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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
オリハルコン鍛冶クエストと色欲の魔王
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#1035 師弟の決闘

俺は全ての準備を整えて、獣魔ギルドに向かうと千影の進化クエストを選ぶ。俺たちが転移した先は山奥で目の前には不気味に紫色に発光しているお寺があった。明らかに本能寺を意識しているな。山奥なのは烏天狗を一応意識しているからか。


俺たちが手を繋いで中に入ると聞き慣れた声が聞こえて来た。


「カッカッカッ! 久しいな! 少年よ! この日が来るのを待っておったぞ!」


「演技をするのをここまでにしてくれないか? 爺さん。見ていて恥ずかしい」


俺の容赦のない一言に烏魔天狗は固まる。すると頭を抱えて言う。


「はぁ~…ノリが悪いのは相変わらずのようじゃな。誠吾よ」


「思いっきり本名をゲーム内で言うなよ」


「ここには儂らしかおらんのだから問題ないじゃろ」


「え? 本名とはどういう意味でありますか? お館様」


ほら。問題が発生したぞ。くそじじい。何とかしろよ。


「む…そうじゃな~…こやつの子供の頃の名前が誠吾だったんじゃよ」


「そうだったんでありますね。という事は誠吾という名前で呼んだ方がいいのでありますか?」


「今の俺はタクトだからタクトでいいよ」


何とか切り抜けた。現実とこの世界の話をすることになると当然このゲームの終わりが来ると俺たちが別れる話になる。そうなるとリリーたちがどんな風になるのか考えたくはない。


「さて、お前はどこまで知っておるんじゃ?」


「全て知っているよ。全てを知っているうえでここに来ている」


「ふむ…どうやら自分が進む道を見つけたようじゃな」


「それもあんたたちの思惑通りだろ? 俺に約束の大切さを教え込んだのは紛れもなくあんたなんだからさ」


本当に人を掌で転がすのが好きな人だよ。俺も人の事を言えないけどね。


「確かにそうじゃが、ここに辿り着いたのは紛れも無い誠吾の力じゃよ。本当に成長したのぅ」


このゲームのバイトを選んだのは俺だし、そこで一生懸命作業を覚えてやり遂げてなかったら、俺はこのゲームと出会っていなかった。そもそもゲームをやる事を選んだのも俺だった。小柳さんの誘導はあったけどね。


そこからリリーを召喚して、ここまで冒険してきたのも俺だ。そう考えると色々賭けがあったんだろうな。


「そりゃどうも」


「なんじゃ、子供の頃はもう少し可愛げがあったぞ」


可愛げが無くなって悪かったな。そう思っていると千影は興味を持つ。


「お館様が可愛い? 詳しく聞かせて欲しいであります!」


「聞かなくていい」


「ふぉっふぉ。いいぞ。昔は爺さん、爺さんと儂の背中をついてきたものじゃ」


「竹刀を持ってな」


何度爺さんの背後から襲いかかったか覚えてない。因みに寝ている時も襲ったが一度も成功したことはなかった。


「そうじゃったのぅ…懐かしいわい。後は訓練中に漏らしたことがあったのぅ」


「お館様が!?」


「俺がトイレと言ったのにあんたが俺の尻に竹刀で突き刺してきたからだろうが! その後、婆ちゃんに合気柔術を決められて掃除をさせられたのを忘れたのか?」


「そんなこと、覚えとらんわい」


自分に都合が悪いことは忘れるのも相変わらずだ。


「そっか…じゃあ、婆ちゃんにこの事を伝えていないのも忘れていたと言うことでいいんだな?」


「む?」


「俺がここに来たのは千影のためであることと俺自身があんたを成仏させるためともう一つある。それは俺が婆ちゃんに代わって、あんたのお仕置きに来たんだよ」


俺の苛つきの原因がこれだった。婆ちゃんの様子から爺さんが本当に死んだ様子が伺えた。そして爺さんの死を受け入れている一方で寂しそうにしている婆ちゃんの姿を思い出してしまった。流石にゲームの世界で生きてるなんて言えないから、代わりに婆ちゃんをほったらかしにしているこのダメ爺さんにお仕置きをすることを決めた。


