#1111 シャムハザ戦と夢魔の魔神域
恋火と和狐の進化してからの獣化情報とノワの竜化情報がないということで今回公開します。遅くなり申し訳ございませんでした。
俺が回復して貰っているとシャムハザが復活する。ミカエルの秤はその手にはなく、代わりに紫電の槍を両手に持ち、周囲に六つの魔導書を剣と共に展開した。
「やってくれましたね…ですがここからは私本来の戦い方をさせて貰うとしますよ!」
一斉に魔導書から魔法が放たれる。どうやらそれぞれの魔導書は属性を表しているらしい。みんなが妨害や破壊を試みるが数が多すぎる上に空を飛び回りながら、使って来るから狙いが定められない。
しかも融合魔法まで使って来た。ただ言いたいことがある。
「俺たちを狙いすぎだろうが! ここ、何も関係がない所だぞ!」
取り敢えずセチアたちが結界で守ってくれている間にブランを再召喚して、状況と万が一に備えてミカエルの秤の事を説明した。因みにアリナの封印効果はいまだに継続していた。それだけ強力な武器って事なんだろうけど、面倒なことになった。
そして他にも厄介なことがある。それがシャムハザ・ネフィリムだ。リリーたちが相手をしているのだが、いまだに落とせていない。と言うのも思った以上に空を自在に飛んでおり、空飛ぶ巨人の恐ろしさを思い知っているところだ。
何せリリーたちが武器で攻撃しようとしてもまずリーチが長い。シャムハザ・ネフィリムの手のほうが先に攻撃が届いてしまうのだ。しかも破壊の加護と巨人の加護があるらしく、みんなが下手に近付けないでいる。
こうなると遠距離攻撃か同じ大きさで戦うのが有効となるが遠距離攻撃は多重障壁が塞がれ、身体が大きな召喚獣で戦いを挑もうとするが機動力で負けてしまっている。完全に一対一の状況を作れているのはストラとジークだが、ストラは相性が悪そうだ。まぁ、空飛ぶヘラクレスのような敵を相手にしていてはそうなるのもしょうがないところだろう。
一方、他のところのみんなも大苦戦している。
「くそ! しぶとすぎるぞ! こいつ!」
「腕を斬っても、すぐに復活されるし、どうする? シフォン?」
「ダメージは通っているし、このまま押せば勝てると思うけど、嫌な予感がするね。見て、ずっと回復エリアを狙っているのがいる」
「本当ね。他の敵が手薄になるけど、先にあいつを倒しましょうか」
この判断が吉と出る。回復エリアの生命力が半分になると突如シャムハザ・ネフィリムが自爆体勢となった。
「そういうこと! 自爆で一気に破壊するつもりね!」
「早く伝えないと大変な事になるよ!」
「あいつのとどめは任せろ! 消し炭にしてやるぜ! 聖剣解放!」
アーレイのエクスカリバーの一撃で難を逃れた。
「どんなもんよ。ってあれ?」
シフォンたちは抜かれてしまったシャムハザ・ネフィリムに既に向かっていた。そして俺たちにもその情報が来るのだが、シャムハザの魔法攻撃がある状態でシャムハザ・ネフィリムが自爆体勢になってしまう。
そしてリリーたちは完全に先に進もうとしているシャムハザ・ネフィリムたちに注意を逸らされていた。完全にしてやられた状態だが、この状態でも一発逆転の手はある。
『イクス! サテライトキャノンであいつを消し飛ばしてくれ!』
『イエス、マスター! サテライトキャノン、敵を殲滅します!』
