#1043 オリハルコン武器作製開始と月輝夜クエスト
いつも読んで下さり、ありがとうございます。
新章に入り、もうすぐ年末年始ということでクリスマスと年末年始の更新について、告知させて貰います。
まずクリスマスですが24日と25日の連続更新をします。時間はいつも通りです。そして大晦日と元旦にはそれぞれ三話更新をする予定で現在執筆中です。こちらにつきましては25日の更新で改めて告知させて頂きます。
俺は近衛家で目を覚ますと母さんが作ってくれた朝食を食べる。すると三人が降りて来る。
「あらあら。三人共、誠吾君がいる事を忘れているみたいね」
「「「「へ?」」」」
俺と佳代姉たちの視線が合う。そこには今まで見たことがないジャージ姿の三人がいた。
「昔は可愛いパジャマを着ていたのに今はそんな格好で寝ているのか?」
「「「ち、違う!」」」
見事なシンクロだ。必死に言い訳をする三人を見ている父さんと母さんは微笑んでいる。平和な朝だった。その後、佳代姉の車の運転で俺は学校へと行くと理恋たちが心配していた危険運転は無かった。そのことを二人にメールで伝えるとツッコミのメールが来た。これは俺ではなく、佳代姉に送信してもらいたいものだ。
学校が終わり、スーパーに買い物に行く。冷蔵庫に何も無いし、土日の買い物をしないといけない。その買い物が終わり、俺は家に帰るとゲームにログインするとメールが来ていた。どうやらリビナとリアンの指輪が完成したらしい。昨日のうちに出来ていたみたいだけど、色々気を使って貰ったようだ。受け取りに行く時にお礼を言うとしよう。
ここでリリーたちから少し待つように言われると一度出て行ったセチアが手に謎のポーションを持って、戻って来た。その瞬間、俺は逃げ出そうとするがセチアに捕まった。突然の事態に反応が遅れてしまった。
「逃がしませんよ? タクト様」
「はぁ…そもそもその薬はなんだ?」
「モーリュを使った薬です。昨日の時点でミールの槍が完成してましたので、余った時間で作りました。偉いですか?」
「あ…あぁ…え、偉いな。セチア」
顔が引きつっているのが自分でもわかる。誕生日が終わったばかりなのになんて仕打ちだ。
「ふふ。ありがとうございます。では、味見をどうぞ!」
そう来るよな。分かってたよ。一応調べてみる。
解呪ポーション:レア度10 通常アイテム 品質S+
どんな呪いも解除することが出来るポーション。
俺は手に取り、蓋を開ける。もう逃げ場はない。大丈夫だと信じるしかない!
「…まずい」
「え、えーっと…普通の感想過ぎて反応に困るんですけど…」
「飲んでみるといい。セチアなら大丈夫かも知れない」
グリンピースだけでジュースを作ったかのような味がした。グリンピースが大好きなら何も問題はないが嫌いな人間にとっては地獄のポーションだ。因みに俺は好きではない。
「…美味しいじゃないですか」
「やっぱりそうなるよな」
セチアは野菜全般好物だから大丈夫だと思ったよ。きっとリリーたちは大嫌いな味だな。部屋を出ると部屋の前で丸まっていたユウェルがヘーパイストスたちが鍛冶ハンマーを完成させたことを教えてくれる。
更に下に降りるといきなり狼のフードマントを来たノワが飛び出して来た。
「…がおー」
残念ながら怖さより可愛さが勝っていた。更に柱に隠れている新しい衣装で恋火を見つけた。
「へ、変じゃないですか?」
「…恋火も和狐も心配しすぎ。二人は可愛いから問題ない」
「俺もそれには同意するがその中にはちゃんとノワも入れような」
「…ん」
二人の服を鑑定する。
黒妖犬のフードマント:レア度10 防具 品質S+
重さ:10 耐久値:1200 防御力:1200
効果:精霊殺し、光吸収、魔力枯渇、魔霧、道連れ、呪撃殺、呪滅撃、幻狼、群狼、闇転移、闇潜伏、魔素化、狂化、魔素解放、呪い無効、
バーゲストの毛皮から作られたローブ。フードには狼の耳があり、被ることで狼になることが出来る。呪いのスキルを無効化し、自分からは呪いを与えることが出来るロープ。
