#1053 ノワの結婚式とレヴィアタン攻略会議
皆さん、新年あけましておめでとうございます!
今年も『Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~』をよろしくお願い致します!
夕飯を済ませた俺はゲームにログインして、みんなにオリジナル料理を作る。流石にみんな興味津々でリリーたちは手伝いに名乗りを上げて、一緒に作っている。
「タクトさんは何を作っているんですか?」
「俺も初めて作るんだが、バターケーキにチャレンジしようと思ってね」
「「「「バターケーキ!?」」」」
ロコモコとエアリーのミルクを活かす料理を調べていたら、日本では昔、ケーキにバターを使っていたらしい。これを知ったからにはチャレンジしなければなるまい。リリーたちにとっては大好物の組み合わせだ。興奮しないはずがない。
「…結婚式のケーキが大ピンチ」
「「「「あぁ~」」」」
「流石に今日中には出来ないからお楽しみは明日に持ち越しだな」
「まさかボクとの結婚式に?」
「それはない。ノワがさっき言ったけど、ウェディングケーキを台無しには出来ないからお昼の休憩の時に味見してみよう」
みんなの料理を見ていると順調だ。リリーと恋火はパイアの肉をステーキにしていて、ノワはベーコンを担当している。イオンはバターを使ったカジキマグロのソテーに挑戦。セチアは醤油バターの野菜炒め、和狐はあさりのバター酒蒸しを作っていた。
「「「「出来たー!」」」」
「それじゃあ、食べてみるか」
結論から言うとどれも滅茶苦茶美味しかった。効果が凄まじいだけにこれから結婚式をするのが勿体なくなるな。そうも言ってられずノワの結婚式に向かう。待っている間にシルフィ姫様に聞いてみる。
「ノワの奴、何か企んでいませんか?」
「さ、さぁ? どうなんでしょうね?」
この反応は何か知っている反応だ。とはいえこれ以上聞いても教えてくれることはないだろうと思って、諦める。
「あ、あれ? 随分あっさり引きましたね」
「結婚式に関わる事ですから教えてはくれないでしょう? それに相手がノワなら何か仕込んでいることぐらいは分かってますよ」
特に最近のノワはそういう傾向が強く出ている。寧ろ結婚に向けて色々なアプローチをテストしていた印象まで受けるほどだ。
「ふふ。よく見ているんですね」
「それは俺というよりノワのほうが適切だと思いますよ」
何だかんだでいつも影の中から俺を見ていた気がするからな。
「ん~。私もノワちゃんを見習うべきでしょうか?」
「シルフィ姫様はノワと似ている所が結構あると思いますよ?」
いつも覗いているところとかそっくりだ。
「今、とても失礼な事を考えませんでしたか?」
「滅相もございません」
「今までそんなこと言った事ありませんでしたよね!? 絶対に失礼な事を考えてました!」
「あー…あー…」
「ノワちゃんの真似しないでください!」
この後、ノワの準備が整ったことを教えてくれた人にこの光景を目撃されて、二人してとても恥ずかしい思いをすることになった。
俺が式場で待っていると扉が開いて純白のウェディングドレス姿のノワが現れて、今までのノワとのギャップに絶句する。これはリリーたちも同じだった。ノワが狙っていたのはこれか。
「…どう? にぃ」
「あぁ…綺麗だよ。ノワ」
「…むふー」
ノワはご満悦だ。今までノワには可愛いとかよく言って来たと思うけど、流石に今回は綺麗としか言えない。というか白の服を着るとこんなにも雰囲気が変化するんだな。色の効果に脱帽だ。
その後は普通に式は進んでいき、誓いの言葉を言うとマリッジリングを交換する。
『ノワとマリッジが結ばれました』
これで式が終わり、ギルドの本部でウェディングケーキを食べながらミュウさんから種明かしをされる。
「実は皆にどんなウェディングドレスがいいか聞き込みはしてるんだよ。そこでノワちゃんがどうしても純白のウェディングドレスがいいって言われてね。流石の私も試着したノワちゃんの姿を見て、絶句しちゃったよ」