戦闘前に飛ばしていたサテライトキャノンが自爆体勢となったシャムハザ・ネフィリムに直撃する。普通ならこの一撃で東エリアは終わっているだろうが味方の攻撃は無効と言うゲームシステムのお陰で助かった。
「エクスマキナの攻撃ですか…本当に厄介な召喚師ですね!」
俺に向かって紫電の槍を投げ付けて来たがブランがブリューナクで撃ち落とすとシャムハザの背後に空間歪曲が発生し、リビナの蛇が襲い掛かるがシャムハザの光の剣に斬られる。
「ちぇ…ダメか…おっと」
逆にシャムハザは空間歪曲を使って、リビナを攻撃するがリビナは躱す。するとシャムハザがリビナを紫電の槍で貫くが幻となって消えると俺の隣に現れた。
「危ない危ない。さて、タクト」
「あぁ…やるぞ! リビナ」
グリゴリの堕天使は結局のところ性欲が原因で堕天使となっている。人間に知識を与えた罪となっているが結局彼らは人間の女性に恋をしたのが原因なのだ。ならばやはりリビナとは相性が悪いと判断した。
「「マリッジバースト!」」
ピンクの光の柱が発生し、俺は首と両手に白蛇がいる姿で降臨する。
名前 タクト 究極の召喚師Lv22
生命力 323→615
魔力 646→1212
筋力 435→779
防御力 240→490
俊敏性 463→865
器用値 482→874
スキル
魔拳Lv50 蹴技Lv45 杖Lv50 片手剣Lv50 槍Lv45
鞭Lv40 刀Lv50 二刀流Lv42 催淫爪Lv33 飛翔Lv42
軍略Lv29 恩恵Lv8 念動力Lv44 神気Lv32 神瞳Lv50
魔眼Lv23→魅了の魔眼Lv23 神障壁Lv17 詠唱破棄Lv45 呪滅殺Lv18 神魔毒Lv29
弱体毒Lv20 暗転Lv7 色欲Lv49 精神誘導Lv31 罠設置Lv5
魅了吸収Lv49 魔力支配Lv34 魔力切断Lv48 魔法破壊Lv23 空間跳躍Lv17
空間歪曲Lv23 空間索敵Lv25 天耳通Lv27 他心通Lv27 第六感Lv44
天言Lv34 神感覚Lv48 空虚Lv29 自動防御Lv25 空振Lv17
吸収Lv27→影吸収Lv27 多連撃Lv33 召喚魔術Lv50 封印魔術Lv45 ルーン魔術Lv42
阻害無効Lv30 騎手Lv55 錬金Lv33 採掘Lv41 伐採Lv42
解体Lv68 鑑定Lv59 識別Lv68 疾魔法Lv27 炎魔法Lv20
地魔法Lv24 海魔法Lv24 暗黒魔法Lv30 神聖魔法Lv33 雷魔法Lv62
爆魔法Lv63 木魔法Lv44 氷魔法Lv52 時空魔法Lv70 獣魔魔法Lv19
遅延魔法Lv30 連続詠唱Lv50 影潜伏Lv18→闇潜伏Lv18 影移動Lv12→闇移動Lv12 金縛Lv25
瘴気Lv21 復活Lv15→強化復活Lv15 超集束Lv17 全反射Lv8 魔王障壁Lv25→魔神障壁Lv25
夢幻Lv23 魔素弾Lv32 消滅弾Lv21 死風Lv15 黒雷Lv19
雷霆Lv1 雷轟Lv1 黒雨Lv2 遊泳行動Lv36 転瞬Lv37
心眼Lv36 無我Lv34 叡智Lv33 料理Lv54 釣りLv23
夢幻回廊Lv14 夢幻泡影Lv24 黒霧Lv24 高速再生Lv22→瞬間再生Lv22 シンクロLv39 エンゲージLv30
超連携Lv45 絶対防御Lv8 魔神域Lv1 魔王技Lv21→魔神技Lv21 魔王魔法Lv17→魔神魔法Lv17