「確かに伝えてはおらんが…何かあったのか?」


「何も。ただ俺は婆ちゃんに何も言わず、ここにいる爺さんを許せそうにない。ただそれだけさ」


「確かに何も言っておらんことは悪いとは思うがの」


「いいや。思ってないね。あんたがここにいる間、婆さんの事を考えたことなんてなかっただろう? 父さんや英雄、モンスターと戦いばかりしていたことが簡単に想像できるぜ」


俺の言葉に爺さんは完全に詰まってしまう。どうやら図星のようだ。本当に元気な爺さんだよ。


「そんな爺さんに負けるわけにはいかない。今日ここで勝って、俺があんたを地獄に送ってやるよ」


「そこは天国と言うところじゃぞ。誠吾よ」


残念ながらこの爺さんが天国に行くとは俺には思えないから地獄一択だ。すると烏魔天狗は姿を消すと寺の屋根に着地すると錫杖を構える。


「まぁいいわい。儂の名は烏魔天狗! 武の道を究め、天狗となりし第六天魔王(だいろくてんまおう)! 神すら恐れる究極の武を恐れぬならばかかって来るがいい!」


わざわざ本能寺のデザインの寺を用意したのは自分が第六天魔王を名乗りたかったからか。しかも自分で究極の武とか言っちゃっているよ。そういう事は言わない主義の爺ちゃんが変わるもんだな。


究極や最強とかはゲームの設定的にはあり得るのかも知れないけど、現実ではまずありえない。だからこそ人は強さを追い求めることが出来る。爺さんが究極の武に至ったと言うならこの爺さんは強さにおいてはもう終わっているという事だ。それなら恐れる事なんて何もあるはずがない。


「行くぞ! 千影! 俺に力を貸してくれ!」


「もちろんであります!」


「「エンゲージバースト!」」


エンゲージバーストした俺たちは山伏の衣装は白と青の服装で烏天狗とは合わない衣装で寺の屋根に降り立つ。


「行くぞ!」


「あぁ…」


俺は近衛を抜いて、構えると烏魔天狗は錫杖を構えて、間合いを詰めて来た。これに対して、俺も動く。


「はぁああああ!」


俺との距離を嫌い、錫杖の石突で高速連打をして来た。俺は見切って、下から近衛を斬り上げ、錫杖を上に弾くと爺さんは蹴りを構えていた。


空衝脚(くうしょうきゃく)!」


俺が横っ飛びで躱すと圧縮された空気が屋根の鬼瓦に命中し、木っ端微塵になる。ただの圧縮された空気じゃなくて受けた瞬間に衝撃波が発生する技か。


俺たちが空で体勢を整えている間に烏魔天狗も打ち上げられた錫杖を手にし、俺たちは空でぶつかり合う。


「「影分身! 雷光!」」


激しくお互いの分身と本体がぶつかり合う中、複雑怪奇に相手が入れ替わる。これは俺と千影が仕掛けている。一対一で戦うならその戦いに集中出来るが途中で相手が変わると戦闘の意識も変えないといけない。これを沢山の分身を含めて一人で行うのは相当きつい。


「作戦は練って来ておるわけじゃな…じゃが!」


全ての分身に対応されて、俺たちの分身は消えてなくなる。この爺さんは俺たちよりずっと長くこのゲームをしている。しかも爺さんには極め癖がある。この程度の分身操作ぐらいはやってのけるか。


「「「「儂は甘くないわい!」」」」


集団で襲い掛かって来る。これに対して俺は戦っていた烏魔天狗から距離を取り、近衛を構える。


「「「「ぬ? 羽投擲!」」」」


俺に襲い掛かろうとした分身たちは急上昇すると羽を飛ばして来た。


「旋風刃!」


それを俺は旋風刃で吹き飛ばすとそのまま分身たちに襲い掛かるがそれを躱して、攻撃するのではなく、動き回って来る。どうやら直線で俺たちに攻撃するのを嫌ったようだ。するとここで初めて錫杖を止めて、刀を手にする。