天戦巫女の羽衣:レア度10 防具 品質S
重さ:5 耐久値:2000 防御力:1000
効果:高飛翔、神速、仙気、神気、魔法耐性、物理耐性、多重障壁、無我、瞑想、魔力回復、高速再生、光化、起死回生、天候無効、環境無効、天の加護
天の羽衣を戦闘用の巫女服にアレンジした衣装。
恋火の服は先の二人と違って、軽くなっているのはミニスカートになっている事と肩が露出しているせいだ。
「なんであたしの服はこうなんですか?」
「恋火お姉様はいつもミニスカートですし、恋火お姉様の戦闘スタイルを考えると軽量化した方がいいですよ」
「うぅ…正論です…で、でも色々見えませんか?」
「肩と太ももしか見えてませんよ」
恋火に対してノワはノリノリだ。
「…ノワはにぃを食べる狼になった」
「普通逆じゃないか?」
「…そうでもない。にぃとにぃの料理をいつも狙っているノワたちはみんな狼」
何故か凄く説得力があった。ここでユウェルに急かされて、リビングに行くとヘーパイストスたちがアドラノスの鍛冶ハンマーを用意していた。
アドラノスの鍛冶ハンマー:レア度10 専用装備 品質S+
効果:神技【アドラノス・ラヴァ】、惑星魔法【マーズ】、灼熱、神気、神障壁、神火、獄炎、紅炎、煉獄、炎熱支配、再生の炎、大噴火、溶岩流、金属壁、金属支配、武装創造、火砕流、熱無効、寒無効、光球、神撃
特殊効果:オリハルコンの鍛冶が可能
炎の神アドラノスの力が宿った鍛冶用のハンマー。戦闘にも使用することが出来て、あらゆる炎を操る事が出来る。またどんな金属も溶かして、武器にしてしまう能力を持っている。
これを受け取ったユウェルはうっとりした目で見ている。更にリビナの新しい鞭も完成しており、セチアのミールの槍と一緒に確認した。
ゲイミストルティン:レア度10 槍 品質S+
重さ:80 耐久値:2000 攻撃力:1200
効果:神殺し、魔力貫通、暗黒属性ダメージ付与(究)、寄生木、支配無効、加護破壊、魔法破壊、粒子分解
刻印効果:光速激突、無限のルーン、時空貫通
ロイヤルオークの寄生木で作られた槍。いかなる支配を受けず真っ直ぐ投槍することが出来る。また光の神に対して非常に強力な能力を持っている。
爆発蛇の鞭:レア度10 鞭 品質S
重さ:120 耐久値:1250 攻撃力:1500
効果:大物殺し、爆属性ダメージ付与(究)、万物破壊、爆心、破壊の加護
触れただけで爆発する鞭。強く鞭を撃つほど爆発は大きくなる性質を持っており、縛るより相手を打ち付けることに特化している。
ゲイミストルティンはミストルティンを槍にしたものだから性能に変化はほぼないな。セチアが刻印で無限のルーンを選んだのは俺が新たなルーンの可能性を伝えた影響を受けたんだと思う。ミールも練習でそれを意識しているのが分かってしまう。
爆発蛇の鞭は効果こそ少ないが鞭としての攻撃力を見るとかなりの威力があることが分かる。リビナも試しに地面を鞭で打ち付けると結構な爆発が発生した。思いっきり打つとダイナマイトくらいの威力は出そうだ。
今までリビナの鞭はそこまでの威力を発揮して来なかったがこの鞭はリビナの戦い方を変えそうな気がした。
ここでご飯のために全員を呼ぶとちゃんとやって来る。ずっとうっとりしていたユウェルもご飯の言葉だけには反応した。そしてコノハも復帰したらしく、元気にやって来た。アテナとの契約の効果でコノハは神威解放のデメリットが一日になっていた。これを知るためにテューポーンとの戦いでコノハには全力で戦闘して貰った。
ご飯を食べ終えてまずオリハルコンの武器の話をする。
「オリハルコンはどうしますか?」
「タクト様の魔法剣とイオンお姉様の防具が優先ですよね?」
「あぁ…というかオリハルコンを魔法剣に出来るのか?」
「はい。実際に使ってみないと分かりませんが神の金属というだけあって、魔法との相性はかなりいいと思います。もちろん神石などの物とも抜群に相性がいいですね」
それもそうか。それじゃあ、お願いすることにした。
