#1094 魔法破りの堕天使とグリゴリの子供
俺が回復エリアにいるとイクスが目を覚ました。
「大丈夫か? イクス」
「魔力が足りません。マスターの濃厚な魔力を所望します」
わざわざ濃厚を付ける意味はないだろう。みんな、リビナとファリーダの影響を受けているな。まぁ、頑張ってくれたし、エントラストでイクスを回復された。一方リリーたちは芝生で寝転がっている。回復エリアは安全エリアじゃないから攻撃を受けることがあるんだけどな。まぁ、攻撃が飛んできたら、何とかするだろうし、いいか。完全にくつろぎ状態の俺たちの所に続々各エリアでのボスの情報が入って来た。
やはり島の中での戦闘の難易度は上がっているそうだ。赤色の動力装置では破壊不可能なレーザー装置が部屋一面に現れ、戦闘中ずっと狙われ続ける上に帰り道まで撃たれ続けるらしい。
青色の動力装置では今までの青のボスより更に速い敵が登場した。しかも人数と同じ数だけ、現れるそうだ。更に帰り道でも今まで登場した青色の島のボスから追撃を受けるらしい。襲撃は通路の後ろと前、更には上から攻撃があったそうだ。
ただこの二つのパターンには俺たちのようにボス出現時からの制限時間はなく、動力装置の破壊後に制限時間があったらしい。
『難易度、可笑しくありません?』
『私たちのレベルが上がって来ていたから運営も難易度を上げてきているのよ。タクト君は念のために中央エリアに来てくれないかしら?』
『やっぱりボスが狙ってくるのはそこですか…』
『恐らくね。ここの木の生命力が無くなるのも敗北条件にしているなら当然狙ってくるはずよ。それにグリゴリの名持ちの堕天使が登場しないのは明らかに変だわ』
『ですね…今からそちらに向かいます』
俺たちが空にいた敵を倒しながら合流しようとするとイクスが反応がいる。
「マスター! 上空から奇襲です!」
「アリナ! 木を守ってくれ!」
「任せるの! ハーフバリアサクス! 半減結界! 展開なの!」
ハーフバリアサクスの結界名は俺が勝手に命名した。四本のハーフバリアサクスは中央エリアの木の上空で四角形を描くように配置されるとハーフバリアサクスにある結界石がそれぞれ反応し、四角形の半減結界を作り出した。そこに上空から巨大な紫電の槍が落ちて来た。
半減結界に触れた紫電の槍は大きさが半分になるが結界を破壊してしまう。結界の強度は弱いんだな。だが威力が半分になった事と結界に触れた時に僅かに時間ができたことで満月さんたちがガードしてくれた。
すると今度は敵が光速で木に襲い掛かろうとすると三つの光がそれを邪魔した。アリエル、アズラーイール、ザドキエルだ。その三人が蹴散らされると敵が木に向かう。やらせるか。
「千影!」
「任せるであります! 流星一文字!」
千影が攻撃するとボスの堕天使は紫電の槍で止めた。
「邪魔をするな!」
「そうは行かないであります!」
二人がぶつかり合うとボスの堕天使を千影は下がらせる。接近戦では不利と思ったようだ。すると千影に雷轟が降り注ぐ。
「雷轟なの!」
横からアリナの雷轟が放たれ、ボスの雷轟とぶつかり合い、相殺する。
そこで俺たちも敵とご対面する。
アルマロス?
? ? ?
