#1108 アイアースの大盾と堕天使のチャリオット
俺たちがご飯を食べていると情報が入って来た。
メカ昆虫はメルたちも確認したらしい。この事からポイント上位者の島に登場している可能性が高いそうだ。まだリリーたちがご飯を食べているので、今のうちに今日の聖杯を使おう。
今日はクリュスの為に現時点で最強の大盾を出すことにした。それがこちら。
アイアース・アスピス:レア度10 大盾 品質S+
重さ:150 耐久値:4500 防御力:5000
効果:強行、先制、英気、英雄障壁、多重障壁、絶対防御、堅固、大気壁、物理耐性、魔法耐性、衝撃無効、透過無効、破壊無効、伝説解放
英雄大アイアースが使っていたタワーシールド。青銅の盾の上に7枚の牛革を張った盾で動く壁、要塞とまで喩えられた伝説の盾。どんな武器でも破壊することが叶わなかったとされている。
満月さんたちが現在装備している武器だ。これをクリュスに装備させる。伝説上では説明の通りでこの盾に勝てた武器も人も存在していない。そもそも大アイアースの死因は自殺なのだ。
大アイアースはアキレウスに次ぐ実力者と言われており、自殺されてしまったのは大きなミスと言える。その犯人がアテナなのだが、彼女には彼女の考えがあったんだよね。
因みに満月さんたちのアイアース・アスピスは改造されて、これよりも強くなっている。それがこの武器が現時点で最強とされている所で牛革をゲームで手に入る伝説の獣の革に張り替える事で強化することが可能らしい。
更に満月さんたちが愛用している理由が透過無効だ。盾をすり抜けて来る透過に対処できるこの盾は注目されるのは当然と言えた。
俺ももちろん強化をする予定だが、それはまた今度だ。
リリーたちが食べ終わったことで俺たちが島を落としに向かうと新しい敵がやって来た。
フォールンペガサス?
? ? ?
フォールンエンジェルライダー?
? ? ?
ネフィリム?
? ? ?
堕天使のチャリオット部隊だ。こいつらが超連携で突っ込んで来ていた。
「死ね!」
「させないよ! うぎぎ~! やぁ!」
超連携の突進をリリーはアルカディオンで止めるとレガメファミリアで横からぶっ飛ばした。するとプレイヤーが落とした島に勢いよく墜落した。フォールンエンジェルライダーは死んだな。
「デザート…」
「負けたよ…」
「やったー!」
リリーが喜びを爆発させて、空で側転をし出した。今は戦闘中なので、遊びに構って上げる時間はない。落下中の島を見る。
「さて、あいつはどうするべきか」
ネフィリムは墜落の瞬間、島に飛び降りていた。そして岩を投げて来ている。すると話を聞いたプレイヤーが教えてくれる。
「あ、どうやら墜落させた人なら経験値とポイントが入るみたいですよ」
「ならほっといて、次の島に行くか」
「アァアアー!? アァ! アァ!」
離れていく俺たちの見たネフィリムは地団駄を踏むと一生懸命岩を投げるが既に届く距離ではなくなっており、ネフィリムは落下していく島と運命を共にするのだった。
その後も行く手を阻むようにフォールンエンジェルライダーたちがやって来た。これを見た俺は神剣グラムを取り出す。
「迎え撃つぞ! ヒクス!」
「ピィ!」
「死ね! 超連携!」
敵は超連携を使って、突進してくる。更に後ろに乗っているネフィリムが岩を投げて来た。対する俺たちは岩を躱して普通の状態で突進していく。そしてぶつかる手前でヒクスに合図を送るとヒクスは逆さま状態でフォールンエンジェルライダーたちの下に回った。
「何!?」
「白熱刃!」
フォールンペガサスとフォールンエンジェルライダーの真下から白熱刃が貫き、更に馬車とそれに乗っているネフィリムにまで両断した。ヒクスに合図を送り、元に戻ると馬車からの雷を喰らってしまった。
「く…成功したけど、厄介な馬車だな。ん?」
「「「「白熱刃! ぎゃ!?」」」」
みんなが俺の真似をしていた。どうやら変な影響を与えてしまったらしい。そして俺と同じように雷を受けていた。恥ずかしいからそこは真似して欲しなかった。
「タクトが出来ることはリリーたちにも出来るもんねー」
「そうだな…それなら!」
今度の俺は横から馬車とフォールンペガサスを繋ぐ轅という箇所を破壊して見せた。すると馬車とフォールンペガサスは切り離されて、落下する。その時に雷を受けるがグラムで切り裂いた。完璧だ。
