#1050 ハーベラスクエスト
ログインした俺は先に予定通り、ハーベラスの進化クエストをすることにした。というわけで獣魔ギルドに行ってクエストを受ける。
転移した先は石で作られた建物の中だった。寒気がするほど寒く、白い冷気が漂っている。すると青い炎が点き、玉座にとんでもないオーラが発生するとそこから一柱の老人の神が現れた。
冥府神王ハデス?
? ? ?
あれがゼウス、ポセイドンに匹敵するギリシャ神話の冥府神ハデスか。なんて静かで冷たい殺気だ。今回はハデスが相手じゃないことは分かっているから比較的緊張感はない。
「ほぉ…あの小娘の契約者か」
「っ!?」
すみません。訂正する。眼光で見られた瞬間、身体が強張り、構えを取ってしまった。
「儂に攻撃の構えを取るか…あの小娘が気に入るわけだ。構えを解くがいい。お主たちでは儂に勝てんことぐらいわかるであろう?」
「…そうですね」
強張った身体を強引に動かして、構えを解く。凄くぎこちなく動いたことが分かる。ハーベラスを見ると俺の後ろで伏せをしていた。こういう時にリリーたちの真似をしなくていいよ。
「今日はそいつの進化でここに来たわけだな?」
「はい」
「では、お主たちの相手を呼ぼう。こい、タナトス」
おぉう。タナトスが来るか。ハデスの死神だから候補には上がっていたけど、ローマ神話でハデスと同一視されているプルートやタナトスの双子の兄弟であるヒュプノスなどが候補として考えていた。まぁ、プルートは惑星魔法で名前が出ているから無いとは思っていたけど、ヒュプノスは眠りの神でケルベロスが眠る神話と少し被っているから可能性が高いと思ってたよ。
地面から黒い霧が噴出するとその中から死神が現れた。顔はイケメンなんだが、顔半分は火傷の跡のようになっている死神だった。武器が紫色の美しい刃に髑髏と骨がデザインされている大鎌に腰には剣もある。タナトスと言えば剣のイメージが普通のはずだ。少なくとも死神の鎌を使っていた話を俺は知らない。
「王よ。こいつらが今日、狩るべき命か?」
「そうじゃ。決まりに従い、こやつに勝てたなら報酬としてわしが管理しておる地獄門番の宝珠をやろう」
「分かりました」
「良い返事じゃ。場所を外に変えるぞ」
そう言うと冥府のフィールドに転移した。俺は近衛を抜き、エンゼルファミーユを展開する。ハーベラスも戦闘態勢になったところでタナトスが魔素化を使用して消える。俺は構えを維持して敵を待ち、ハーベラスには俺を注意しながら動き回ることを指示した。
さて、どちらを狙って来る。まぁ、俺だろうな!すると俺の下から上に大鎌で斬りかかって来た。俺は距離を取って、躱す。いきなり殺す気満々の攻撃で来たな。流石タナトスと言うべきか。
タナトスは凡人をハデスの元に連れて行く死神で非情な神として知られている。ただ非情だからと言って、強いとは限らない。人間の罠に引っ掛かり捕まったこともあるし、ヘラクレスには魂を奪われている。だからと言って油断していい敵でもないんだけどさ。
ここで睨み合っていたタナトスが後ろに下がった。大技はさせない!
「閃影! っ!?」
タナトスは剣を抜き、俺の閃影を止めた。更に鎌を振りかぶって来る。まさかの剣と大鎌の二刀流かよ!
俺は後ろ跳びして攻撃を躱すと多乱刃が飛んできた。それも上に逃げて回避すると背中を天井にぶつける。このフィールドは広い洞窟のようなフィールドで天井が存在していた。そして天井に背中をぶつけた俺を見たタナトスは剣を俺に向けると死の宣告に掛かってしまう。
ここでハーベラスの火炎弾の連射がタナトスに襲い掛かり、俺はその間に神剣グラムに武器を変え、勝利の加護で死の宣告を解除する。その間に戦闘していたハーベラスは俺が指示した作戦通りで距離を開けて、戦闘している。
しかしタナトスは火炎弾を剣で斬り裂き、炎ブレスは大鎌を風車のように回転させながら間合いを詰めて来た。ここでタナトスの姿が消えるとハーベラスの横から現れたタナトスは大鎌で腹を狙う。
「させるか!」
俺が斬りかかったことで大鎌を防御に使い、剣で反撃してくるがそれを俺は神剣グラムで弾いた。これで大鎌が自由になるがそれよりも俺の攻撃の方が速かった。
「星震!」
これでタナトスはぶっ飛び、ハーベラスがそれに気づいて猛毒ブレスで追撃に出る。しかしタナトスは大鎌を大振りすると黒い竜巻が発生し、猛毒ブレスを巻き込みながらこちらに向かって来た。やはり名前持ちの神クラスになると技と使い方も豊富に見せてくれるな。それならこちらは黒竜巻をぶち抜いてやる。
「爆風波!」
神剣グラムの爆風波が黒竜巻とぶつかると黒竜巻を貫通し、タナトスに襲い掛かるとタナトスは死神の衣でガードした。そして大鎌を振りかぶって来る。
「神技! クレッセント・タナトス!」
紫色の小さな三日月の刃が高速回転して無数に飛んできた。
「多乱刃!」
しかし多乱刃の刃はあっさり弾かれてしまった。それなら吹き飛ばしてやる。