「後、もう一つはどうしますか?」
「リアンの槍にしようと思う。これを使ったね」
俺はカリュブディスの神石を出す。
「い、いいんでしょうか? 私の槍で」
「タクト様が決めたんですから理解してくれるんじゃないですか?」
「そうだといいんですけど」
「何を言ってるんだ? 二人共」
「「「「はぁ…」」」」
みんなが溜息をする。意味が分からないぞ。ここで問題となったのは誰が何を担当するかだ。
「イオンの防具はユウェル、頼めるか?」
「任せろ!」
「俺の剣はヘーパイストスと巨人たちに担当して貰おうと思う。どれだけ強いのが出来るのか分からないからな」
「僕も彼らの実力がまだ分からないので、楽しみです」
イオンの防具を巨人たちに作らせないのは、イオンの気持ちを配慮したからだ。最後にリアンの槍はパンドラにお願いした。
「任せて!」
これでオリハルコンの注文は終わり、次は和狐たちの依頼だが、貯め込んでいるロコモコの毛を使った防具とエクスプロード・バジリスクの魔眼を使った指輪を注文することにした。今後の話をする。
「今日はこれから月輝夜の進化クエストと夜にはサタナキアにリベンジをする予定だ」
「夜は大丈夫なんですか?」
「あぁ。サタナキアの砦攻略の為に完成したばかりの秘密兵器を投入することを決めたからな。ニックさんたちが自信満々だから期待していいと思うよ」
俺も実物はまだ見ていないがあれならアマゾネスたちは手も足も出ないと思う。それでもなんとかしてしまいそうな怖さがアマゾネスにはあるけどね。
その時は実力行使をさせて貰うとしよう。何せテスト期間が迫っている。みんなも出来れば日曜日にレヴィアタン戦を挑むつもりで準備を進めているから今日でサタナキアと決着を付けるつもりだ。
というわけでまずは生産と聖杯を使う。今日はリアンの番だ。
「えーっと…どうしたら、いいと思いますか? 先輩」
「槍で欲しいのが無いなら杖か魔導書になるな」
「それだとどんな物がありますか?」
「杖ならアロンの杖かケリュケイオン。魔導書なら天使シリーズになるな。天使シリーズで一番強いのだとメタトロンの書とサンダルフォンの書のどちらかになるがリアンに向いているのはサンダルフォンの書になるだろう」
サンダルフォンは天国の歌を司っている。リアンとの相性を考えるならどうしてもサンダルフォンな気がするんだよね。
「わかりました! では、サンダルフォンの書をお願いします!」
聖杯からサンダルフォン書が出て来る。
サンダルフォンの書:レア度10 魔導書 レア度S+
重さ:10 耐久値:1000 魔力:100
効果:無詠唱、複合詠唱、光属性魔法効果アップ(究)、火属性魔法効果アップ(究)、歌効果アップ(究)、演奏、天雨、焼尽、聖療、神域、神撃、天使召喚、大天使の加護
サンダルフォンの力が宿っている魔導書。魔導書から歌の演奏が流れる異質な能力があり、天使召喚で大天使サンダルフォンを召喚することが出来る。
御覧の通り、この能力のせいで持ち主はかなり少ない。因みにメタトロンの書は攻撃に特化している。するとリアンは早速演奏を流す。
やはり歌は演奏があるとだいぶ違うな。するとルーナがむくれる。
「リアンお姉ちゃんは私の演奏が嫌いになったんですね…」
「ち、違いますよ!? ルーナさん! 先輩」
「ルーナも戦いたい時があるだろう? それにルーナの演奏はみんなに力を与える演奏だ。残念ながらこの魔導書にルーナの演奏の効果は無いから嫌いになったわけじゃないよ」
「本当ですか?」
「本当です!」
ルーナまで疑うようになってきたな。リリーたちの悪い影響だ。そのリリーたちに影響を与えているのが俺だから結局俺のせいか。俺はそのまま生産作業に入り、終わるとギルドに立ち寄って獣魔ギルドに向かう。
月輝夜の試練を受けると転移する。転移した先はどうやら山のようだ。俺にはこの試練で登場しそうな敵に心当たりがある。俺と月輝夜は山を進んでいくと館を見つけて、敵を確信した。
そして予想通りの敵が館から出て来る。
大嶽丸?
