#1098 防御タイプの島と速さタイプの島
お昼を食べ終えてログインした俺はお昼はルインさんたちが用意してくれたそれぞれ好みの麺料理を食べる事になるのだが、結局みんな、それぞれ食べている物が気になって、仲良く食べ合っていた。
俺は醤油チャーシュー麵を食べているとリリーが我慢できずに動いた。
「お肉食べないなら食べてあげようか? タクト」
「残していたんだよ…ほら。みんなも」
結局チャーシューの味が染みた醤油味のラーメンを食べる事になった。因みにスープはディアンに狙われた。召喚師は辛いぜ。食べ終えた俺たちは新しいイベントの情報をルインさんから聞く。
「変化で無機物になれば事前に確認可能なんですね」
「えぇ。動力装置にtypeの名前が書かれているそうよ。今、銀たちがあちこち飛び回って調べているわ。ただ」
「人数が少ないわけですね。東エリアは後で大丈夫ですよ。うちにも変化が使えるのがいますから」
俺の言葉に恋火が反応する。装備の効果もあって、上達しているはずだ。妖術のスキル上げにもなるし、頑張って貰いたい。そして攻撃を狙って反射している疑惑があるのはフォールンドミニオンとグリゴリアークエンジェルである可能性が高いらしい。
最もグリゴリアークエンジェルはかなり微妙なところではあるそうだ。狙っているけど、上手く行かないって感じらしい。まぁ、アークエンジェルに俺たちの攻撃を狙った方向に返すのは難しいだろう。
ただし、これはグリゴリドミニオン以上になると完全に狙って反射されることを意味している。警戒しないとね。
「よし、島を落としに行ってくるか」
「「「「はーい!」」」」
俺はアラネアとスピカに乗って、ファリーダ、アリナ、燎刃と共に島に潜入する。
「はぁああ!」
「燎刃が全部倒してくれるから楽ね」
「燎刃さまさまなの」
「す、少しは手伝ってくれても…いいのでは?」
聞く耳を持たないファリーダとアリナだった。俺は全部スピカとアラネアに出番を取られてます。ここで一生懸命太刀で破壊している燎刃に提案する。
「この廊下に火砕流を使ったら、どうなるんだ?」
「あの壁がどうなるか分からないけど、敵は高いところ以外は巻き込ませられるんじゃないかしら?」
「もっと早くに言ってください。タクト殿」
「悪い悪い」
口を尖らせる燎刃は珍しい。俺に文句を言ってくるのはいい兆候だと思う。今まではイクスのように命令に忠実な感じだったからな。
「な、なんでしょうか?」
「いいや。燎刃もようやくみんなに似て来たなと思っただけだよ」
「え…」
「どうしてそこで固まるのか…是非聞きたいところなの」
燎刃は火砕流を使い、アリナの追撃を躱すことにした。そういうところも似て来たな。
こうして動力室の扉に辿り着き、ファリーダが殴って、扉をぶっ壊した。そしてアラネアが変化した斧をファリーダがブーメランのように投げてキャッチした途端、元の姿に戻る。その結果、ファリーダはアラネアにつぶされてしまった。
「ちょっと」
「ごめんなさい。馴れていないもので」
おっと。俺にダメージが来たぞ。話を逸らそう。
「どうだった?」
「typeBでした」
「それならアラネアの出番だな。この間みたいに糸を張り巡らせてくれ」
「はい! 粘着糸!」
準備が整い、動力装備が緑色になると防御特化の敵が現れる。
グリゴリガーディアンtypeBLv65
イベントモンスター 討伐対象 アクティブ
グリゴリガーディアンtypeBは大きな盾がグリゴリガーディアンtypeBの周囲を動き回っている敵だった。地味に厄介なのがこの盾を全て破壊しないと動力装置への攻撃や本体への攻撃が出来ないこと。そしてこの盾は時間経過でどんどん増えて行くらしい。
ようはこれで時間稼ぎをして、島がぶつかれば運営の作戦勝ちということになる。因みに島と島が接触した時にプレイヤーが中にいると爆発に巻き込まれて、即死するそうだ。つまり間に合わないと判断すればそのエリアから逃げないといけないわけだ。こういう実験をする検証班には地味に助けられている。
