#1062 嫉妬魔王レヴィアタン戦、開戦
レヴィアタンの戦いは過去最大の長さになります。八話ぐらい使う事になりそうなので、予めお伝えしておきます。
再出撃時間の少し前にログインして、状況を聞くと向こう側では相当な数の犠牲が出たが蘇生には成功したらしい。ただ何隻もの船が木っ端微塵にされたそうだ。ゴフェルの木の船を破壊するとは相手の強さが伺えるな。
向こうのバトルシップは全て故障して、航行不能。こちらのバトルシップもジズにやられたことで参加が出来なくなった。レヴィアタンとの戦闘前に相当な戦力を失ったがそれぞれレヴィアタンとの戦いを見越して力を温存しただけにここで引く選択肢は無い。
みんなに食事が配られ、陣形を整える。そして作戦開始時間を迎えた。
「行くぞ!」
俺たちはレヴィアタンの領域に入った。そこはまさに海の地獄を体現しているかのような海域だった。あちこちで渦潮と竜巻が発生し、波の大きさは巨大津波に匹敵している。そんな海を天候支配と気流支配、海流支配を駆使して、進んでいく。
そして俺たちは遂に海面に立っている魔王レヴィアタンを発見した。
嫉妬魔王レヴィアタン?
? ? ?
その姿は紫色のロングヘアーに赤い珊瑚の角、体は青い竜の鱗に覆われているドラゴニュートにそっくりな魔王だった。
「イオンちゃんに似てる?」
「間違いないです…彼女は私たちと同じ海竜です。ただこの力の強さ…恐らく神竜レベルだと思います」
悪魔の四強の内の一体だからな。それくらいの実力はあるだろうさ。
「ワタシに挑むか? 人間よ」
「あぁ。悪いが今日ここでお前を倒させて貰うぞ」
「良かろう。思い知るがいい。四大魔王に属するワタシの力を」
レヴィアタンが指を鳴らすと海のあちこちから巨大な海蛇が六体も現れた。
リヴァイアサン?
? ? ?
このゲームではリヴァイアサンは超巨大な海蛇みたいだな。
「タクトさん、船が巻き付かれています!」
「みんなが乗っているから大丈夫だ。俺たちはレヴィアタンに集中するぞ!」
俺たちが一斉攻撃するとレヴィアタンの周囲を海から出て来た巨大な尻尾がガードした。すると海が盛り上がり、魔王レヴィアタンの姿が露わになる。
「ワニ?」
ドラゴンと言うよりは巨大なワニとレヴィアタンは一体化していた。するとワニの口に稲妻が発生し、プラズマの球体が出現する。俺はそれが何か理解した。
「射線上から逃げろ! 荷電粒子砲が来るぞ!」
ワニの口から荷電粒子の放流が放たれ、艦隊が消し飛んだ。
「く! なんて火力だ。いくぞ! みんな! さっきの攻撃をこれ以上させるな!」
俺たちが空から襲い掛かると人型のレヴィアタンが手から黒雷を放ってきた。それを斬って接近すると俺たちの周囲に大きな水玉が出現した。
「壊せ!」
俺たちは破壊したが壊せなかった水玉から棘が飛び出し、貫いて来た。ここで俺がレヴィアタンに斬りかかると手で剣を止められる。
「く…!? おわ!?」
俺はそのまま投げ飛ばされるとワニの尾の一撃でぶっ飛ばされると艦隊の船にぶつかった。
「がは!? なんて一撃だよ」
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ」
俺が立ち上がると次々、みんなが飛ばされて来た。
「おっと。大丈夫か? 恋火」
「は、はい。タクトお兄ちゃんも大丈夫でしたか」
「さすがに痛かったけど、大丈夫だ。あいつはどうだった?」
「武器を握ることも驚きましたけど、後ろから攻撃しても尻尾があって、飛ばされちゃいました」
まぁ、このレベルの魔王が簡単に背後から攻撃を許してくれるわけがないな。すると遠目で鎖で拘束しようとするみんなの姿があったがあっさり破壊してしまう。どうやら拘束は出来そうに無い。
『リリー、イオン、恋火、ブラン。俺の攻撃に合わせてくれ。四人同時攻撃で行くぞ!』
『『『『はい!』』』』
俺と恋火が距離を詰めて、斬りかかると両手でまた捕まれる。次に背後からリリーが襲い掛かると尻尾が来る。これをリリーは止めた。そしてイオンが横、ブランが上から狙う。
「海錬刃! きゃ!?」
「ブリューナク! な!? く!?」
「わわわ!? あ、危なかった~」
レヴィアタンは俺をイオンにぶつけて、飛んできたブリューナクは尻尾で拘束したリリーが持つ神剣アルカディオンにぶつけてガードすると恋火をブランに投げつけ、更に弾かれたブリューナク目掛けてリリーを飛ばすとリリーが刺されそうになるがリリーは身体を捻ってギリギリで躱した。