? ? ?
酒吞童子、玉藻前と共に三大妖怪に名前が挙がることもある鈴鹿山の鬼だ。鈴鹿山は現代で言う所の三重県の鈴鹿山脈で鈴鹿山は昔の呼び方となる。
この鬼は修練の塔で登場している坂上田村麻呂が妻の鈴鹿御前と共に討伐した鬼だ。というかこの鬼の討伐を経て、二人は夫婦になっている。
見た目はオーガを日本の鬼にした感じだ。見事な筋肉で一つの太刀が見える。あれが三明の剣の一本だとすると顕明連だろうな。伝説の通りなら蘇生の能力がある神剣のはずだ。
残りの二本である大通連、小通連は伝説の通りなら鈴鹿御前に盗られていると見るべきだな。
三明の剣には二つの話があり、元々大嶽丸の持ち物で鈴鹿御前が大通連と小通連を盗る話と三つとも最初から鈴鹿御前が持っており、大嶽丸は持っていない話がある。その結果、最初の物語がこのゲームでは適応されているように見えたのだ。
「ん? 貴様は…田村麻呂か!」
「違うぞ」
「嘘を付くな! 俺様の目はもう騙されんぞ! あの時、首を斬られた復讐をしてやる!」
そう言いながらいきなり斬りかかって来た。坂上田村麻呂には文句を言わないといけないな。相手の攻撃に対して月輝夜が対処に動く。
「グォオオオ!」
月輝夜の魔剣メガロリュカオンの一撃を受けて両者が後ろに下がる。
「ぬぅ! なんだ? この見たことは無い鬼は? だが鬼と一緒にいるならやはり貴様は田村麻呂だな!」
鈴鹿御前は天女とされていたり、第六天魔王の娘だとかされている。だから月輝夜を鈴鹿御前と勘違いしても無理はないのだが、大問題が存在している。
「月輝夜、メスだったのか?」
「グォ!? グォオオオ!」
全力で首を横で振られた。それを聞けて良かったよ。男の名前にしているし、上半身は裸みたいなもんだから大問題が発生するところだった。しかしそうなると鬼と一緒にいる奴は田村麻呂にしているみたいだな。面倒臭い敵だ。
「ごちゃごちゃ何言ってやがる! 覇撃!」
「グォオオオ!」
お互いの覇撃がぶつかり合うと月輝夜が押される。
「グ…ォオオオオ!」
二回目の覇撃でなんとか弾くと大嶽丸は距離を詰めており、月輝夜の首を狙う。やらせるか。
「疾風突き!」
俺は太刀の刃を下から疾風突きで突き上げ、強引に空振りさせる。
「てめぇ」
「グォ!」
「おっと…その刀は神刀か? しかもかなり上位の神の力が宿ってやがるな」
「ご名答。阿修羅王から授かったその剣にも負けないぜ?」
さて、正体を言ってくれるかどうかだな。
「俺様の顕明連について、よく知っているようだな。だが、勝負を決めるのは剣の性能じゃね。力だ! 黒雷!」
「そうだな! 雷光刃!」
雷光の刃が黒雷を斬り裂く。それを見た大嶽丸を笑む。
「強いな…お前たち…俺様も本気でやらせて貰うぞ! 魔素解放!」
「グォオオオ!」
大嶽丸の魔素が膨れ上がる。これに対して月輝夜も魔素解放を使うと二人の魔素がぶつかり合う。
「お前も使えるか…だが、まだ強さが足りてねー!」
「グォオオオ!」
二人の剣がぶつかり合うと一瞬つばぜり合いになるが月輝夜がぶっ飛ばれる。そして次に俺を狙ってくる。攻撃の速さも筋力もあるからかなり強いがそれでもまだまだ遅い。
「雷光! 雷光刃!」
「ははは! 速いな! お前! だが、俺様の腕を斬れるか?」
確かにかなり硬い。だが、近衛には破魔の力がある。斬ってやるさ!