さて、本来は動き回って、時間稼ぎをして来る盾だが、いきなりアラネアの粘着糸に捕まる。そしてアラネアはグリゴリガーディアンtypeBの身体につっく付かせるとダマスカスワイヤーが螺旋状にグリゴリガーディアンtypeBを縛り付ける。
「ふふ」
アラネアが手を引くとダマスカスワイヤーはどんどん締め付けが強くなり、くっついている盾がじわじわ斬れていく。完全に遊んでいるな。ここで盾が増えるがその瞬間、ファリーダが殴って、破壊した。
「いたぶるのはいいけど、他の島を落とす時間が無くなるわよ。アラネア」
「そうですね。皆さんに文句を言われるのも嫌なのでここまでにしておきます。高熱切断!」
ダマスカスワイヤーで真っ赤になるとグリゴリガーディアンtypeBの盾がすぐに斬られる。だが、グリゴリガーディアンtypeBの本体は動力装置に守られていた。
「超電磁! 行くの!」
稲妻が発生したフラガラッハと神短剣ハーフバリアサクスが雷速で動力装置に襲い掛かった瞬間、グリゴリガーディアンtypeBは守りは弱くなり、バリアが砕けるとそのままグリゴリガーディアンtypeBはバラバラになり、爆散する。
最後がここまで来るのに頑張った燎刃が覇撃で動力破壊した。そして俺とスピカの超連携で一気に脱出する。すると出口でイオン、恋火、ユウェル、虎徹、ヒクスが待っていた。
「あなたたちね…ずっと待っていたの?」
「そうですけど、何か?」
「タクト…」
「ファリーダも同じ事をするだろ?」
ファリーダは顔を逸らした。そこは否定してくれ。そうじゃないと俺は何も言えなくなる。そんなわけでイオンたちとバトンタッチして、別の島を落としに行くと落とされてしまった。みんな、頑張っているね。
「タクトお兄ちゃん! 向こうにもありますよ!」
「はいはい…みんな、頼む」
グレイたちがキャノン砲を破壊して、俺たちは島に潜入する。
「島に入れば任せろ! 竜技! ドラゴンホイール!」
ユウェルが丸まり、高速回転しながら、隔壁にぶつかり、破壊していく。
「よく目が回らないよな」
「家でよく転がってますから」
「…そんなことをしているのか?」
家中を転がり回るユウェルを想像するとなんか愛くるしいな。
「なんか今、ユウェルを真似して遊んでいたリリーたちが食器を割って、キキに怒られる姿が過ぎったんだが」
「食器は割っていません! 落としーーむぐ」
「そ、そんなことないに決まってるじゃないですか。嫌ですね。タクトさん」
急いでイオンが恋火の口を抑えるが手遅れだ。食器を落としたキャッチしたけど、そこをキキに見られたんだな。すると転がっているユウェルが敵から攻撃受けながら戻って来た。
「何やっているんですか…」
「イオン、津波で流してくれ」
「あ、なるほど。この廊下なら逃げ場はないですね。上手くユウェルを援護してみます」
津波で流された後にユウェルが通り、津波は隔壁に邪魔されるがイオンは海流操作でユウェルの道を上手く開けている。見事なものだ。そして最後の隔壁にユウェルが体当たりをする前に俺は止める。
「むぅ…いい感じだったのに…どうして止めるんだ? タク」
「ここを破ると下に落ちるぞ。空洞になっているって言っただろう? それに入った瞬間、敵が現れる」
「あ…」
完全に忘れていたな。こういうところはリリーに似てるんだよな。ここでユウェルはユウェルバスターの準備をする。
「とどめは任せてくれ」
「やれやれですね」
「まぁ、やらせて上げてくれ。一度使えば、たぶん満足いくから」
「そうだと良いんですけど…さて、恋火、出番ですよ」
ガチガチになっているが恋火は覚悟を決める。
「行きます! 変化!」
恋火が近衛に変化した。
「なんで近衛なんだ?」
「タクトさんに持って欲しいからに決まっているじゃないですか。そうですよね? 恋火」
わざわざ聞くイオンも怖い。そして恋火が変化した近衛がカタカタ動いている。催促なのか否定しているのか分からないがとにかく握って投げる。
念動力で手元に戻して、キャッチすると恋火が元の姿に戻る。すると俺の手が恋火の尻尾を握っていた。柄が尻尾だったのか!?
