#1072 和狐の和装結婚式
帰って来た俺は早速獣魔ギルドで結婚式を依頼をして、服を着替える。和服でもボタン操作だけで着替えられるのは便利だよな。案外この結婚式システムはVRでの結婚式をテストしている可能性もあるのが今、気が付いた。着替えるのが楽、人を集めるのも楽、式場のセッティングが自分たちで決めれて料理も現実より美味しい料理が出るなら現実の結婚式が負けてしまう可能性は十分にあると思ってしまった。
そんな事を考えているとシルフィ姫様がいつものようにやって来た。案外出前を頼んだのは自分が結婚式に参加するためなんじゃないかと今、思った。
「お邪魔いたします。わぁ! とてもお似合いですね! タクト様。その服装は桜花の物ですか?」
「はい。桜花ではこの服装を着て、結婚式を挙げるようです。俺は桜花式の結婚式の実験犠牲者第一号です」
「そんな言い方は行けませんよ。それに…むむむ。いつもよりこっちの方が似合っている気がします」
日本人としてこれは嬉しい言葉だな。俺も何故かこっちの服装の方が落ち着いている気がするしな。やはり俺の血には日本の和の魂が宿っているって事なんだろう。
「これは和狐さんやリリーちゃんたちに悪い事をしてしまいましたね」
「どういうことです?」
「この姿のタクト様を最初に見たのが私ですから。嬉しさと罪悪感が半々な感じです」
シルフィ姫様は本当にリリーたちの事を考えてくれているな。ここで呼ばれたので、俺が式場に入るとリリーたちが感嘆の声を出した。やはり新しい服というのはイメージを変えるよな。そして俺と和狐はその威力を身を持って、味わうことになった。
ドアが開いて、純白の和服の花嫁衣装に身を包んだ和狐が現れるとお互いに暫く見つめ合ってしまったのだ。
「あぁ…悪いんだが、歩き出してくれないか?」
「ひゃ!? ご、ごめんなさい!」
「お互いに見つめ合うのは結構な事だけど、式が終わってからしようね」
「「はい…」」
二人して恥をかくことになった。その後は普通に式が進んでマリッジリングの交換をする。
『和狐とマリッジが結ばれました』
こうして式が終わるとリリーたちが俺たちを弄って来る。特にリビナの攻撃が酷かった。
「もうその辺にしておけ」
「あぁ~! 先に結婚式したボクより和服の和狐を取るんだ」
「リビナが調子に乗りすぎているから止めているだけだろ。時間もないんだ。和狐、九尾の所に行こうか」
「は、はいな!」
二人で九尾の所に行くとみんながお祝いをしてくれた。和狐は照れ臭そうにしているがやっぱり嬉しさが大きそうだ。ここが和狐の故郷だからな。これは当然だろう。そして九尾の社の中に入ると空天狐様までいた。
「立派な服で結婚させてもろて良かったどすな」
「は、はい!」
「それにしてもあの和狐が結婚か…時間が流れるのはやっぱりはえーな。俺を初めて見たときに魂が抜けたのが昨日の事のようだ」
「きゅ、九尾様!? その話は!?」
それから側近の和狐にとってはお姉さんに当たる人たちから和狐の子供時代の失敗談を聞かせて貰う事になった。こういう昔話を聞くと結婚式の二次会みたいだな。
「タ、タクトはん! もう聞いたらダメどす!」
和狐が後ろから俺の耳を塞いでくるとみんなが感嘆の声を出す。
「あの和狐も体で殿方を誘惑するようになったんですね」
「いいぞ! もっとやれ!」
「九尾様!?」
「狐のセリアンビーストは殿方を体で堕としてから初めて一人前や。九尾はなんもまちごうている事言ってないよ」
「空天狐様まで…えっと…えーっと…この後、どうすれば」
和狐が大混乱状態になってしまった。それを見た全員ががっかりの溜息を吐く。
「まぁ。これからも二人揃って、おきばりやす。それよりも九尾」
「わーってるよ。お前ら、例の物を持ってこい」
「はい」
おや?何かくれるみたいだ。何やら服みたいなものが三つ持ってきた。鑑定する。
稲荷の斎皇女服:レア度10 専用装備 品質S+
重さ:なし 耐久値:なし 防御力:2000
効果:火属性アップ(究)、爆属性アップ(究)、全属性耐性、神鎧、神障壁、神気、仙気、魔力超回復、熱無効、衝撃無効、全属性耐性、豊穣、王の加護、空天狐の加護
特殊効果:神降ろしのデメリット解除
狐の召喚獣専用防具。巫女の最高峰の者が着る事を許された服で空天狐の力が加わっている。更に神降ろしのデメリットを無くす効果がある。
流石に現実の斎皇女の服は再現していない。巫女服風にアレンジしている感じだ。そもそも斎皇女とは伊勢神宮か賀茂神社で巫女をした天皇の皇女のことだから稲荷神社で斎皇女はおかしい。
「あの…これは?」
「あぁ。結婚祝いと毎日のお供え物の分だ。貰っている物が物だからな。本来は空天狐の試練で手に入る代物を用意させて貰った。だがな…服を貰っただけで満足するんじゃねーぞ。あのちっこい方にも言っておけ」
武器がまだないと言う事か。まぁ、これは当然だろうな。それにしても武器はお供えしてもくれる事は無いだろう。それなら社の意味は九尾が家を守ってくれることしか無くなった気がする。まぁ、それでもありがたいし、今まで通りでいいか。
「はい。ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます!」
帰った俺たちは恋火と狐子に服を渡す。
「うぅ~…変じゃないですか? タクトお兄ちゃん」
「私は好みよ。この服」
「お姉ちゃんと狐子ちゃんにはあたしの気持ちは分かりません」
拗ねている恋火の頭を撫でる。
「そんなことを言わない。恋火もちゃんと綺麗だぞ。赤と白も似合っていたがこの服を着るとおしとやかな大人になった感じがするな」
「ほ、本当ですか!? タクトお兄ちゃん」
「あ、あぁ」
言っている傍からおしとやかな大人を壊されると何も言えなくなるじゃん。まぁ、恋火は和狐に憧れているから興奮するのは無理ないかもれない。尻尾が暴れている恋火の様子に和狐は笑っており、狐子はやれやれといった感じだ。
それじゃあ、今日の最後に少しだけスキルとレベル上げをするとしよう。