「あぁあああ! らぁ!」
俺は見事に大嶽丸の腕を斬り裂いた。
「どうだ。ッ!?」
俺は魔素に捕まれるとそのまま森の木々に押し付けるようにされ、次々木々を倒しながら遠くにぶっ飛ばされる。
「ロコモコのローブに感謝だな…陽光」
俺は生命力を回復しながら、大嶽丸を見ると斬られた腕の先から魔素が集まっており、手を形作っていた。俺はあの魔素の手に捕まったのか。更に大嶽丸は腕を拾うと腕がくっつく。俺をわざと煽って、俺に本来なら致命傷となる攻撃をして来たわけだな。見た目は筋力馬鹿のように見えるけど、賢いぞ。こいつ。
「残念だったな…氷剣! 氷槍!」
大嶽丸の周囲に氷の剣と矛が現れる。武装射出か!
「武装射出!」
飛来する氷の剣と矛が不自然に動き回りながら襲い掛かって来たと思ったら、俺を囲むように地面に刺さる。何かやばい!
「氷爆!」
氷の剣と矛が起爆し、俺は凍り付く。だが、すぐに解除されるとバスターカリバーの一撃が迫っており、空に飛び上がり、躱すと大嶽丸の姿が無かった。次の瞬間、天言と第六感が頭上からの危機を伝えてくれて、俺は魔素化で現れた大嶽丸の攻撃を心眼で躱すが躱した方向を読まれて、拳でぶっ飛ばれる。
「いって~…なんだ?」
硬い物にぶつかったと思い、見ると月輝夜が凍り付いていた。耐性とか無いもんな。というかこれはかなり不味い状態だぞ。大嶽丸が更に追撃に来る。
「断刀!」
月輝夜ごと斬り裂こうとする斬撃が迫る。強激突の効果で逃げ道は無い。なら前に出るしかない。
「雷光刃!」
俺は再び刀を持っている腕の切断を狙う。しかしそこで先程とは違う点に気が付く。さっきよりも硬いのだ。これは強化復活まで持っているのか。
「おぉおおおらぁあああ!」
辛うじて斬り裂くことに成功する。次の攻撃は俺では斬り裂けそうにないな。すると魔素の腕が伸びて来る。二度同じ技が通用するか。
「雷光!」
「ぐぁあああ!?」
『リフレッシュ』
俺は大嶽丸の目を近衛で突き刺し、大嶽丸に近衛の追撃効果が発動する。その隙にエンゼルファミーユで月輝夜の氷結を解除する。復活した月輝夜はすぐさま攻撃に出る。
「グォオオオ!」
魔剣メガロリュカオンから魔狼の咆哮が放たれるがこれは大嶽丸に防がれる。その瞬間に目が治っている。するとここで大嶽丸は後ろに跳びあがる。
「雷轟!」
「雷轟!」
俺と大嶽丸の雷轟がぶつかり合う。
「その神刀に宿っているのはやはり嵐の神か! 面白れぇ! 黒竜巻!」
黒い竜巻が発生する。黒と名が付くなら黒雷と同じ防御不可能なスキルだろう。
「旋風刃!」
二つの風の渦がぶつかり合い、両者共に吹き飛ぶと月輝夜が口から炎ブレスを放つ。すると手で止められてしまう。
「そんなもんが俺様に効くか! 冥波動!」
「グォオオオ!」
大嶽丸の冥波動に対して、月輝夜は魔剣メガロリュカオンの魔王波動でぶつかり合った。ここで俺は動く。
「雷光!」
「ん? 何処へ行く気」
俺は頭上に展開していた空間歪曲に跳びこむと大嶽丸の背後の空間歪曲から飛び出る。それを察知した大嶽丸は振り返り、顕明連でガードに動くが俺の姿はもうない。
「何処へ行き…が!?」
俺は大嶽丸の背後から弱点と思われる首に斬りかかった。二つ目の空間歪曲から出た俺は近くに設置した三つ目の空間歪曲に入り、最初の空間歪曲から襲い掛からせて貰った。
鬼は基本的にパワー重視だ。空間支配はないと読ませて貰った。しかし俺の力が足らず、切断することが出来ない。こういう時に召喚師じゃ無かったらと思ってしまう。
「残念だったな」
「いや、そうでもないさ」
「何? ぐ!?」
大嶽丸がレージングルに拘束される。これで決まったかと思ったが月輝夜が引っ張ってもびくともしない。
「俺様を拘束したことは褒めてやる。だが、力が足りてねーんだよ! ぬ!?」
大嶽丸が逆に引こうとするが月輝夜は地面に足が埋まりながら、耐える。自分の体重を荷重操作で増やして、耐えているのか。月輝夜の頑張りに俺も答えないとな!