「悪い!? 大丈夫か? 恋火?」
「…」
返事がない。強く握ってしまったからな。大丈夫だろうか?するとイオンが水を掛けた。
「ブルブルブル! な、何するんですか!? イオンお姉ちゃん!」
「タクトさんが聞いているのにいつまでも余韻に浸っているからですよ。それでなんて書かれていたんですか?」
「へ? …あ」
忘れていたんかい。変化した意味も投げた意味もなかったじゃん
「…次は私が投げます。いいですね? 恋火?」
「え!? 何か凄く嫌な予感が」
「いいから早く変化してください。さもないとリリーに変わりますよ」
恋火に拒否権は無く、イオンは柄を思いっきり握って投げた。
「ひ、酷いです…イオンお姉ちゃん」
「酷くありません。それでなんて書かれていたんですか?」
「typeSです」
これで全部のtypeと戦うことが決まった。恐らくAがアサルト、Bがバリア、Sがスピードという予想がされている。シールドだとSになるし、プロテクションだとPだからたぶん合っていると思う。Aはアタックの可能性もあるけど、戦闘した感じだとアサルトな感じがする。
そしてtypeSは情報では人間サイズの敵だ。つまりユウェルとは相性が悪い。
「これだとユウェルバスターが使えないぞ!? タク」
「そうだな。まぁ、動力装置の破壊に使えばいいだろう」
それを聞いたユウェルはショックで丸くなった。するとイオンが部屋に入って、動力装置が青色になるとボスが現れる。
グリゴリガーディアンtypeSLv65
イベントモンスター 討伐対象 アクティブ
ユウェルが慌てて顔を上げるといきなり狙われた。ごつい装備を付けているからスピードタイプの敵からするとカモに見えるだろうな。それでもガードしたのは凄い。
「酷いぞ! イオン!」
「は! む!」
「や! 躱された!?」
イオンが横から斬りかかると止められ、背後から恋火が斬りかかるとイオンの攻撃を弾いて上に逃げた。確かに速いな。すると虎徹が襲い掛かる。
「ガァ!」
ここでなんとグリゴリガーディアンtypeSは虎徹の斬撃を全てすり抜けて斬りかかって来た。やはりこいつ、こちらの動きを予測しているな。だが、虎徹も負けてはいない。グリゴリガーディアンtypeSのミーティアエッジを全て弾いて見せた。するとグリゴリガーディアンtypeSが虎徹の視線から消えて、虎徹の背後に奇襲を仕掛けるが尻尾の刀で相手を見ることなく、止めて見せた。
ここでお互いの距離を取るとイオンと恋火が襲い掛かる。こうしてみると時間遅延の有難さを痛感するな。
「タクトさん!」
上から俺に斬りかかって来たグリゴリガーディアンtypeSだが、ヒクスに足で合図を送ると空間転移で逃げる。そして上からヒクスの羽投擲が降り注ぐとグリゴリガーディアンtypeSは全て弾く。みんなが言う通り、一番厄介な奴だな。
ここで俺はあることを閃いてしまった。
『ハイパースペース』
グリゴリガーディアンtypeSをハイパースペースで閉じ込めた。これで逃げる範囲はハイパースペース内しかない。グリゴリガーディアンtypeSはハイパースペースを斬り裂こうとするが虎徹と恋火が多乱刃で攻撃し、ヒクスは再び羽投擲でハイパースペース内にグリゴリガーディアンtypeSを閉じ込める。そしてイオンの準備が整った。
「ドラゴンコールドフロント!」
これでグリゴリガーディアンtypeSは凍り付いた。こうなるともう終わりだな。
「わたしに任せ」
「爆炎之太刀!」
「ガァアア!」
恋火と宝刀解放を使った虎徹に斬られて、爆散した。俺はユウェルを見ると地面にのの字を書いていじけていた。
「えーっと…」
恋火も声を掛けづらい様子だ。
「ユウェル、動力装置の破壊をヤールングレイプルで頼めるか?」
「え? ユウェルバスターを使ったら、ダメなのか? タク」
物凄い悲しい顔をされた。だが、俺には俺の理由がある。
「俺も出来れば使わせてやりたいんだが、考えてみるとこの狭い範囲で核爆発は相当やばい気がする」
「「「「あ…」」」」
「ガウ…」
ロボアニメなら間違いなく中にいる人は死ぬ。何故ユウェルが準備している段階で気付かなかったのか反省する次第だ。もし敵が他のだったら、俺たちはどうなっていた事か…想像したくない。そして全員がやばいことになっていたかも知れないことに気が付いた。