魔王覇気Lv27→魔神覇気Lv27 魔王波動Lv28→魔神波動Lv28 大気波動Lv1 冥波動Lv8 魔素解放Lv21
魔素化Lv18 耐性無効Lv22 淫獄Lv40 擬似魔神化Lv7→魔神化Lv7 巨人の加護Lv34
魔王の加護Lv23 淫魔の加護Lv30 アテナの加護Lv29
因みに服装は裸にマント姿で凄く恥ずかしい上に肌に直接蛇がいるから感触がダイレクトだ。武器は手に近衛、腰には星霊海蛇の鞭と爆発蛇の鞭がある。周囲には俺とリビナの魔導書四つが展開されている。
『大丈夫だよ。タクトは鍛え抜かれた体をしているんだからさ』
『取り敢えず鍛え抜かれた体をしている人間全てが身体を見せる事に恥ずかしさを感じないということには異議を言わせてくれ』
きっとマッチョな人でも体を見せたくない人はたくさんいると思うんだよね。しかも俺の場合はちょっと運動していた程度の中途半端な体だ。余計に見せたくないがそんなことを言っている場合ではない。
「サキュバスとしてきましたか…私も舐められたものですね」
「そうかな? そろそろ戦況が動くと思うぜ?」
何せリリーたちに許可を出したからな。
「「「「竜化!」」」」
「いくで! 恋火!」
「はい!」
「「獣化!」」
今回の獣化では恋火と和狐は稲荷の斎皇女服を着た状態で降臨する。
名前 恋火 ディヴァインビースト(獣化)Lv20
生命力 288→338
魔力 373→423
筋力 502→552
防御力 200→250
俊敏性 666→716
器用値 303→353
スキル
刀Lv50 二刀流Lv50 太刀Lv26 神楽Lv4 神鎌鼬Lv40
白熱刃Lv19 炎魔法Lv18 時空魔法Lv40 獄炎Lv33 神火Lv39
炎熱操作Lv25 天耳通Lv40 他心通Lv37 天言Lv42 空虚Lv18
魔力切断Lv39 溶断Lv40 虚空切断Lv24 空間歪曲Lv9 空間跳躍Lv18
天鎧Lv22 気力装甲Lv22 内気功Lv16 瞑想Lv7 気力融合Lv12
神感覚Lv30 戦闘高揚Lv30 無我Lv26 念動力Lv23 神気Lv30
仙気Lv43 仙術Lv42 陽炎Lv29 神道魔術Lv28 遮断結界Lv7
神岩結界Lv1 神速Lv28 心眼Lv34 重圧Lv15 空振Lv20
熱波Lv16 烈日Lv1 爆心Lv27 焼尽Lv12 転瞬Lv42
神足通Lv42 妖術Lv26 血醒Lv18 料理Lv35 浄炎Lv26
紅炎Lv43 鬼火Lv22 炎波動Lv7→溶波動Lv7 神波動Lv1 先制Lv31
聖療Lv3 天撃Lv5 煉獄Lv5 日光Lv1 放射熱線Lv14
炎分身Lv17 ゴッドブレスLv22 太極ブレスLv10 狐技Lv31 荒魂Lv5
神域Lv1 神降ろしLv3 光球Lv1 神の加護Lv20
名前 和狐 ディヴァインビースト(獣化)Lv20
生命力 296→346
魔力 552→602
筋力 306→356
防御力 219→269
俊敏性 454→504
器用値 394→444
スキル
杖Lv8 扇Lv30 神楽Lv22 念動力Lv15 獄炎Lv30
神火Lv35 炎熱操作Lv27 指揮Lv8 天耳通Lv33 他心通Lv31
神足通Lv34 天言Lv35 連続詠唱Lv30 同時詠唱Lv30 魔力支配Lv16
魔力回復Lv20 多連撃Lv23 封印魔術Lv28 陽炎Lv37 神感覚Lv22