「恩恵! やれ! 月輝夜!」
「グォオオオオオ!!」
「何!? ぐぅううううう!?」
俺から巨人の加護を与えられた月輝夜が大嶽丸がぶん回し、大嶽丸を頭から地面に叩きつきた。
『『『『ジャッジメント』』』』
天から裁きの光の柱が次々大嶽丸に直撃する。するとここで大嶽丸の顕明連が輝く。
「神刀解放」
この状態で神刀解放だと?とにかく千載一遇のチャンスだ。攻撃しないといけないだろう。
「神撃! 決めろ! 月輝夜!」
「グォオオオオオ!」
エンゼルファミーユの神撃が直撃した後に月輝夜の諸刃の一撃を使った覇撃が炸裂し、大嶽丸は光となって消える。
「グォ…グォ…」
「油断するな! 月輝夜!」
「グォ!?」
「神刀技! 黄泉還り!」
月輝夜はガードに動くが魔剣メガロリュカオンをすり抜け、月輝夜が斬り裂かれると召喚石に戻される。
「はっはー! 残念だったな!」
「…死後に発動する技は初めて見たぞ」
「それがこの剣の力だからな! これで残すはお前一人だ。あの時のように二対一じゃね。一対一なら俺様が人間に負ける事なんてあるはずがねーんだよ! 煉獄!」
山が火に包まれる。だが、俺には火は通じない。俺はポーションで魔力を回復する。
「そうかよ。それなら二対一にさせて貰おうか」
「何?」
『リヴァイブ。ヒールオール』
月輝夜が全回復状態で蘇生する。
「グォオオオオオ!」
雄叫びを上げる程に元気満々だ。それに対して大嶽丸は忌々しげに俺を見る。
「てめぇ…」
「残念だったな。これでお前が大嫌いな二対一だ」
「調子に乗ってんじゃねーぞ! お前はただの蘇生! だが、俺は違う! 黄泉還りでの蘇生は強化状態をそのまま継続して蘇生する! お前たちがボコボコにしたことで強くなった俺様にお前たちが勝てると思うな!」
ご丁寧に能力説明をしてくれてありがとう。確かに肉体活性、戦闘高揚持ちと顕明連が相性がいいことはよくわかった。お陰で勝ち筋がよくわかったよ。
「グォオオオオオ!」
ここで月輝夜が魔剣解放を使う。これはいい判断だな。同時に俺は月輝夜にガードに徹するように指示した。わざわざ黄泉還りが神刀技だったからあの時、大嶽丸は神刀解放を使う事になった。
逆に言うと黄泉還りは神刀解放中にしか使えない技ということになる。それなら弱点は神刀解放の時間切れだろう。だから俺たちは神刀解放の時間切れまで持久戦を挑む。
その間に月輝夜は三度倒されるが俺が蘇生させて貰った。
「てめぇら…ふざけんなよ! 何度も何度も蘇りやがって! うざってーんだよ! お前は俺様に負けた! 俺様の勝ちだろうが!」
「最初に死んだお前がそれを言うのか? お前なら分かっているだろう? どれだけ負けても最後に勝って生き残った奴が勝者なんだよ」
「グォオオオオオ!」
「く!? な」
ここで神刀解放が解除される。これでこいつが黄泉還りを使う事は不可能となったはずだ。
「まだだ! 俺様は負けねー! 俺様を殺す事は誰にも出来ねーんだよ! 疫病!」
フィールド全体に感染毒の状態にするスキルが使用されるがもう遅い。俺は神息を取り出して、構える。
「神刀解放! 宝刀解放! たっぷり味わらせてやるよ! 雷騰雲奔! 永劫回帰!」
俺の必殺無限コンボが決まり、大嶽丸を倒すが連撃が物凄く続いて、俺は刀を落としてしまう。
「く…」
「まだだ! まだ俺は死ねねーんだよ! 俺から女を奪ったあいつを殺すまでな! 厄災!」
今度は純粋に蘇生したみたいだな。そして俺たちは厄災スキルで発生した闇に飲み込まれると激痛が走る。回避不可能な暗黒属性の全体攻撃スキルか。しかも神魔毒、病気、呪いの状態になってしまった。闇が晴れると俺は近衛と神息を拾って、構える。
「く…逆鱗! 狂戦士化!」