やっとグリゴリに所属している堕天使の登場か。アルマロスの姿は賢者っぽいローブ姿の堕天使だった。イケメンなんだけど、なんか頼りがいが無さそうだ。
ここで木の防衛をしている魔法使いたちがアルマロスに攻撃を仕掛ける。だが、全ての魔法が直撃したのにも関わらずアルマロスはノーダメージでそこにいた。
アルマロスは人間の妻を娶り、人間に魔法を無効化する方法を教えた罪で堕天使となった天使だ。だから魔法が効かないんだろう。
「やれやれ…どうしても私の邪魔をするつもりですか?」
「今更化けの皮を被るなよ。しょーもない」
千影に凄い形相で襲い掛かったのを見てしまっている。あっちが本性で間違いないだろう。
「ふん。そんな安い挑発は受けませんよ!」
魔方陣が沢山展開されて、上位の魔法が俺たちに襲い掛かる。だが、俺たちも無傷で防いだ。俺たちには魔術殺しの魔導書があるのだよ。
「な!? なんだ!? その本は!?」
「カラミティカリバー!」
「くぅうう!?」
リリーが襲い掛かるとアルマロスは杖でガードしながらぶっ飛ばされる。お互いに魔法が効かない状態となれば勝敗を決するのは近接戦闘だ。この勝負は完全に勝ったと思ったんだが、流石に簡単に勝たせてくれる相手では無かった。魔法特化の堕天使でもそれなりに紫電の槍を使って、近接戦をしていた。それでも近接戦闘が得意なみんなは確実に追い詰めている。
「く…我が子を頼るのは情けないが仕方がありませんね! いでよ! ネフィリム!」
天から巨大な何かが島に落ちて来た。そいつは巨人だった。
アルマロス・ネフィリム?
? ? ?
ネフィリムはグリゴリの堕天使と人間との間に生まれた子供されている巨人の総称だ。かなり凶暴で地上の作物や人間、動物を喰いつくし、最後は共喰いまでしたと言われている。
「おぉおおおおお!」
雄叫びだけでとんでもない衝撃波だ。現状では明らかにネフィリムのほうが厄介だな。
「こいつの相手は俺、イオン、恋火、イクス、アリナ、千影でやる! 他はネフィリムに向かってくれ」
アルマロスにとって、恐らく最悪のメンバーを選んでみた。その証拠にアルマロスはアリナのハーフバリアサクスとフラガラッハに襲われながらイクスの狙撃に襲われている。
更にイオンまで双剣を投げるとエウロペトライデントを構えて恋火と千影と共に襲い掛かる。完全にもうアルマロスに負ける気がしない。ハーフバリアサクスとフラガラッハを避けきれず、ダメージを受けて、どんどん追い込まれる一方だ。
一方アルマロス・ネフィリムにはみんな苦戦している。暴走状態で手あたり次第暴れている感じなのだが、リリーたちが襲い掛かるとそれに反応してカウンターのパンチを正確に当てて来たのだ。
しかもアルマロスの子供のせいか魔法が効かなかった。そして俺たち側に緊急事態が発生する。次々アルマロス・ネフィリムが落ちて来たのだ。中央エリアを囲むように合計十六体のアルマロス・ネフィリムが現れた。だが、その間にアルマロスは倒させて貰った。よく粘ったよ。
『北エリアは任せろ! ただ防衛の数が全然足りていない! 時間稼ぎを頼む』
『了解したわ。援軍の三天使にそれぞれ向かって貰うわね』
『こっちも援軍を出します。セチア、イクス、和狐、セフォネ、ユウェル、燎刃、チェス、黒鉄、アラネア、ぷよ助、狐子、ディアン、ミール、月輝夜、夕凪、スキアー、叢雲、リースはそのまま防衛を続けてくれ。俺も参戦する。リリー、イオン、リアン、ブラン、アリナ、グレイ、ゲイル、優牙、ロコモコ、ルーナ、ヒクス、サフィ、ジーク、コーラル、千影、ルミは西側に向かってくれ』
西側は俺たちが今いる東エリアから一番遠いからスピードがあるメンバーを選んだ。
『南側には恋火、ノワ、リビナ、ファリーダ、コノハ、虎徹、白夜、エアリー、伊雪、ストラ、スピカ、クリュス、蒼穹、ハーベラス、リオーネが向かってくれ』
『『『『はーい!』』』』
