#1099 速さタイプの要塞島
夕飯を食べてからゲームにログインすると腹ペコのリリーたちがくっついて来た。
「「「「お腹空いたー」」」」
「そんなことを言って、二回ご飯を食べるつもりだろ?」
リリーたちがビクッとした。もうこれぐらいのことは分かるようになりましたとも。そんなわけで料理が出来るまでリリーたちを戦闘に送り出す。料理を作っているとルークがやって来た。
「なんかリリーさんたちの動きが悪くありませんか?」
「たぶんいつ俺がご飯の呼びかけるか気にしているんだろうな。昨日、目の前の敵を倒してからご飯に来るように言ったから」
「な、なるほど…なんともリリーさんたちらしいですね」
ここでルークの召喚獣のご飯担当をしているエルフがルークにご飯を手渡す。
「ほら、あんたの分よ」
「あ、ありがとう」
「別にあんたの為に作った訳じゃないわよ。ついでよ。ついで」
彼女は俺に味見とかアドバイスを聞いて来ました。ルークに教えてもいいんだろうが彼女の気持ちを優先しよう。
「いつもこうなんですよね」
「顔がにやついているぞ」
「最近ようやく軌道に乗って来たと言いますか…ドワーフと一緒に魔法剣とか作れるようになって、充実しているんです」
「チロルの召喚獣の鎧とかも作っているんだってな?」
「…えぇ、まぁ…タクトさん、意外と情報通ですね」
ギルマスを舐めたら、いかんよ。ルークとチロルとは親しい仲なのはみんな知っているから話をされることが結構あるのだ。ここでルークから相談を受ける。
「エルフの進化先か…」
「はい。普通に考えればタクトさんと違うルートを」
「そこから間違っているぞ。ルーク」
「え?」
俺は料理の手を止める。
「俺を基準に考えるのはもうやめておけ。既にルークは精霊召喚師のルートを選んで俺とは違う道を進んでいるんだ。だから俺がエンシェントエルフを選んだから別ルートを選ぶとかじゃなくて、しっかり進化をするエルフと話して、ルートを決めたほうが絶対にいい。もし俺を参考にルートを決めたとか言ったら、お前のエルフはきっと怒るぞ」
「タクトさん…そうですね! しっかり召喚獣たちと話して、決めようと思います!」
ルークはそういうと元気に飛び出していった。
「やれやれ。世話が掛かる後輩だ」
「そうですね」
セチアが現れた。
「…男の相談を盗み聞きするのは良くないぞ」
「だ、そうですよ?」
ルークの料理係のエルフがセチアの影から現れた。おいおい。
「君に聞かれるのはダメだろう…」
「そんなことはないわよ…その…ありがとうございます。私もしっかり自分の道を決めたいと思います」
そういうと頭を下げてルークの後を追っていった。
「やれやれ。世話が掛かる後輩ですね」
「真似をするなよ…って、もしかして彼女から相談を受けていたのか?」
「はい。きっとタクトさんならいいアドバイスを言ってくれるので、ルークさんがタクトさんに相談する時を狙ってました」
完全に俺は利用された形か。まぁ、これでルークと彼女が上手くいくならそれでいいか。料理が出来て、リリーたちを呼ぶとアリナが得気に言って来た。
「俺を基準に考えるのはもうやめておけなの」
ここにも盗み聞きした奴がいたか。しかも面白がっているからセチアよりもたちが悪い。
「…アリナ、皿をこっちに渡しなさい。ご飯を減らすから」
「取れる物なら取ってみろなの!」
「ほほぅ。言ったな」
俺はマモングリモワールを取り出す。
「そ、それは反則だと思うの!?」
こうして賑やかな食卓となった。ここでルインさんから呼ばれる。
「島の前方の中央付近にサバ缶たちがアザゼルの顔絵を発見したわ。どうやら島に半分のダメージを島に与えると現れる仕組みらしいわ。そのアザゼルの目の色で島のパターンが分かるそうよ」
