#10 テストの結果と調理器具セット
俺は早速、宿屋に帰り、牛肉のサーロインを焼く。この牛肉のサーロイン、興味本位で鑑定してみたら恐ろしいレア度だった。結果がこちら。
牛肉のサーロイン:レア度6 食材 品質B
牛肉の最高部位の一つ。肉質はキメ細かく、サシの入り方も適度でやわらかい。
コク深い風味と味わいが特徴。
牛肉のサーロインの鑑定したら、鑑定レベルが3もあがった。
名前 タクト 召喚師Lv4
生命力 12
魔力 18
筋力 12
防御力 4
俊敏性 10
器用値 18
スキル
素手Lv1 蹴り技Lv3 杖Lv1 召喚魔術Lv3 錬金Lv1
採掘Lv2 解体Lv3 鑑定Lv2→Lv5 光魔法Lv2 料理Lv1
流石ステーキの王様。こんなところで手に入るアイテムじゃないな。ま、俺達が食べるものじゃなくて、調理器具店の店長が食べるためのものだけどね。
今回はフライパンは使わず、鉄板で焼くことにした。焼肉専門店でバイトしていた俺はサーロインも鉄板で焼いていたことがある。知識、技術は店長から教えて貰ったものだ。
味付けは変わらず塩のみ。俺はモッチさんに許可を取り、インベントリに牛肉サーロインの鉄板焼きとフォークとナイフを入れて、再び調理器具店に向かった。
「ほぅ。もう作って来やがったか」
「はい。どうぞお召し上がりください」
俺はそういうとインベントリから皿に乗せた牛肉サーロインの鉄板焼きとフォークとナイフを取り出した。料理を見た調理器具店の店長は嫌な顔をする。当然だな。何故ならこの料理は普通とちょっと違う。
「おいおい、肉が切ってねぇじゃねーか。素人だな」
普通鉄板焼きの場合、切れ目を入れて、食べやすくしたりする。だがそれは普通の場合だ。
「タクト……」
リリーが心配そうな顔をする。大丈夫だ……。任せておけ。
「はい。わざと切れ目を入れたり、切ったりはしませんでした」
「何?」
調理器具店の店長は俺を見る。俺は続ける。
「あなたの依頼はその肉を使って、美味しい料理を作ること。だからこそ俺は切ったりしないことにしました」
「どういうことだ?」
「焼肉の場合、切り目を入れたりすると確かに食べやすくはなります。しかしながら切ってしまうとせっかくの肉汁が外に出てしまい、焼肉の味が損なわれてしまうんです。このことから焼肉において最高に美味しく食べるタイミングとは、焼肉を切った瞬間だといえます。美味しい料理を課題に挙げたあなたにはそれを提供する必要があると判断しました」
「ぬ……。確かにお前の言うとおりだな。だがそれだけでワシを唸らせられると思うなよ!」
苦し紛れにそう言いながら、ナイフで切ると肉汁が出てくる。その姿に店長は思わず、唾を飲み込む。そして、口に入れて味わう。食べ終わりフォークとナイフを置くと突然立ち上がり、叫んだ。
「うーまーいーぞー!!」
この瞬間、俺の勝利は確定した。
「いや、参ったぜ。こりゃ大したもんだ」
「ありがとうございます。それで報酬は?」
「あぁ。ちょいと待ってな」
そういうと店長は店の奥に消えていった。そのタイミングでリリーが俺の服を引っ張る。リリーを見ると涙目だ。理由は明らかだな。
「タクト~……お肉食べたかった~」
リリーが情けない声で言う。料理しているときもずっとお肉を見ていたから当然だな。因みにリリーの満腹度はいっぱいである。
「冒険を続けていればいつか出会えるさ」
「……本当?」
「あぁ」
わざわざここで料理をさせたということは案外早く手に入るのかも知れない。まぁ、料理が完成した時に俺とリリーのレベルが4、料理スキルが5上がったときは驚いた。ステータスでは現在こうなっている。
名前 タクト 召喚師Lv4→Lv8
生命力 12→15
魔力 18→22
筋力 12→14
防御力 4→6
俊敏性 10→11
器用値 18→22
スキル
素手Lv1 蹴り技Lv3 杖Lv1 召喚魔術Lv3 錬金Lv1
採掘Lv2 解体Lv3 鑑定Lv5 光魔法Lv2 料理Lv1→Lv6
名前 リリー ドラゴニュートLv4→Lv8
生命力 14→18
魔力 10→12
筋力 28→36
防御力 8→10
俊敏性 10→12
器用値 8→10
スキル
素手Lv6 片手剣Lv1