「普通に考えてみればノワちゃんは色白だし、似合わないわけないのよね」
「そうですね。俺もそれを思い知りましたよ。これからは普通の服も買って」
「…それはや」
ウェディングドレスを着たまま、影から顔を出さないで欲しい。色々台無しだから。苦笑いしていた俺たちのところにリーゼがやって来る。
「そろそろ時間なのじゃ」
「そうね。行きましょうか」
「はい」
「…ん。一緒に行く」
そう言ってノワはウェディングドレスで魔王討伐同盟の会議に参加しようとした。
「着替えなさい」
「…やー」
これは本当に嫌な反応じゃないな。遊んでいる。部屋から出て来たいつもの服になったノワが言う。
「…にぃに強引に脱がされた」
「俺はずっとここにいたのにどうやって脱がすんだよ」
「…にぃの念動力で?」
妙に出来そうな事を言わないで欲しい。もちろんそんなことはしていない。というか出来ない。見えない所の物を動かすほど、俺は念動力を使いこなさせていないからな。
俺たちはエステルの城の大広間に集合する。そこには全ての国の代表が集まっていた。流石にアスモデウス、サタナキアを討伐して、暗黒大陸の東下を完全に掌握した俺たちの戦果を知り、他の国も重い腰を上げざるおえなかった。
その重い腰を上げるのに活躍したのがリーゼとリーゼのお父さんとオリヴィエさんだった。リーゼたちはそれぞれ各地で俺たちの活躍を宣伝していた。国民はそれを聞いても凄いねーくらいで止まるが貴族たちはこのまま魔王討伐同盟に加わらないのはマイナスになる可能性を高くなっている事に気が付く。
そして今回の議題である魔王レヴィアタンの討伐は間違いなく歴史に残る戦いとなる。結果がどうあれ参加しない国は後から叩かれることになるだろう。これで敗戦とかサタナキアがまだ生きていたら、それを理由に参加を拒否しても問題は無かったと思うが流石にもう俺たちの戦果を無視できない。だから今回は全ての国が参加することになった。
因みにサタナキアとの戦いで一度負けたように思うだろうがあれはサタナキアの軍を足止めして、アスモデウスの討伐する作戦の一環としている。物は言いようだ。
作戦会議が始まり、まず作戦開始が出来る状態なのか各国の代表が話す。防波堤の建設に軍艦の準備はどうやら整ったようだ。
次に担当を決めていく。レヴィアタンとの戦いは暗黒大陸と俺たちの大陸からの挟み撃ち作戦となる。その分、連携が非常に難しい。ましてや海での戦だ。簡単には行かない。
まずそれぞれの艦隊司令官に暗黒大陸側からはテミストクレスがなることが決まった。テミストクレスはサラミスの海戦でアテネ海軍に勝利をもたらした英雄だ。このサラミスの海戦の勝利により、ペルシア軍は一度占拠したアテナから撤退せざるを得なくなったとされている。
そして俺たちがいる中央大陸側からはベガス島でお世話になったペリーさんに白羽の矢が立った。ここで諸葛亮、司馬懿、周瑜、オリヴィエさん、スカアハ師匠、更に俺は初めて会うアグリッパとハンニバルが参加していた。
この二人はライヒ帝国の有名なNPCだ。まずアグリッパの正式な名前はマルクス・ウィプサニウス・アグリッパ。ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの軍師だった人物だ。
ハンニバルはカルタゴの将軍で歴史上始めて軍勢を率いてのアルプスを越えた人物として有名だが、それよりもカンナエの戦いのほうが知られているかもしれない。ローマ軍が包囲されて、壊滅的な被害を受けた戦いだ。
この他にもハンニバルはローマ軍に連勝しており、当時のローマ軍に恐れられたほどの将軍だったりする。その為かアグリッパと仲が悪く、ハンニバルが暗黒大陸、アグリッパは俺たちの大陸側に分かれることになった。
後は諸葛亮と周瑜、司馬懿が組み、中央大陸側となり、オリヴィエさんとスカアハ師匠が組み、暗黒大陸側となることが決まる。次に布陣を決める会議となり、そこで俺たちにも質問が来る。そして全員が俺を見る。このまま何もなく終わると思っていたのに!
