#1025 ジャバウォック対ディアン
その光景は見ていた俺は思わず、呟く。
「ガープの後にあんなラスボスを用意するとかここの運営はどうなっているんだが…」
ここでサバ缶さんから通信が来る。
『タクトです』
『タクトさん! 緊急事態です! 大至急こちらに来てください!』
『もう来てますよ。今、キャンプにいます。事情もある程度、分かってます』
『そうですか…良かった。救援に来てくれますか?』
『それはいいんですけど、ここで手を出して良いんですかね?』
一応この戦いは召喚師が参加をしないと決めた戦いだ。ここで手を出すのは気が引ける。
『ガープの討伐と砦の解放は既にインフォが来ました。つまりあのジャバウォックはあくまで野生のモンスターと同じ扱いになっているんだと思います』
それなら問題はないか。それじゃあ、向かうとしよう。
「よっと。お疲れ様」
「「「「タクトさん(君)!?」」」」
「作戦司令部より、あいつの討伐を依頼された。みんな疲れているだろうし、手早く終わらせるとしよう。初めてのでかい獲物だ! 来い! ディアン!」
進化したディアンが現れる。
「「「「シャアアアー!」」」」
「グォオオオオオー!」
ジャバウォックとディアンが激突する。しかしディアンとぶつかった瞬間、ジャバウォックは仰け反る。ディアンの斥力場だ。ぶっ飛ばされなかっただけで大したものだね。しかし仰け反ったジャバウォックにディアンの首が次々噛みつく。
「グォオオオオオ~!? ガァ! ガァ! ガァアアア!」
噛まれて絶叫するジャバウォックだが、すぐにディアンの首を潰して来る。しかし一瞬で復活した首がジャバウォックの顔目掛けて魔霧を噴射する。
「グォオオオ!? ガ…ガ…」
ジャバウォックが顔をこすっている間に周囲が毒の霧に包まれて、ジャバウォックのステータスが見る見る弱体化していく。これが弱化毒の効果だ。しかも耐性無効の効果でディアンの弱化毒、神魔毒、腐蝕からは逃げられない。
「勝負あったな」
キメラだけあって何度も復活はしたが、ディアン相手に何の対策も無しに接近戦を挑んだこいつの負けだ。ディアンは次々、噛みつき、背後から尻尾で胴体を貫くとジャバウォックを締め付ける。
これで逃げられないと思ったが霊化で姿を消すと俺を踏みつけて来る。しかし俺は片手でそれを止めてしまう。既に弱化毒の効果でこいつには筋力が無くなっていた。そして光化で追って来たディアンに再び捕まり、ボコボコにされる。
「あれが最終進化のヒュドラの強さか…」
「化け物だと思ってた敵を圧倒かよ…」
「私達の色々な感情を返してくれないかな? タクト君?」
「そんなこと言われてもな。まぁ、でかい敵とは相性がいいとは思ってたけど、ここまで圧倒するとは俺も思ってなかった」
ディアンは真っ向勝負は望むところであるタイプだ。苦手なのはやはりリリーたちのように動き回るタイプだろう。色々スキルは持っているけど、ディアン最大の武器はやはり毒だと再認識したな。
それでもジャバウォックもよく粘っている。蘇生すると弱体化したステータスが元に戻るからそこに活路を見出そうとしていたがディアンの首を倒せば倒すほど、ディアンは強くなる。もっとも強化復活はジャバウォックも持っているらしい。だが決定的な差がやはり毒だ。
ここでジャバウォックは空へ飛んで遠距離戦を挑もうとする。するとディアンの容赦がないブレス攻撃の連打が飛んで来る。ここでジャバウォックは何やら構えを取るとディアンを囲むようにジャバウォックが増えた。そしてディアンに一斉にブレス攻撃をして来た。
「分身のようには見えないな。グレイの幻狼と似ているスキルか?」
俺の疑問にノストラさんが答えてくれる。
「同じ動作をしているから恐らく万華鏡スキルよ。分身と違って、別々に動かすことは出来ない欠点があるのだけれど、自分が使った魔力だけで分身全てが同じスキルを使用できるの」
魔力の節約と同時攻撃を兼ね揃ているスキルか。いいスキルを持っているな。
「分身扱いになるんですか?」
「そうなるわね。攻撃が当たれば消えるわ」
それなら大した問題じゃないな。ディアンに伝えるとすぐに目から光線を放って、全滅させると別の首はジャバウォックの攻撃を再開する。
こうなるとジャバウォックは耐え忍び、ディアンの魔力切れを待つ。しかしディアンも馬鹿じゃない。魔力が切れる前に光化でジャバウォックの背後に現れるとまた噛みつく。
これで空に逃げる事も出来ないとディアンは証明した形だ。そして二体は地面に落下するとディアンが上から押さえつけている。
「シャ?」