「これが出来るか?」
「「「「簡単!」」」」
結果、切り離されて、落下していくネフィリムが続出した。しかもリリーたちはアリナとゲイル、ロコモコに雷の対処をお願いしていた。うん。いい指示だ。一方リアンとサフィのコンビは普通にぶつかり合って弾き飛ばしていた。
まぁ、巨大化したサフィとペガサスとでは質量が圧倒的に違い過ぎだ。例えるなら車とスペースシャトルぐらいの差だろうか?一応サフィにもダメージは発生しているかな。
「ち、違いますよ! サフィさん!」
「ぼえ~?」
ダメなの?って感じだ。まぁ、わざわざ俺の様にする必要は無い。ようは勝てば何も問題はない訳だからな。ただリアンは俺のように出来ないというレッテルをリリーたちから貼られることになった。
「わ、私だってちゃんとできます! ほら!」
普通に一人で出来る所を見せたが出来ればサフィと再挑戦して貰いたかった。
「「「「アァ~…」」」」
一方、落下して死ぬしかないネフィリムがとても悲しそうな顔をしていた気がするがそもそも一対一で戦って来ない敵に情け容赦は不要だ。さて、実験はこの辺りにしておこう。
「ちょっとスピードを上げていくぞ。グレイたち、援護を頼む」
「「「「ガウ!」」」」」
グレイたちに外にいる敵を任せて、次の島を落とすとみんながボロボロであることに気が付き、回復エリアに戻っているとフォールンエンジェルライダーの襲撃を受ける。撤退中の敵を狙うのはいい判断だ。
ただし回復エリアには防衛しているみんながいる。超連携で飛び込んで来たフォールンエンジェルライダーたちは月輝夜の魔素の手で掴まると地面に墜落させられる。この結果、ネフィリムが島に上陸してしまったが地面から生えた木の柱がネフィリムを瞬時に閉じ込める。
ミールの木牢だ。ネフィリムは暴れるが木牢のいい所はこの状態で攻撃が可能である所だ。即ちディアンの毒域が地面に広がっても逃げ出せない。なんとかネフィリムも木牢を破壊するが、ミールが新しいのを作り、毒域に沈んだ。
この後もフォールンエンジェルライダーの襲撃が続くが月輝夜たちからすると攻撃する的が多くなり、直線的に突っ込んで来る形だからカウンターのいい的になっている。空をうろちょろされるより、こっちのほうが月輝夜たちには向いているみたいだ。
ただ他の堕天使たちとは相性があまり良くない。そもそも最終進化クラスになると多少のダメージを受けても突っ込んで来ている。
それはフォローしているのが白夜と蒼穹だ。特に蒼穹は宝珠を使った攻撃が出来る。このため、動きが速い敵にも対応することが可能だ。しかも蒼穹は空虚スキルで宝珠を消して攻撃をしている。敵からすると透明の迎撃装置があるような物だ。
ただ蒼穹たちでも全部をカバーすることは出来ない。そこをプレイヤーたちがフォローしてくれていた。後は遮断結界持ちが入れ替わり、地上部隊とプレイヤーを回復させていく。
「遮断結界!」
「うん。ちゃんとできとるよ。恋火」
「あ、当たり前です! あたしだって、巫女なんですから! お姉ちゃんはあたしをなんだと思っているんですか!」
「タクトはんと一緒に戦うのが大好きな巫女はんどす」
和狐に何も言い返せない恋火だった。確かに結界はいつも和狐が担当していたからな。折角スキルを覚えているんだし、この機会に守ることも覚えて欲しい。
回復が済んだ俺たちは次の島を落としに向かうと入れ違うようにプレイヤーたちが回復エリアに入る。消耗すると今度は俺たちが回復エリアに撤退するのを繰り返しているとインフォが来る。
『ファリーダの二刀流のレベルが15に到達しました。二刀流【カウンタークロス】を取得しました』
『千影の太刀のレベルが20に到達しました。太刀【回天】を取得しました』
『リースの光剣のレベルが15に到達しました。光剣【ハヤブサ斬り】を取得しました』
『リースの光盾のレベルが15に到達しました。光盾【シールドアタック】を取得しました』
リースもみんなに助けられながら全力で戦闘していたようだ。
「どうだ? リース」
「あ、主様。リリーお姉様たちに助けられてばかりですが自分に出来る戦闘は出来ていると思います」
「いい答えだ」
リースの頭を撫でているとリリーたちにちゃんと休憩しないといけないと叱られた。完全に嫉妬だった。俺は指摘せずに休憩していると夜九時を迎えた。




