#106 連携契約とヴェルドーレ村
#103に馬上戦闘について説明を追加しました。
ユウナさんが帰ってくるまで時間があるだろう。その間にあさりの料理はハルさんに任せて、俺はルインさんたちと話し合う。主に今まで貯めた素材の売買とこれからのことだ。
「タクト君もクランを作ったのね」
「はい。お店をするなら必要と言われたので」
俺がそういうとルインさんたちが微妙な顔をする。
「タクト君…本気で一人でお店をするつもりだったのね…」
「そうでしたね」
『はぁ~』
全員からため息が出た。そこまで酷いかな?
「あのね…一人でお店を切り盛りなんて出来るわけないでしょう」
「…出来ませんかね?」
『無理!』
断言された。
「攻略と生産が両立出来るならそもそも戦闘職と生産職で別れないわよ…」
言われてみればそうだな…いつのまにこんなことに…モッチさんが原因じゃないか!
バイトと冒険を繰り返していたから、いつの間にか両立出来るものと思い込んでいた。俺の頭の中でモッチさんがてへぺろと笑っている姿が過る。おのれ!
「それでタクト君はどうするつもりかしら? 強引にでも両立してみるか。それともお店と冒険どちらを優先するか」
あー…どうしよう。アンリ王女様やリーゼ様はお店に期待されてるし、でも優先するなら冒険だよな…リリーたちもこっちを選ぶだろうし。
「自分も毎日お店をするつもりはないんですが、それではダメですかね?」
「ダメではないけど、勿体無いわね」
勿体無い?
「えぇ。これだけしっかりしたお店をほったらかしにしておくのは勿体無いわ」
「それはわかりますが…どうすればいいですか?」
「タクト君、私たちとクラン同士で連携契約を結ばないかしら?」
連携契約?なんじゃそりゃ。
「説明を受けなかった? クランがいくつも連携するとギルドになるって」
あぁ。クランがいくつも集まるとそうなると聞いたな。集まるのに必要なのが連携契約なわけか。
「私たちと連携契約を結ぶとタクト君に代わって、私たちがお店を運営することが出来るわ。ただしタクト君のレシピを私たちが教えて貰うことになると思うけど、それが嫌なら」
「別にいいですよ」
全員がポカンとする。ん?お店やってくれるんだよね?なら是非ともお願いしたいんだが…
「いいの? タクト君のお店だし、料理もタクト君が考えたものなのよ?」
「あー…このお店は俺のじゃなくて、NPCから借りてるものです」
「モッチさんかしら?」
「はい。お店を出しても出さなくても自由にしていいと言われたので、現在は成り行きでこうなっている感じなので任せれるなら任せたいです。料理も難しい料理は作ってませんよ」
俺がそう答えると生産職が話し合う。
「ルイン姉…タクト君が眩しくて辛いよ」
「言わないで…ミュウ。私も辛いのよ」
「でもタクト君と連携を結べたら、勝ち組確定だよ? ルイン姉」
「えぇ。攻略は独走してるし、これだけの素材を集めているからね…連携を結ばない手はないわ。タクト君のお店ならプレイヤーもたくさん来るはず。だから話を持ちかけたんだけど…」
「私はプレッシャーです。タクトさんは簡単って言ってましたが本当でしょうか?」
「…確かにタクト君の簡単のレベルを甘く見るのは危険ね」
「危険かもしれないけどさ。こっちは美味しい話だし、他の生産職と連携されるわけにはいかないよ?」
「そうね」
ルインさんたちの会議が終わったみたいだ。
「タクト君は連携するの本当にいいのね?」
「はい」
「なら連携契約を結びましょうか。悪いけど、ルールをしっかり決めたいから時間いいかしら?」
「大丈夫です」
まず、お店の売上は半々で分け合うことにした。俺はお店を提供し、食材はルインさんたちが負担することになった。料理の値段についてはルインさんに丸投げ。正直俺の料理の値段がいくらになるか全くわからないんだよね。
ルインさんたちは平日の夜と休日のお店を担当して、俺は平日の午後で時間に余裕がある時にお店をすることになった。
素材の売り買いについてはこれまで通り、ただし俺はルインさんたちを優先して、ルインさんたちは俺の依頼を優先することになった。
そしてルインさんたちにとって、重要なのがヘーパイストスだ。これは本人を呼ぼう。
「ヘーパイストス。ルインさんが話があるそうだ。新しい武器素材も手に入ったからちょっと来てくれ」
俺がそういうと慌てて、現れるヘーパイストス。
「新しい武器素材はどこですか!」
やはり一番気になるのは、そこか。
「悪いけど、先に私の話をさせてくれないかしら?」