神速Lv20 時間遅延Lv20 熱波Lv8 爆心Lv10 焼尽Lv8
空間跳躍Lv8 空間歪曲Lv6 空間支配Lv1 超連携Lv2 炎魔法Lv25
神聖魔法Lv21 爆魔法Lv42 時空魔法Lv42 惑星魔法Lv4 神道魔術Lv41
遮断結界Lv9 神岩結界Lv1 魔障壁Lv10 弱化毒Lv1 神魔毒Lv1
毒域Lv1 妖術Lv30 霊符Lv18 式神Lv18 護符Lv18
神気Lv24→Lv25 仙気Lv36 気力融合Lv1 仙術Lv38 飯綱Lv31
金縛Lv19 鬼火Lv26 裁縫Lv40 革細工Lv27 料理Lv38
浄炎Lv22 紅炎Lv27 炎波動Lv9→溶波動Lv9 聖波動Lv11→神波動Lv11 天撃Lv9
煉獄Lv6 火砕流Lv1 放射熱線Lv15 炎分身Lv13 血醒Lv13
ゴッドブレスLv23 太極ブレスLv10 狐技Lv32 神降ろしLv2
神域Lv1 核爆Lv1 和魂Lv1 神の加護Lv14
これで中央付近に向かっていたシャムハザ・ネフィリムたちの相手をリリーたちとプレイヤーに転移で送られた大型の召喚獣が対峙する。ただどうやらオーバー戦力だったらしい。シャムハザ・ネフィリムたちの前に立ち塞がったのはノワだ。
名前 ノワ ドラゴニュート・アセプトLv19→ダスクドラゴン・ディザスターLv19
生命力 315→375
魔力 552→612
筋力 248→308
防御力 213→273
俊敏性 271→331
器用値 428→488
スキル
影創造Lv40 飛翔Lv48 竜爪Lv1 竜尾Lv1 呪滅殺Lv33
呪撃殺Lv9 影探知Lv34 影移動Lv26→闇移動Lv26 影死針Lv32 影潜伏Lv40→闇潜伏Lv40
影封陣Lv35 影召喚Lv31 影分身Lv22 魔障壁Lv18 空間歪曲Lv16
他心通Lv27 第六感Lv29 神感覚Lv30 空虚Lv32 無我Lv17
迷彩Lv26 神瞳Lv40 魔竜眼Lv35 即死の魔眼Lv1 堕落Lv23
魅了吸収Lv22 魔力回復Lv18→魔力超回復Lv18 無波動Lv1 冥波動Lv33 竜鱗装甲Lv21
暗黒魔法Lv18 氷魔法Lv39 時空魔法Lv40 譲渡Lv3 高速再生Lv32→瞬間再生Lv32
獄炎Lv22 超集束Lv16 冥気Lv36 竜気Lv30 瘴気Lv20
復活Lv10→強化復活Lv10 夢幻Lv7 冥府鎖Lv11 黒霧Lv37 黒雷Lv21
黒雨Lv3 死滅光線Lv20 牢獄Lv15 魔素化Lv18 物質化Lv1
身代わりLv23 斥力操作Lv16 引力操作Lv20→引力支配Lv20 重力操作Lv19→重力支配Lv19 吸収Lv25→影吸収Lv25
黒死病Lv28 弱化毒Lv1 神魔毒Lv3 疫災Lv1 神感覚Lv35
死の宣告Lv19 自動防御Lv1 刑罰Lv14 死風Lv15 消滅弾Lv18
魔素解放Lv17 逆鱗Lv7 竜技Lv38 ドラゴンブレスLv29 竜魔法Lv24
惑星魔法Lv6 黒星Lv2 常闇Lv1 料理Lv25 耐性無効Lv1
加護無効Lv1 王の加護Lv3 冥邪竜の加護Lv34
ダスクは日本語では宵を意味する。宵は日暮から夜中までの間を指す。つまり夜を告げるドラゴンと言いたいわけだ。そこに災害を意味するディザスターがあるから災害による夜を告げるという感じになるだろうか?