「「「「木の葉斬り!」」」」


俺たちの周囲が木の葉で覆われる。


「返し一閃!」


「ぬ!?」


右の木の葉から放たれた突きに合わせてカウンターで斬り裂く。この時に俺たちは木の葉に触れているが痛みは無い。どうやら木の葉はただ隠れる為だけに存在しているようだ。それなら脅威じゃないな。俺は更に体を回転させる。


「百花繚乱!」


『旋風刃!』


千影との超連携で花びらの竜巻が舞い上がり、それに烏魔天狗の分身たちが巻き込まれる。すると伸びた錫杖が飛んで来て、超連携中の俺たちはこれをまともに喰らう。


「まだまだ甘いわい」


分身たちに木の葉斬りをさせて、本体は俺たちへの攻撃を狙っていたようだ。しかし俺たちもただでやられたりはしない。烏魔天狗の背後から石化光線が襲い掛かる。千影が夢幻でエンゼルファミーユを隠しながら操っていた成果だ。


「ぬ!?」


錫杖を持っていた烏魔天狗の手が石になる。更なる石化を防ぐために烏魔天狗が腕を斬り落とすと俺たちがそこへ襲い掛かる。


「転瞬!」


「甘いわ!」


カウンターを狙う烏魔天狗だが、俺は刀を使わず、腕がない右を狙い、蹴りを飛ばす。


「ぬ! 爺ちゃんを蹴り飛ばすとは何様じゃ!」


『お館様であります!』


うん。千影の見事な返しを爺さんに聞かせてあげたいな。ここで俺と爺さんの剣戟のやり合いとなるが片腕がないハンデが大きい。それに爺さんは子供の頃の俺しか知らない。更に俺の格闘戦は爺さんが教えた物だけではなく、俺がこのゲームで覚えた格闘戦やテレビ、漫画などを参考に覚えて来た物だ。その中には爺さんが知らないコンボも入っているおり、押していく。


しかし次第に俺の動きに対応して来て、攻撃を躱すようになると自分の腕を復活させ、逆に攻め込んで来る。そこではっきりわかるのが爺さんとのステータスの差だ。更に一つ一つの技の鋭さが全然違う。


俺が知っている爺さんはやはり年で全盛期と比べるとやはり動きや技のキレが落ちていたんだろう。それがゲームの中でなら老いは無い。結果的に俺は今、全盛期の頃の爺さんと戦っているのだと認識した。


「「はぁあああああ!」」


時に鍔迫り合いになり、時にフェイントの掛け合いで何もせず、距離を置く。そしてスキルの撃ち合いをして、再び斬り合うと剣道の試合では反則となる格闘戦を織り交ぜた実戦に特化した剣戟と武術の戦いになる。


そんなことを繰り返していると俺たちは少しずつ追い込まれていった。やはり俺より爺さんのほうが一枚も二枚も上手だ。


「そんな強さでは誰も! 何も! 守れはせんぞ! 誠吾! 点穴!」


「く…!?」


俺が刀を突いたところを狙って、烏魔天狗の指が俺の腕を狙って来た。名前から竜穴と似た技だと思い、刀の柄でギリギリ防いだ。すると斬撃が来て、後ろに下がると空衝脚が飛んで来た。これを回避した所を烏魔天狗が狙う。


流星一文字(りゅうせいいちもんじ)!」


「っ!?」


光速で移動しながら首を狙った横一閃の武技が放たれる。これを辛うじて防いだが太刀の一撃だったため、身体のバランスを崩しながら爺さんを見ると爺さんの突きが来る。


この瞬間を待っていた。爺さんがマグネットサークルに囚われる。刀を持っている俺では遅延魔法は使えない。だから完全に意表を突いた攻撃だ。この仕組みは恩恵にある。


爺さんを倒すために色々実験していた俺は遅延魔法で魔法をストックした状態で恩恵で千影に渡すとストックした魔法ごと受け継がれることを発見した。これにより遅延魔法と恩恵の需要がかなり増した。