「あ!? ご、ごめんなさい! えっと、それで話というのはなんですか?」
俺はヘーパイストスにクランの連携の話をする。するとヘーパイストスは賛同してくれる。
「ヘーパイストス君はタクト君と専属の鍛冶契約を結んでいるのよね?」
「は、はい! そうです」
「それって、タクト君以外の依頼は受けることが出来ないのよね?」
「その通りです。その代わりに僕はタクトさんから契約金を頂いています」
うん。そうなっているはずだ。だがルインさんにはある思惑があるみたいだ。
「それはタクト君が鍛冶の依頼を受けて、あなたにそれを頼んだ場合はどうなるのかしら?」
「その場合はタクトさんが僕に依頼をすることになるので、問題ないはずです」
なるほど。ルインさん、考えたな。
「じゃあ、タクト君。鉱石とか優先して手に入れてあげるから、ヘーパイストス君を貸してくれないかしら?」
この話は俺が決める話じゃないな。
「どうする? ヘーパイストスが決めてくれ」
「僕はたくさん武器を作れるなら作りたいです。ですが僕はタクトさんの専属鍛冶師です。依頼はタクトさんを優先しますがそれでもいいですか?」
嬉しいこと言ってくれるね。
「問題ないわ。専属鍛冶師なら当然でしょうからね」
「では、よろしくお願いします」
「ふふ、こちらこそ」
ヘーパイストスの商売はそのまま俺に還元されることになった。ルインさん曰く、ヘーパイストスは俺の仲間だから当然という話だ。
それならヘーパイストスが稼いだお金はヘーパイストスのために使おうと思う。これは俺が勝手に決めたこと。
ハルさんが作ってくれたあさりの網焼きが出来たので、リリーたちを呼び、連携の話をするとリリーたちは冒険したいというとことで連携に賛成。因みにあさりの網焼きは本人の希望で鑑定はしないことになった。
リリーたちは美味しそうに食べているし、問題ないと思うんだけどな。
ルールもしっかり決めて、ルインさんたち『ルイン商会』と連携することが決まった。
それはそうと…
「凄い名前ですね…」
「私が決めたわけじゃないわよ!?」
「ルイン姉がいい名前出せなくて、満場一致で決まったんだよ!」
「くっ…」
あーあー。それはルインさんが悪いな。
話が終わったので、へーパイストスに魔晶を見せる。
「これはマナが結晶化したものですね。僅かに魔力を感じます。これだけでも武器は作れると思いますが、数が少ないので、どうしますか?ガラスの剣の強化にも使えると思いますが」
お!ガラスの剣の強化も出来るんだ。でも新しい武器も気になる。何せ魔力を宿した素材だからな。
うーん…一旦作ってみてから判断したほうが良さそうだな。重い武器だったら、イオンの武器には合わないからな。まぁ、そうなったら、恋火の武器になるだけだと思うけどね。
とそういえばガラスの剣の素材もいるんだったな。やることたくさんありすぎだ。
そして俺は忘れていたがロコモコとエアリーの生産能力を試してみる。そしてゲットできたのがこちら。
山羊乳:レア度3 食材アイテム 品質E
ゴートの採乳で手に入る乳。牛乳より脂肪球が小さく、乳糖が少ないのが特徴。
雲羊の羊乳:レア度4 食材アイテム 品質D
クラウドシープの採乳で手に入る乳。牛乳より栄養素が高く、まろやかな味が特徴。
雲羊のウール:レア度5 素材アイテム 品位D+
雲羊の毛。品位が高いほど、高値に取引させる。
耐寒性に非常に優れており、防具に使用すると酷寒の中でも快適に生活できるほど暖かい。
レア度5のアイテムゲット!しかしそれを見ていた視線が二つ。ミュウさんとハルさんだ。
「「売ってくれるよね(ますよね)?」」
「…はい」
くっ…乳を飲みたいが量が少ない…もっと欲しかったが、どうやらリリーたちの擬似竜化と一緒で一日一回しか出来ないらしい。それでも一日一回確実に手に入ることを考えたら、十分だろう。
そして二人から逃げられそうにない…飲むのはまた今度だな…無念だ。
折角なので雲羊のウールのローブをミュウさんにお願いしたら、二つ返事で作ってもらえることになった。せっかくなのでアラネアの糸、各蜂の針、ヤドカリの甲羅は売りました。結構の儲けだ。
そんなことをしているとユウナさんが帰ってきた。無事に称号をゲット出来たようだ。どうやら育てた野菜や薬草の品質がよくなる効果らしい。農家なら是非欲しい能力だろうな。
ルインさんが謝ってくるが俺は農家じゃないし、連携したから問題ないさ。寧ろ農家の称号は農家が持ったほうがいいだろう。思いっきり魔法使いの称号奪ってる俺が言うのもなんだけどね。