そんな竜化したノワから影が広げるとその影から次々、ドラゴンが現れる。この影のドラゴンに対して、シャムハザ・ネフィリムたちは日光を放つが影吸収の効果で日光が吸い込まれる。この影吸収は武器でも魔法でもなんでも吸い込んでしまう厄介なスキルだ。しかも竜化したのは自動防御の効果で影が自動でノワを守る。影がないと使えない弱点はあるが非常に厄介なスキルだ。
次々影のドラゴンたちがシャムハザ・ネフィリムたちに噛みつくと抑え込む。
『…疫災』
ノワから膨大な量の黒い霧が全範囲に展開されると動けないシャムハザ・ネフィリムたちはこれを浴びてしまう。すると感染症、神魔毒、全ステータスの弱体化、呪いの状態異常になる。その代わりにダメージの効果はないのだが、受けると致命的だ。
その証拠にもう影のドラゴンたちの拘束からシャムハザ・ネフィリムたちは抜け出せない。こうなるとじわじわ死んでいくだけだ。それなのに一緒に攻撃しているスキアーと叢雲はちゃっかりしている。
『やりすぎだよ! ノワちゃん!』
『…ここはノワの領域。リリーたちは他の所に行ってきて』
『そうですね…行きますよ。リリー。他のところに行かないと竜化した意味がないです。というか恋火たちはもう先に行ってますよ』
『そうだね! 急ごう! みんな! えーっと…どっちに行けばいいの? イオンちゃん』
『それぐらい自分で考えて下さい』
結果リリーはイオンの後をついて行くことになる。どっちが姉か本当に分からない。ノワたちが暴れている間にも俺たちは戦闘をしていた。
俺たちは鞭で光の剣とぶつかり合い、魔導書同士で魔法がぶつかり合うと俺たちは押し負けるが影吸収でガードするとシャムハザが構える。
「荷電波動!」
「魔神波動!」
ぶつかり合うと互角に終わる。すると再び魔法の撃ち合いになり、飛んで来る紫電槍を鞭で撃ち落とす。ここでシャムハザは現状を見る。
「確かに戦況はよくありませんね。ですが…あなたを倒せば戦況は変わります!」
「それは他の人間や天使たちを甘く見すぎだろ…」
一度崩れた戦況を立て直すのは簡単じゃない。それを許すみんなではないはずだ。それを証拠に昨日決めた通りにチロルたちが切り札を導入している光を確認出来た。これで戦闘面での負けはほぼないだろう。後はこいつをどうするかだ。ここでリビナが聞いて来る。
『そろそろやっちゃっていいかな?』
『あぁ…一気に行くぞ! リビナ!』
『了解! いっくよー! 魔神域!』
リビナの魔神域が展開されると空がピンク色に変化し、フィールドがピンクの霧に包まれる。
「魅了の領域ですか…ですがそのような物は私には通じませんよ! 元々それが原因で堕天しましたからね!」
自慢するところじゃない。ここでメルたちが奇襲を仕掛けた。リリーたちがメルたちの分のシャムハザ・ネフィリムを引き受けた結果だ。さて、ここからリビナの魔神域のもう一つの本領が発揮される。
「堕天技! セブンス・フォールン!」
巨大な剣が天空に七つ出現すると俺たちに向けて放たれる。更に冥府鎖が全員に使用される。だが、縛ろうとした瞬間、幻となって、俺たちは消えると巨大な剣も不発する。
「また…く!」
「おぉおおおお!」
「やぁあああああ!」
鉄心さんの攻撃とシフォンの攻撃に耐えるが空振で吹っ飛ばすのが精一杯だ。それを見た俺はシャムハザが俺と同じタイプであることを確信する。魔法使いなのに槍や剣を使う万能型。逆に言うとそれは突出した物がないと言える。
万能型の弱点はまさにそこだった。それが目に見える形でシャムハザを追い詰める。全てのステータスが平均的だからこそただ一つの道を究めようとした人には遠く及ばない。そしてシャムハザが苦しめているもう一つの要因が俺たちだ。
『く…やってくれましたね! あの男!』