大嶽丸が最後の力を解放する。ここで月輝夜が前に出て、下がるように手で俺に伝えて来る。月輝夜が決着を付けると言うならそれを尊重しよう。
俺が下がると月輝夜も逆鱗と狂戦士化を使うと更に魔剣メガロリュカオンから大量の魔素が吹き出すとその魔素は狼の姿となると月輝夜の身体の中へと入り、月輝夜が更に強くなるが暴走状態となる。
あれが魔剣メガロリュカオンにあった狂化スキルの効果か。あれを使う為に自分から俺を遠ざけたんだな。
「「グォオオオオオ!」」
二人の剣がぶつかり合い月輝夜が押し勝つと魔剣メガロリュカオンを手放し、月輝夜は殴る。これに対して大嶽丸は殴り返そうとするが暴走状態の月輝夜は無我夢中で殴り続けると魔剣メガロリュカオンで首を跳ねた。
蘇生で強化が無くなり、狂戦士化で防御スキルが使えなくなったから当然この結果になる。だが、飛ばされた首が魔素で繋がり、まるでろくろ首のようになり、俺の所へやって来た。
「田村麻呂ぉおおお!」
この執念深さと生命力。まさに鬼の頂点の一角として相応しいな。
「雷光刃。閃影!」
「グォオオオオオ!」
俺が顔を真っ二つし、月輝夜が胴体を真っ二つにしたことで完全に倒した。
「グォオオオオオ!」
敵がいなくなったことで月輝夜が俺に向かってくる。俺は健康ポーションを取り出し、月輝夜の口に放り込んだ。
「ごく…グガァアアオオオン!?」
薬を飲んだ月輝夜は絶叫し、地面に倒れ込むと子供がタダをこねているように暴れた。相当不味そうだ。どうやら外れを与えてしまったらしい。今まで聞いたことがない月輝夜の声が出る程のまずさらしいな。月輝夜が涙目で俺に訴えかけて来る。
「俺は悪くないぞ。作ったのはセチアたちだからな。それに暴走状態になるなんて聞いてないぞ」
「グ、グォオオ…」
だって、使わないと勝てなかったんだもんと言いたげだな。流石にこれ以上は責めれないな。
「はぁ…今回は俺だけだったから良かったけど、今後は気を付けろよ。リリーたちに攻撃したらどうなるか俺は責任取らないからな」
「グ、グォ!」
分かってくれたようだ。俺たちが大嶽丸が倒れた所へ行くと綺麗な着物に一本の刀を持っている白髪の鬼の角がある天女がいた。
「私の名前は鈴鹿御前。大嶽丸を倒す為にこの地に降りて来た天女です。大嶽丸を倒して頂いたこと、心よりお礼申し上げます」
いきなり深々とお礼されてしまった。
「これは大嶽丸が落とした三明の剣の内の一本である顕明連です。お受け取り下さい」
お!今回はドロップ報酬を貰えるのか。やったぜ。俺は刀を受け取る。
顕明連:レア度10 太刀 品質S+
重さ:150 耐久値:1000 攻撃力:1200
効果:万物切断、神気、冥気、練気、神足通、天耳通、他心通、天眼通、念動力、蘇生、浄化、戦闘高揚、肉体活性、神刀解放、神仏の加護
地獄にいる阿修羅王が持つ三明の剣の内の一本。黄泉の国の力が宿っており、蘇生に特化した能力を持っている神刀で強力な神通力を宿していると言われている。
神通力もあったのか。これは便利な太刀だな。もし進化して太刀を取得するなら月輝夜に上げようと思う。俺には進化した月輝夜が空を飛んだり、水面を歩く姿は残念ながら想像出来ないんだよね。更に報酬は続く。
「そしてこれが私がかつて田村麻呂様と共に大嶽丸の力を封じた鬼神の宝珠です。あなた様とその鬼ならばこの力を正しく使うことが出来るでしょう。これもお受け取り下さい」
俺は鬼神の宝珠を受け取る。ここで転移の光に俺たちは包まれる。
「鬼は元々ただ力があるだけの存在でした。その力に溺れるかどうかを決めるのはあなたです。そのことを肝に銘じて下さい」
鈴鹿御前の警告とも取れる物を受け取り、俺たちは獣魔ギルドに戻るのだった。