こうしてみんなが散る。その間にも地上では戦闘が続いている。アルマロス・ネフィリムが腕を伸ばして来ると黒鉄も腕を伸ばしてぶつかり合うと互角に終わる。するとアルマロス・ネフィリムが口から天ブレスを放ってきた。それを黒鉄は腕を盾に変形して止めるが腕が伸びて来て、殴られると後ろに倒れてしまう。
それを見たアルマロス・ネフィリムが腕を戻しながら襲い掛かる。
「やらせませんよ! 高熱切断!」
アラネアが高熱となったダマスカスワイヤーでアルマロス・ネフィリムの両足を切断すると勢いよく顔から倒れ込む。するとアルマロス・ネフィリムは地面を叩きまくり、号泣する。リアクションが完全に子供だ。
「えーっと…ごめんなさ…っ!?」
「あぁああ!」
心配したアラネアにアルマロス・ネフィリムの目から死滅光線が放たれる。それをアラネアは跳び上がって回避した。
「この!」
アラネアがダマスカスワイヤーで攻撃するとアルマロス・ネフィリムは斬られた足を復活させて、地面を転がり、躱すと態勢を整えて、アラネアに目掛けてジャンプすると両手を上で合わせる。
「グオォオオ!」
「あぁああ!?」
がら空きの腹に月輝夜の拳が入って、ぶっ飛ぶ。腕を伸ばせるのはお前だけではないのだよ。すると別のアルマロス・ネフィリムが月輝夜に襲い掛かるとチェスがガードに入った。
「グォオオ!」
「あぁああ!」
チェスが氷斧を振りかぶるとアルマロス・ネフィリムはなんと手で握って止めてしまった。そしてチェスが持ち上げられそうになるがチェスは氷斧を手ばなすことで回避すると星氷爪で顔を引っ掻く。するとアルマロス・ネフィリムの顔が凍る。こいつも状態異常に弱そうだな。
それにチェスも気が付き、至近距離からの極寒ブレスでアルマロス・ネフィリムの上半身を凍らせた。
「矢舞雨!」
更にセチアの動き回る矢が足に刺さると足が痙攣して、倒れ込むと暴れる。上半身裸だし、人間の子供でもあるから状態異常に弱いのはどうしようもないかも知れない。俺は全員にこの情報を伝える。
「飯綱!」
「病気ブレス!」
「植物召喚! トリカブト!」
「「「「シャー!」」」
和狐と狐子、ミールがいきなり仕掛けてここにいる三人のアルマロス・ネフィリムがもがき苦しむ。そこにディアンが神魔毒ブレスで追い打ちをかけた。だがここで一対のアルマロス・ネフィリムが急に大ジャンプをしてみんなを飛び越えようとした。
それを見ていた倒れていた黒鉄が腕で照準を合わせるとネットが飛び出し、大ジャンプしているアルマロス・ネフィリムを捕まえると電気ショックがアルマロス・ネフィリムを襲う。更にそのまま地面に叩きつけた。
これが電気網スキルだ。拘束されている間、ずっと電属性のダメージを受け続ける。仕上げはユウェルがする。
「土石流!」
ユウェルが地面に手を付くと土石流が発生し、地面で苦しんでいるアルマロス・ネフィリムたちを飲み込んだ。しかしこれでも生きており、土石流の中から顔を出す。
「「「あぁああ! あ…」」」
顔だけのアルマロス・ネフィリムたちをみんながとてもいい笑顔で待っていた。それを見たアルマロス・ネフィリムたちの顔が絶望に染まる。すると東エリアにいたみんながやって来た。
「ここは大丈夫だから他の防衛に行ってくれ」
「分かりました!」
「なぁ? 物凄い絶叫が聞こえてこないか?」
「気にしたら、ダメ! タクトさんの召喚獣と戦って、無事で済むと思っているの?」
チロルは俺たちをどう思っているんだ?まぁ、ボコボコにしている現状を見ると俺は何も言えないな。暫くするとインフォが来た。
『イベント一日目の防衛に成功しました。今日はこれ以降敵は出現しなくなります。明日のイベント開始は設定画面から申請してください』
『恋火の太刀のレベルが20に到達しました。太刀【回天】を取得しました』
『ダーレーの仙術のレベルが30に到達しました。仙術【仙郷移動】を取得しました』
『蒼穹のレベルが20に到達しました。成長が可能です』
『叢雲のレベルが24に到達しました。進化が可能です』
テスト勉強もあるから成長と進化は明日にしよう。さて、みんなが集まり、今日のイベント会議と言う名の反省会をすることになった。