シャムハザは魔導書と光の剣の援護でなんとか持ちこたえようとするが攻撃したメルたちは悉く幻となって消えてしまう。ただ時々当たることもある。
リビナの魔神域の効果は領域内の敵を魅了にすることと魅了状態の敵の生命力と魔力の吸収、そして現在シャムハザを苦しめている幻を自在に作り出す効果だった。まさに夢魔に相応しい魔神域だ。
つまり俺たちはシャムハザの攻撃を全部外すことが一応可能なのだが、敢えてそれをしていない。なぜなら全部外れてしまうならそれを前提に戦略が練られてしまうからだ。
しかし時々当たるとなると幻じゃない可能性まで考えないと行けない。ただし攻撃が外れることの方が多い。この駆け引きがシャムハザに隙を生み、みんなが次々攻撃を決めている。
「く…それなら」
「やらせるか!」
空間歪曲から次々俺たちの蛇が襲い掛かる。シャムハザが迎撃に動くと幻と消えて、本命の空間歪曲から現れた白蛇たちがシャムハザの羽や首に噛み付いた。
「蛇だけじゃなく、空間歪曲までもか! おのれ!」
空間歪曲の幻まで作ったことで完全に本物の攻撃と思ったようだ。しかしここでシャムハザは俺たちの蛇を全て斬り裂く。
「堕天使域!」
これで俺たちの魔神域が上書きされて、俺たちは全スキルを封じられて、全員が魅了状態になる。当然ここで俺とリビナのマリッジバーストも解除される。
「終わりです! 堕天使魔法! エロヒム・ジャッジメント!」
「やらせないよ! 魔神域!」
「な!?」
ここで魔神域を使ったのはアスモデウスグリモワールを持っているシフォンだ。シャムハザの魔神域が上書きされると俺たちの魅了は無くなり、代わりにシャムハザが魅了状態になると生命力と魔力がアスモデウスグリモワールに吸収され、肝心の堕天使魔法は不発してしまう。
ここでシャムハザはまたミカエルの秤を取り出す。俺たちと同じ状態になれば危機を脱すると考えたんだろうが甘いな。ミカエルの秤の対策はもう取らせて貰っている。
「「影分身! はぁあああ!」」
ミカエルの周囲に暁と霰が現れ、一斉に苦無を投げた。それを見たシャムハザは翼を羽ばたいて暴風壁を発生される。すると一つの苦無が暴風壁を突破して来た。
「な!? く!」
咄嗟にミカエルの秤で苦無を弾こうとしたのがシャムハザのミスだった。
「強奪! もーらいだよん!」
苦無に変化していた銀がミカエルの秤を奪った。俺が全強奪で一度は手元から無くなった事を教えて、もしもの時の為に備えていて貰っていた。因みに暴風壁を突破したのは銀が契約した妖怪、鎌鼬によるもので、風属性のスキルや魔法を銀は効かなくなっている。しかも厄介な多乱刃も自動で守ってくれるそうだ。
「この! 返ぐぅうう!?」
「隙だらけだぜ。インテリ天使! 筋肉を知れ!」
格闘家のマッチョがシャムハザの背後から関節を決めると空を蹴り、地面に落下するとそこにはもう一人の格闘家がいる。
「「オリジナル技! ブラザーギロチンラリアット!」」
関節を決められて、落下しているシャムハザの首に勢いよく跳躍した格闘家のラリアットが決まった。そしてそのままの勢いで地面に叩きつけられる。この技はアマゾネスが使っていた技を更に威力を求めて改良した技らしい。普通なら関節と首が終わっているだろうな。
この隙に他のみんながシャムハザの魔導書を消し飛ばした。すると地面に叩きつけた格闘家に光の剣が飛んで来て、回避するとシャムハザが起き上がる。
「まだ…ですよ! 逆鱗! おぉおおおおお!」
決死のシャムハザは倒れたままの俺を狙って来た。
「死ね! 召喚師! テンペストペネトレイター!」
テンペストペネトレイターは槍武技の最高技で雷と暴風を発生させながら、雷速で敵を貫く技だ。欠点としては一直線にしか動けないが雷と暴風も攻撃範囲となり、直線上の敵を根こそぎダメージを与える技となっている。
