#1022 灯台クエスト
夕飯を食べ終えて、ゲームにログインする。予定が多少狂ってしまったけど、先にクリュスにエンゲージリングを渡すとしよう。
「タクーーー!」
下に降りるとクリュスに話しかける前にユウェルがスライディングして現れると止めきれず、壁にぶつかった。
「痛い……」
「大丈夫か? ユウェル」
「これぐらい平気……ひ!?」
「家の中では走らないようにいつも言ってますよね? ユウェルさん」
物凄い凄味を発しながら笑顔で近付いて来たのはキキだ。滅茶苦茶怖い。
「ご、ごめ…タクに改良した物を早く見て貰いたくて…」
怯えているユウェルの姿を見るとどうしても助けたくなる。
「あぁ~…キキ。これは俺のせいでもあるから今回は大目に見てやってくれないか?」
「はぁ~…タクト様は皆さんに優しすぎじゃないですか?」
「そうかも知れないな。反省はしているよな? ユウェル」
ユウェルは首を一生懸命上下に振る。
「やれやれ。では、反省しているなら今後、家の中を走るのは禁止です。勿論皆さんもですよ」
「「「「えぇ~」」」」
「異論でも?」
「「「「あ、ありません」」」」
キキには色々苦労を掛けているよ。ユウェルの武器は大きく、使い心地も見たいので、地下の練習場で確認する。
モーニングスターデスサイズ:レア度10 鎌 品質S+
重さ:250 耐久値:2000 攻撃力:1500
効果:不死殺し、星獣殺し、神殺し、大物殺し、万物切断、星気、英気、英雄障壁、重力操作、荷重操作、伸縮、回転激突、土潜伏、星の加護
金剛石とアダマンタイトの合金で作れた鎌に神珍鉄の鎖、メテオライトとタングステンの星球で作られた鎖鎌。性能は素晴らしいのだが、かなりいかつく使いこなすにはかなりの難易度が要求される。
なんかスキルが追加されているな。
「どうだ? タク?」
「かなり良くなっていると思うけど、何かスキルが追加されていないか?」
「師匠がどうせ改良するなら新しいスキルを追加した方がいいと言ってくれて、アドバイスをしてくれたんだぞ!」
やはりヘーパイストスの入れ知恵か。ここでユウェルが俺をじっと見つめて来る。
「…」
「はいはい。実際に戦って確認するか」
「うん!」
この武器の弱点はやはり近距離戦。ただユウェルには攻撃を諸ともしない防御力がある。俺やイオンは一撃が怖いから当然距離を置く戦闘をすることになるんだが、そこで鎖が非常に邪魔になる。
下手に転瞬で移動すると鎖に自分から突っ込んだり、足に引っかかり、転ぶこともある。しかも念動力で鎖もモーニングスターの本体も操ることが出来るから空を飛んでも安全とは言えない。
更にヘーパイストスの入れ知恵が非常に厄介なことになっている。高速回転しながら飛んで来る星球はドリルとそこまで大差がない。しかも土潜伏の効果で星球がそのまま地面に潜って、下から飛び出すことも可能となった。厄介な武器を作った物だよ。
「むー……近付いて戦わないと勝負にならないぞ。タク」
「それなら自分の周囲に張り巡らせている鎖をなんとかしてから言ってくれ」
結局遠距離となり、時間切れだ。頬を膨らませているユウェルだが、武器の出来栄えは満足が行く物になったみたいだった。ここでクリュスをデートに誘う。
「クリュス、ちょっといいか?」
「えぇ。いつでもいいわよ。何処に行くのかしら?」
「さっきまで行ってた場所だよ。灯台があったからそこに行こうと思っている。ただその灯台はモンスターの巣窟になっているらしいんだがな」
「あら? 楽しそうじゃない。行きましょう」
意外にノリノリだな。
「「「「行ってらっしゃーい!」」」」
リリーたちに見送られて、湖の町エレインに向かった。
「情報通り灯台から光が出ていないな」
「あまりいい予感はしないわね。私の見た目もあるでしょうけど、敵意ががんがん飛んできているわ。ここはデートスポットとは言えないわね」
そう言えばルーナもそんなことを言ってたんだった。
「別の場所にするか?」
「いいえ。このまま引き下がるのは癪だし、このままでいいわよ。それに折角お父様と二人っきりだからね。たまには二人で戦闘をするのも良いんじゃないかしら?」
戦闘にデートなんて俺達らしいと言えばらしいのかも知れないな。あまり褒められたことじゃないとは思う。こういうのはこれっきりにしたいな。
「取り敢えず灯台に行ってみるか」
「えぇ」
灯台に行って、光魔法のライトで確認すると綺麗とは言えないが普通の使えそうな灯台だった。
「どうだ? クリュス?」
「ダメね…町にいた時に感じていた物が全然感じられなくなったわ。ルーナお姉様の話が正しいなら呪われているのはあの町という事になるのかしら?」
「つまりこの灯台は無関係なのか?」