「島にダメージを与えていいんですね…」
「禁止はされていないもの」
そうですね。そういうことをして来る運営だったよ。しかしこれはかなり危険な事になる。
「島のダメージを与えた後に例の反射で島がダメージを受けたら」
「最悪全損してそのエリアにいるプレイヤーは全滅することになるわね」
「戦い辛いですね…」
「ここの運営は力で攻略させるのが大嫌いみたいだからね」
料理を食べ終えたリリーたちは元気全開で暴れ回っているとボスの時間を迎えた。
「タクトー。まだ待たないとダメなのー?」
「敵の数が減って来ましたよ」
「…口ほどにもない」
「タクトの影から顔を出しているノワが言っても説得力がないからね?」
ここで俺たちは無力化した敵の島の上でブラッシングタイムをするという暴挙に出た。というのも一番厄介なグリゴリセラフィムをエアリーが始めて見せる宇宙魔法が炸裂したのが原因だ。
宇宙魔法のカペラは四つの巨大な球体が敵の左右に二つずつ作り出す魔法だった。これはカペラが四重連星という恒星であることが由来だと思われる。
その後、敵を挟むように動くのだが、球体が接近するとグリゴリセラフィムを障壁ごと歪に捻じ曲げてしまった。これにグリゴリセラフィムは耐える事が出来ず、爆発した。
恐ろしい魔法だったが俺は巨大な敵専用の魔法のイメージを持った。球体が接近されれば恐らく逃げ場を失ってしまうが来る前に逃げれば不発されることが可能だろう。決まれば必殺級の威力であることは間違いない。色々使い方を考えさせられる魔法だった。
更にイクスが容赦なくサテライトキャノンをぶちかましたことで大幅に時間が削減されたことで暇になった。そんなわけで空で暴れているリリーたちに目が行きがちだが、地上では黒鉄やディアンなど飛べない者が頑張って、防衛してくれているので、その功を労う事にした。リリーたちの一緒に手伝ってくれている。
『お待たせ、タクト君。落としちゃっていいわよ。ただ早速島の難易度を上げたみたい。要塞島の中でグリゴリソルジャーっていう新しい人型のロボットが登場したそうよ。火炎放射器とかキャノン砲とか使って来たらしいから気を付けて』
『了解しました』
さて、作業を中断して、落としに行きますか。
「俺たちは連戦になる。ボスと戦いたい人とこの島を落としたい人に分けようと思う。島を落としたい人、手を上げて」
圧倒的に少ない。まぁ、そうだよね。一番やる気一杯なのはユウェルだ。相性も考えて、セチア、イクス、和狐、ブラン、ユウェル、ファリーダ、グレイ、ゲイル、黒鉄、アラネア、ぷよ助、ダーレー、ミール、ディアン、クリュス、スキアー、リースで挑む。
最初の入り口をディアンがブレスで消し飛ばすと前回待っていた戦車が巻き込まれ、全員でボコボコにした。そして障害を片っ端から破壊していくとルインさんが教えてくれた敵が現れた。
グリゴリソルジャーLv60
イベントモンスター 討伐対象 アクティブ
ソルジャーというだけあって、通路を塞ぐように隊列を整えていた。するとグリゴリソルジャーの後方の敵が四連装ミサイルランチャーを構えて来た。それを見たみんなが撃たれる前に攻撃しようとしたが最初に飛び出したのはユウェルだった。
「いけぇえええ! ユウェルバスター!」
ユウェルは核爆発を起こすギミックを封じた状態のただの籠手状態のユウェルバスターでギミックのジェット噴射で突撃した。するとグリゴリソルジャーたちはまるでボーリングのピンみたいに吹っ飛ばされた。そしてユウェルは通路を曲がれず壁に激突した。なんかこのシーン、見飽きて来たな。