何故なら魔法が使えない侍だけでなく、重装歩兵や狩人まで魔法が使用できるようになったんだ。特に与一さんたちがレールガンとマシンガンによる超集束にときめいていた。


「ぬ!? また遅延魔法か!」


「あぁ…このゲームでは俺は剣士でも侍でもない。召喚師なんだよ」


『神撃!』


「雷轟!」


エンゼルファミーユの神撃が炸裂し、近衛から雷轟を放つ。すると魔素が膨れ上がる。


「調子に乗る出ないわ! 神威解放!」


烏魔天狗が変貌する。


第六天魔王?

? ? ?


本当になるんかい。なんか第三の目が開眼して、強さが大きくなったぞ。これはこちらも使わないとまずい。


「神威」


「判断が遅い!」


俺たちは切り落とされる。そのまま踏みつぶされてから蹴られ、寺の壁にぶち抜いて、寺の中に入ることになった。そして第六天魔王はもう一つの刀を抜き、寺の中へと入って来る。


「儂を本気にされたことを後悔するがいい。煉獄!」


あ、もうこの爺さん、人間止めているわ。妖怪とかそういう物になっているに違いない。殺気のレベルが今まで感じて来た物と次元が違う。上手く言えないが殺す殺気ではなく、完膚なきまで殺しつくす殺気といえば言えばいいのか。第六天魔王に爺さんが実際になったとしても納得が行ってしまうレベルだ。


「ぺ…第六天魔王の弟子が後悔なんてすると思うのか? 寧ろ本気のあんたを倒さないとあんたは成仏しないだろう?」


俺も神息を抜き、爺さんが知らない構えを取る。


「ぬ?」


「これで決めさせて貰う。御剣流じゃない。俺があんたに勝つために考えた近衛流であんたを倒す」


それは俺がもう御剣誠吾ではなく、近衛誠吾なのだと言う宣言だった。


「近衛流か…ならば儂も御剣流の全身全霊の一撃で答えてやるわい!」


やはり一撃の決戦に乗って来た。第六天魔王になろうとも侍の魂は残っていたってことかな?案外第六天魔王と名乗った織田信長もこんな感じだったのかも知れない。


圧切長谷部(へしきりはせべ)、伝説解放! 津田遠江長光(つだとおとうみながみつ)、宝刀解放!」


圧切長谷部と津田遠江長光はどちらも織田信長の刀として知られている。圧切長谷部には名前の由来となった伝説がある。


それが失敗した茶坊主を織田信長が怒って殺そうとすると台所の棚の下に隠れられて刀を振り下ろすことが出来なくなるエピソードだ。織田信長はここで棚の下に刀を差し入れると力を入れずに隠れていた茶坊主を押し当てて斬ってしまったのが圧切長谷部と言われている。


津田遠江長光は妖刀となるエピソードは無いが明智光秀が本能寺の変の後に安土城(あづちじょう)で手に入れたのが津田遠江長光だ。国宝に指定されている刀だから宝刀解放になっているんだろうな。


「神刀解放! 宝刀解放!」


『『『『アクセラレーション!』』』』


これで俺の必殺技の準備が整った。


「御剣流! 奥義! 生生世世(しょうじょうせぜ)!」


生生世世は仏教用語で生まれ変わり死に変わりをしながら世を生き続ける事を言う。死んでもこのゲームで生き続けている爺さんが考えた必殺技なんだろう。


そしてこの必殺技は俺の予想通りで荒れ狂うほどの無数の斬撃を放つ技だった。このゲームでは基本的に一撃の重さよりも連続で攻撃を当てた方がダメージが大きくなる傾向がある。それを考えるなら無限に攻撃を当てられる必殺技は本当に必殺の技となる。