「う、うん! ヤールングレイプルで破壊するぞ! タク!」
「ユウェルちゃん…」
「後でちゃんと反省してくださいね。ユウェル。私たちも反省しますから」
「わかっているぞ…それじゃあ、行くぞ! ヤールングレイプル! 超電磁! 閃電!」
稲妻の矢のようになったユウェルが動力装置を貫いた。そして壁にぶつかった。威力がありすぎるのも問題だな。
『…助けて下さい』
みんな苦笑いを浮かべながら壁に埋まっているユウェルを救出して、島の外に出た。その後、プレイヤーから情報を貰ってリアン、優牙、伊雪、サフィ、ルミで防御タイプの敵をまた相手にした。
「猛吹雪!」
道中の敵は猛吹雪が吹き荒れて、優牙たち無双する。特に優牙は俺が騎乗しているせいかいつもよりガンガン前に出ている。そしてボス戦も動き回る盾を凍り付けにしたわけだが、ここでリアンの神槍カリュブトライデントが見せる。
「暴食!」
盾が一瞬で食われて、相手にならなかった。もちろん隔壁も相手にならないのだが、折角なのでリアンとサフィ、俺と優牙の超連携で隔壁にぶつかると次々破壊していった。流石に持たないか。いい実験になった。
次はリビナ、セフォネ、グレイ、ゲイル、ミールで事前に教えて貰った攻撃タイプの島に挑む。ここでは島の中ではセフォネが暴れた。
「ブラッティレイドボム!」
血の蝙蝠たちが廊下に多い、敵に殺到し、次々爆発して落としていった。更にセフォネは廊下の壁や天井まで血流操作で血を流すとそこから血竜や血晶の剣山が飛び出し、敵を襲っていた。
狭い空間でヴァンパイアと戦うことがどれだけ危険なことか証明された感じだ。一方リビナは爆発蛇の鞭で機械モンスターを破壊している。
「やっぱりこいつらは魅了にならないのか」
「そうだね。でも、タクトはこういう事を予期して作ってくれたんでしょ?」
「偶然に決まっているだろう? まぁ、リビナは魅了が効くかどうかでだいぶ強さが違うことは最初から知っていたけどな」
「そこはボクも否定しないよ。その証拠に普通の堕天使ばかり狙っているからね」
リビナはしっかり相手を選んで戦うタイプだな。まぁ、俺の悪影響で多少不利でも戦う所もあるけど、俺としては自分のスタイルを貫いて欲しいところだ。
「それをするとリリーたちに獲物が全部取られることになることを知ってて言ってる?」
リビナはリビナで結構苦労しているらしい。それを聞いた俺は今のブランのように格闘出来る武器があれば少しはリビナの戦闘に幅が出るかも知れないと思った。
ボス戦ではゲイルとミールが大活躍した。ミサイルなどは全てゲイルに操られ、ミールの樹海操作でグリゴリガーディアンtypeAの武器や関節に木が入り込むと武器は使えなくなり、動けなくなる。
「こうなることが分かっていたのか?」
「はい。こういう精密な物は結構得意なんです」
なんというか使い捨てられたロボのように見えるな。ロボ自体は新品だけどね。その後、リビナが爆発蛇の鞭で袋叩きにしてからセフォネがとどめを刺した。
「宇宙魔法! ピラーズクリエーションなのじゃ!」
今回のイベントでは結構こういう相性の良し悪しがはっきり出ている。ここで俺たちは一度引いて、インフォが来る。
『リビナの鞭のレベルが40に到達しました。鞭【ミーティアウィップ】を取得しました』
『リアンの槍のレベルが40に到達しました。槍【スクリューランサー】を取得しました』
『ファリーダの二刀流のレベルが10に到達しました。二刀流【ドライブエッジ】を取得しました』
『燎刃の太刀のレベルが20に到達しました。太刀【回天】を取得しました』
『千影の太刀のレベルが15に到達しました。太刀【峰打ち】を取得しました』
リビナのミーティアウィップはミーティアエッジと同じで光速で鞭を連打するスキルだ。スピードも出るからかなり強い武技だと思う。さて、みんなのステータスを確認した俺はコノハだけ魔法スキルが挙がっていることに気が付いた。俺はコノハを見る。
「島の内側で戦っていたな? コノハ?」
「ホー…ホホ!」
視線を逸らした後に魔法スキルをこっそり上げていたのはお互い様だ言われた気がする。
「結局、似た物同士なんですよ。タクトさんとコノハは」
「「「「うんうん」」」」
そんな馬鹿な!?しかしこっそり上げたことがあるから何も言えない俺であった。ここでログアウトして、夜までテスト勉強をすることにした。