その後、みんなが各個撃破した。
「もう助けて貰うこと前提で飛び込んでいるわね…」
「使いこなすのが難しい武器なのは認めますがリリーお姉様のようになってはいけませんよ。ユウェル」
「情報解析完了。ユウェルはわざとやってます。マスター」
「や、やってないぞ! タク!」
顔を真っ赤にして、ユウェルは否定する。その反応からみんながわざとだと確信した。
「ユウェルはん…」
「お父様、ユウェルは洞窟が崩れた時にお父様に助けて貰ったことがきっかけで好きに」
「ク、クリュス! それ以上、言ったらダメだ~!」
「マスターの疑問に答えると幽霊船があった島での出来事です」
あぁ…黒ひげの財宝があった島で洞窟が崩れて、飛べないユウェルを抱え込んだことがあったな。
「なるほど。それで主に助けてもらう為にわざと失敗を」
「何冷静に納得しているんだ! ブラン!」
これ以上はユウェルが可哀想なのでやめて先に進むと動力室に到達する。
「ふん!」
「壁に八つ当たりは良くないわよ? ユウェル」
「わたしは壊しただけだ!」
「はいはい。ここからは強敵が来るんだから、戦闘に集中しような」
みんなが苦戦するつもりなんてない癖にという視線を向けていた。その通りで苦戦するつもりはない。何せここの敵は既にルインさんから教えて貰った情報でスピードタイプの敵と判明している。
「アラネア、ぷよ助」
「えぇ。粘着糸!」
二人がかりで粘着糸を動力室に張り巡らされていく。それが終わると和狐たちが結界で守りを固めた。これで準備が整い、陣形を取ると俺が部屋に入り、動力装置が青色に染まるとボスが現れる。
グリゴリソニックガーディアン?
? ? ?
敵は人型のロボットで背中から光の翼が生やしていた。そして両手の甲からチェーンソーのようなビーム兵器を展開する。そして情報通り俺たちと同じ数である十七体の敵が現れた。そして全ての敵の姿が消えて、俺たちに襲い掛かって来た。
しかし結界にぶつかる。まぁ、簡単には粘着糸にくっつきはしないよな。だからこっちから粘着糸にぶつける戦略を取ることにした。
「「「「シャー!」」」」
ディアンの斥力場で吹っ飛ばされたグリゴリソニックガーディアンは粘着糸に捕まる。ここでグリゴリソニックガーディアンは自分たちの状況のまずさを理解した。そして粘着糸をチェーンソーで斬り裂く形で排除に動き出した。だがそこに俺たちからの攻撃が飛んで来る。
「粘着糸!」
更に斬っても斬ってもアラネアとぷよ助が追加する。この状況で攻撃まで対処しないと行けないのはいくらスピードタイプといえど流石に厳しい。助けようと動いた者もいたけど、そこに俺たちの攻撃が飛んで来る。
こうして手をこまねいている間に動力室は粘着糸だらけになって、勝負ありだ。最後のグリゴリソニックガーディアンは頑張って、粘着糸を排除していたがぷよ助の擬態で透明になった粘着糸に気付かず、捕まるとぷよ助が接近して、食べて終わった。グリゴリソニックガーディアンは蜘蛛の狩りの恐ろしさを思い知った事だろう。
「タクトと戦っていると本当に作戦の力を思い知るわよね…」
「皆さん、結構苦戦した話でしたから余計にそう思いますよ」
「まぁ、アラネアとぷよ助が粘着糸を使えて初めて成立する作戦だけどな。黒鉄、装置をぶっ壊してくれ」
黒鉄のロケットパンチが決まると隔壁が閉じて、自爆のカウントダウンが始まる。俺は足が遅い皆を一度、召喚石に戻して、脱出する。すると外では既にボス戦が始まっていた。戦闘にだいぶ余裕を持たせていたからいいけど、中々に厳しいな。サフィの回復領域と併用して、戦闘を見守るとしよう。