流石サーロイン、恐るべし。流石にレア度6のアイテムというところだろうか? 恐らくレア度の上限は10、品質はAかSだと思う。
後、チュートリアルで説明があったが、料理をして経験値が入るとは思っていなかった。ルインさんの説明で料理も生産だと教えて貰ったけど、違和感がある。俺からしたら、レベル上げはモンスター退治をして上げていくものという固定概念があるからだと思う。
改めて考えてみると料理人の人がいるみたいだし、生産職も生産で経験値を貰えないと戦闘職とレベルの差が開くから、こういう設定にしているのかもしれないな。
職業のレベルアップでインフォがあった。Lv5までは以前と同じインフォが流れた。
《職業召喚師のレベルが上がりました。パーティーに連れていける召喚獣の数が一つ増えました》
《職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント1ptを獲得しました》
これでフルパーティー(6人)を組めるようになった。続いてLv6以降のインフォはこちら。
《職業召喚師のレベルが上がりました。仲間にできる召喚獣の数が一つ増えました》
《職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント1ptを獲得しました》
どうやら職業のレベルアップは仲間にできる召喚獣の数が増えていくようだ。現在仲間に出来る召喚獣は8体だ。
二体は宿屋でお留守番することになるだろう。残りのスキルポイントは21pt。
そしてスキルもレベルアップしたのだが、俺の取得したスキルで料理スキルが一番スキルレベルで上なのはどういうことなのか。気にしたら負けだな。
リリーの筋力が36でぶっちぎりなのもスルーしよう。どうせボアをぶっ飛ばす光景に変化はないだろうからな。謎なのが召喚魔術までレベルが上がったこと。リリーも食べてはいないのにレベルアップが来ている。サーロインを料理して得た経験値をリリーも得ているということなのだろう。
ステータスを確認していたら、店長が帰ってきた。
「こいつらを貰ってやってくれ」
「確認します」
俺は渡された布を広げるとそこにはたくさんの包丁があった。牛刀や出刃包丁を始めにパン切りナイフ、サーモンナイフ果ては腸裂きまであった。他にもまな板や鍋、フライパンなどの調理器具があったが、俺が気になったのはやはり包丁だった。
「こんなにいろんな包丁をいいのですか? しかも新品でかなりの逸品だと思いますが」
「ふ……その様子からして包丁のことは把握しているみたいだな」
俺が包丁を見ている姿からそれを察したようだ。
「なら大丈夫だ。安心してそいつらを託せる……そいつらを包丁にしてやってくれ」
包丁は料理に使われてこそ包丁だってことかな?
「……わかりました。大切に使わさせて貰います」
「あったり前だ。パァにしやがったら承知しないからな」
「肝に命じておきます。ありがとうございました」
「おうよ。こっちこそありがとうよ。料理ご馳走さん」
そこで店長と別れた。有意義な一時だった。これならどんなものでも切ることが出来るだろう。
因みにこの包丁は武器として使用できなかった。いや、するつもりはないが気になったので、鑑定してみたらカテゴリーが武器ではなく、ツルハシと同じ道具になっていたのだ。
まぁ、石の剣と鉄製の包丁じゃあ、結構差がある気がする。しかし町の中では基本的にダメージは発生しないのだが、包丁は手を切ることが出来た。ダメージは発生しなかったが、痛みは感じた。恐らく包丁の危険性を伝えるためだと思う。
ゲームで切っても痛みが感じない包丁が当たり前になると現実でも包丁で切っても痛みがない物と思ってしまうからな。運営の苦労が伝わってくるね。
さて、調理器具は手に入れた。そしてクロウさんから石の剣が完成したという連絡を受け、石の剣を受け取る。
石の剣:レア度1 片手剣 品質F-
重さ:10 耐久値:25 攻撃力:10
石ころで作った剣。切れ味が悪く、切ると言うより叩く武器。
これを受け取ったリリーが石の剣を掲げる。
「リリーの剣だー!」
「ただの石の剣なのに尊い……」
「あはは……」
満腹度は全快。武器の準備完璧。じゃあ、狩りに行こうか! その前に冒険者ギルドでボア討伐と始まりの草原の先にある森のクエストを受けに行こう。