「分からないわ。一つだけ言えるのはあの町を呪っている人はあの町にはいないと言う事よ」
俺達は武器を取り出し、お互いに頷くと灯台の中に入ると後ろ姿の人影があった。
「あの…すみません」
「みーたーなー…あぁああああ~!」
振り返った女の子に目が無く、黒くなっていた。
「ふん!」
「ぎゃあああああ!?」
斬れる幽霊など、俺の敵じゃない。
「「「「あぁああああ~!」」」」
今度は扉が開いて大群で押し寄せて来た。そこで識別に成功する。
ルサールカLv45
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
ルサールカはスラヴ神話の水の精霊。幽霊として説もあり、このゲームでは幽霊みたいだな。
「封鎖。お父様」
「あぁ」
俺は近衛に力を溜めると近衛の刀身が光輝く。
「烈日!」
「「「「ぎゃあああああ!?」」」」
綺麗に全滅した。その後も灯台にある扉からいきなり襲われるが隠れているのが俺たちにはバレバレだったので、そこまでの脅威は感じなかった。
そして屋上に辿り着く。
「確かに壊れているな」
「でも、ここにはこの装置以外は何もないわよ」
「だな。どうする?」
「我儘を言っちゃうけど、今の状況で告白はされたくないわね」
まぁ、微妙な流れなのは否定しない。というわけでルサールカが出て来た部屋を調べる。
「うわ!? は、くしゅん! あぁ~…これは酷い」
「きゃ!? あぁもう! 鬱陶しいわね!」
部屋は埃まみれで蜘蛛の巣まである散らかり放題の部屋だった。
「少しは掃除しなさいよね」
「そういえばクリュスたちは結構綺麗にしているよな」
「片付けないと怖いメイドに怒られるからよ」
俺が知らない所でみんなはキキに教育されているらしい。
「こんな所に何かあるのかしら?」
「ここに何かあるとするなら部屋の中しかありえないと思うんだよ」
段ボールの中などを漁っているが何も見つからない。結局下まで降りて来てしまった。
「町の人は何も知らないのかしら?」
「町が呪われている以上、何か原因を知っている人物はいると思うけど、現時点でそういう人物は見つかっていないな」
「はぁ…ならこの最後の部屋に賭けるしかない訳ね」
最後の部屋も調べるが何もヒントになりそうな物はない。
「ダメか…」
「なんか余計に告白の雰囲気じゃなくなったわね…」
「そうだな。ん? クリュス、これ」
「どうかした? お父様。これって」
俺は偶然飾られている写真に目が行くとそこには灯台をバックに撮られた写真があった。問題はそこに写っている人物で一人は青年でもう一人は青色の髪をしている魔女の格好をした女性だった。これはもう間違いないだろう。ただ言いたいことがある。
「普通に飾ってあるのかよ…しかも最初の部屋」
「最初から部屋を調べておくべきだったわね」
何か運営に笑われている気がして、ムカつく。
「この写真は位置的から見て、岬の先から撮っているな」
「行ってみましょう」
俺たちは振り返ると青年の幽霊がいた。
「うわ!?」
「きゃ!?」
流石にこれは驚くわ!普通に怖いホラーだったぞ!ただ青年は怖いタイプの幽霊では無かったからから色々セーフだ。
「僕はここに憑りついている地縛霊。君達に一つ頼みがある」
この写真を見たからクエストが発生したみたいだな。
「何だ?」
「この写真に写っている彼女をここに連れて来て欲しい」
インフォが来る。
『特殊イベント『灯台の魔女』が発生しました』
特殊イベント『灯台の魔女』:難易度S+
報酬:導きのフレネルレンズ
灯台の魔女を見つけ出し、彼氏がいる灯台で再会させよ。
なるほど。色々クエストの流れが分かって来たぞ。それに難易度がこれだけあるという事は戦闘は不可避な気がする。一応事情を聞いてみた。
「生前僕と彼女はここで愛し合っていた。でも、ある日パラディンロードの騎士団が町にやって来て、町の人から僕がマザーズレイクの案内役を頼まれることになったんだ」
「そしたら、マザーズレイクで死んでしまったのか?」
「うん…彼女に必ず戻ると約束したんだけど、濃い霧の中、この姿でずっと彷徨って、やっと帰って来た頃には彼女はいなくなっていたんだ」
それで彼氏をマザーズレイクに送る原因となった町の人達を呪っているわけだな。そして彼氏を奪われて、激おこで戦闘になると…ざっとこんな流れだろうな。
一応パラディンロードの騎士団の話を聞くと全滅したらしいからアーサー達とは無関係であることが判明した。これでアーサーやランスロットの名前が出て来たら、強引に参加させるところだったぞ。
取り敢えずクエストを受けて、写真が取られたであろう岬へと向かうことにした。