「暴風壁!」
暴風の壁にぶち当たった三日月は吹き飛ばされることなく、突破して来た。これでダメなら逃げ道がない。
『『『『グラビティ』』』』
俺たちの前に発生させた超重力に三日月の斬撃は地面に落ちて、消滅する。それを見たタナトスは再び消える。
「来るぞ! ハーベラス!」
「「「ガゥ!」」」
俺たちは現在三日月の斬撃に囲まれて、身動きが取れない。仕掛けて来るならここだろう。すると俺の後ろを警戒していたハーベラスの正面からタナトスは現れ、ハーベラスに大鎌を振りかぶって来た。
ここでハーベラスは火炎爪を発動させて、疾駆と激突を駆使して、大振り状態のタナトスに突きを放った。今まで接近戦を嫌って来たハーベラスの吶喊攻撃に振りかぶっていた大鎌でガードをしてしまう。これはタナトスの選択ミスだ。
「「「ガァアアア!」」」
ハーベラスは顔がフリーなので至近距離での炎ブレス、暗黒ブレス、猛毒ブレスをそれぞれ別の口から同時に放った。ここで俺は三日月を防ぎきって、ハーベラスの隣に立つ。するとタナトスは地面に剣を突き立てる。
「神技! タルタロス・クラック!」
タナトスの剣から地面に魔力が走り、俺たちに向かって来た。
「躱せ!」
俺たちは距離を取ると更にタナトスは仕掛けて来た。
「神技! プシュケー・アリスーダ!」
俺たちは空間から出現した鎖に拘束される。すると地面を走った魔力の跡から半透明の謎の腕が俺たちに向かって伸びて来た。
「く! あまり得意じゃないがやるしかないな!」
俺は神剣グラムを手放すと神経を全て神剣グラムの操作に集中する。
「念動力!」
神剣グラムは空を動き回ると鎖の全てを斬り裂き、自由になった俺たちは謎の腕に捕まれそうなところで回避し、謎の腕に俺とハーベラスは攻撃するが擦り抜けるが消滅する。攻撃で防ぐことは出来ないが一度掴めなかった時点で消滅する技みたいだな。
「「「ガァアアア!」」」
ハーベラスが何かに気付いて、タナトスに攻撃を仕掛ける。俺も見ると魔方陣を展開していた。あの魔方陣は不味い!
「魔法阻害!」
しかし気付くのが遅かった。宇宙魔法プルートが発動する。逃げ道はない。絶対防御で防げる魔法なのか?ハーベラスはシャドールームで助ける事が出来るだろうが相手は死神、蘇生とか許してくれる存在じゃないだろう。
テレポートや空間歪曲で躱す手もあるが狭いこの空間だとプルートの攻撃範囲から逃げる事は出来ないだろう。
「…やるしかないか」
俺は神剣グラムをしまって、新たな剣を取り出すと身体中に静電気を受けたような状態になる。
「くぅぅ…はは。心配するな。思う存分暴れさせてやるよ! バスターカリバー!」
プルートに天井全てを一瞬で包み込む漆黒のバスターカリバーが放たれ、プルートは消滅する。
「な…に…? っ!?」
絶句しているタナトスは俺が放つ圧倒的な力の奔流に目を見開く。
「馬鹿な…その力は無限だと!?」
「悪いが制限時間があるんだ。一瞬で決めさせて貰うぞ!」
『『『『アクセラレーション!』』』』
「く…舐めるな!」
俺のインフィニットエクスカリバーとタナトスの剣が触れた瞬間、タナトスの剣をインフィニットエクスカリバーは擦り抜け、タナトスを斬り裂く。するとタナトスの剣が砂となり、タナトス自身も消滅する。灰燼の効果だ。5分どころか瞬殺かよ。えげつなさすぎだ。
「まさか我々神が最も嫌う属性の剣を使うとはな…人間ごときが使っていい力ではないぞ」
「生憎この武器を使っていいかどうかは持ち主である俺が決める。死神か何かは知らないが他人が口を放むんじゃねーよ」
俺がそう言うとタナトスは笑みを浮かべて消滅した。気持ち悪い。ここでインフィニットエクスカリバーを俺がしまうとハーベラスが舐め舐め攻撃をして来た。
「分かった。分かったって。ハーベラス。こら、お座り!」
「「「ワン!」」」
ちゃんとお座りをするハーベラスであった。ここで俺たちはハデスの元に転移する。するとハデスは頭を抱えていた。
「やれやれ…とんでもない切り札を使いおって。エレボスが震えたのはゼウスとテューポーンが戦って以来じゃぞ」
そんなとんでもない攻撃を放ってしまったか。こわ。
「なんか…すみません」
「謝るでない。勝ちは勝ちだ。これが約束の報酬じゃ。受け取るがいい」
俺がハデスの手から離れ、俺の所に飛んできた地獄門番の宝珠を受け取る。
「ありがとうございます」
「うむ。さっきの力はゼウスやポセイドンに使ってやるといい。儂が許可する」
「…二柱とも、嫌いなんですか?」
「嫌いというか合わんだけじゃな。じゃから一度ゼウスとポセイドンがビビる姿を見てみたい思ってしまっただけじゃ。頭の片隅にでも覚えておくといい」
ハデスがそう言うと俺たちは転移する。ハデスは冥府の神で陰キャラのイメージがどうしてもある。それに対してゼウスとポセイドンは陽キャラだ。馬が合わないのは、しょうがないと思った。