「正直海戦については皆さんのほうがずっと上手なので俺からは特に意見はありません。一度手ひどく負けてますからね。ただ今回の海戦はどれだけ海と天候を味方に出来るかで全然異なって来ると思います。なので艦隊の正面に召喚獣と猛獣使いたちを配置して、天候や海流を操れる人を前と周囲に配置するべきではないでしょうか?」
俺の提案に軍師の皆さんが考える。プレッシャー、半端ない。
「確かに風や海の流れで船同士がぶつかり合い、沈没しては戦いどころではなくなるな」
「船同士を繋げる手もあるが攻撃からの回避が出来なくなる。そういう事を考えると出来るだけ各船に配置した方がいいですね」
「召喚獣や猛獣使いについてはフリーティアに任せる。我々は各船の船員の配置を考え直すとするか」
どうやら採用されたみたいだ。心臓に悪すぎる。
「大丈夫ですかな? タクト殿」
「大丈夫じゃないですよ。オリヴィエさん」
「自身を持て。お前は私の自慢の弟子なんだからな!」
わざわざこの場でしかも大声でいう事ですか…スカアハ師匠。完全に自慢したいだけだ。その後、俺たちの配置も決まる。
俺は暗黒大陸側を担当することになった。参加するのはエステルの軍隊と魔王討伐同盟の面々。ただチロルたちとルークはライヒ、ワントワークの人たちは中央大陸側となった。他の国々も中央大陸側だ。
正直、かなり戦力が偏っていると思うが自分たちの国を守る為に中央大陸側に戦力が集中するのはどうしようもないことだ。エステル王も頑張ってくれたんだけどな。王の多さには勝てなかった。
因みにシルフィ姫様はこっちに参加をしたがっていた。理由はこっちのほうが面白そうという理由だった。しかも何故か俺を見て、言って来た。ただマーリンが許可しなかった。
理由は言えないと言っていたから中央大陸側にもそれなりの強敵が現れるんだろう。その後、俺たちもそれぞれの攻略情報を話し合う。最初にサタナキアの報酬を決める。今回は俺も報酬を貰えることになった。
「流石に今回は貰ってくれ」
「聖遺物まで全部貰う訳には流石にいかん」
あげすぎるのも問題ありだと学んだ。その結果、俺は聖骸布を二枚ゲットした。
聖骸布:レア度10 素材 品質S+
聖人の遺体を包んだとされる布。聖人の加護が宿っており、主に防具として利用される。
聖骸布を選んだ理由は見た目が白い布であることが大きい。それに防具の他に旗の素材としても使えるからだ。後は個人的に骨を入れた剣を使いたくない気持ちが大きい。デュランダルにも申し訳ないけどさ。
そして俺はルインさんからの情報提供でギルド交換チケットの五枚を使う事にした。俺が手に入れたのはこちら。
魔槍ゲイ・ルーン:レア度10 槍 品質S
重さ:80 耐久値:500 攻撃力:600
効果:火属性アップ(究)、紅炎、発火、煉獄、魔槍解放
突き刺した地面を溶岩に変えると同時に周囲を灼熱地獄してしまう炎の魔槍のレプリカ。基本的には投槍として使用され、保管する時は常に槍を水で浸さなければならない。取り扱いが非常に難しい槍だが、都一つ滅ぼす力を持っている非常に危険な槍。
オリジナルの魔槍ルーンだ。これを五つ交換して、ヒクスに持たせることにした。これがレヴィアタン攻略の一つの切り札になるとルインさんたちは考えているようだ。何せマモンとの戦いの後に交換チケットに追加された武器らしい。そしてゲイ・ルーンを貰った人もある可能性がある武器だと言ってた。
これで報酬会議は終わり、攻略の話に移るとアーレイたちから結婚の話を聞かされた。お相手はアマゾネスらしいです。
「おめでとう」
「話は最後まで聞けよ!? こっちは戦いに勝ってようやく脱出出来ると思ったら、結婚しろとか言われたんだぞ!」
「ふふ…私は家庭内に冷たい風が流れているよ…」
「しっかりしてくれよ。父さん。ゲームの中の話だろ?」
それでもマダムさんや雫ちゃんは二人に冷たい態度を取っているらしい。流石に放置は出来ずルインさんが二人と話すことになった。
その後、みんなに衝撃を与えたのはやはりクロノスクロックだ。ただ時空切断などで時間停止の空間を斬ることで破ることは可能らしい。もっとも時間を停止させられる前のタイミングで時空切断を使わないといけないらしく、かなりの難易度だと鉄心さんが教えてくれた。
他にも神との契約を果たした人が次々現れている。みんなそれぞれ頑張っているみたいだ。この背景にはやはり強い武器が次々出回っていることがある。俺も負けてはいられないな。
最後に作戦の大まかな流れが決まり、各国の王の前で作戦内容を話し、正式に魔王レヴィアタンの討伐作戦が明日の夜に決まった。
帰って来た俺はナオさんから和狐とブランの指輪を受け取り、次のセフォネとファリーダの指輪を注文した。するとここでミュウさんが苦し気な様子だ。どうやら和狐のウェディングドレスは完成しているがブランはまだらしい。原因は最近の結婚ラッシュだ。みんなマリッジバーストを使いたいから当然ミュウさんは大忙しで時間が取れないらしい。
それに対してナオさんは指輪職人はたくさんいるから余裕がある。完全に抜き去る気満々だ。
「うぉおおお! 抜かせるか!」
「競争じゃないんだけどな」
「生産職も大変なんですよ」
生産職には生産職の戦いがあるらしい。帰って来た俺はイクスとノワと寝る事にする。ここで寝る事のスペシャリストであるノワが寝方を決める。
「…まずにぃがイクスを後ろから抱きしめて寝る。次にノワがにぃの背中に抱き着いて寝る。これで完璧」
「俺は何でもないがノワが前じゃなくていいのか?」
「…ん。にぃの背中の寝心地は炬燵に匹敵する」
「分かる気がします」
俺の背中が炬燵に並ぶとは思えないがイクスが同意しただけに強く否定できない俺だった。