しかし俺が考えた技はこれを倒すための必殺技だ。さぁ、俺がリリーたちと出会い、このゲームで作り出した必殺技を爺さんに見せつけてやろう。


「近衛流! 決戦奥義! 勇往邁進(ゆうおうまんしん)!」


勇往邁進は恐れることなく、自分の目標に向かってひたすら前進すること。このゲームで俺がリリーたちと一緒に歩んで来た道を指す言葉として技名にこの四字熟語を選んだ。


無数の斬撃の嵐の中へと神息を突きの構えを取る。


「雷騰雲奔!」


「ぬ!?」


俺は雷速で飛び込むと神息の突きの構えで斬撃の急所への攻撃とダメージを最小限にして、斬撃の嵐を突破した。必殺技の後に慧眼などの回避スキルはすぐに使えない。結果、第六天魔王は俺の技を自力で回避するしかない。


「(残念じゃが、見えておるぞ。誠吾よ)」


次の瞬間、千影がストックしていた遅延魔法を発動する。更に近衛の刀身にルーン文字が輝くと爺さんすら知らない驚愕の現象が起きる。


「(斬撃の速度とコースが変わったじゃと!? 不味い!)」


胴を狙った斬撃が急激に上へと狙いを変えた。第六天魔王は回避をしようとするが時すでに遅し。第六天魔王の首が跳ぶ。ディセラレーションでの時間遅延と速さのルーンによる斬撃の急加速。更に俺が発見したルーン魔術の可能性。それが攻撃のキャンセルだ。


今回の場合は速さのルーンが発動した瞬間、俺の攻撃が一度キャンセルされ、俺はその瞬間に攻撃の向きを変えた。新たな必殺技を考える時にルーン魔術を使っていて、偶然発見した現象だったが一歩一歩進んだ結果、見つけることが出来た現象だと思っている。だから必殺技に勇往邁進と名付けた。


流石の第六天魔王も刹那の瞬間に発生した三つの異常に対応することが出来なかった。そして一撃入れば勝負ありだ。


「永劫回帰!」


永劫回帰による無限攻撃が決まって、第六天魔王を倒すまで斬撃をし続けて、倒した。


「ぬぅうう!? はぁ…負けてしもうたか…あんな技、よく考えたのう」


「一刀必殺…それが御剣流の教えだろ?」


俺が考えた勇往邁進は御剣流の教えとこのゲームで俺が得た強さを組み合わせた技だ。これがそのまま近衛流でもある。


「…それを忘れて、このゲームに特化した技に染まってしもうた儂自身が敗因か…死んでゲームの中で生き続けた先で成長した弟子に御剣流の教えを教えられるとは皮肉なもんじゃ」


「御剣家のご先祖様達が教えを忘れるなとあんたに言っているのかもな」


「そうかもしれんの…さて、試練はこれで終わりじゃ。ただ誠吾の言うような成仏はすぐには出来ん。儂にはこのゲームでの役割という物があるからの」


烏魔天狗としてプレイヤー達にこの爺さんは立ち塞がるんだろうな。アルさんたちには頑張って貰いたい。


「分かっているよ。ただこれで本当に成仏が出来るだろ?」


「そうじゃな。こうして成長し、一人で立派に前を向いて歩いているお前を見て安心したわい。それに見事に負けてしもうたからな」


どうやら俺の一つの大事な役割は果たせたようだ。安心していると千影が言う。


『お館様、後でお話があるであります』


勇往邁進はリリーたちには見せてない。そのことについての説明をしないといけないだろうな。ただ近衛では無限のルーンが無いから今回の一回限りなんだよね。ここで報酬である仏道天狗の宝珠を貰う。


「これで儂がお前にしてやれることは何もないわい。誠吾から指輪を貰った少女よ。いや、タクトじゃったか? まだまだ未熟で困った奴じゃが、約束は守り、女を大切にする男じゃ。じゃから強くなってもタクトの事を支えてやって欲しい」


『もちろんであります!』


ここでクエスト終了の光に包まれる。


「お前の両親は儂以上にお前を待っておる。今よりももっと成長した姿を見せれるように精進するんじゃぞ」


「分かっているよ。父さんが考えたバットエンドにはさせるつもりはないから安心してくれ」


俺は爺さんの満足げな顔を見て、転移するのだった。

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動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
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