えてあげるから」
それを聞いて大喜びのリリーたち。
「うんうん。いい召喚師してるわよ。タクト君」
「姉さんは反省してください!」
「…はい」
アウラさんのせいとはいえリリーたちが迷惑かけたからな。ご飯をご馳走する。
「ご馳走様なのじゃ」
「話には聞いていましたがとても美味しかったです」
リーゼ様とアンリ王女様の口にあったみたいだ。良かった…流石に王族相手には自信が無かったからな。
さて、本題は昨日の悪魔についてだな。リーゼ様が聞いてくる。
「昨日悪魔と戦ったそうじゃな?」
「はい。ネビロスという名前でゾンビを召喚してきました」
「ぬ…ゾ、ゾンビか…」
あー…普通ゾンビは苦手だよな…しかもリアルだったし。話し手がオリヴィエさんに変わる。
「その悪魔がなんと言っていたかもう一度聞かせてくれますかな?」
「はい。死霊の呪いはいまだ解けてはいないと」
「改めて聞くと不吉ですな」
「皆様は何かご存じですか?」
全員考えるがどうやらわからないみたいだ。アンリ王女様が話す。
「お父様たちにも話を聞いていただきましたが心当たりがないそうです。しかし何かの儀式をしていたと言う話と合わせると我が国でも放置できる問題ではないことは明らかという話になりました」
「しかし教会を根城にしていたことを考えると調査だけでも大変です。すべての場所が怪しくなりますから」
教会でダメならそうなるんだろうな。そしてレギンさんが重要なことを話してくれる。
「教会には元々わたし以外にもたくさんのシスターがいました。ですが生け贄にされたものや別の神父に引き取られていったものがいます」
これって他の教会に他のワルキューレがいるってことか?するとアンリ王女様が申し訳ない様子だ。
「それについてはどこまで協力出来るかわかりません…我が国の教会はすぐに調査いたしますが」
「他の国までは無理でしょうな…しかし悪魔を倒せる実力に馬という移動手段がある冒険者がいるなら話は別ですな」
オリヴィエさん、裏切ったな!そんなこと言われたら、教会を探すことになるじゃないか!しかもそこでは有名な悪魔と戦闘…勘弁してくれ。そう思っていたら、猛攻撃にあう。
「おぉ! 確かに冒険者ならば問題ないな!」
「可愛いドラゴニュートやエルフ、セリアンビーストもいるしね」
「実力的にも大丈夫だと思います」
「よろしくお願いいたします。タクトさん」
絶対全員でこのシナリオ考えただろ!ぐっ…逃げ場がない…
「わかりました…見付けたら調査してみます」
「ありがとうございます! タクト様」
男は女の笑顔に弱い生き物である。レギンさんの笑顔を見て、やる気が出ていている俺は単純なんだろうな。
と後聞き忘れていたことがあったんだった。
「ネビロスが戦闘時に本を出してきたんですが、それについて何か知っていますか?」
それを聞いたレギンさんを除いた全員が驚く。
「魔道書を使われて無事だったの!?」
あれはやはり魔道書だったのか…
「危険に感じたので、使われる前になんとか倒しました。ですが結局、どういったものだったのか気になってしまいまして。よろしければ教えてくれませんか?」
俺が聞くとアンリ王女様が教えてくれる。
「大丈夫ですよ。魔道書とは魔法を記した書物のことです。戦闘については、実際にお見せしましょう」
アンリ王女様が一冊の白い本を取り出す。そして本を離すとその本が浮いた。おぉ!
「魔道書の利点はご覧の通り両手が自由に使えることです。そして…ヒール」
アンリ王女様がヒールを唱えると魔道書がめくれ、ヒールが発動する。
「このように魔法を唱えると魔道書が自動で詠唱してくれます」
つまり術者が詠唱しないでいいってことか!?超便利じゃん!
「杖も使えるので、魔法の連続使用が出来るんです」
マジで!?は!?もしネビロスに使われていたら、俺たちはゾンビとネビロスの魔法に晒されていたってことか?怖っ。止めて正解だった。
「因みに魔道書を作るのは非常に難しいです」
え?難しいの?だって図書館にいっぱい本あるよ?
「あれは国が提供している紙で作られています」
「契約書もギルドが紙の値段を負担してるんだけど、本来紙は物凄い高級品なのよ」
な、なんだってー!?
「えーっと、因みにおいくらくらいでしょうか?」
「一枚だけでうちの騎士たちの武器一式が揃うくらいでしょうか?」
ふざけんなー!たった1枚でその値段はありえないだろう!まぁ、魔道書は杖とは比較にならないから高いのは納得するわけだが、紙一枚でその値段って…先は遠いな。