早速畑に行こうとするユウナさん。そこでルインさんから疑問が上がる。
「その農村には私たちだけでいけるのかしら?」
固まるユウナさん。そして俺を見る。はいはい。一緒に向かいますか。
メンバーはリリーたちだ。新しい村と聞いたからには譲れないらしい。気持ちは解るので、連れていきます。もう一体は前回洞窟で出番をお預けしてしまったグレイにした。
では、農業ギルドに向かう。そして登録完了。ネフィさんたちが言っていた通り、畑と鍬、スコップ、ジョウロ、移植ゴテなどの道具を貰えた。
そして説明を受ける。どうやらここも現実よりの設定みたいだ。畑は耕さないとダメだし、水をあげないと野菜は枯れてしまうらしい。
現実との違いは草刈りがいらない、害虫の心配もいらない点だ。それだけでもだいぶ楽だろう。品位は種や苗の元々の品位、肥料や土の質などで決まるそうだ。
それと虫の心配はないと言ったがモンスターに襲われることはあるらしい。農業ギルドのクエストはそういうモンスターの撃退するクエストと出来上がった野菜を納品するクエストが主みたいだ。
俺は早速、じゃがいものタネイモ、レタスの種のクエストを受けようとするが、衝撃のクエストを発見した。それがこれです。
討伐クエスト『サトウキビ畑を守護』:難易度C
報酬:サトウキビの苗
迫り来るボアたちからサトウキビ畑を守り抜け
な、何だってー!?サトウキビだ!マジですか!受けます!絶対に受ける!受けないやつはいないだろ!このクエスト!だがこのクエストの重要性をわからない人がいた。
「サトウキビって何?」
ユウナさんだ。そんなユウナさんに頭を抱えるルインさん。そうなりますよね。
「この報酬がどうかしたの? タクト」
「サトウキビ…ですか? タクトさんがそんなに食いつくなんてどんな食材なんですか?」
リリーたちは知らないだろうな…俺はこの食材をずっと待っていたのだ。
「このサトウキビからは砂糖が作れるんだよ」
「「「「砂糖?」」」」
そうか…砂糖を知らないか…ならば分かりやすく言ってやろう!
「早い話、これを使うと甘くて美味しい料理が作れるようになる!」
「「「「ッ!?」」」」
リリーたちが驚き、その後目に火が宿る。やる気MAXだ。
「タクト! 早く受けよう!」
「そうです! 絶対クリアして見せますから!」
「今日の私たちはいつもと違います!」
「本気…出します!」
「ガウ!」
そして当然、ユウナさんも声をあげる。
「砂糖!? やる! 絶対やる!」
ルインさんがユウナさんを制止する。
「止めておきなさい。結構難易度高いわよ? このクエスト」
確かに難易度は結構高いな。だが俺はやるぞ!
「タクト君は受けるのよね?」
「愚問ですね」
「ならタクト君に任せましょう。私たちは他の野菜を育てたほうが効率がいいわ」
ユウナさんは渋々納得する。そしてプレッシャー。でも負けるつもりはない。
というわけでクエストを受け、全員でヴェルドーレ村に向かう。
道中はカラスとグレーウルフが出たくらいだ。俺たちは必要無かっただろうな。
到着すると本当にファンタジーの農村って感じだ。俺はほのぼのしてて、結構好きだな。こういう空気。
ここでルインさんたちと別れる。どうやら個人の討伐クエストは見学とか出来ないらしい。それなら別れて俺はクエスト、ユウナさんからは畑でわかったことを教えあったほうが効率的だろう。
そして指定された畑に向かうとおばあちゃんのNPCがいた。
「すみません。農業ギルドでクエストを受けて来たものです」
「おぉ~…受けてくれたのかい…ありがとねぇ~。大した報酬は出せないけど…ボアから私の大切な畑を守っておくれ」
なんか、弱々しい感じのおばあちゃんだな。とはいえ報酬は大したものだよ!おばあちゃん!
「任せて! リリーたちにお任せだよ!」
「違いますわ。リリーお姉様。そこはリープリングと名乗らなられけば」
「そうだった! リープリングにお任せだよ!」
セチアが何気に宣伝活動している。ま、そういうことも必要なのだろう。では、クエスト開始だ。
名前 ロコモコ クラウドシープLv1
生命力 50
魔力 20
筋力 5
防御力 30
俊敏性 20
器用値 5
スキル
体当たりLv1 危険察知Lv2 逃げ足Lv1 育毛Lv1→Lv2 採乳Lv1→Lv2 耐寒Lv1
名前 エアリー ゴートLv1
生命力 15
魔力 1
筋力 10
防御力 5
俊敏性 10
器用値 1
スキル
角擊Lv1 危険察知Lv1 逃げ足Lv1 跳躍Lv1 採乳Lv1→Lv2