それが動けない俺を貫くとまた幻となって消える。
「な…がは!?」
地面から真っ赤になった十のダマスカスワイヤーがシャムハザを体を貫いていた。アラネアの罠設置だ。
「残念でしたね。幻はリビナさんの専売特許ではないんですよ」
俺は転移で移動されていて、セチアが俺の倒れていた所に俺の幻を作ったのだ。後はそこに罠を貼るだけだ。
「まだ…ですよ! せめてあなただけでも! アザゼルのためにー-ー!」
「タクト君!」
「やらせん!」
みんなが助けようとするが攻撃した瞬間、シャムハザは光化で攻撃を躱し、俺に紫電の槍で突きを放つ。
「貰った!」
「パパはやらせません! 妖精技! フェアリープランク!」
「死…ん? 痛くない?」
「は?」
俺とシャムハザとの間に沈黙が流れる。それもそのはずでシャムハザが俺を突いた武器が紫電の槍からネギに変化していた。
ルーナが使ったフェアリープランクの効果は何が起きるか分からない謎めいたスキルだ。現在確認されている効果ではいきなり地面に穴が出来た結果、躓いて転んだり、突然丸太が現れて、脛を強打してしまうなどが確認されている。
今回、発生したのは俺が持ち込んだネギと相手の持ち物を入れ替える効果だったらしい。倒れている俺にネギで突いているシャムハザという謎の状況の前に二人して思考が止まっているとメル、シフォン、鉄心さん、カイがシャムハザを武器で貫いた。
ありがたいんだけど、とてもシュールな絵面だなと思った。
「ぐふ!? 最後の…最後まで…本当に…やられ…ました…よ」
シャムハザは最後に笑顔を見せて消えるのだった。俺にはそれが戦いではなく、自分が考えた作戦が負けたと認めているように見えた。そしてシャムハザが持っていたネギが地面に転がる。俺はルーナから事情を聞く。
「これ…俺が持ち込んだネギだったのか?」
「は、はい…そう言う技なので…あの…パパ?」
一度も使っていない新品のネギなんだけど…流石にこれはショックだ。
「どうしてそこまでショックを受けるかな? 気にしないでいいよ。ルーナちゃん。ネギなんて買えばいいんだし」
「そうだぞ。タクト。ネギのお陰で死なずに済んだんだ。よかったじゃねーか」
新品の食材が無駄になった悲しみをなぜ理解できない!そりゃあ、助かったけどさ。まぁ、気持ちを切り替えてルーナにお礼を言った。ルーナのお陰で助かったんだ。ちゃんと褒めてあげないとな。
その後リリーたちとチロルたちがシャムハザ・ネフィリムたちを倒して、インフォが来る。
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント4ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント4ptを獲得しました』
『イオンの空間歪曲がレベル10に到達しました。空間歪曲の数が二つに増加しました』
『ノワのレベルが20に到達しました。成長が可能です』
『リビナのレベルが20に到達しました。成長が可能です』
『蒼穹の竜技のレベルが10に到達しました。竜技【ドラゴンテイル】を取得しました』
『コーラルの炎魔法のレベルが10に到達しました。炎魔法【ファイヤーストーム】、【ラーヴァフロー】を取得しました』
流石にレベルが上がったか。レベルが上がってなくてちょっと心配してたんだよね。まぁ、シャムハザのレベルで一レベルしか上がらないのは納得がいかない所だ。それだけ強くなってきたってことなんだけどね。
これで俺の残りスキルポイントは223ptとなり、ステータスポイントはいつも通り俊敏性に回した。シャムハザの分まで万能型街道を突き進むとしよう。俺が勝つことでシャムハザが選んだ道は正しかったのだと思って貰えたら嬉しいな。