ディアンがとどめさしていいか聞いて来る。もうそんなことを聞いて来るほど、ジャバウォックはボロボロだった。
「倒していいか?」
「「「「どーぞ」」」」
「いいってさ」
最後は尻尾で心臓を貫いて終わった。決して弱い敵ではないと思う。寧ろディアンたちと同格の敵だったはずだ。ただディアンとの相性が悪すぎたな。
そしてそれぞれが解体作業と戦後処理をする。俺はジャバウォックの解体だ。
幻魔獣王の宝珠:レア度10 重要アイテム 品質S
物語に語られる合成魔獣の王の力が封じ込められている宝珠。キマイラが進化するために必要なアイテム。
幻惑の宝玉:レア度10 素材 品質S
一定の確率で幻を出現させる力がある玉。主に武器やアクセサリーに使用される。
相対転移の指輪:レア度10 アクセサリー 品質S
効果:相対転移
使用した場所にいる者と反対側にいる者を一気に入れ替えることが出来る魔法の指輪。
君主のメリケンサック:レア度10 籠手 品質S
重さ:250 耐久値:2500 攻撃力:2000
効果:会心、武器破壊、魔法破壊、重力操作、荷重操作、王の加護
魔王ガープが愛用しているメリケンサック。高確率で敵に大ダメージを与えることが出来る能力があり、他の武器にもかなり有利に戦うことが出来る格闘専用の武器。
相対転移の指輪と君主のメリケンサックはガープの討伐報酬だろうな。これは皆の物だ。それに対して幻魔獣王の宝珠はどうしようか悩む。実はまだ召喚できる枠がある。これを本気で悩んでいる。
もし追加するならリリーたちのようにコンプ称号を狙うかそれとも欲しい召喚獣を優先するかなんだよね。取り敢えずこれは貰っておこう。いらないと判断した時に必要な人と何か交換すればいいだろう。
幻惑の宝玉を使いこなせそうなのは伊雪、ルミだな。運が関わって来るなら運勢操作で使いこなさすことが出来そうな気がする。
更に砦の中からはガープの訓練装備シリーズが見つかる。ダンベルは筋力、ウエイトベストは防御力、アンクルウェイトは俊敏性をそれぞれ使うと1上がるそうだ。ステータスが毎日上がるアイテムは初だと思うが、ゲームの世界で何故筋トレをしないといけないのか色々疑問が残るアイテムとなった。
しかも何故か大量に見つかり、それぞれのギルドに回されることになった。ここでメルが聞いて来る。
「リリーちゃんたちはどうすると思う?」
「強くなるためならやりたがりそうだけど、筋トレするリリーたちの姿を見るのもなぁ」
「まぁ、微妙だよね」
想像しても可哀想に思ってしまった。何だかんだでいつも元気に動き回っているリリーたちが好きなんだと再認識してしまったな。
「何言っているんだ! お前! もしかしたら」
「はーい。あんたは黙ってなさい。変な事を言うと運営に通報されるわよ」
アーレイは何を狙っていたんだろう?嫌な予感がするからやっぱりスルーしておこう。その後、ボロボロのガープの砦で会議をする。
次の砦はガープの口からほぼアスモデウスが相手であることが分かっている。ここで色々な意見が出る。
まずアスモデウスを相手にするためには魅了の状態異常をなんとかしないといけない。色欲を司る悪魔だから当然そう来るだろう。参考になるのはもちろんリビナだ。そして当然、男性が不利論が出て来る。
しかしアスモデウスはゲームによっては男性のケースもあるそうだ。そうなると危ないのは女性ということになる。そもそも色欲を司るなら男女など関係がない可能性が高いだろう。
「魅了対策のアクセサリーってどれくらいあるのかしら?」
「結構ありますよ。ゴネスの攻略組でサキュバスたちが出て来て、注文を受けたから量産したことがありましたから。素材も島を使えばすぐに手に入ると思いますから依頼しておきます」
「ありがとう。助かるわ。タクト君は次は参加するのかしら?」
「リリーたちの反応を見て、決めさせて下さい」
みんなから同情の視線を受けた。すると女性陣からきっと反対されるという意見が出た。まぁ、普通は無理だよね。それにみんなが倒した方が戦力アップになる。俺が倒して色欲の魔導書を得るより、他の人が獲得した方がいいだろう。
そして俺は灯台が復活した話をする。
「その写真なら私達も見つけたよ」
「あ、でも、あの時ってお昼だったよ」
「…お昼に幽霊は現れない」
そこらへんは徹底している運営だ。メルがイベントの発生くらいなら出て来てもいいと文句を言いたくなる気持ちは痛いほどわかる。
「インフォから判断してマザーズレイクの攻略を狙う人はクリアしないといけないクエストでしょうね」
「じゃあ、敵の情報を公開しますね」
それが終わると選ばれた人とパーティーを組んで俺は星のコンパスのクエストに出発した。