ここで他の皆もレヴィアタンに襲い掛かるが信じられない光景を目の当たりにする。
「天國! 宝剣解放! 三千大千世界!」
鉄心さんが必殺の一撃を放つ。すると斬りかかった鉄心さんが目の当たりにしたのは三千大千世界の使用中にも関わらず、普通に動くレヴィアタンの姿だった。その結果、天國の斬撃は弾かれ、隙だらけになった鉄心さんの腹がレヴィアタンの手に貫かれた。
「がは!?」
鉄心さんは甲冑に加えて、鎖帷子も装備している。それなのに貫通かよ。
「父さん!? てめぇ! な!?」
助けようとするカイに鉄心さんが投げつけられると手を向けられる。
「魔王波動」
「やらせん!」
満月さんが守りに入る。そしてマグラスさんとアーレイ、シフォン、メルが斬りかかると金属音が聞こえてエクスカリバーとデュランダルの攻撃が入ったが斬れてはいなかった。
「攻撃が当たれば何とかなるとでも?」
全員が殴り飛ばされる。ここで艦隊砲撃と上空から与一たち銃撃部隊が掩護するが巨大な海水の壁に阻まれる。すると英雄たちも参戦する。
「貫けぇい! カラドボルグ!」
フェグルス団長のカラドボルグが襲い掛かるとあっさり手で弾いてしまった。
「王撃!」
「アーサー王に続け!」
アーサー王の攻撃に合わせて、円卓の騎士たちが連携して攻撃を仕掛けるが命中しているが手ごたえがなく、次々ぶっ飛ばれる。更にクーフーリン、スカアハ師匠も仕掛けた。
「「ゲイボルグ!」」
だが、降り注ぐゲイボルグの雨もレヴィアタンの身体に弾かれる。即死が通用する敵なわけないよな。
「皆さん! お願いします!」
「「「「ガァアアア!」」」」
シルフィ姫様の召喚獣のブレス攻撃が襲い掛かるとレヴィアタンは手を向けると横に動かす。するとブレス攻撃が手を動かした方に飛んで行った。
俺はそのスキルの正体を叡智で見切った。スキル名は流動。流れを操るスキルらしい。ブレスは息だし、波動も魔力の奔流だ。物凄く厄介なスキルだぞ。
俺が見た感じだと、艦隊の砲撃とか嫌っているように見えるんだよな。一つ試して見るか。
『リサ、今からワニの方を狙う。俺の動きに合わせてくれ』
『おぉ! 遂に兄ちゃんからご指名された! 任せて!』
『行くぞ!』
俺とリサがワニに襲い掛かる。
「星震!」
「崩拳!」
手ごたえあり!あり得ないと思ったけど、人型よりワニの方がまだ柔らかそうだ。リヴァイアサンに苦戦しているみたいだし、みんなもダメージを受けている。態勢を整える為にも一気に決めさせて貰おう。
俺はサバ缶とブランに指示を出す。するとみんなが攻撃を加えながら、召喚獣と艦隊が直線上になる。
「愚か」
ワニの口に再びプラズマの球体が発生する。誘いに乗った!愚かなのはお前のほうだと思い知れ!
『ブラン!』
「はい! 我が主! イージス! 伝説解放! 神盾技! アテーナイ・カスレフティス!」
荷電粒子砲が空間に吸い込まれて、反射される。
「っ!?」
驚くレヴィアタンだが、すぐに手を向ける。だが、そこに分厚いガントレットを装備した格闘家が襲い掛かった。
「唸れ! 爆轟! そしてさらばだ!」
見事に決まった一撃のお陰でアテーナイ・カスレフティスで反射した荷電粒子砲が炸裂した。流石にこれは洒落になっていないダメージが入り、間髪入れず、全艦隊の一斉砲撃を畳み込み、レヴィアタンは海に沈んでいく。
「倒した…わけないよね?」
「そりゃそうだろ…さっきのでも大概だと思っていたがこれで倒せるなら苦労しない。今の内に回復して、情報を共有するぞ」
まず本体を狙うのはかなりきついことが分かった。余程接近戦に自身があるなら別だが、アクセラレーションなどの加速程度ではまず通用しないことと時間遅延などが効いていないことが共有された。
そして海から何かが現れた。そのレヴィアタンの姿に俺たちは絶句する。
ネフシュタン?
? ? ?
ネフシュタンは旧約聖書に登場する青銅の蛇の事だ。モーゼが神様に許して貰うために作ったとされている。キリスト教の中でも珍しい、いい意味で捉えられている蛇だ。それが何故レヴィアタンになるかは謎だが、みんなはもっと言いたいことがある。
「「「「メカじゃん!」」」」
青銅の蛇どころがメタリックボディの蛇だったのだ。




